通貨の幻想を超えて── アメリカがビットコインで主導権を握る理由【後編】
アメリカが先行する理由と他国との違い
Danny Knowles
アメリカって、単にそこにあるチャンスに乗っかってるだけじゃないんだよね。他の国々もちゃんとやってる。たとえばエルサルバドルなんて、明らかに先駆者的な立場を取ったし、ブータンもビットコインマイニングで素晴らしい成果を出してる。湾岸諸国も徐々に注目し始めてる。でも、ヨーロッパ諸国とかオーストラリアとか、なんでこういう先見的な取り組みがないのか不思議なんだよね。理由はわからないけど、アメリカでこれだけ動いてるのを見ると、他の国々にも波及してほしいなって思う。
で、もしアメリカがシェア40%とか持ってたら、中央集権化のリスクとかって懸念されると思うけど、そのあたりどう?
Sam Wouters
リスクって、地理的な分布というより、ビットコインが「どこに集中してるか」とか、「誰がそれを保有してるか」っていう“質”的なところの方が重要なんだ。
最近、僕たちもいくつか統計を出していて、だいたい全世界のビットコインのうち68%くらいが個人に保有されていると推定してる。もちろん、その中には実は法人が持ってるけど公表してないってケースもある。でも大部分は個人が保有してると考えていい。
とはいえ、その個人の中でも多くのビットコインを保有しているのは限られた層で、それはUTXO(未使用トランザクション出力)セットを見ればわかる。取引所でもなければ法人でもない、特定されてないアドレスに大量のビットコインが眠ってるのが見て取れる。これは、ドルや他の通貨でもよくある話で、結局のところ「一部の人に集中している」って構図は似てる。
大事なのは、「誰が保有しているのか」「その人たちの意図や目的は何なのか」という点。そして、例えばどの取引所に多くのビットコインが保管されているのか、それらはどれだけ安全なのか── そういうことの方が地理的な話よりもよっぽど重要なんだよ。
こんにちは!yutaro です。
本日のPro向け「BTCインサイト」では、River マーケティングダイレクター Sam Wouters氏のインタビュー動画の後編を全文日本語訳してお届けいたします。
( ※前編は コチラ )
アメリカ人と金融リテラシーの強さ
Danny Knowles
で、そもそも、なんで今アメリカはここまでビットコインで突き抜けてるんだと思う?
さっき言ってたように、道端の人に「自分で自分を統治することに興味あるか」って聞いても、多くは関心を持ってないと思うけど、それでもアメリカでは他の国より割合は高いと思うんだよね。少なくとも僕が訪れた国の中ではね。
Sam Wouters
それはすごく重要な観点で、僕が思うに、アメリカの特徴って「社会全体がとても金融化されていること」なんだよ。
正直、アメリカを訪れるたびに「こんな金融づくしの社会には住みたくないな」って思うこともある(笑)。すべてが経済、金融の話になっていて、ちょっと疲れる時もある。
でも、それがアメリカの強みでもある。たとえばヨーロッパに比べても、アメリカ人の方が圧倒的に金融リテラシーが高い。それによって、多くの人が「投資をすること」に積極的になるし、「何かを築き上げること」にも意欲的なんだよ。それがこの国の精神に根付いている。イノベーション、進歩、より良い社会をつくるっていうマインドセットね。
それがまさにビットコインに惹かれる人が多い理由だと思うし、「何かを生み出すことへの欲求」みたいなものが、とにかく強い国なんだよ。
なぜ他国では同じように進まないのか?
Danny Knowles
うん、まさにそう思う。で、ここには「鶏が先か卵が先か」みたいな問題もあるんだよね。
アメリカにはすでに魅力的なビットコイン関連のプロダクトが山ほどある。もし僕がアメリカに住んでたら、絶対にそれらを使ってる。でもオーストラリアやイギリスでは、それらにアクセスできない。
で、それを可能にするには、何が必要なんだろう?政策の問題?正直、よくわからない。
Sam Wouters
それは本当にいい質問で、ヨーロッパの人たちもよく言うんだよ。「こういうサービス、どうやったらヨーロッパに持ってこれるの?」って。
実際、その答えの多くは「一部は規制の問題」で、もう一部は「ビジネス側の投資判断」なんだ。
つまり、他国で事業を展開するには初期費用がかなりかかるし、すでに現地にビットコインのブローカーが存在していることも多い。だから競合になるか、補完的な存在としてやっていくかって問題が出てくる。
それに加えて、たとえばイギリスでは「ビットコインで利息がつくようなサービスがなぜないの?」ってよく言われる。でも米国と英国では資本市場や国債の扱い方が全然違う。
同じプロダクトを提供しても、米国ほどの利回りは期待できない。しかも英国では「適格投資家かどうか」を確認するためのアンケートみたいなものを記入しなきゃいけない。
だから多くの企業にとっては「まずは米国市場に集中しよう」という判断になる。Riverもそう考えてる。
しっかりとした基盤を米国で築いて、そこから他国が「自国のルールや法律を変えなきゃいけないかもしれない」と思わせる。それくらい強い存在感を出すことが大事なんだ。
でもヨーロッパでは問題があって──
多くの国民が、政治家や欧州議会が何をしているのか、どう関わればいいのか、まったくわかってない。考えもしないし、話題にもならない。もちろん関心を持ってる人もいるけど、ごく一部。
だから「どうやって制度を変えるのか?」「誰がその戦いを担うのか?」という根本的な問いがある。
自分のキャリアや影響力、資本を使ってそういう流れを作る人がヨーロッパにはまだいないんだよ。
英国と米国の制度的な違い
Danny Knowles
まったく同感。イギリスにもFreddie NewmanやSusieがやってる政策グループはあるけど、正直なところ、かなりの uphill battle(苦しい戦い)になってる。
BPI(Bitcoin Policy Institute)も、始まった当初はかなり苦労してたし、長い間努力を重ねて、ようやく今すごく成果が出てきた。でも、その流れが米国外でも同じように実現できるかどうかは、僕にもよくわからない。
Sam Wouters
そのとおりだね。
Danny Knowles
昨日、Matt Coralloにもここで話を聞いたんだ。彼は「Save Our Wallets」キャンペーンを推進してて、「ビットコインをセルフカストディできる権利を守ろう」ってやってる。
で、彼が言ってたのが、「議員に電話をかけて、自分の意見を伝えろ」ってこと。でも僕は、イギリスでそんなことできるのかどうかも分からないし、そういう制度があるかも怪しい。
アメリカでは政治家との距離がすごく近い。これは本当に素晴らしいことだと思う。
で、バイデン政権下でも、アメリカはビットコインで圧倒的な主導権を維持していた。
そして今、トランプが返り咲いたことで、さらに加速すると思う?それとも…。
ビットコインの加速は起きるのか?
Sam Wouters
可能性はあると思うよ。でも、確実とは言えない。
もちろん、全体としてはビットコインは「上がっていく」ものだと僕は考えてる。というのも、ビットコインに入ってくる人って、基本的に離脱しないんだよね。
Danny Knowles
誰も出ていかない。まるでホテル・カリフォルニアだよね(笑)
Sam Wouters
そうそう(笑)。みんな積み立てを続けるし、それが全体の傾向なんだよ。だから、ビットコインはこれからも成長すると思ってる。
でも問題は、「どれだけ速く成長するか」なんだ。
今みんなが注目してるのはそこ。たとえば「今、リテール(個人投資家)はどうなってる?」ってこと。
価格は過去最高値に近いのに、メディアはあまりビットコインを取り上げてない。
一般の人たちもそんなに注目してない。むしろ「何年も前に考えたことあるよ。でももうチャンスを逃した気がするし、今さらいいや」って感じの人が多いんじゃないかな。
これは今、多くのビットコイナーが感じている大きな疑問でもある。
バブル時期との比較と今の静けさ
Danny Knowles
僕もまさにそれを感じてる。
通常、ブルマーケット(上昇相場)に入ると、この番組のリスナー数も一気に増えるんだ。Googleトレンドでも明らかにその兆候が出るし、もちろん価格の動きにも表れる。
友達からの反応もそう。
これまでなら、ビットコインに無関心だった友人たちがいろんな質問をしてくるものなんだよ。
でも今回、それが起きてない。番組に新しいリスナーは少しは来てるけど、以前ほどではない。
Sam Wouters
それがね、本当に新規リスナーなのか、「What Bitcoin Did」の再始動に反応してる人たちなのか、判断が難しい。
で、Riverの話をすると、うちは順調に成長してるけど、ちょっと違う理由なんだ。
今の流れは、「まず大手の取引所に触れて、いくつか試してみた結果、いろいろ不満が出てきて、それで『もっといいところない?』って探し始める」ってパターンが多い。
そういう人たちが最終的にRiverにたどり着くケースが増えてる。
つまり、今うちが感じてる成長は「新規参入者」ではなく、「いろいろ試した末にたどり着いた人たち」なんだ。
リテール参入の鈍化とその理由
Danny Knowles
それってむしろ、「成熟したビットコイナーが良い製品を見極めて、より良いところに移動する」っていう構造だよね。
新規の人が増えてるわけじゃない。
Sam Wouters
うん、まさにそのとおり。だから僕たちも常に「池を大きくするにはどうしたらいいか?」って本気で考えてる。
今週のカンファレンス前にも、マーケティングチームと打ち合わせしてたんだ。
Riverは主に個人向けのサービスを展開してるけど、今では2,000社以上の法人顧客もいる。法人セグメントの成長は特に速い。
ただ、個人ユーザーを増やすには、「市場と同じスピード」で成長するだけじゃ足りない。もっと何かできるはずだと考えてる。
じゃあ、なぜ人々は参入してこないのか?
僕たちは真剣にこの問いと向き合ってる。
Riverは「ビットコイン専業」の企業だから、ビットコインで勝負するしかない。他の取引所のように、「いま注目されてるトークンを取り扱って、そこから利益を得る」みたいなことはしない。
また、「リスクの高い商品を色々出して、短期的に儲ける」みたいなこともやらない。
だからこそ、僕たちは「なぜ今、リテールが動いてないのか」を深く理解する必要がある。
僕なりに考えてみると、大きな理由がいくつかある。
ひとつは、「もうビットコインは乗り遅れた」と思ってる人が多いこと。
これはすごくよくあるパターンだよね。
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