米テキサス州のマスタープランがマイニングやLightningノード運営に言及/テキサス州の送電網運営会社はマイニングの電力抑制効果に言及
Diamond Hands Magazine Vol.35
th_satです。
Diamond Hands Magazine、ビットコインを巡るビジネス面・規制面の動向のまとめです。
ここまで過去4回にわたり(10月13日号、10月23日、11月6日号、11月20日号)、ビットコインをめぐるビジネス面の動向(ペイメントや社会生活での利用や、金融機関での金融商品としての取り扱いなど)、規制の動向、その他で気になる個別トピックについて、ゆるく紹介しています。
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それでは、早速直近2週間のトピックを紹介したいと思います。
1. 規制関連の動向
米テキサス州の作業部会、暗号通貨産業拡大にむけたマスタープラン案でBitcoinマイニングやLightning Networkノード運営に言及(出典)
エネルギーの節では、「自家消費されている天然ガスに対する分離税の減免を創設すべき(第12項)」とするともに、「電力購入の税負担を軽減することによってBitcoinマイニングのような制御可能負荷をインセンティブとすべき(第13項)」であることを挙げています。
ファイナンスの節では、「Bitcoinのように時価総額の大きい確立した暗号通貨を、テキサス州の公認投資対象として成文化することを検討すべき(第15項)」であることとあわせ、「Lightning Networkノードを運営しても、事業体や個人をマネーサービス事業者にできない旨を明確化すべき(第16項)」であること、および「暗号通貨レンディングモデルに関する適切な消費者保護を検討すべき(第17項)」であることを挙げています。
欧州ECB、Bitcoinの立ち位置について考察するブログ記事を発表(出典)
大手暗号取引所FTXの破綻により暗号資産市場が大きく混乱する中、欧州中銀ECBがブログの中で、Bitcoinの現状について考察する記事を発表しました。
大きく「①Bitcoinは法的取引に使われることはほとんどない」「②規制が承認と誤解されかねない」および「③Bitcoinのプロモーションは銀行にとってレピュテーション・リスクを伴う」という点を主張しており、以下に概要を紹介します。
①Bitcoinは法的取引に使われることはほとんどない
Bitcoinの実際の取引は、面倒で時間がかかり、費用もかかる。
Bitcoinは、法的な現実世界の取引にかなりの程度として使用されたことがない。
②規制が承認と誤解されかねない
暗号資産のリスクは、規制当局の間でも議論の余地がなく、FSBは、暗号資産と市場がもたらすリスクに見合った効果的な規制と監督を受けるよう呼びかけている。
現在の暗号通貨の規制は、誤解によって形成されている部分がある。イノベーションには何としてもスペースを与えなければならないという信念が頑固に残っている。BitcoinはDLT/ブロックチェーンという新しい技術に基づいているため、高い変革の可能性を持っていると思われるが、これらの技術は、これまで社会に対して限られた価値しか生み出してこなかったし、有望な技術の利用はその技術に基づく製品の付加価値の十分な条件ではない。
規制による制裁は、顧客がBitcoinにアクセスすることを容易にすべく、従来の金融業界を誘惑してきたと思われる。金融機関の参入は、Bitcoinへの投資が健全であることを小口投資家に示唆してしまっている。
さらに、Bitcoinのマイニングは、オーストリアに匹敵する電力を年間消費すると推定されるほか、Bitcoinシステム全体ではオランダ全体と同量の電子廃棄物が発生しているといった、前代未聞の汚染者であることも注目すべき。
③Bitcoinのプロモーションは銀行にとってレピュテーション・リスクを伴う
Bitcoinは決済システムとしても投資形態としても適切ではないため、合法化されるべきではない。
同様に、金融業界も、Bitcoin投資を促進することによる長期的なダメージに注意すべき。
顧客関係への悪影響や業界全体への風評被害は、Bitcoin投資家がさらなる損失を出すと甚大なものになる可能性がある。
エルサルバドル、「デジタルアセットの発行に関する法律」草案を議会に提出(出典)
エルサルバドルで行われる公募の発行で使用されるデジタルアセットのあらゆる所有権移転オペレーションについて、法的確実性を提供する法的枠組みを確立するものです。デジタル資産市場の効率的な発展を促進し、取得者の利益を保護するために、発行者、デジタル資産サービスプロバイダー、公募のプロセスでオペレーションを行う他の参加者について、要件と義務を規定するものとしています。
前文では、以下のポイントが述べられています。
エルサルバドルは世界中の重要技術企業から海外直接投資の誘致に対抗できるような革新策を採用しなければならない。
公共および民間セクター団体がデジタル資産の公募を行うことを可能にするメカニズムを構築することが重要。
一般市民からの資源で資金を調達する上では、投資家の利益を保護するために明確な法的ルールを確立する必要がある。
そのため、デジタル資産の公募の発行およびデジタル資産サービスの提供を規制する規則を発行することが不可欠。
第3条では、デジタルアセットの適用範囲として、分散型登録技術システムまたは類似技術を用いて電子的に保存および転送することができるデジタル表象物としています。また、デジタルアセットは有価証券とはみなされないため、商法、証券市場法など有価証券に関する規定は、適用されないとのことです。
第4条では、除外項目として、中銀デジタル通貨などには適用されない旨が示されています。
第13条・第14条では、エルサルバドルおよび自治機関が行うデジタル資産の公募による資金、その公募からの収益に関する管理・保護・投資に責任を負う機関として、「Bitcoin Funds Management Agency」について言及している模様です。
米NY州知事、炭素系電源で稼働するBitcoinマイニング事業を禁止する法律に署名(出典)
今後2年間にわたって、PoWマイニング企業が100%再生可能エネルギーを使用しない限り、拡大・更新が認められない他、新規参入も認められなくなるとのことです。
2.ビジネス関連の動向
米テキサス州の送電網運営会社、Bitcoinマイニングに電力抑制効果があるとするレポートを発表(出典)
米テキサス州の送電網運営会社ERCOTが発表した、冬場の設備発電能力の妥当性を評価するレポートによると、Bitcoinマイニングが冬場の電力ピーク需要を満たす上で、1.7GWの抑制効果があるとのことです。
これは、エネルギー貯蔵(0.9GW)、太陽光(1.5GW)、水力(0.4GW)よりも多くの容量であり、Bitcoinマイニングがテキサス州の送電網に利益をもたらす可能性があるとされます。
テキサス州は2021年に異常気象に見舞われ、送電網に負担がかかることで被害がもたらされましたが、Bitcoinマイニングは、こうした異常気象の際に送電網が嵐を切り抜けるための容量バッファーを提供できることが期待されるとしています。
Bitcoinネットワークのゼロエミッション(太陽光・水力・地熱など)比率について(出典)
オングリッド型(電力網を用いてマイニング事業者)のみでなく、オフグリッド型(自社で発電所を保有したり、発電機に配管された排気メタンなど電力源を用いるマイニング事業者)も考慮してした算定モデルが紹介されています。
Bitcoinネットワーク全体では52.2%がゼロエミッションエネルギーを利用しており、Bitcoinネットワークは主たるエネルギー源として石炭を用いない数少ない産業の一つであるとしています。
52.8%がオフグリッド型であり、その65.5%がゼロエミッションを利用
オングリッド型ではゼロエミッション比率は37.5%
Stripe、開発者向けに、プラットフォームに直接埋め込み可能なウィジェット「Fiat-to-Crypto onramp」を発表。Bitcoin・暗号通貨への法定通貨のオンランプを可能に(出典)
従来、エンドユーザーをオンチェーンとのインターフェイスに必要な暗号通貨をウォレットに入金してもらうことが困難であり、開発者は、不正行為対策・KYC要件をクリアした上で、ユーザーがアプリケーションを使用できるよう、シームレスで高い換金性を持つ決済体験を提供する必要がありました。
このような複雑さを解消するために、Stripeが、カスタマイズ可能なウィジェット「Fiat-to-Crypto onramp」を構築したものです。
開発者はDEX・NFTプラットフォーム・ウォレット および dAppに直接埋め込むことができるとのことです。
具体的には、KYC・決済・詐欺対策・コンプライアンスはStripeが処理するため、複数のサードパーティサービスを統合する必要なしに、10行ほどのコードで統合可能になるとしています。
StripeのFiat-to-cryptoオンランプは、Audius・Magic Eden・Argentなどのパートナーと共に実用化されているとのことです。
Lightningの成熟について(出典)
より多くの様々な分野の専門家がLightningを発見した上で、自身のソリューションに組み込むことによって、より多くのユーザーが、Lightningについて知ることすら無しに、Lightningを利用できるようになると主張しています。
トピックリスト
Bitcoinのフローとソースを検出する技術の改善、および制裁と市場規制の強化を原因として、ランサムウェアの交渉や支払い手段としてのBitcoinの重要性が下がる、との見方(出典)
暗号通貨が制裁リスクへの代替ヘッジ資産として機能する可能性に関するリサーチペーパー(出典)
G20バリ島首脳宣言、第31項で「暗号資産レポーーティングフレームワーク及び共通報告基準の改正を歓迎する旨」に言及(出典)
IMF、アフリカで拡大する暗号通貨市場はより良い規制が必要としている旨のブログ記事を発表(出典)
インターディーラーブローカーTP ICAP、英FCAにデジタル資産プロバイダーとして登録(出典)
グアテマラ「Bitcoin Lake」におけるBitcoin受け入れの様子(出典)
様子をみながら、少しずつ発信していければと思いますので、よろしくお願いします!