th_satです。
Diamond Hands Magazine、ビットコインを巡るビジネス面・規制面の動向のまとめです。
ここまで過去5回にわたり(10月13日号、10月23日、11月6日号、11月20日号、12月4日号)、ビットコインをめぐるビジネス面の動向(ペイメントや社会生活での利用や、金融機関での金融商品としての取り扱いなど)、規制の動向、その他で気になる個別トピックについて、ゆるく紹介しています。
Diamond Handsコミュニティは国内外の関連企業から支援して頂いています。有難うございます!
スポンサーには個別に情報共有やインプットをしたり、ニュースレターやレポート上などで企業ロゴを掲載させて頂いたりしています。
それでは、早速直近2週間のトピックを紹介したいと思います。
1. 規制関連の動向
米議員、ウォレットのセルフカストディに対処する法案を提出(出典)(出典)
米上院Elizabeth Warren議員が、ウォレットのセルフカストディに対処する法案「デジタル資産アンチマネーロンダリング法」を提出しました。
この中では、「FinCENは、カストディアンおよび非ホスト型ウォレットプロバイダ、暗号通貨マイナー、バリデータ、または第三者取引の検証またはセキュリティ確保のために行動する可能性のあるその他のノード、MEV サーチャーを含む独立ネットワーク参加者およびネットワークプロトコルに対する制御を行うその他のバリデータをマネーサービス事業者として分類する規則を公布する」こととしています。
ウォレットサービスプロバイダー等を「貨幣サービス会社」として扱うようFinCENに指示するものであり、AML/KYCを求めるものと見られます。
こうした動きに対して、CoinCenterは、「暗号通貨のセルフカストディ・開発者・ノード運営者に対する違憲の攻撃であり、次のFTXを防ぐものは何もなく、ユーザーをより危険にさらすことになる」と指摘しています。
ソフトウェア開発やネットワーク上のトランザクション検証など、パブリックブロックチェーンの維持に貢献する者に、金融機関としての登録を強制している。
個人情報を特定・記録
AMLプログラム開発
ユーザーに関するレポート提出
ノンカストディアルなインフラ提供者やソフトウェア開発者を、金融サービスの監視と規制の対象として、許可制を課すことを意図している。
これらのネットワークのすべての検証者と開発者に、そのインフラのゲートと監視を強制することによって、パーミッションレスチェーンを米国人が利用できないようにされている。
この法案が成立すると、米国人が暗号通貨を利用できるのは、完全に許可され監視された環境に限られることになる。
一方で、この法案は、金融監視にのみ焦点が当てられており、FTXの破綻を招いた企業管理の問題には一切触れていない。
カストディ型暗号通貨取引所に対する規制の枠組みは必要。
しかし逆に、この法案は、デジタルアセットのセルフカストディというを事実上違法化するものであり、消費者が自らの資産を管理することを禁じ、保護するどころか危険にさらすことになる。
トピックリスト
FSBが2023年初頭に暗号通貨を管理する新しい国際ルールを発表する意向を示したとするFT報道。暗号通貨プロバイダーを「銀行と同じ基準」で拘束するもの(出典)
Ellipticによる規制アウトルックレポート。欧州MiCAが暗号通貨規制の青写真に。制裁圧力はマイニング・ミキサー・DeFiを焦点に引き続き強化。(出典)
欧州委員会、EU居住者の暗号資産トランザクションを処理するプラットフォームに対して、EUの税務当局と情報を共有することを義務付けることを提案(出典)
ドイツ当局Bafin、FTXの崩壊を受けて、暗号産業のグローバルな規制を求める意向(出典)
香港、Bitcoin先物・Ether先物に連動したETFを上場へ(出典)
タイ当局、投資家保護に向けデジタルアセットへの規制強化へ(出典)
金融庁、「事務ガイドライン(第三分冊:金融会社関係)」の一部改正(案)を公表。暗号資産交換業者への監督上の対応等について、所要の改正を行うもの(出典)
2.ビジネス関連の動向
東京電力パワーグリッドとその子会社等が仮想通貨マイニングへ(出典)
東京電力パワーグリッド社が、東京電力パワーグリッドの100%子会社であるアジャイルエナジーX社 および 先端半導体の設計・開発を手がけるTRIPLE-1の3社が、「MW2MHプロジェクトの事業化検討にかかる基本合意書」に基づく方針および精神を踏まえ、戦略的パートナーシップを構築する覚書を締結したことを発表しました。
本覚書に基づき、アジャイルエナジーX社 は、再生可能エネルギーの余剰電力と TRIPLE-1社 の先端半導体をハイブリッドさせた「分散型データセンター」を日本各地に展開させていくことによって、カーボンニュートラル社会の実現と電力系統混雑の緩和に貢献していくとしています。(出典)
出典:東京電力パワーグリッド 他 プレスリリース
ここで、「MW2MH」というは、「MegaWatt To MegaHash」の略称であり、電力(メガワット)をデジタル価値(メガハッシュ)に転換するという意味とのことです。
9月21日付けでアジャイルエナジーX社の代表取締役社長に就任した、東京電力パワーグリッド社の経営企画室兼技術統括室兼事業開発室の立岩健二氏が、東電グループの将来経営戦略の一環として、「分散コンピューティングを用いた、電力・デジタル価値直接変換による、電力系統最適化と再エネ最大活用プロジェクト:MegaWatt To MegaHash (MW2MH)」を提案したものとされます。
昨年2021年6月に開催された「原子力人材育成ネットワーク原子力国内人材の国際化分科会オンライン講演会」において、「「アンチ・フラジャイル」なキャリアと日の丸原子力「捲土重来」戦略」と題して講演する中でも、「MegaWatt To MegaHash (MW2MH)」構想の例として、「離島 × 小型モジュール炉 × 仮想通貨マイニング × ワイヤレス電力伝送」を挙げています。(出典)
出典:原子力人材育成ネットワーク 原子力国内人材の国際化分科会 オンライン講演会資料
なお、東京電力パワーグリッドの100%子会社である「アジャイルエナジーX」社は、再生可能エネルギーで発電された電力で先端技術「分散コンピューティング」システムを稼働させ、デジタル価値や環境価値を生成・提供することなどで、再エネのさらなる導入を促進していくべく、今年10月1日より営業開始しています。(出典)
9月21日に発表された東京電力パワーグリッド社のリリースによれば、アジャイルエナジーX社の取り組み背景は以下のようになっています。
天候で発電量が変動する太陽光などの再エネ(変動性再エネ)は、電力需給バランスの維持のために出力制御や系統制約を受けやすい傾向があり、有効活用できない余剰電力が生じている。
近年、このような再エネの出力制御量が全国的に増大傾向にあるほか、系統混雑が原因で再エネ連系が困難な状況。
このため、国内には現在の発電電力量の最大2倍のポテンシャルが存在するとの試算もある中で、現状は、このエネルギー資源を十分に活用しきれていない。
アジャイルエナジーXでは、この状況を打開し再エネ導入量を拡大させるために、電力需給の変化に呼応し電力需要を柔軟に創出することで、再エネの出力制御や系統制約を緩和するソリューションを全国に提供していく。
電力需要創出の具体的方法は、AI/機械学習やゲノム解析、CGレンダリング、仮想通貨マイニングなどに用いられている多数のコンピューターを、ネットワークを介して繋ぎ膨大な演算を同時並行的に実行可能とする「分散コンピューティング」とされ、仮想通貨マイニングに言及されています。
さらに、同日リリースされている「「株式会社アジャイルエナジー Xエックス」についてによれば、以下に列挙するように、「仮想通貨マイニングが電力を大量に消費するという特性を逆手に取って、カーボンニュートラル促進につなげる」旨が謳われています。(出典)
分散コンピューティングの中でも特に仮想通貨マイニングは、直接の顧客がいないという特異な事業形態であるために、計算の開始・停止を自由に制御可能であることから、需要創出の柔軟性が極めて高い。
大容量の通信回線が不要であることや、空調設備等の付帯設備は簡素なものしか必要としないなど、設置の柔軟性も高い。
一方、世界規模での仮想通貨マイニングの拡大による電力消費と環境負荷の増大を指摘する声もある。
本スキームは、電力を大量に消費するコンピューターの特性を逆手に取り、再エネ導入の拡大を妨げている課題の解決に利用することで、カーボンニュートラル促進につなげるという、逆転の発想に基づくものである。
出典:プレスリリース「株式会社アジャイルエナジー Xエックス」について
また、11月7日に開催された、経産省「第1回 次世代の分散型電力システムに関する検討会」において、東京電力パワーグリッド社の岡本取締役副社長執行役員が発表した資料「カーボンニュートラルかつレジリエントな豊かな地域の実現に向けて~地域の分散エネルギーの有効活用策~」でも、P14で仮想通貨マイニングの有望性について言及されています。(出典)
分散コンピューティングを利用した系統混雑緩和にむけた、分散コンピューティングを用いた柔軟な電力需要の創出において、「マネタイズが容易かつ蓄電池等と異なる特性(需要を創出)を有するDER(分散エネルギーリソース)として、分散コンピューティングに着目」し、中でも「現存する技術で最も柔軟性に富む電力需要装置である、仮想通貨マイニングが有望」である旨、示しています。
加えて、同検討会の議事録をみると、同社が 「仮想通貨マイニングによる配電系統の潮流制御」について、PoCとして実装に取り組んでいたことも挙げられています。(出典)
Bitcoin Magazineでも、日本最大の電力会社が余剰電力でBitcoinのマイニング事業展開と伝えられるなど(出典)、国外でも注目が集まっています。関連トピックとして、前回ご紹介したように、Bitcoinマイニングが冬場の電力ピーク需要を満たす上で抑制効果があるという、米送電網運営会社の調査結果もあることから、今後の取り組みに注目したいと思います。
スイスLuganoの取り組みに学ぶBitcoinアドプションの要諦(出典)
この秋にPlan ₿ Forumも開催されたスイスLuganoにおける取り組みについて、ブログ記事「The State of Bitcoin Adoption in Lugano — December 2022」が公開されています。その一部を抜粋して紹介します。
トップダウン・アプローチの推進はBitcoinのアンチテーゼであり、ボトムアップの必要性を主張しています。
エルサルバドルにおいて普及率が伸びていない背景として、「Chivoの使いにくさ」「教育水準がまだ低いこと」「ほとんどの人が政府を信頼していないこと」を挙げられる。
エルサルバドルはBitcoinを法定通貨にした後、政府はBitcoinの必要性に関する説明・教育に対して、大きな努力をふりむけていない。
これに対して、Luganoのアプローチは、使いやすいソリューションを提供した上で、マーチャント向けにイベントやワークショップを開催して技術の仕組みを説明し、一般の人々への啓蒙活動も行っており、その結果、マーチャントがLightning Netoworkを利用している。
制度的な導入は、おそらくサトシ・ナカモトがBitcoinを作ったときに考えていたことではないだろう。
資金を使いたがらない「ビットコイナー」がまだ大勢いることを挙げ、Bitcoinを成功させるためにはBitcoinを使う必要があり、これは自動的に起こることではないとし、Bictcoinの普及にむけて率先して市中で使っていくことを推奨しています。
積み立てている資金を使う必要はなく、200ドルのBitcoinを買った上で、スマホのウォレットに入れておいて、それを使えばいい。
トピックリスト
JPMorgan Chase、「米国家庭における暗号資産利用の動態と人口統計学的特徴」レポートを発表。(出典)
男性・アジア人・高所得の若年層ほど、暗号資産の利用が進んでいる他、低所得者は高所得者より高い価格で購入した可能性が高いと指
Strike、アフリカへの即時かつ低コストの送金を可能にする「Send Globally」機能を発表。(出典)
米国のStrikeユーザーが利用でき、当初はナイジェリア・ケニア・ガーナをカバー
アフリカの決済プラットフォームBitnobと提携
支払いは即座に現地通貨に変換された上で、受取人の口座に直接振り込まれるとのこと
様子をみながら、少しずつ発信していければと思いますので、よろしくお願いします!