通貨の幻想を超えて── アメリカがビットコインで主導権を握る理由【前編】
君には二つの選択肢がある。
一つは、ビットコインの普及には何十年もかかると受け入れること。つまり、少しずつ人々が興味を持ち、時間をかけて学び、文献を読み漁っていく、そんなプロセスに任せるという道だ。
もう一つは、自分から積極的に行動していくことだ。
君は、過去10年で平均60%以上のリターンを出してきた資産を発見したんだ。
それでも「十分じゃない」と思うのか?
それこそが問題の核心なんだ。
君の周りでビットコインに興味を持ち始めた人たち、そして取引所でホールドしている人たち、彼らは一瞬で痛い目を見るかもしれないんだ。
── Sam Wouters
こんにちは!yutaro です。
本日の「BTCインサイト」では、River マーケティングダイレクター Sam Wouters氏のインタビュー動画を全文日本語訳してお届けいたします。
(※1時間超のインタビュー動画のため、前編と後編に分けさせていただきました)
動画に登場する「ビットコイン利息付き現金預金(Bitcoin interest on cash)」っていうサービスは、オンボーディングに良さそう。
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インタビュアー(以下、Danny Knowles)
ベガスにやられたよ、サイモン。昨夜はかなり遅くまで起きてたんだ。
Sam Wouters
ああ、それは想像できるね。
Danny Knowles
で、君は何してたの?
Sam Wouters
僕たちはチームのみんなで夕食に行っただけだよ。
こうして直接会って一緒に過ごすのは、やっぱりいいからね。
特に僕はリモートワークだから、なおさらだ。
うん、すごくいい時間だったよ。それだけ。
夜遅くまではいなかった。
今朝は大事なポッドキャストの収録があったからね。
Danny Knowles
君が僕に示してくれた敬意と同じだけ、僕は君に敬意を示せなかったね。
僕たちは「Pubkeyバラエティショー」に行ってたんだ。
Sam Wouters
いいじゃん。
Danny Knowles
めちゃくちゃ楽しかったよ。
ああいうの大好きなんだ、ビットコイン文化に入り込んでいく感じがね。
ちょっとふざけた感じで、楽しいし、全部が真面目なだけじゃない。
本当に楽しかった。
で、今日は僕たちヨーロッパ人二人が、アメリカがどうして「ビットコインの超大国」になっているか、について話すためにここにいるってわけだ。
なかなか面白い状況だよね。
で、僕はあのレポートを読んだんだけど、実は収録を始める直前にJ.D.ヴァンスの話を聞いてたんだ。
彼があのレポートを読んだかどうか、すごく気になってて。
だって、彼が言ってたことのいくつかが、君のレポートに出てくる内容と一致してたからさ。
例えば、「アメリカはビットコインの超大国だ」って彼は言ってた。
トランプが去年それを言ったのかもしれないけど、それも不確か。
でも彼は、君のレポートから印象的な数字も引用してたんだ。
たとえば「アメリカには5,000万人のビットコイン保有者がいる」って。
でも、それは本当じゃない気がするんだよね。
Sam Wouters
うん、それは検証してみる価値のある話だと思う。
まあ、なぜそういう数字が出てきたのか、その背景には少し理解もできるんだ。
この数字、実は僕たちのレポートにも書いたけど、「ナカモトプロジェクト」っていう、トロイ・クロスのプロジェクトから来てるんだ。
彼らは統計的に有意な、非常に幅広い層を対象にした調査を行ったんだ。
僕がこの件について懸念しているのは、一般の人たちと実際に会話している中で感じることから来ている。
つまり、「ビットコイン」と言ったときに、彼らが本当に「ビットコイン」のことを考えているのか?
それとも「仮想通貨=ビットコイン」だと思ってるのか?っていう点なんだ。
Danny Knowles
たぶん、ほとんどの人は「暗号資産」のことをビットコインだと思ってるんじゃないかな。
Sam Wouters
まさにそれなんだよ。
たとえば人に「ビットコインを使ったことある?」とか「ビットコインで何かしたことある?」って聞くと、
「うん、やったことあるよ」って返ってくることがある。
でもさらに突っ込んで質問していくと、
「他のトークン」とか「通貨」とか、そういうものを一時的にちょっと触ったことがあるだけだったり、
たぶん今もCoinbaseとかの古いウォレットに何か残ってるくらいだったりするんだよね。
で、もうそのあと一切触ってない。
でも彼らの頭の中では、「あのビットコイン的なやつ、持ってるよ」ってなってる。
でもそれ、実際にはビットコインじゃないんだ。
Danny Knowles
ほんとにそう。
僕、2日前にタクシーに乗ってたんだけど、運転手さんとビットコインの話をしてて、
「あなたたちはカンファレンスのために来たの?」って聞かれたんだ。
で、「ビットコインってどれだっけ?」って言ってたんだよ。
まさに、あれがビットコインっていう反応だった。
だから、混乱はすごく多いと思うよ。
それに、正直に言えば、世界中で5,000万人がビットコインを保有してるって聞いたら、僕は本気で驚くと思う。
実際の数字は、おそらくもっとずっと少ないんじゃないかな。
でもこれは、「ビットコインを保有している」ってどう定義するかにもよるよね。
で、君たちがあのレポートを作成したときに…
たとえば「マイクロストラテジーの株を持ってる人」は、ビットコインを持っていることになるのかな?
Sam Wouters
いや、それは違うね。
Danny Knowles
そっか、それは違うんだ。
じゃあ、取引所にビットコインを置いているか、もしくはセルフカストディしている人が対象?
Sam Wouters
基本的にはそんな感じ。
ただ、セルフカストディと言っても、その中には「カストディアルウォレット(第三者保管型)」を使ってる人もいる。
つまり、取引所には置いてないけど、実際には自分の鍵を持っていないというパターンもある。
それでも、少なくとも取引所ではないウォレットにある、ってことで分類される。
それと、「アメリカで5,000万人がビットコインを保有している」という数字についてなんだけど、
これはすごく検証が難しい。
というのも、自分では「ビットコインを知ってる」と思ってるけど、実際にはちゃんと理解していない、
そういう人を取り除くのは不可能に近いから。
だから、そういう調査は、基本的にはそのまま受け取るしかない。
ちなみに、トロイの調査以外にも、似たような結果を出した調査はいくつかある。
だから、ある程度のバイアスは間違いなくあるとは思うけど、
まあ、グローバルで見ると、僕たちはすでにその「5,000万人」という規模はとっくに超えてると思うよ。
Sam Wouters
うん、間違いなくそう思うよ。
実は僕たち、2年くらい前、もっと正確に言えば1年半前くらいに、ある分析をしたことがあるんだ。
その時に出した推定値のレンジは、世界全体で8,000万人〜1億3,000万人の間だった。
かなり幅はあるけどね。
で、最近はその数字がより精緻化されて、アメリカに関してはだいたい5,000万人前後という推定になってる。
でもこれは本当に検証が難しい。
というのも、さっきも言ったように、「ビットコインを知っているつもりの人」と「本当に理解している人」との違いは調査で見分けられないから。
だから、出てきた調査結果は、ある程度そのまま受け入れるしかない。
それに、トロイの調査だけじゃなくて、他にも似たような数字を出している調査がいくつかあるんだ。
だから、やっぱりバイアスは存在するにしても、共通して出てくる傾向ではある。
で、さっき言った「8,000万人〜1億3,000万人」という数字、
これはオンチェーンのデータともある程度照らし合わせて確認できる。
過去の分析でも出ている通り、オンチェーンで確認されているのは、だいたい3,000万〜3,500万のエンティティ(実体)。
僕が最後に確認したときには、もしかすると今は4,000万近くまでいっているかもしれない。
Danny Knowles
なるほどね。
Sam Wouters
もちろん、そこには重複もあるよ。
でも、だいたいの出発点としては妥当な数字だと思う。
それがオンチェーンのアクティビティだ。
さらに他の統計情報も踏まえると、たとえば「River」っていうビットコイン取引所があるよね?
それ以外にもいくつかのビットコイン取引所が、時折ユーザー数などの数字を公開してる。
実は、個人が保有しているビットコインの大半はセルフカストディなんだけど、
ビットコインを保有している人の大多数は取引所に預けているんだ。
このあたりの情報をもとにいろいろ推定することができる。
たとえば、大手取引所が持っているアクティブユーザー数とかを見て、
そこから「そのうちどれくらいの人がビットコインを実際に触ったことがあるか」っていうのを推定できるんだ。
たとえば、60〜70%くらいのユーザーが、過去に何らかの形でビットコインを取引したことがある、
たとえそれがたった10ドル分だったとしても。
で、こういった数字を全部集計していくと、グローバルで8,000万〜1億3,000万人というレンジに収束していくんだ。
でもここで問題になるのが、「所有している」とはどういうことなのか?ってことなんだ。
たとえば、10ドル分のビットコインを持っているだけで、「保有してる」と言えるのか?
それとも、ただちょっと試しに触ってみただけで、そのあと完全に放置してるような人は「保有者」とは言えないのか?
その線引きは本当に難しいんだ。
Danny Knowles
そうだね。
それって明確な線は引けないよね。
Sam Wouters
そう。まさにそうなんだ。
Danny Knowles
で、Riverの場合だけど、実際に使ってるユーザーのうち、どのくらいの人がセルフカストディしてるの?
Sam Wouters
それはね、時期によって少し変動はあるけど、
僕が最後に確認したときの感覚で言えば、
大多数のユーザーはRiver上にも少し残していて、同時に一部はセルフカストディもしている、って感じだった。
つまり、完全にセルフカストディしてる人もいるけど、
多くの人は「一部を自分で保管しつつ、一部はRiverに残す」というスタイルを取ってるんだ。
理由の一つとして、「もし自分に何かあったとき、どうなるのか?」という不安がある。
Riverでは「継承機能(インヘリタンス)」を提供していて、
たとえば「もし自分に何かあった場合には、指定した人に資産が引き継がれる」ようになってる。
これはAlexと話したときにも出てきたと思うけど、
実際この機能は、多くの人にとってかなり大きな魅力になってるんだ。
というのも、セルフカストディにはそういう機能はないから、
自分で「財宝の地図(トレジャーマップ)」を考えなきゃいけないっていう、例のあれ。
で、それが不安になる人も多い。
だから僕の印象としては、大多数の人が分散して保有していると思うし、
Riverを信頼して預けっぱなしにしている人も一定数いる。
そしてここでまた、面白い問いが出てくる。
「鍵を持っていない人は、本当にビットコインを所有しているのか?」ってこと。
Sam Wouters
この話題、僕はいつもすごく面白いと思ってるんだ。
多くの人は「鍵を持っていなければビットコインを持っているとは言えない」と言うし、
僕自身もそれには基本的には賛成している。
でも同時にこうも思う。
「自分は不動産を所有している」と人が言うとする。
でも、もし国家が「君の所有権は無効だ」と決めたら、
それが通ってしまう国も実際に存在しているよね。
だからこの問題は、「持っているか、持っていないか」っていう白黒の話じゃない。
もっと重要なのは、自分がどんなリスクを取っているのかを理解しているかどうか、ということだと思う。
Riverとしては、僕たちは完全に「セルフカストディを推奨」してる。
たとえば、毎月の自動出金機能とか、無料の出金とか、そういった機能を提供してる。
でも現実的には、「それをやりたくない」っていう人がたくさんいるんだ。
「ビットコインを完全に自分で管理する」という責任を引き受ける準備がまだできていない。
つまり、「自分で管理して、もし間違えたら誰にも頼れない」という状況は、まだ怖いって感じるんだ。
技術はどんどん進歩してるけど、
今この瞬間も、たぶん世界中のほとんどの人たちは、そういうマインドセットじゃない。
たぶん…ベガスは、その意味では「世界の平均的な縮図」とは言いがたいかもしれないけど(笑)
まあ、基本的には「デジェネレート(degenerates=堕落者)たちの街」みたいなもんだしね。
でも、本当にどこの都市でもそうだと思う。
そこで周りの人に話しかけてみたら、「自分のお金を完全に自分で所有したい」と思ってる人は、ほとんどいない。
Sam Wouters(続けて)
それよりも、彼らが求めているのは「値上がりしそうな資産」なんだ。
だから多くの人は、ビットコインを買う代わりに株を買ったり、ETFを買ったりしている。
上がっていく価値には惹かれてるんだけど、
ビットコインそのものの価値にはまだ懐疑的なんだ。
つまり彼らは、「かごの中の鳥」を欲しがってる。
その鳥がどれだけすごい技を見せてくれるかは気になるけど、
「自分の手の中にある、自由に飛び回れる鳥」は怖くて持てない。
で、ビットコインというのは、まさに後者。
「完全に自分のものになる鳥」なんだ。
Danny Knowles
まったくその通りだと思うよ。
みんながみんな、Coldcard(※高セキュリティなハードウェアウォレット)やマルチシグを使うわけじゃない。
それが理想像(ノーススター)かもしれないけど、現実は違う。
だからこそ、スポンサーの話になっちゃうけど…
Riverもこの番組のスポンサーだし、次に話すAnchor Watchもそう。
でも、こういう「プロダクトの成熟」が見えてきたのは、すごく良いことだと思ってる。
Anchor Watchみたいなサービスは、
ビットコインをもっとコントロールしつつ、相続対策もできて、しかも保険までついている。
こういった選択肢が増えてきたのは素晴らしい。
Sam Wouters
僕も本当にそう思う。
「選択肢がある」ってこと自体が、ものすごく大事だと思う。
これこそ、今必要なことなんじゃないかな。
で、うちの製品の話をあまりゴリ押ししたくはないけど、
「ビットコイン利息付き現金預金(Bitcoin interest on cash)」って商品があってね。
でもこれを見て、多くの人が「なんでビットコインを買わずに、利息なんだよ?」って思うんだ。
それを聞いて、僕はこう思うんだ。
「ああ、じゃあこれは君向きのサービスじゃないね」って。
それで全然構わないし、そう思っていい。
でも世の中には、「今の価格が高すぎるんじゃないか」ってためらってる人もたくさんいるんだ。
チャートを引きで見たときに、「今買ったら天井なんじゃないか?」って思ってしまう。
それに、もし周りにビットコイナーがいなければ、
「これは単に、誰かに高値でつかまされたんじゃないか?」と感じることもある。
Sam Wouters
でももし、「リスクを取らなくてもいい。現金を預けるだけでビットコインがもらえる」ってなったら、
僕たちが話をしてきた多くの人たちにとって、それは「すごく気楽な選択肢」になるんだ。
たとえば、僕の母親がまさにそう。
彼女は今、自分の現金を銀行に預けていて、
そのお金は時間とともに価値が下がっていってるんだよね。
でも、それがFDIC(連邦預金保険公社)に保護された口座にありつつ、
かつビットコインで利息がもらえるってなったら、「ああ、それならいいかも」ってなるわけ。
つまり、セルフカストディとかはまだハードルが高い人たちにとって、
こういうのは「まったく別の世界の話」なんだよ。
彼らはまだ、
「そもそもビットコインを買いたいかどうか」すら悩んでるし、
「どれくらい買えばいいのか」もわからないし、
「今買うべきなのか、半年待つべきなのか」ってことさえ判断できていない。
そして、ビットコイナーたちがよくやるのは、
周りをビットコイナーで固めてしまうってこと。
Danny Knowles
今、僕たちはまさにそれをやってるよね。
この会場には、3万5,000人のビットコイナーが集まってるんだから。
Sam Wouters
まさに。
でもそうなると、自分たちが“バブル”の中にいることに気づけなくなるんだ。
つまり、一般の人たちがこのテーマをどう捉えているかを忘れてしまう。
彼らはまったく違う温度感で見ているんだ。
Danny Knowles
そうなんだよね。
最近、Alex(※RiverのAlex Leishman)が「ちょっと物議を醸す発言」をしてた。
たしか、「全員がセルフカストディするべきとは限らない」って言ってたんだよ。
でもこれは難しい話でさ。
というのも、ビットコインの歴史って、ハッキングや詐欺の歴史でもあるわけじゃない?
Riverみたいに、僕が信頼を寄せてる会社ですら、
それを「安全な保管場所だ」と人に納得させるのは本当に難しいことだと思う。
Sam Wouters
そう、それは本当に興味深いし、同時にとても繊細な話題でもある。
というのも、「本当に人を説得するべきなのか?」という疑問が出てくるから。
Danny Knowles
うん、たしかに。
「説得する」という言葉自体が間違ってるのかもね。
Sam Wouters
そう、それはすごく公平な指摘だよ。
実際、僕たちはRiverのサービスを“積極的に宣伝する”というよりも、
「需要があることに気づいたから、それに応えるように取り組んでいる」というスタンスなんだ。
それに、「証拠付きの準備金(Proof of Reserves)」の取り組みも、
顧客に安心感を与える大きな要素の一つになっている。
でも正直なところ、それがここ数年あまり広く普及していないのは、驚きでもあるんだ。
Sam Wouters
で、「証拠付き準備金(PoR)」について言うと──
これは、実は技術的な課題というより、ビジネス的な要因が大きいと思ってる。
つまり、ほとんどの取引所やカストディ企業は、
「ユーザーがそれを求めていない」と思ってる。
だから、やらない。
Danny Knowles
なるほど。
Sam Wouters
で、実際その通りかもしれないんだよ。
ユーザーの大半は、「証拠があるか」なんて気にしていない。
「使えていればいい」「今アクセスできればいい」「お金が戻ってくればいい」って感じで。
でも、僕たちは違う視点で考えてる。
たとえば、今ってたくさんの銀行が破綻してるよね。
そんな中で、もし「Riverが証拠付き準備金を提供してる」と知っている人がいたら、
その人は、明らかに“より信頼できる”と感じるはずなんだ。
Danny Knowles
うん。
Sam Wouters
だから、「証拠付き準備金」が浸透しない理由っていうのは、
技術の問題でもないし、難解さの問題でもない。
要するに、「人々がそれを気にしていない」から。
Danny Knowles
いやあ、でもね。
僕がずっとRiverを使ってる理由の一つが、まさにそれなんだよ。
つまり、他の取引所では「何をやってるのか」が見えない。
「実際に準備金あるのか?」「全部貸し出しちゃってるんじゃないの?」って。
でもRiverは、“何をしてるかが見える”。
だから、「自分のビットコインが本当にそこにある」っていう確信が持てるんだ。
Sam Wouters
それって本当に重要な点だよね。
僕たちは、「単に“言ってるだけ”じゃないんだ」ってところを見せたいと思ってる。
だから最近、Riverは財務状況をフルオープンで公開したんだ。
内容は、ビットコインの保有額、資金の状況、リスクの取り方など。
すべて開示した。
Danny Knowles
すごいね。
Sam Wouters
でも、あれをやるのは本当に大変だったんだよ。
社内でも相当な議論があったし、「どこまで公開すべきか」っていう線引きも難しかった。
実際、会社が潰れるかもしれないというリスクまで背負ってやったわけで。
でも、やった結果、たくさんの反響があった。
ビットコイン業界だけじゃなくて、金融業界の人たちからも「これはすごい」って言われた。
Danny Knowles
僕も思った。
「ああ、これが“本物”の透明性ってやつだ」って。
Sam Wouters
そう、まさにそれなんだ。
ビットコインって、そもそも“透明性”と“検証可能性”のために作られたものじゃない?
それなのに、多くのビットコイン関連企業は、それを実践していない。
でも僕たちは、「それをやる」って決めた。
だから、証拠付き準備金だけじゃなくて、会社のバランスシート(財務諸表)も出したんだ。
これはもう、「やるべきだ」と思ったからやった。
でも正直、あれだけの開示をするのは、けっこう勇気が必要だったよ。
Sam Wouters
僕たちが重視しているのは、“リスクが何であるか”をユーザーに見せることなんだ。
というのも、セルフカストディをしていないなら、
その人は「自分の資産に対する責任を誰かに預けている」わけだから。
それなら、その「預け先」がどんな状態にあるのかを“確認できる手段が必要でしょ?
Danny Knowles
そうだね。
セルフカストディできる人なら、それがベスト。
でも実際には、多くの人がそれを選べないからね。
Sam Wouters
その通り。
だからこそ、僕たちが目指してるのは、
「セルフカストディできない人でも、安心して利用できる環境」なんだ。
で、ちょっと話を戻すと、
ビットコインで利息が得られる「Bitcoin interest on cash(現金預け入れでビットコイン報酬)」という商品について。
これは、「現金を預けたい人」「今はビットコインを直接買いたくない人」に向けたものなんだけど、
彼らにも、「この資産クラスが何なのか?」を知ってもらうための“入口”として提供している。
Danny Knowles
たしかに。
「直接買うのは怖いけど、ちょっと触れてみたい」という人にはちょうどいいよね。
Sam Wouters
まさにそうなんだよ。
「自分の現金が減らないまま、ちょっとだけビットコインに触れられる」っていうのは、
すごく心理的ハードルを下げてくれる。
それに、将来的には、
「実際に利息として得たビットコインを、もっと積極的に運用してみよう」と思うようになるかもしれない。
そうやって、“ビットコインという通貨”に対する理解や関心が深まっていく。
だから僕たちは、これを「教育的な意味を持つ商品」としても考えている。
Danny Knowles
なるほどね。
たしかに、「最初の一歩としての選択肢」って感じだね。
Sam Wouters
そう。
ビットコイナーの中には「それって中途半端じゃない?」って言う人もいるけど、
でも現実を見れば、いきなりColdcardやマルチシグから始める人なんて、ほとんどいないわけで。
むしろ、“少しずつ触れて慣れていく”というプロセスを尊重する方が自然なんだよ。
Sam Wouters
ビットコイン業界の中には、「すべての人が完全なセルフカストディをするべきだ」と強く主張する人たちもいる。
でも僕は、その考えが逆に adoption(普及)の妨げになっていることもあると思ってるんだ。
つまり、そのレベルの知識や信念をまだ持っていない人に対して、いきなり“完璧な形”を要求するのは、現実的じゃない。
Danny Knowles
それ、すごくよくわかる。
僕が最初に買ったときなんて、Coinbaseにそのまま置いてたよ。
そして、「鍵を持つべき」って話を聞いても、最初はちょっと抵抗があった。
「え、どうやって?」「それって安全なの?」って。
Sam Wouters
その感覚、すごく重要だよね。
だから僕たちは、最初のステップを“誰でも踏み出せるくらい簡単に”しておく必要があると思ってる。
たとえば、
「Coldcard買って、xpub(拡張公開鍵)を手元で管理して、マルチシグにして…」って、
いきなりそこから始めようとしたら、ほとんどの人はドン引きする。
それよりは、
「とりあえず現金預けたら、ちょっとだけビットコインがもらえる」っていうような
簡単で、安心できる形から始めてもらうことが、すごく大事だと思うんだ。
Danny Knowles
なるほどね。
それってつまり、“現実的な導線を作る”ってことだよね。
Sam Wouters
そう。
そして、その導線の中で、少しずつ「自分で学んで、自分で選べるようになる」ことが理想。
つまり、押しつけじゃなくて、“選べるようになる”サポートをするという姿勢。
これは、僕たちがプロダクトを設計するときにもすごく意識している。
たとえば、「じゃあ今度は出金してみようか」とか、「この利息はセルフカストディに移せるよ」みたいな、
そういう段階的な導き方を自然に体験できるようにしているんだ。
Danny Knowles
いいね、それ。
まさに“教育としてのUX(ユーザー体験)”だね。
Sam Wouters
そう、それだ。
まさに、UXの中に教育が組み込まれてる状態。
いきなり本を読んで学べとか、YouTube見て覚えろとかじゃなくて、
実際にプロダクトを使ってる中で自然と学べるようにする。
それこそが、僕たちが目指してる「次のフェーズのビットコイン普及」なんだ。
Danny Knowles
いまの話を聞いてて思ったのは、
たとえばRiverみたいな会社は“カストディアン(預かり主)”としての立場を持ってるけど、
でもそれって、「ユーザーの選択肢が増える」という意味では大事な存在だよね。
ただし一方で、「中央集権リスク」は常にあるわけで──
そこはどう考えてる?
Sam Wouters
そこはすごく重要な論点だよね。
僕たちは、「カストディを提供するからには、徹底的に“信頼される存在”でなければならない」と思ってる。
そしてその信頼って、透明性と一貫性から生まれるものなんだ。
Danny Knowles
たしかに。
Sam Wouters
Riverとしては、「預けてもらってありがとう、でもできれば出金してほしい」と思ってる(笑)
それは本音だよ。
セルフカストディを推奨する立場は変わらない。
でも、それでも預けたいという人に対しては、
「じゃあ、そのお金は完全に1対1で保有してますよ」と保証できるようにしている。
つまり、「信用に基づいた運用」ではなく、「検証可能な保管」。
これは本当に大事なことだと思ってる。
というのも、過去の失敗(Mt.GoxとかFTXとか)って、まさにそれができていなかったから起きたわけで。
Danny Knowles
うん。
そして結局、「信頼できる相手かどうか」って、言葉じゃなくて行動で示すしかないんだよね。
Sam Wouters
Exactly.(まさにその通り)
僕たちが財務情報をフルで公開したり、
Proof of Reserves(証拠付き準備金)をやったりしてるのは、全部そのため。
あとは、UX(ユーザー体験)の部分でも、信頼を失わないように設計してる。
たとえば、「出金処理を意図的に遅らせて、引き止めよう」なんてことは絶対しない。
むしろ、「出金がスムーズにできる」ってこと自体が、僕たちの最大のセールスポイントなんだ。
Danny Knowles
で、ちょっと視点を変えると──
アメリカって今、ビットコイン adoption(普及)の面ですごく勢いが出てきてると思うんだ。
Samから見て、それって何が理由だと思う?
Sam Wouters
いい質問だね。
僕の考えでは、いくつか理由があるけど──
まず一つ大きいのは、FTX崩壊の衝撃だと思う。
アメリカの多くの人たちは、それをきっかけに「中央集権型の取引所は危ない」と気づいた。
そしてそこから、「じゃあ、より安全な形でビットコインにアクセスするにはどうすればいいのか?」という探求が始まった。
Danny Knowles
たしかに。
あの出来事で、かなり目が覚めた人も多かったと思う。
Sam Wouters
それともう一つ大きいのが、
ビットコインETFの登場。
これは、「機関投資家が参入しやすくなるだけでなく、一般人にも“買いやすさ”という意味で強力な影響を与えている。
たとえば「401k(米国の確定拠出年金)」の中で組み入れられるとか、
証券口座からボタン一つで買えるとか。
それにより、「ビットコインはもうマイナーな資産じゃない」という認識が広がってる。
Danny Knowles
そういう意味では、
アメリカって「規制は厳しいけど、ちゃんとルールが整ってる国」だよね。
他の国だと、「なんとなくグレーな状態が続いてる」ってことも多いし。
Sam Wouters
まさにその通り。
アメリカにはSEC(証券取引委員会)とかCFTC(商品先物取引委員会)とかがあって、
ルールが明確ではないにせよ、“ルールがあること”自体が信頼感につながってる。
そして、そういう土壌があるからこそ、
機関投資家や大企業が「参入してもいい」と思える環境になってる。
Danny Knowles
逆に、ヨーロッパはどう?
Sam Wouters
ヨーロッパは…ちょっと事情が違うね。
たしかに「MiCA(Markets in Crypto-Assets)」みたいな包括的な枠組みはあるけど、
実際の運用や銀行の対応がまだ追いついてない。
たとえば、ドイツやオランダでは「銀行口座を開けない」とか、
「ビットコイン関連だとサービスを断られる」といった問題がまだまだあるんだ。
Danny Knowles
なるほど。
アメリカのほうが、「ビットコイン企業にとって生きやすい場所」になりつつあるってことか。
Sam Wouters
そうだね。
もちろん完璧な環境じゃないけど、
“改善する意思”と“前進する力”がアメリカにはある。
それが、世界的なビットコインの中心地としての地位を高めているんじゃないかな。
Danny Knowles
そう考えると、アメリカって、地域ごとに“進化の度合い”が違うのも面白いよね。
たとえば、テキサスとかマイアミみたいな場所は、めちゃくちゃ前向きで──
Sam Wouters
そうそう、たとえばマイアミの市長(※Francis Suarez)なんかは、
ビットコインの報酬を受け取るって言ってたし、
市としても「どうすればビットコインを受け入れられるか」っていう議論をしていた。
それって、国家レベルじゃなくても“自治体単位”で大きな前進ができるっていう好例なんだよね。
Danny Knowles
うん。
それって、たぶんアメリカの「州の独立性」が大きいんだと思う。
たとえば、カリフォルニアでは規制が厳しいけど、テキサスではもっと自由にできる、みたいな。
Sam Wouters
その通り。
ヨーロッパでは、「国ごとに全部が縛られてる」感覚がある。
銀行もそうだし、税務もそうだし、イノベーションのスピードも遅い。
でもアメリカは、「ここはやってみてもいいよ」という“実験都市”が自然に生まれる仕組みがある。
だからこそ、マイアミやオースティン(テキサス)がビットコインの“文化的ハブ”になりえたんだと思う。
Danny Knowles
あと、企業家精神(entrepreneurial spirit)みたいなのもあるよね。
「新しいことをやるのがカッコいい」「失敗してもチャレンジした方が称賛される」っていう空気。
Sam Wouters
うん、それは本当に大きい。
“実験してもいい”という社会の寛容さが、技術革新を後押ししている。
ビットコインもその一例だと思うよ。
たとえば、ライトニングノードを立てるだけでも、ある国では規制の対象になる。
でもアメリカでは、基本的に「やってみたら?」という姿勢なんだよね。
Danny Knowles
なんだか、数年前までは「アメリカ=ビットコインに冷たい国」ってイメージもあったけど、
ここにきて、逆に最先端になってきてる感じがする。
Sam Wouters
そう、それはすごく感じるね。
数年前は、「ビットコイン=マネーロンダリング」とか、
「犯罪者の道具」みたいな誤解も多かった。
でも最近は、
議会でもビットコイン支持を表明する議員が出てきたり、
SEC(証券取引委員会)ですら、一定のルールでの運用を認め始めていたりする。
つまり、「全面禁止ではなく、どうやって共存するか?」に議論がシフトしてる。
(※続きは コチラ から)
Danny Knowles
ああ、たしかに。
ETFの承認なんて、まさにそれを象徴してるよね。
Sam Wouters
そのとおり。
BlackRock(ブラックロック)とかFidelity(フィデリティ)みたいな巨大企業が、
堂々と「ビットコインETFを出します」って言ってる世界だよ?
5年前じゃ考えられなかった。
でも今は、「それが当たり前」というムードになってきてる。
Danny Knowles
これって結構、アメリカにとっては“地政学的な優位性”にもなるよね?
つまり、「世界のビットコイン資本がアメリカに集まる」みたいな。
Sam Wouters
Exactly.(まさにその通り)
アメリカがこの分野で先行すれば、
「世界の資本」も「人材」も、そして「革新」もアメリカに集まってくる。
これは単なる“仮想通貨”の話じゃなくて、国家戦略としても重要だと思う。
Danny Knowles
で、ちょっとマイニングの話も聞きたいんだけど──
アメリカって、今や世界最大のマイニング拠点のひとつになってるよね?
それって、何が理由だと思う?
Sam Wouters
いくつか理由があるけど、まず一番は電力の安定性と価格競争力だね。
アメリカでは、州によっては電気代がすごく安くて、供給も安定してる。
テキサスとかはその典型。
Danny Knowles
たしかに、テキサスは電力網も独自だし、
自由化されてて、マイナーにとっては理想的な環境かも。
Sam Wouters
それに加えて、資本アクセスがしやすいというのも大きい。
アメリカの投資家は、新しいインフラにお金を出すことに慣れている。
たとえば、「データセンターに投資する感覚で、マイニング施設に投資する」みたいな考え方も浸透してる。
Danny Knowles
ああ、なるほどね。
つまり、「マイニング=工業インフラ」として捉えられてるってことか。
Sam Wouters
Exactly.
で、そこが他の国との大きな違いなんだ。
たとえば、ヨーロッパやアジアの一部では、
「マイニング=エネルギーの浪費」みたいな偏見がまだ根強い。
だから、「電力を使う=悪いこと」と捉えられて、規制も厳しくなる。
でもアメリカでは、
「ちゃんとしたエネルギー政策と連携して運用すれば、むしろ電力網を安定させる存在になりうる」っていう理解が広まりつつある。
Danny Knowles
うん、それって重要だよね。
最近は、「マイニングが電力の需給バランスを調整している」って話もあるし。
Sam Wouters
その通り。
特にテキサスでは、「需要応答プログラム(Demand Response)」にマイナーが参加して、
電力が逼迫したときはマシンを止めて、電力網を助けることまでしている。
こういう仕組みがあることで、「社会インフラとしてのマイニング」という見方が定着してきているんだ。
Danny Knowles
でも、その話を聞いてると、
「じゃあなんで他の国では同じことができないの?」って思う人もいそうだよね。
電気代が安い国だってあるし、エネルギー資源もある。
Sam Wouters
確かにね。
でも違いは、「制度」と「資本の流れ」にあるんだ。
たとえば、中南米やアフリカの国々にも安価な電力は存在する。
でも──
・政治的に不安定だったり
・インフラ投資の仕組みが整っていなかったり
・外貨が不足していたりする。
そうなると、大規模な資金を調達してマイニングファームを建てるのが難しい。
Danny Knowles
たしかに、「作りたいけど、資金が入ってこない」って話はよく聞くね。
Sam Wouters
さらに言えば、“契約の信頼性”も重要。
たとえば、「電力を5年間この価格で供給します」という契約があっても、
翌年に「政府が方針を変えてしまう」ってことが普通にある。
でもアメリカでは、
契約がちゃんと履行される前提で投資が動いている。
この「制度の安定性」と「信用できる法体系」が、
海外との決定的な差になっているんだ。
Danny Knowles
たしかに、インフラビジネスにとって“法の予測可能性”ってめちゃくちゃ大事だもんね。
Sam Wouters
あともう一つ、アメリカならではの強みがあって──
それが“資本の柔軟さ”なんだ。
たとえばベンチャーキャピタルもそうだし、
インフラ投資ファンド、プライベートエクイティ──
こうしたプレイヤーが「早期から大胆に投資する文化」がある。
そしてそれが、マイニングという新しい業界を一気に成長させる原動力になった。
Danny Knowles
その話を聞いてると、
やっぱりアメリカって「ビットコイン経済圏のリーダーになりうる条件」が揃ってるよね。
Sam Wouters
まさにその通り。
そしてこれは、単なる「産業の話」では終わらないと思ってる。
アメリカがビットコインを主導するということは、
“新しい金融インフラ”をリードするということでもある。
Danny Knowles
それってつまり──
「次の100年の通貨秩序」みたいな話になってくるよね?
Sam Wouters
Exactly.
今までの100年は、ドルが基軸通貨として世界を動かしてきた。
でもこれからの100年は、
「誰もが使える、国家に依存しないオープンな通貨=ビットコイン」という選択肢が現れた。
そしてアメリカは、それを拒絶することもできたのに、
むしろそれを“取り込んで味方につけた”ように見える。
Danny Knowles
それってかなり賢いやり方だよね。
たとえば、もし中国がビットコインを完全に拒否して、
アメリカがそれを受け入れたら──
資本も人材も全部、アメリカに流れ込んでくる。
Sam Wouters
そう、それこそが今、起きていることなんだよ。
たとえば、中国がマイニングを禁止したとき、ハッシュレートは一気にアメリカに移った。
結果的に、「ビットコインのインフラ」がアメリカに集中することになった。
Danny Knowles
そして、その動きは止まってない。
むしろ加速してる。
Sam Wouters
そう。
そしてそれは、将来的に「国家の金融主権」にも影響を与えていく。
たとえば、ある国が「自国通貨が信用できない」となったとき、
その人たちは“ビットコイン経由でドルにアクセス”する可能性が出てくる。
つまり、「ビットコイン」という自由なインフラを通じて、
アメリカの金融圏が世界に拡張することになる。
次回【後編】へつづく…
(※原文はコチラ:Why America Is Winning the Bitcoin Race w/ Sam Wouters)