th_satです。
Diamond Hands Magazine、ビットコインを巡るビジネス面・規制面の動向のまとめをお届けします。
前号から、ビットコインをめぐるビジネス面の動向(ペイメントや社会生活での利用や、金融機関での金融商品としての取り扱いなど)、規制の動向、その他で気になる個別トピックについて、ゆるく紹介しています。
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それでは、早速直近2週間のトピックを紹介したいと思います。
1. 規制関連の動向
欧州委員会、効率性と再生可能エネルギー統合の向上に向けたエネルギー分野のデジタル化に関するアクションを提示(出典)
データセンターの環境ラベル制度や、コンピュータのエネルギーラベル、通信サービスのエネルギー消費の透明性を高めるための措置、およびブロックチェーンのエネルギー効率ラベリングなどを通じて、ICTセクターのエネルギー消費を制御することを挙げています。
このEUアクションプランに添付された「欧州委員会スタッフ作業文書」では、次のステップとして、以下の4点から、暗号通貨マイニングへの影響行使を示しています。
(1) データセンターのCO2排出量上限の段階的引き下げ
EUにおけるデータセンターのCO2排出量上限が段階的に引き下げられており、暗号通貨マイニングに影響を与えることになる。
(2) 環境・気候のフットプリントに関する情報開示の義務付け
欧州委員会は、PoWに関するエネルギー消費の懸念にMiCA規制が対応することを提案しなかったものの、MiCA規制は、暗号資産市場のアクターに対して、環境および気候のフットプリントに関する情報開示を義務付ける予定。
欧州委員会は、暗号資産市場における新技術の環境・気候への影響に関する記述を含む報告書を作成する予定としており、合意形成メカニズムに関する評価も含まれる予定とのこと。
これにより、Bitcoin投資の魅力を低下させ、Bitcoinの価格を抑制する世界初の試みとなる、とのこと。
(3) エネルギー消費に関する正確でわかりやすい情報開示を求める透明性の原則
「欧州デジタル権利および原則に関する宣言」では、「誰もが、デジタル製品やサービスの環境影響やエネルギー消費に関する正確でわかりやすい情報を入手し、責任ある選択ができるようにすべきである」としている。
この透明性の原則は、MiCAにおける環境開示要件にも反映されており、一般市民が環境にやさしくない暗号通貨への投資を検討する際の抑止力として機能する可能性がある。
(4) マイニングの電力消費量とカーボンフットプリントを国際レベルで評価するための技術ツール開発
マイニングの電力消費量とカーボンフットプリントを国際レベルで評価するための技術ツールを開発する必要がある。
標準化団体との国際協力を通じて、ブロックチェーンのエネルギー効率の高いラベリングを開発するために必要な技術的専門知識を提供する。
このインセンティブは、より環境に優しいコンセンサスメカニズムの利用を奨励するものでなければならない、としている。
米国のデジタル商品消費者保護法(DCCPA)の文案がリーク(出典)
この中で、「(24) デジタル商品取引施設」の定義としては、デジタル商品トランザクションを検証すること、または ソフトウェアを開発または公開する者は除外とされている模様です。
中央集権的な既存企業を優遇し、スタートアップを殺すものであるとして、DCCPAに反対する旨の意見も見られます。(出典)
「CFTCにスポット市場を規制する新たな権限を与える」「人間による仲介を強制 する」および「プロジェクトに分散化の犠牲を強いる」ことを理由と挙げている。
「デジタル商品」とは何かを明確に定義することも、商品であるトークンとそうでないトークンの区別を明確にすることもしていないにも関わらず、BitcoinとEtherを商品と認定しているとし、他のトークンには適用されないのに、これらにはどんなテストが適用されるのかと問題提起している。
また、多くのDeFiプロジェクトは「デジタル商品プラットフォーム」に分類され、DEXは「個人間のデジタル商品取引の執行または取引を容易にする」ことから、「取引施設」とみなされる可能性が高いだろうとの見方。
米連邦預金保険公社(FDIC)が示した、暗号資産およびStablecoinの見方(出典)
FDICのMartin J. Gruenberg氏が、ブルッキングス研究所において、暗号資産規制に関する見方を発表しました。
まず、銀行が新たなイノベーションを評価する際に考慮すべきなのは、アクセス性・利便性・効率性・安全性・健全性 および 消費者保護といった5つの要素であるとし、イノベーションは諸刃の剣である、このことを念頭に置いておく価値があると述べています。
次に、2000年代初頭に金融イノベーションと考えられていた、サブプライムローン、クレジット・デフォルト・スワップなどは結局、2008年の世界金融危機の中心的存在となり、大失敗に終わったと述べています。その理由として、「そのリスクが消費者や業界関係者にあまりに理解されておらず、市場がこれらの商品に参加しようとするあまり軽視されたり、意図的に無視されたりしたため」であると指摘しています。
その上で、暗号資産も同様に、特に市場がこうした商品への移行を急ぐあまり、完全に評価することが困難になっているとしています。銀行による関心が高まるにつれ、暗号資産関連業務に関連するリスクや、どの銀行が暗号資産関連業務を行っているか、または行うことに関心があるかに関する十分な情報が不足していることを問題視しているとのことです。
一方、Stablecoinについては、まず、これまで主に投資や取引を目的とした暗号資産の売買手段として利用されており、広義の決済システムとしての価値は実証されていないと喝破しています。これを受け、「決済用Stablecoin」という概念を提起し、既存のStablecoinとは異なり、リアルタイム決済に対する消費者や企業のニーズを満たす手段として特別に設計されたものであるべきであると主張しています。
そして、この「決済用Stablecoin」を、現在のStablecoinよりも格段に安全なものとするためには、銀行子会社を通じて発行することによって、プルデンシャル規制の対象とするべきであるとしています。
また、「決済用Stablecoin」は、強固なガバナンスとコンプライアンスの仕組みを持つ、許可された台帳システムで取引することが望ましいと述べています。この理由として、ノードやバリデーターを含むすべての関係者を把握できることによって、AML/CFT規制を遵守し、制裁逃れを抑止できることを挙げています。
米国財務会計基準審議会(FASB)、暗号資産の評価に公正価値会計を用いるべきと発表(出典)
暗号資産を保有する企業が、当該資産をどのように測定すべきかについて審議が行われ、企業に対して以下を要求することが決定されました。
暗号資産を公正価値で測定すること
公正価値の増減を報告期間ごとに包括利益で認識すること
暗号資産を取得するために発生した特定の費用(手数料等)を費用として認識すること
Wall Street Journal報道によれば(出典)、企業は損失と利益を直ちに認識することが可能になるとのことです。
Coin Center、Tornado Cashのスマートコントラクトを制裁したとして、米国財務省を提訴
「米国人が暗号通貨と関連資産を使用する際にプライバシーを維持するのに役立つオープンソースのソフトウェアツールであるトルネードキャッシュの使用を犯罪化した」と主張しています。(出典)
Coin Centerによる提訴の文面は、こちらでご覧になれます。
Coin Centerの発表記事によると(出典)、提訴では4つの主張を述べているとのことです。
Tornado Cashの制裁は、法的権限を超えて行われたものである。
財務省自身の規則と過去の大統領令でさえ、制裁コントロールの適用を個人、団体、またはその財産との取引に限定している。
Tornado Cashに制裁を加えるにあたって、財務省はその行動の付随的な影響を考慮せず、また、以前の制裁方針からの著しい逸脱に対する認識や正当性を示すこともなかった。
個人的であった政治献金が、チェーン上で公開されなければならないため、米国人の結社活動は冷え切っている。
OECDがG20に暗号資産報告フレームワーク(Crypto-Asset Reporting Framework: CARF)を提出(出典)
暗号資産は、従来の金融商品とは異なり、金融仲介機関の介入なしに、また中央管理者が取引や暗号資産の保有状況を完全に把握することなく、送金や保有を行うことが可能であると主張しています。
「暗号資産取引所やウォレットプロバイダーなど、新たな仲介業者やサービスプロバイダーを生み出したが、その多くは現在も規制されていない」とした上で、こうした動きは、税の透明性の進展を損なう一方で、脱税に利用される可能性を高めていると指摘しています。
今回のフレームワーク(CARF)は、OECD/G20共通報告基準(CRS)と同様に標準化された方法を通じて、毎年、納税者の居住地域と自動的に情報を交換することによって、暗号資産取引に関する透明性を確保するものです。
顧客のために、または顧客に代わって暗号資産の交換取引を実現するサービスを提供する事業者または個人は、CARFに基づく報告義務を負うことになるとしています。
香港、中国本土とは別のスタンスとして、個人投資家による暗号通貨への直接投資を認めることを検討中(出典)
10/31から11/4まで開催されるFinTech Weekにおいて、暗号資産に対する政府の姿勢を世界市場に明らかにするとされており(出典)、どのような方針が示されるか注目されます。
2.ビジネス関連の動向
Google、デジタル通貨を用いたクラウドサービスの支払いを来年にも可能に(出典)
「GCPのインフラサービスと、Coinbase Commerceサービスとの統合を通じて、当初はWeb3において暗号通貨での支払いを希望する顧客から暗号通貨での支払いを受け付けるとのことです。
とした上で、今後、時間の経過とともに、より多くの顧客が暗号通貨で支払いを行えるようになるだろう」としています。
Coinbase Commerceは、Bitcoin、Bitcoin Cash、Dogecoin、Ethereum、Litecoinを含む10種類の通貨をサポートしています。
また、暗号通貨を保管・取引するサービスとして「Coinbase Prime」の利用を検討しているとのことです。
Mastercard、「暗号通貨を日常の支払い手段にする方法」として自社取り組みをまとめた記事を発表(出典)
①クリプトカード
米国ではGeminiと共同で、暗号通貨で報酬を支払うクレジットカードを開発
アルゼンチンでは、Binanceと共同でプリペイドカードを発売
欧州では、NFTアバターを入れてカスタマイズできるデビットカードを発表
②クリプト対応サービス
クリプトプレイヤーや発行者へのサポートを強化
クリプトトランザクションにおける不正行為を追跡・調査するサイファー・トレースの買収を完了
同社の技術をもとにCrypto Secureを立ち上げ
③ペイメント
Paxos、Circle、Evolve、Uphold など、クリプトに特化した企業と提携
④クリプトをネットワークで利用
Mastercardが承認した特定のデジタルアセットを同社ネットワークに導入する計画を進行中
⑤メタバースとNFT
CoinbaseユーザーはMastercardでNFTの支払い可能
6月には新たに8つのNFTマーケットプレイスとインフラプロバイダーに機能提供する計画を発表
River Financial、企業におけるLightning Networkノード運用に関するレポートを発表(出典)
Lightningで支払いを送受信するためのLightningノードを実行するのは比較的簡単だが、ノードをビジネスシステムと統合したりするのは、より労力がかかる。
Lightningインフラを独自に運用したい企業は、予期せぬシステム障害、ソフトウェアアップデート、およびメンテナンスを考慮し、複数のノードを構築して運用する必要がある。また、ユーザーが常にLightningで決済できるように、流動性を補充するためのアラートシステムも必要。
そして、正確なレポーティングを行うためには、多くの会計上の考慮事項や業務システムとの統合が必要。さらに、Lightningのキャパシティはホットウォレットよりも安全ではないため、セキュリティも重要。
Lightningの決済は、予期せぬ流動性の枯渇により、失敗したり行き詰まったりすることがある。例えば、ノードがその時点で利用可能な経路がないために成功する経路を見つけることができない、あるいは経路を見つけるのに時間がかかりすぎて1分後にタイムアウトするなど、決済が失敗するさまざまな技術的要因がある。
この9月にルート化に失敗した1467件の支払いのうち、866件はタイムアウトによるもので、558件はその時点でルートが利用できなかったことによるもの。ノードが経路を計算してから支払いを送信するまでに流動性が枯渇して残高不足になったことも28件。
このように、Lightningを大規模に利用する上では、特に会計・セキュリティ・メンテナンスに関連して、企業が取り組むべき多くの独自の課題があるため、Lightningノードを運営する能力を社内に導入することは意味がない。
そこで、多くの企業がこうした業務をアウトソーシングすることで利益を得られる可能性があると考えられることから、より多くの企業がLightningを業務に取り込めるよう、「River Lightning Services」を開始した。
参考資料
トピックリスト
Bitcoinが使える場所マップ(出典)
WalmartのグローバルCTO、「クリプトは顧客の取引方法の重要な一部となるだろう」との見方を示す(出典)
Bank of America Private Bankの調査によると、43歳未満の投資家は、変革期にあるデジタルアセット分野のどこかに最も大きな成長機会があると考えており、半数近く(47%)が暗号通貨を保有しているとのこと(出典)
Bitcoinサービスを提供するNYDIGが、約3分の1の人員をレイオフしたとするWSJ報道(出典)
Grayscale Investments、Bitcoin Futures ETFを認めながらスポットETFを認めないのは差別的であると、SECに対して法的措置を開始(出典)
Grayscaleによる米SECへの提訴について、Blockchain Associationが、Coin CenterやChamber of Digital Commerceとともに支持を表明。「SECがBitcoin先物ETPとスポットETPを評価する上で二重基準を用いていることは、法律にも反している」との主張。(出典)
BitcoinマイニングサービスプロバイダのLuxor Technologies、店頭(OTC)Bitcoinマイニングデリバティブ商品を発表(出典)
日経産業新聞|カナダ起業家、ビットコインは「利益の非課税国で普及」(出典)
9月に発売された2023年版のギネスブック、「Cryptomania」カテゴリーで、Bitcoin、CryptoPunks、El Salvadorなどを特集(出典)
BNY Mellon、デジタルアセットのカストディ・プラットフォームの提供開始を発表(出典)
Société Généraleのクリプト部門SG Forge、フランス当局AMFの認可取得(出典)
様子をみながら、少しずつ発信していければと思いますので、よろしくお願いします!