ビットコインの次の大規模アップグレード? / 普及が加速する東南アジアのタイ
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こんにちは、yutaro です。
さっそくですが「BTCインサイト」本日のトピックスはこちら:
ビットコインの次の大規模アップグレード?——OP_CATとOP_CTVの可能性
普及が加速する東南アジアのタイ——ビットコインサンドボックスの試験運用開始か?
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ビットコインの次の大規模アップグレード?——OP_CATとOP_CTVの可能性
(※本記事は、Galaxyに掲載されたGabe Parker氏のブロブ記事ををもとに要約・編集したものです)
ビットコインのプロトコルアップグレードは極めて慎重に行われ、変更には長い期間とコミュニティの広範な合意形成が必要です。
2021年のTaproot以来、ビットコインは大規模なアップグレードを行っていません。
しかし、「OP_CAT(BIP 347) 」と 「OP_CTV(BIP 119)」という2つの提案が、次のソフトフォーク候補として注目されています。
これらの新しいオペコードは、ビットコインのスクリプト言語(Bitcoin Script) にスマートコントラクトのようなプログラム可能性を加え、以下のような用途を実現する可能性があります。
ビットコインL1とL2間のトラストレスブリッジ
高度な自己保管(セルフカストディ)用ボルト
ライトニングネットワークの改善
なぜビットコインにアップグレードが必要なのか?
ビットコインはUTXO(Unspent Transaction Output)モデルを採用しており、トランザクションは「スクリプト」というプログラムで資産のロック・アンロックを管理しています。
しかし、ビットコインスクリプトは非常に制限されたスタックベースの言語であり、「グローバルステート(状態)」 を保持できないため、複雑なスマートコントラクトの実装には限界があります。
これにより、以下のような課題が生じています:
ブリッジの欠如:ビットコインとL2ネットワーク(Lightning NetworkやSidechain)間の資産移動は、依然として中央集権的な管理者に依存している。
セルフカストディの複雑さ:現行のボルトやマルチシグの仕組みは柔軟性に欠け、特定の条件下でのみ機能する。
OP_CAT(BIP 347):データの連結でプログラム可能性を強化
OP_CAT は、2つのデータポイントを1つのスタックに連結(concatenate)し、スクリプト内でより高度な計算を可能にするオペコードです。
✅ メリット:
複雑なスクリプトの簡略化:長大なスクリプトの圧縮により、エラーの発生率が低減する。
zk証明の検証:トラストレスなビットコインブリッジでSTARK証明を検証できる。
❗️ 課題:
Taprootリーフの制御不可:現行のTaproot構造では、OP_CAT単体ではTaprootリーフの固定や内部キーの検証はできない。
OP_CTV(BIP 119):将来の送金条件をロックする
OP_CTV(CHECK-TEMPLATE-VERIFY) は、ビットコインのトランザクション出力に事前定義された送金条件(covenants) をロックするオペコードです。
✅ メリット:
ボルト機能の強化:プライベートキー漏洩時の自動リカバリー機能が向上する。
Lightningチャネルの最適化:多数のユーザーが1回のオンチェーントランザクションでチャネルを開ける。
❗️ 課題:
一般的なコヴナントの制限:OP_CTVは再帰的(recursive)なコヴナントをサポートせず、無期限の制約を課すことはできない。
コヴナントのユースケース:OP_CATとOP_CTVの可能性
1. トラストレスブリッジ(OP_CAT)
OP_CATは、ビットコインとL2のステート遷移を検証するSTARKベリファイアを作成することで、中央管理者不要のブリッジ を実現できます。
また、Taproot WizardsチームはBitVM とOP_CATを組み合わせ、プリサインドトランザクションなしで資産ロックを維持する新しいフレームワーク「CatVM」を提案しています。
2. 高度なボルト機能(OP_CTV)
OP_CTVは、ボルト機能を活用した高度なセルフカストディ を可能にします。
例えば、ハッキングされた場合、資金を別の秘密アドレスに自動的に移動するリカバリーパス を作成できます。
3. 非等価契約(Non-Equivocation Contracts)
OP_CATは、ダブルスペンド時に署名鍵をリークする契約 を可能にします。
0確認トランザクションを行う際に、署名鍵のリークによる担保のスラッシング(Slashable Bond)を実現します。
4. ライトニングネットワークの改善
OP_CAT:チャネルファクトリー によって、オンチェーンのチャネル開設なしにLightningチャネルをオープン可能。
OP_CTV:共有UTXO で、複数ユーザーが1回のオンチェーン取引でLightningチャネルを開設できる。
リスクと懸念点
ビットコインのソフトフォークは、バグや予測不能な副次効果のリスクが伴います。
例えば、SegWitとTaprootのアップグレードが「OrdinalsとInscriptions」の作成を可能にした ように、想定外の利用ケースが発生する可能性があります。
とはいえ、OP_CAT と OP_CTV はすでに広範なテストが行われており、政府の検閲リスク についても懸念は払拭されています。
これらのオペコードでは、送金条件はユーザーによって定義され、外部からの制御は不可能です。
今後の道筋:OP_CATとOP_CTVの実装はいつ?
ビットコインのプロトコル変更には、多くのステークホルダーが関与します。
プロトコル開発者:Bitcoin Core開発者
経済ノード:取引所、カストディアン、マーチャント
投資家:MicroStrategy、ETFプロバイダー
メディアインフルエンサー:Taproot Wizards、X(旧Twitter)
現在、OP_CATとOP_CTVはプロトコルのアイデア段階にあり、メディアインフルエンサーが最も大きな影響力を持っています。
2025年には、Bitcoin Core開発者の間でコンセンサスが形成される可能性が高く、実際の実装には1〜2年かかると予測されています。
ソフトフォークの手続き
BIP 9: マイナーによるシグナルで有効化
BIP 8: 高度なユーザー主導型ソフトフォーク(UASF)
Speedy Trial: 迅速なアップグレード承認のための短期シグナル
最も現実的なシナリオは、Speedy Trial方式 で90%以上のマイナー支持を得た後、6ヶ月間の準備期間を経て2026年頃にOP_CATとOP_CTVがアクティベートされます。
ビットコインの未来を変えるかもしれない2つの提案
OP_CATとOP_CTVは、ビットコインスクリプトに新たな次元のプログラム可能性をもたらすかもしれません。
OP_CAT: zk証明を検証してトラストレスブリッジを実現
OP_CTV: 高度なボルト機能でセルフカストディを強化
これらのアップグレードがビットコインインフラに次の革命をもたらす可能性が高く、今後数年以内にビットコインスクリプトはより高度で安全なアプリケーションの土台となるでしょう。
(※原文はコチラ)
ビットコインの「安全なプログラマビリティ」とEthereumの危険な柔軟性
ビットコインのOP_CATとOP_CTVは、Ethereumのスマートコントラクトが抱える設計上のリスク を回避しつつ、ビットコインのプログラム可能性を高めるという絶妙なバランスを実現するかもしれません。
Ethereumのスマートコントラクトは、チューリング完全 な柔軟性が攻撃の糸口を増やしており、Bybitの最新ハッキング事件(前回の「BTCインサイト」を参照)のような致命的なセキュリティリスクを生んでいます。
一方で、OP_CATとOP_CTV はビットコインのUTXOモデルの堅牢性を維持しつつ、トラストレスブリッジや高度なセルフカストディなど、特定の用途に限定された安全なプログラマビリティ を提供します。
Ethereumが複雑さを追求することで脆弱性を生むのに対し、ビットコインはシンプルさを維持しながら段階的に機能拡張することで、安全性と拡張性のバランスを取っている点が非常に重要です。
普及が加速する東南アジアのタイ——ビットコインサンドボックスの試験運用開始か?
(※本記事は、JAN3のX投稿をもとに要約・編集したものです)
タイ国内ではビットコインの規制と採用が加速
BTC規制の整備:タイは仮想通貨規制の先駆者であり、不動産・観光分野でのBTC決済が合法化される可能性が出てきている。
ビットコインETFの承認:2024年1月には、タイ初のスポット型ビットコインETFが承認され、機関投資家の参入が促進。
仮想通貨サンドボックス:タイ証券取引委員会(SEC)は、2025年末までに仮想通貨サンドボックスを立ち上げる予定をASEAN経済協議で発表。
次なる一歩:プーケットのビットコイン実験
元首相のタクシン・シナワトラ氏(現首相の父親)は、プーケットを「仮想通貨サンドボックス」として試験的に開始する構想を提案しています。
この実験が成功すれば、タイ全土でのビットコイン普及への道が開ける可能性があります。
エネルギー転換への貢献も
タイは現在、68%を天然ガスに依存 していますが、再生可能エネルギーの割合は16% に増加中。
今後のグリーンエネルギー目標に向けて、ビットコインマイニングが普及することでエネルギーの安定供給 に貢献する可能性があります。
(※原文はコチラ)
タイはビットコインの「テストベッド」になるか?
僕はタイに住んでいるので、日常的に現地の経済や社会の変化を肌で感じています。
早期のスポット型ビットコインETFの承認でも見られるように、タイはビットコインに対する社会実装に積極的な国として変化しつつあります。
今後プーケットで行われるかもしれないサンドボックス実験が成功すれば、その変化の流れはライトニングネットワークのように、さらに高速で進むかもしれません。
一方で、エネルギー政策との連携や、人口全体の18%にのぼるアンバンクド層への教育・普及も課題として残されています。
今後、タイがビットコインの「テストベッド」 となり、金融包摂とエネルギー転換の両面で東南アジアのリーダーシップを取れるか注目です。
(先週発生したミャンマー・タイ地震で亡くなられた方々のご冥福を心よりお祈り申し上げます)
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