th_satです。
Diamond Hands Magazine、ビットコインを巡るビジネス面・規制面の動向のまとめです。
前々号・前号から、ビットコインをめぐるビジネス面の動向(ペイメントや社会生活での利用や、金融機関での金融商品としての取り扱いなど)、規制の動向、その他で気になる個別トピックについて、ゆるく紹介しています。
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それでは、早速直近2週間のトピックを紹介したいと思います。
1. 規制関連の動向
香港、仮想資産の発展に関する政府方針声明を発表(出典)
10月31日、香港政府が、香港における仮想資産の発展に関する政策声明を発表しました。この声明は、香港における仮想資産のエコシステムの発展に向けた政府の政策スタンスとアプローチを示すものであるとのことです。
香港は国際金融センターとして、仮想資産ビジネスに従事する革新的なグローバル・コミュニティに対してオープンで包括的であるとした上で、香港政府は金融規制当局と連携し、仮想資産産業の持続可能で責任ある発展を促進するための環境整備に取り組んでいるとしています。
仮想資産の急速な発展がもたらす金融革新と技術開発を世界的にさらに受け入れるための強固な基盤が整ったとし、仮想資産サービス・プロバイダーに対する新たなライセンス制度の準備作業を進めるとともに、世界の仮想資産取引所と協力しながら、新たなビジネスチャンスに向けて香港に足を踏み入れるよう呼びかける用意がある旨を述べています。
さらに、個人投資家が仮想資産に適切にアクセスできるようにする方法について公開協議を行う予定であり、仮想資産ETFの可能性に門戸を開くとしています。
具体的には、新たなライセンス制度のもとで個人投資家が仮想資産に適切にアクセスできるようにする方法について公開協議を行う予定であり、他の市場の個人投資家も、上場商品などの仮想資産関連商品を通じて仮想資産にアクセスすることに留意している旨を述べています(添付画像:PDFの第7項を参照)。
とはいえ、個人投資家のリスクには慎重な見方を示しており、投資家教育を強化するとともに、適切な規制体制を確保していくとのことです。
国家安全保障のための戦略的資産としてのBitcoin(出典)
米国財務省によるデジタルアセットの国家安全保障への影響に関するパブリックコメントを受けて(意見募集のRFCはこちら)、BPI(Bitcoin Policy Institute)がレポート「国家安全保障のための戦略的資産としてのBitcoin」を発表しました。
個人に力を与えるオープンなデジタルアセットは、自由の大義を推進するほか、権威主義の敵対者の目的を阻止し、さらに、国家安全保障の中核的な利益を推進することに役立つと主張しています。
Bitcoinのようなピアツーピア・システムは、米国が築いた自律性、自発的な協力、自由主義的価値の本質を表している。
政治と経済のデジタル化が進む中、米国が勝つためには、敵の閉じたシステムを無力化する、より強力なテクノロジーを推進するという伝統を継続しなければならない。
Bitcoinの世界的な普及は、抑圧的な国家に対して個人を力づけるものであり、疎外された人々が自己決定するためのツールとなる。
これらを踏まえ、「米国はこれらの技術が持つ長期的な可能性を戦略的に捉え、我が国と世界におけるこれらの技術の繁栄を促進するよう努力すべきである」、と結んでいます。
米SEC委員長のSIFMA年次総会での講演(出典)
米国証券業金融市場協会(SIFMA)の年次総会において、SECのGary Gensler委員長が講演を行いました。その中で、暗号資産マーケットにおける集中化について、警戒感を示しています。
「インターネットは金融を含む多くの情報を民主化し、より低コストのブローカーを促進したが、株式マーケットメーカーの集中化が進んでいる」と述べた上で、「非中央集権を標榜してきたクリプト市場でも仲介業者への中央集権化が進んでいる」点を指摘しています。
これらを踏まえ、「集中化する可能性がある分野には、常に警戒を怠らないようにしなければならない」旨を主張しています。
米CFTCコミッショナーのスピーチ(出典)
国際スワップ・デリバティブ協会のフォーラムに先立ち、CFTCのコミッショナーであるChristy Goldsmith Romero氏が発言を発表しました。
「暗号資産が伝統的な金融システムと同様の金融安定リスクを多く抱えていること、2008年と並行するテーマがあること、そしてそのリスクがシステミックになる可能性があること」を述べた上で、「新たな資産には新たなリスクが適用され、金融安定化リスクが増大する可能性がある」と主張しています。
スイス金融市場監督局(FINMA)、AML法令を改正(出典)
スイス金融市場監督局(FINMA)が、アンチ・マネー・ローンダリングに関する法令を一部改正しました。
リスクと最近の悪用事例を考慮し、30日以内に(1日ごとではなく)リンクした取引について1000スイスフランの閾値を超えないようにするための技術的措置が必要であるとの見方を示しています。
この義務は、仮想通貨を現金またはその他の匿名支払手段と交換する取引にのみ適用されるとのことです。
なお、本件は、2023年1月1日に施行される予定とされています。
2.ビジネス関連の動向
スイスLugano市で、Plan ₿ Forumが開催
スイスのLugano市において、10月28日〜29日に、第1回Plan ₿ Forumが開催されました。
スイスでは、Crypto Valleyとして北部のZugが有名ですが、スイス南部にあるイタリア語圏のTicino州にある都市Luganoでも、Bitcoinによる公共料金・税金支払いを受け入れるなど、Bitcoinの受け入れに向けた積極的な姿勢をアピールしています(出典)。たとえば、たとえば、Luganoにあるマクドナルドでは、Bitcoinを使って支払い可能になるなどしています。
また、今年7月には、「PlanB Summer School」が開講されました。
Luganoが進めるPlan ₿は、Lugano市とTether社が共同で、市の金融インフラを変革する基盤として、Bitcoin技術の利用を加速・活用することを目的としています(出典)。
このPlan ₿ Forumのプログラムは、こちらでご覧になれます。また、アーカイブ動画も公開されています。
今回、スイスLugano市は、エルサルバドルとの間で、二国間商工会議所を設立することが発表されました。
なお、スイスLuganoにおいてBitcoinを受け入れている企業を記した「Plan ₿ map」によると、65のマーチャントがBitcoin支払いを受け入れているとのことです。(出典1、出典2)
エルサルバドルのホセ・シメオン・カニャス中米大学、法定通貨としてのBitcoin承認後 1 年間の意見収集結果を発表(出典)
ホセ・シメオン・カニャス中米大学の大学世論研究所において、Bitcoinを国の法定通貨として承認した法律の発効後 1 年間のBitcoinの実装に関する意見収集を目的とした大規模な学術研究が実施されました。
調査は、参加に同意したサルバドール人の自宅を直接訪問してフェイス・トゥ・フェイスで行われ、有効回答者数は1,269名となっています。
「現在エルサルバドルが抱えている大きな問題は何か」という問いに対して、上位の回答は経済(28.1%)・失業率(13.2%)・犯罪率(11%)となっています。
過去3ヶ月間のサルバドール人の家庭の経済状況については、改善された(6.9%)・従来通り (60.6%)・悪化した(32.5%)となっています。
Bitcoinの市民評価は、10点満点中4.61点となっており、この評価は、回答者の環境や属性によって以下のような差異が見られます。
男性(5.07)、女性(4.21)
家庭の経済環境が改善された層(6.34)、従来どおりとした層(5.00)、悪化した層(3.52)
年齢:18歳-25歳(5.38)、26歳-40歳(4.55)、41歳-55歳(4.36)、56歳以上(4.09)
教育レベル:なし(3.39)、初等(4.28)、基本(4.51)、バカロレア(4.79)、技術系または大学(5.01)
Bitcoinの導入に対する個別の評価については、以下のとおりとなっています。
Bitcoinの採用状況
採用済み(38.7%)、不採用(61.3%)
商品やサービスの購入や支払いにBitcoinを使用したことがあるか
使用している(24.4%)・使用したことがない(75.6%)
政府はBitcoinに公金を使い続けるべきか
はい(14.9%)、いいえ(77.1%)
Bitcoinの導入は成功だったのか失敗だったのか
成功(16.5%)、失敗(65.5%)
なお、この研究とは別途で、Bloombergが、エルサルバドルのBitcoin「革命」が惨憺たる結果に終わっている、とする記事を発表しています。
Fidelity Digital Assets、機関投資家のデジタルアセット投資サーベイを発表(出典)
FA(73%)・富裕層(82%)・クリプトヘッジファンドまたはVC(87%)がデジタル資産に投資している一方、従来型ヘッジファンド(7%)・寄付財団(6%)・年金(5%)では限定的であるとのことです。
Grayscale Investments、米国人が経済と暗号通貨をどう見ているかに関する調査結果を発表(出典)
調査対象となった米国人の半数以上(53%)が、「暗号通貨は金融の未来」であることに同意し、44%の米国人が、「将来的に投資ポートフォリオの一部として暗号通貨を持つ」としています。
BNY Mellon、機関投資家顧客調査のデジタルアセットへの移行が加速化しているとするレポートを発表(出典)
回答者70%が「カストディや執行などのサービスが信頼できる機関から提供されれば、デジタル資産の運用を増やす」と回答しています。
また、91%の機関投資家がトークン化商品への投資に関心を持っているとのことです。
Synonym・Tether・Holepunch、クレジットトークンを発行できるプロトコル「Pear Credit」を発表(出典1、出典2)
Synonym・Tether・Holepunchが、ブロックチェーンなしで誰でも中央集権的なクレジットトークンを発行できる新しいP2Pオープンプロトコル「Pear Credit」を発表しました。
発行者がピアツーピアのクレジット「トークン」を作成することができるピアツーピアのクレジットシステムであり、ギフトカード、リワードポイント、Stablecoinなどあらゆる形態のクレジットを発行したい企業にとって有効なツールとなるとのことです。
HypercoreのP2P DHT機能とLightningチャネルの即時トランザクションを組み合わせることによって、「Lightning for data」を実現するとしています。これによって、ブロックチェーン上のトークンを事実上廃止できると述べています。
Kollider、パブリックローンチを正式発表(出典)
Lightning Networkを使って、国境を越えて誰もが瞬時に簡単に金融市場を利用できるようにするためのツールやサービスを構築することをミッションとし、「Kollider Exchange」「Synthetic Stablecoins」および「Kollider Wallet」を提供するものです。
まず「Kollider Exchange」は、世界初のLightningネイティブのデリバティブ取引所とのこと。ウォレットに直接、瞬時に入金・出金可能となります。
次に「Synthetic Stablecoins」は、Bitcoin残高の全部または一部を法定通貨にペッグ可能とするものです。
そして「Kollider Wallet」は、Lightningのブラウザベースのウォレットとして初めて、合成Stablecoinを使って、残高のすべてまたは一部を法定通貨にペッグ可能にするとのことです。
Kolliderのドキュメントは、こちらを参照ください。
トピックリスト
英国、金融規制法案に暗号資産の規制監督拡大を盛り込むことを決議。FCAと財務省にさらなる監視権限が与えられることに(出典)
シンガポールMAS、個人顧客が暗号通貨を取引する際のクレジットやレバレッジの使用に関する制限を提案(出典)
米Blockchain Association、米財務省のデジタルアセットの不正資金リスクに関するパブコメへの回答を発表(出典)
NYDIGの親会社、Lightning Networkのアクセラレータ「Wolf」をローンチ(出典)
CashApp上でLightning Networkを介したBitcoin受取が可能に(出典)
Block社、Bitcoinマイニング部門の強化にむけてArgoの元CTOを起用(出典)
米SECによると、Bitcoinマイニング大手のCore Scientificが債務融資の支払いを停止(出典1、出典2)
Standard Chartered と Northern Trustによる暗号通貨保管サービス「Zodia Custody」、機関投資家がカストディアン・ウォレットに保有する暗号資産の所有権を証明できるIDツールセットをリリース(出典)
Goldman Sachs とMSCI およびCoin Metrics、デジタルアセットの分類「Datonomy」を発表(出典)
Fidelity、携帯電話からBitcoinを取引できる暗号資産取引アプリ「Fidelity Crypto」のアーリーアクセスを提供開始(出典)
フィリピンUnionBank、METACO Harmonizeのデジタルアセット・カストディ・オーケストレーション・プラットフォーム上で暗号通貨サービスを開始(出典)
南アフリカのPick n Pay、BlueWalletやMuunなどLightning対応のアプリを使ってBitcoinで食料品の代金支払いが可能に(出典)
カナダ・ケベック州の電力会社Hydro-Québec、電力に余裕を持たせるために暗号通貨分野への供給を停止すると発表(出典)
様子をみながら、少しずつ発信していければと思いますので、よろしくお願いします!