ある億万長者が知る「ドル崩壊を生き延びる知恵」|マイケルセイラー【中編】
マイケルセイラー
僕が最初にビットコインを見たのは2013年のことでした。
その頃は、AppleやAmazonに夢中で、プライベートの投資で大きく儲けていた。
テクノロジーの波に乗っていたし、ビジネスでも忙しくて、「これからやるべき20の改革案」みたいなものを抱えていた。
そんなときにビットコインを見つけて、「ふーん、分散型の通貨システムか。面白そうだな」とは思ったんです。
でもちょうどその頃、政府はあるオンライン・ベッティングサイトを閉鎖しました。
「トレードスポーツ」っていうサイトだったんですが、政治の結果やスポーツの試合、天気予報にまで賭けができるという面白い仕組みだった。
けれど政府は、それを潰した。
同じようにオンラインギャンブルも取り締まりましたよね。
僕はその様子を見て、「ああ、これと同じことがビットコインにも起きるだろうな」と思った。
こんにちは!yutaro です。
本日のPro向け「BTCインサイト」は、Jordan B Peterson氏によって公開されてたMichael Saylor氏へのインタビュー動画、中編です。
前回好評だった前編と同様、日本語訳・編集してお届けいたします。
(※全文書き起こし【中編】です / 前編 & 後編 もどうぞ)
インタビュアー(以下、Jordan B Peterson)
それでは、ビットコインの話から再開しましょう。
ここまでで、あなたの思考の背景がわかりました。
あなたがパターンを見抜く力を持っていて、可能性を見出す人物であると理解できました
それがビットコインの発見とどうつながったのか、詳しく聞かせてください。
マイケルセイラー(以下、Michael Saylor)
2020年3月のことです。
その時、マイケル・セイラー(経営者としての私は)、10年以上にわたって猛烈に働き、
2,000人の社員にも猛烈に働かせて、Microsoftや「マグニフィセント・セブン」のような巨大企業と戦い、このMSTRという上場企業に成長を取り戻そうと必死でした。
会社としては、ちゃんと機能している良い企業です。
ですが、年間成長率が1%、2%、せいぜい3〜4%の企業など、資本市場にいるプロの投資家たちにとっては何の魅力もありません。
そして、私たちは考えられるあらゆる手段を試したにもかかわらず、ブレイクスルーできなかった。
社員はストックオプションで報酬を得ていましたが、その株はまったく動かない。
だから私は完全に行き詰まっていて、非常にフラストレーションが溜まっていたんです。
Jordan B Peterson
それはどうして「良くないこと」だったのですか?
つまり、会社は穏やかな成長をしていて、そこまで面白くないかもしれないけれど、うまくいっている。
株の問題はあるけれど、会社としてはしっかりしていて機能もしている。そしてあなた個人は、AppleやAmazonの株で一財産を築いている。
それでも、なぜそれが満足できなかったのでしょうか?
Michael Saylor
満足できなかった理由は、「10年前にピークを迎えて、そこから先に進めない」と感じたからです。
自分の冒険が、成長が、もう止まってしまったと感じたんです。
Jordan B Peterson
なるほど。つまり、冒険が「停滞」したと。
Michael Saylor
ええ、停滞です。私たちは壁にぶつかっていて、突破できなかったんです。
Jordan B Peterson
そして、努力しても変わらない。
Michael Saylor
そう。最もつらかったのは、イーロン・マスクやマーク・ザッカーバーグのような人たちが、ものすごい成功を収めているのを目の当たりにしたことです。
私は彼らと同じ世代で、Instagramを生み出し、Facebookを立ち上げ、電気自動車を開発した彼らが、頂点を極めていく一方で──
自分はというと、確かに成功したビジネスを持っているけれど、それはもはや低成長の「成熟企業」となってしまった。
Jordan B Peterson
それが、なぜあなたの心に引っかかっていたのか、考えたことはありますか?
なぜなら、あらゆる指標で見れば、あなたはすでに多方面において成功していたわけです
たしかに「メジャーリーグ入り」みたいな飛躍はなかったとしても、それでもなぜ、それがあなたを強く突き動かしたのでしょうか?
なぜ、それが他の選択肢を模索する動機になったのでしょうか?
Michael Saylor
こう思ったんです── 「これが全てなのか?」って。
もっと何かあるはずだと。
僕は世界を変えたかった。
スタート地点では、世界を変えられると思って始めるじゃないですか。
でもある時点で、自分が“世界のニッチな一部”の2%くらいの需要を満たしただけで終わったと気づく。
それはもう成熟したキャッシュカウ(現金を生むだけの安定企業)になってしまっていて、世界は僕に対して「もう君の出番は終わった」と告げているように感じたんです。
Jordan B Peterson
その「野心」は、どこから来たと思いますか?
Michael Saylor
それは、母の影響が大きかったと思います。
僕の最初の仕事は新聞配達でした。
1978年のオハイオ州デイトンの大吹雪の中で新聞を配っていました。
ある時、「デイトン・デイリーニュース」紙の優秀な新聞配達員を選ぶコンテストが開催されることになったんです。
そこで母は、僕をそのコンテストに応募させるために、応募用の冊子を一冊作ったんです。
「私は音楽もやってる」「本もたくさん読んでる」「ゲームもする」…いろんな僕の面を詰め込んで。
たぶん、母は僕のことを“神の贈り物”だと思っていたんじゃないかな(笑)。
僕自身は、「デイトンの優秀な新聞配達員」になることが人生の頂点だなんて思っていなかったけれど、母にとってはまさにそのくらいの意味があった。
そして実際、僕はそのコンテストで2位になったんです。
Jordan B Peterson
お母さんは、あなたを信じていたんですね?
Michael Saylor
ええ、彼女は僕のことを「この地球上で最もすごい人間」だと思っていた。
「君は世界を変える存在だ」と。
Jordan B Peterson
フロイトの母親も同じように思っていたそうです。
それが彼にとって大きなアドバンテージになったと彼自身が語っています。
本当に、揺るぎない信念を持ってくれる親がいることは、ものすごく大きな意味を持ちますよね。
しかも、その信念が実際に本人の特性を正しく見抜いていた場合には、なおさら。
Michael Saylor
僕は確かに、頭は良かったんです。
普通に成績もトップでした。
でも、オハイオ中部の公立小学校で1番だからといって、それが“世界を変える人間”になれるという統計的根拠になるわけではありませんよね。
それでも母は、それを信じてくれた。
彼女はそれを僕に“刷り込んだ”んです。
だから僕の中では幼い頃から、自分は「できる」とプログラムされていた。
つまり、親のような“インスピレーションの源”が、自分の中に「できる」と思い込ませてくれたわけです。
Jordan B Peterson
それは「野心」だったと思いますか?
それとも「問題解決能力に対する自信」だったと思いますか?
──この2つは、実は全然違うんですよ。
たとえば、前者なら自己陶酔に近くなる可能性もある。
でも後者なら、どんな壁にぶつかっても「打ち破れるはずだ」と考えるようになる。
Michael Saylor
たぶん、その両方があったんでしょうね。
僕の母の影響があって、そして父もまた強く影響を与えてくれました。
父は空軍の軍曹で、朝6時半には「地面に足をつけろ!(=さっさと起きろ)」と言うような人でした。
それが、労働倫理ですね。
Jordan B Peterson
なるほど、それが労働倫理と。
Michael Saylor
そうです。父は「一直線に」「真面目に働け」「任務を全うしろ」っていう人でした。
そして母は「私の息子は世界一頭が良くて、地球を変える運命にある」と思ってた。
この二つの影響があったんです。
でもそれに加えて、僕は読書にもハマっていました。
たとえば、ハインライン(※ロバート・A・ハインライン)の小説を読むと、若者が火星に行って、火星人と和平を結んで人類の歴史を変えるような話が出てきますよね。
ああいった作品では、登場人物がみんなインスピレーショナルなんです。
Jordan B Peterson
つまり、あなたはサイエンス・フィクションの中に、ヒーロー神話を見出したということですね。
Michael Saylor
その通り。
ハインラインのキャラクターたちはみんな、自己完結的で、資源を最大限に活用して、逆境に立ち向かう人物です。
Jordan B Peterson
彼はリバタリアンでしたね。
Michael Saylor
まさにそうです。
Jordan B Peterson
左派系の人たちは、彼のことを「ファシスト」だと見なしていましたよね。
僕も驚きましたよ。
13歳の頃、あの小説群に政治的な含意があるなんて思ってもみませんでした。
Michael Saylor
僕もそんなふうには読んでいませんでした。
僕の受け取り方はこうです──
「もし君の住む場所が混雑しすぎて、官僚的なお節介屋が生活の隅々まで口出ししてくるようになったら、それは“新しいフロンティア”を探す時だ」って。
どこか別の場所に行けと。
西へ行くのもいいし、サイバースペースでもいいし。
彼の場合は「宇宙に行け」でしたけどね。
Jordan B Peterson
フロンティアはあらゆるところにありますよね。
あなたは、それを「デジタル世界」の中に見つけたわけですね。
Michael Saylor
そう。
そして── いつだってそれは闘いになるけど、でもその闘いからは、必ず“何か良いもの”が生まれる。
── ハインラインの物語は、どれもそういう構造になっている。
彼の影響が“ある種の人物像”を僕に与えてくれた。
そして両親からも、それぞれ異なる影響があった。
さらに、本を読み進めるうちに、過去の偉人たちの人生にも影響を受けるようになった。
つまり、こうしたすべての影響があって、僕は「自分には何かを成し遂げる使命がある」と思うようになったんです。
だからこそ、2020年を迎えて、僕は大きな分岐点に立っていました。
「この会社を売って、引退して、静かに歴史からフェードアウトするのか?」
それを真剣に考えていたんです。
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