はじめまして!th_satです。
Kojiさんとは、2015年からビットコイン研究所のニュースレターをご一緒させていただいたり(もはや誰も覚えてないと思いますが、2018年まで毎週)ゆるく絡ませて頂いています。
ビットコインをめぐるビジネス面の動向(ペイメントや社会生活での利用や、金融機関での金融商品としての取り扱いなど)、規制の動向、その他で気になる個別トピックについて、月次くらいでゆるく紹介します。
初回となる今回は、9月以降の1ヶ月ほどの動向について、振り返ってみたいと思います。
(週に一度、個人として、暗号資産関連の技術・ビジネス・規制動向をまとめて発信しており、今回のメルマガは、その内容をもとに月次程度のタイミングで圧縮してお伝えするものです。よろしければ、こちらも登録頂けると、うれしいです!)
Diamond Handsコミュニティは国内外の関連企業から支援してもらっています。ありがとうございます!
スポンサーには個別に情報共有やインプットをしたり、ニュースレターやレポート上などで企業ロゴを掲載させてもらっています。
1. 規制関連の動向
1.1 米国
1.1.1 政府(ホワイトハウス・財務省など)
米ホワイトハウスが、「米国における暗号資産の気候およびエネルギーへの影響」ペーパーを発表しました。ざっと概要は以下のとおりです。
暗号資産技術の中には、資産の生成・所有・交換に相当量の電力を必要とするものがある。
暗号資産は、米国の炭素汚染ゼロを達成するための取り組みを阻害する可能性がある。
暗号資産による温室効果ガス排出などの環境負荷について
2019年9月から2021年8月まで、Bitcoinが使用する電力の平均30%は、水力発電、太陽光発電、風力発電、その他の再生可能資源から供給されていた。
この期間、中国の水力発電がBitcoin用の再生可能電力の大部分を供給していた為、2021年9月に中国が暗号資産の採掘を禁止した後、Bitcoinに使用される再生可能エネルギーは減少した。
その後、米国での暗号資産マイニング活動が増え、今では世界のBitcoinの活動の1/3以上を米国で占めている。
暗号資産マイニングは、メタンと再生可能エネルギーで駆動できる
現在、暗号資産企業は、メタンによる発電を利用する方法を模索しており、米国の気候目標達成に役立つ可能性が高い。
グリッド電力を使用する暗号資産マイニングで、温室効果ガス排出量をゼロにする方法として、次の2つを挙げている。
採掘のための新しいクリーンな電力源を建設または契約すること。
既存の再生可能な電力を使用すること。
なお、このホワイトハウスの報告書に対して、Nic Carterがコメント記事を発表しています。
1.1.2 当局(SEC・CFTCおよびFBIなど)
米SECのGary Gensler委員長が、クリプト市場についてスピーチを発表しました。
クリプト市場は証券取引法と相容れないものはなく、投資家保護は、基礎となる技術に関係なく同じように関連性があるとして、クリプトトークンやクリプト仲介業者について説明している。
クリプトトークンについては、市場に存在する約1万個のトークンのうち、大半は証券であるとした上で、トークンの中には、証券の定義に当てはまらない「非証券クリプトトークン」は、市場価値の大部分を占めるものの、ごく少数のトークンである可能性が高いの見方。
Bitcoinについては、最初の暗号トークンとして、貴金属のように取引され、投機的で希少価値が高く且つデジタルなstore of valueとして「デジタルゴールド」と呼ばれることがあるとしている。
その上で、ポイントは、クリプト証券トークン、非証券クリプトトークン、または別の商品であるかを判断する際に、ラベルではなく、商品の事実と状況を見ることが重要であると強調。
また、仲介業者については、CFTCが非証券クリプトトークンや仲介業者を監督・規制する権限を強化する必要がある限り、クリプト証券トークンや仲介業者の規制をSECで維持しながら、目標達成にむけ議会と協力することを期待するとの見方。
最後に、この分野で起業しようとしている人たちに対して、伝統的な金融機関であれ、クリプトネイティブ企業であれ、最初からコンプライアンスについて当局と協力する方が、はるかにコストがかからないのでそうしてほしい、と結んでいる。
Michael J. Saylor氏が、10年以上コロンビア特別区に居住し、何億ドルもの所得を得ながら一度もDCの所得税を納めたことがないとして提訴されたとのことです。
MicroStrategyも被告として名を連ねており、同社がSaylor氏の合法的な脱税を手助けするために共謀したと主張されています。
1.2 欧州
1.2.1 EU
欧州理事会が、暗号資産市場(MiCA:Markets in Crypto-Assets)規制を可決しました。
欧州委員会が、対ロシア制裁で暗号資産に関する禁止事項を強化しました。
金額にかかわらず、すべての暗号資産のウォレット、口座、または保管サービスが禁止される(以前は1万ユーロまで許可)。
1.2.2 各国
英国議会に「経済犯罪・企業透明化法案」が提出されました。
マネーロンダリングに対抗した「犯罪収益法」を強化することを通じて、法執行機関による「暗号資産の押収、凍結、回収」を「より容易かつ迅速に」行うことが可能に。
1.3 アジア
シンガポールMASが、「デジタルアセットイノベーションにYes、暗号通貨投機にNo」との見方を示しています。
MASは暗号通貨へのリテール投資に対して強い警告を発しており、暗号通貨へのリテールアクセスを制限するため、ますます強力な措置を講じているとの言及。
MASは、デジタル資産のエコシステムに大きな可能性を見出し積極的に推進している一方、暗号通貨の投機は強く阻止し制限しようとしているとの旨。
1.4 日本
金融庁が、「2022事務年度金融行政方針」で「Web3.0 等の推進に向けたデジタルマネーや暗号資産等に係る取組み」について言及しています。
仮想通貨のマネロン監視へむけて、顧客情報の共有義務化をはかるべく、臨時国会に法改正案を提出する旨、報道されています。
2.ビジネス関連の動向
2.1 アドプション
2.1.1 ペイメント
MicroStrategyでは、大企業がLightning Networkに参加するためのソリューションとして、①Lightningウォレット・②Lightningサーバ、③認証といったエンタープライズ向けアプリケーションを開発しているとのことです。
MicroStrategyによる、Bitcoin Lightningソフトウェアエンジニアの求人が発表されています。
企業向けに「Lightning NetworkベースのSaaSプラットフォーム」を構築し、サイバーセキュリティの課題に対する革新的ソリューションを提供することによって、新しいeコマースのユースケースを目指すとのこと。
Stripeが、フリーランサーがUSDC経由で資金を受け取ることを可能にするとのことです。
USDCの追加により、Stripeのクロスボーダー決済は110カ国以上、44億人以上となり、世界人口の過半数を占めるようになる。
スペインの暗号通貨取引所Eurocoinpayが、Mastercardと提携し暗号通貨ベースのデビットカードを提供するとのことです。
スペイン最大の通信会社Telefónicaが、Bit2meと提携して、オンライン技術マーケットプレイス上でのBitcoinと暗号通貨による支払いを受け入れるとのことです。
Strikeが、シリーズB資金調達ラウンドで$80mを調達しました。
Ten31が主導し、ワシントン大学セントルイス校、ワイオミング大学、その他の投資家が加わったとのこと。
Visaが、FTXと提携して、ラテンアメリカ・アジア・ヨーロッパを中心とした40カ国でデビットカードを提供するとのことです。
2.1.2 投資関連
Bitcoinの初期から暗号シーンに影響を与えてきた、KrakenのJesse Powell CEOが退任を発表しました。
Huobi Globalが、香港のCapital Managementによる買収に合意したと発表しています。
Telegramにおいて、Wallet Bot上でユーザー同士が暗号通貨を交換可能になるとのことです。
Telegramアプリを通じてユーザー間で暗号通貨の販売が可能になり、取引所サービスが各取引の保証人として機能するようになる。
2.1.3 マイニング
Bitcoinマイニングについて、Arcane Researchが2つのレポートを発表しています。
Bitcoinマイニングがエネルギーシステムに望ましい影響を与え、エネルギー生産の経済性を向上させることができる分野として、4つあげている。
「電力グリッドの強化」「再生可能エネルギーの経済性向上」「天然ガスのフレアリングの抑制」「廃熱の再利用」
原因は、①価格の低下、②マイニング難易度の急上昇(difficultyが過去最高値に達しているため、ブロック生成速度が1時間あたり6.28ブロックから5.9ブロックに減速)の組み合わせ。
損益分岐点価格は、人口密度の高い地域における現在のエネルギースポット価格を大きく下回っており、マイニングはエネルギー源が不足している地域でのみ採算が合う状態。
上述のようにマイニング収入が大幅に減少している中にあって、Bitcoinのマイニング業者にインフラを提供するCompute North社が、連邦破産法第11条の適用を申請しています。
Grayscaleが、Bitcoinマイニング機器を購入するためのエンティティ「Grayscale Digital Infrastructure Opportunities LLC(GDIO)」を設立し、マイニング機器によって得られたBitcoinを売却して利益を得るとのことです。
2.1.4 社会生活
米コロラド州で、米国で初めてBitcoinを税金支払いで利用可能になるとのことです。
なお「暗号通貨を使用して支払うことができるのはPayPalパーソナルアカウントのみ」としています。
暗号通貨による州税支払いオプションは、個人所得と企業所得を含むすべての州税請求書に提供される予定です。
アルゼンチンのメンドーサ税務局が、暗号通貨で税金や手数料を支払可能とするガイダンスを発表しています。
エルサルバドルのBitcoin債について、今年後半までさらに延期との報道がされました。
エルサルバドルでのBitcoin法定通貨化1年をうけた日本経済新聞記事
ロシアでは、クロスボーダー決済における暗号通貨の使用を合法的な支払い方法として有効にせずに続けることは「不可能」であることで、中銀と財務省が合意したと、タス通信が伝えている模様です。
スイスのLuganoにあるマクドナルドで、Bitcoinを使った支払いが可能となりました。
スイスLuganoで開催される「Plan B Forum」(10/28-10/29)
2.1.5 RegTech
Mastercardが、詐欺を起こしやすい暗号取引所を銀行が特定した上で、取引を遮断するのに役立つ「Crypto Secure」をローンチするとのことです。
CipherTraceによって提供され、決済ネットワーク上の暗号取引所に関連する犯罪リスクを判断するもの。
2.1.6 その他のトピック
Blockの子会社であるtbdが、Web5の重要なコンポーネントである Self Sovereign Identity のビジョンについて記事を発表しています。
Web5むけに使用される標準のリストを紹介。
Web5のSSIスタックの基礎を構成する上で最重要な15の仕様のみを掲載したもの。
クレデンシャルに関するワーキンググループを立ち上げ、これはKnow Your Customer (KYC)/Know Your Business KYB)、IDV、リスクスコアリングなど、分散型取引で使われるあらゆるクレデンシャルを対象としている。
2023年1月1日までのゴールとして、SSI SDK および SSI Service の最初のベータリリースの発表などを掲げている。
SSI SDKは、DIDsおよびVCなどSSIに関連する一連の標準をカプセル化したもの。
SSI Serviceは、SSI SDKをラップしたJSON-APIウェブサービスであり、Web5上でユーザーを中心としたインタラクションを容易にするもの。
同じくtbdは、クロスボーダー送金からstablecoinのセルフカストディまで、グローバルなユースケースを強化すべく、Circleとの提携を発表しています(ツイート)。
BlockのtbdexプロトコルとWeb5分散IDプラットフォーム上に構築できるユースケースを視野に入れUSDCをサポートへ。
2.2 金融機関
2.2.1 グローバル
バーゼル銀行監督委員会が「暗号資産に対する銀行のエクスポージャー」レポートを発表しています。
暗号資産エクスポージャーは、暗号資産エクスポージャーを報告している銀行のサンプルの加重平均ベースでエクスポージャー全体の0.14%に過ぎない。
バーゼルIIIモニタリング演習に含まれる銀行のサンプル全体(すなわち、暗号資産エクスポージャーを報告していない銀行も)を考慮すると、その額はエクスポージャー全体の0.01%に縮小する。
暗号資産エクスポージャーは報告対象銀行間で不均等に分布しており、その中で2行が暗号資産エクスポージャー全体の半分以上を占め、さらに4行が残りのエクスポージャーの40%弱を占めている。
報告された暗号資産エクスポージャーは、主にBitcoin(31%)、Ether(22%)、およびBitcoinまたはEtherを原資産とした商品(それぞれ25%、10%)で構成されており、これらで報告されたエクスポージャーの約90%を占めている。
報告されたエクスポージャーは、「①暗号資産の保有と貸付」「②清算、顧客及びマーケットメイキング」「カストディ/ウォレット/保険およびその他のサービス」に区分され、①②で大半を占める。
2.2.2 米国
Charles Schwab、Citadel Securities、Fidelity Digital Assets℠、Paradigm、Sequoia Capital、Virtu Financialなどが、デジタルアセット取引所「EDX Markets (EDXM) 」の設立を発表しました。
米Nasdaqが、機関投資家向けBitcoinおよび暗号通貨のカストディサービスを開始しました。
2.2.3 欧州
Credit Suisseが、31mスイスフランのデジタルアセットの顧客資産保有の旨を開示しています。
2.2.4 アジア
シンガポールDBS銀が、認定投資家である富裕層顧客向けにDBS digibankアプリで自己勘定による暗号資産取引機能を開始しています。
DBS digibankを通じて、DBS Digital Exchange(DDEx)の暗号通貨を自分の都合に合わせて取引可能に。
従来、DDExでの暗号資産取引は、企業や機関投資家・ファミリーオフィス・DBSプライベートバンクとDBS Treasures Private Clientの顧客のみに限定されていた。
これを、DBS Treasuresセグメントの認定投資家も利用できるようにするもので、シンガポールの推定10万人の投資家がこの基準を満たし、DBSのデジタル資産エコシステムが提供するサービスを利用できるとのこと。
まずは様子をみながら、少しずつ発信していければと思いますので、よろしくお願いします!