th_satです。
Diamond Hands Magazine、ビットコインを巡るビジネス面・規制面の動向のまとめです。
ビットコインをめぐるビジネス面の動向(ペイメントや社会生活での利用や、金融機関での金融商品としての取り扱いなど)、規制の動向、その他で気になる個別トピックについて、ゆるく紹介しています。
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それでは、早速直近2週間のトピックを紹介したいと思います。
1. 規制関連の動向
WorldCoinによる虹彩データ収集について、各国のプライバシー当局が懸念(出典1, 出典2, 出典3, 出典4)
英当局ICOが、WorldCoinについて「バイオメトリクスデータの処理など、高リスクになる可能性のある処理を開始する前に、データ保護影響評価を実施しなければならない」とする声明を発表しています。「当該組織は個人データを処理するための明確な合法的根拠を持つ必要がある」とした上で、「同意に依存している場合、同意は自由に与えられ、不利益を被ることなく撤回できるものでなければならない」と述べています(出典)。
また、ケニアでは、内務省が、市民の虹彩データを収集していることを懸念し、現地でのWorldcoinの運営を停止する旨、声明を発表しました。何千人ものケニア人が$49 (£39)の通貨を手に入れようと登録センターに列を作っていることを受け、市民に対してデータを提供することに注意するよう警告しているものです(出典)。
また、ケニア通信庁の声明によると、「バイオメトリック・データの保存方法」「データと引き換えに金銭を提供すること」および「多くのデータが民間企業の手に渡ること」という点で懸念があるとしています(出典)。
その後、ケニア政府が、警察がWorldcoinの倉庫を家宅捜索したことが明らかにされました(出典)。
さらに、アルゼンチン政府も、Worldcoinのデータ収集活動について調査を開始したことが報じられました(出典)。
トピックリスト
米SEC、Coinbaseに対しBitcoin以外の暗号通貨の取引停止を要請したとするFT報道(出典)
米司法省が、Binanceを起訴した場合にFTXのような取引所への取り付けを引き起こし市場のパニックに拍車をかける可能性を懸念している、とする報道(出典)
フランス当局AMF、EUのMiCA対応へ国内の暗号規制の改正を発表(出典)
香港SFC、ライセンスを受けていない仮想資産取引プラットフォーム(VATP)の一部が "不適切な行為 "を行っていると指摘(出典)
日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)、「2024年度税制改正に関する要望書」を政府宛てに提出(出典)
2.ビジネス関連の動向
Riverが考える「2025年のLightning決済」(出典)
Riverが、現在実装されている/積極的に開発されているソリューションに基づいて、Lightningの使用体験を巡る将来の潜在的な姿について考察しています。
現状の課題
決済を送受信するために常時接続していなければならなかったり、テキストなどを介してinvoiceを共有しなければならない等、従来の支払い方法よりも多くのアクションを要求される為、利用者が興味を失う可能性がある。
Lightningノードのセットアップにある程度の技術力が必要であったり、ノードオペレータはチャネル内の流動性のバランスを取る必要がある等、Lightningや関連プロトコルに関する深い技術的専門知識が必要となる。
中央集権的サーバーに依存しない形でのユーザーフレンドリーな標準化された決済方法がまだ無いなど、技術的な問題を解決する必要がある。
Lightningのユーザー体験を巡る将来的な可能性
Splicingの実装が進むことによって、ノードオペレータは、オンチェーン手数料を過剰に支払うことなく、チャネルに資金を追加したり削除したりできるようになる。
LSPもチャネルサイズ変更にかかるコストを省けるため、LSPがサーバーやノードのようなインフラを運営することによって、ユーザーは分かりやすい方法でLightningとインターフェースすることが可能になる。
Lightspark CEOが考えるLightningを使ったソフトウェア開発の難しさ(出典)
LightsparkのDavid Marcus CEOが、「LightningとBitcoinの上でソフトウェアを構築するのは、他のプロトコルで構築するよりも少なくとも5倍は複雑で難しい」とコメントしました。
ビジネス立ち上げにあたり、消費者向けの企業ではなく、世界中のエンドユーザー向けに顧客・パートナー企業が真にオープン・互運用可能・極めて安価な、インターネット上のマネー/ペイメント向けプロトコルを構築する手助けをしたい、と考えたことを述べています。
その上で、基盤となるネットワークとテクノロジーとして、Bitcoinはユニークな性質を持っていると信じているため、Lightningで構築することを決めたとのことです。
しかし、LightningとBitcoin上で構築することは、他のプロトコルで構築するよりも少なくとも5倍は難しい、と述べています。
業界で最も強力なエンジニアリングチームの1つを持っているが、それでもLightningがインターネット上の決済のための標準的なユニバーサルプロトコルになるために必要なことを実現するために何が必要かを学べば学ぶほど、それがいかに難しいかを実感しているとのことです。
KPMGがESGのフレームに照らしたマイニングに関するレポートを発表(出典)
KPMGが、「Bitcoinマイニングは、電力網を安定させ、温室効果ガスの排出を削減するとともに、インフレに見舞われている人々のための金融ツールとして役立っている」とし、「ESGのフレームワークにおいて多くの便益をもたらしているという」旨のレポートを発表しました。
「継続的なアドプションにもかかわらず、Bitcoinは誤解されたテクノロジーと資産クラスであり続けている」とした上で、本稿では、環境・社会・ガバナンスに与えるインパクトを評価するとともに、今なお盛んな誤解を払拭し、BitcoinがESGの枠組みに照らしてどのように位置づけられるかを考察しています。
KATEさんの記事(Diamond Hands Magazine Vol.100)で紹介された内容が興味深かったので、E(環境)・S(社会)・G(ガバナンス)それぞれの視点で概要を紹介します。
まず、E(Environmental:環境面のインパクト)については、Bitcoinがカーボンフットプリントをさらに縮小できるための方法として、「再生可能エネルギー利用」「デマンドレスポンス(送電網インフラが電力消費量急増に見舞われた際に、瞬時にシャットダウンして対応するもの)」「熱のリサイクル(ASICデバイスから発生する熱を住宅や商業施設の暖房に活用)」および「CO2以上に温室効果ガスとして有害なメタンガスの活用」の4つを挙げています。
次に、S(Social:社会的インパクト)については、社会的インパクトに関してBitcoinが提供するものとして、「決済」「ウクライナの危機や自然災害や保護活動への資金援助・資金調達」「余剰電力のマネタイズ」および「金融包摂」の4つを挙げています。
その上で、G(Governance)については、Bitcoinの非中央集権性を強調しています。
「エネルギーグリッドの安定化、温室効果ガスの排出削減、商業施設や住宅への持続可能な熱供給の支援など、ネットワークとそのネイティブアセットを活用する新しく革新的な方法が続々と登場している」とし、Bitcoinは、ESGの枠組みにおいて多くのメリットをもたらすと考えられると主張しています。
「再生可能エネルギーへの移行においてビットコインがどのような役割を果たすか、また、権威ある体制にある人々や著しいインフレに見舞われている人々にとって、Bitcoinがどのような金融ツールとして機能するかは、時が経てばわかるだろう」と結んでいます。
マイニングの環境影響を再評価し脱炭素化の促進する役割があるとする論文(出典)
Bitcoinマイニングの文脈では、PoWコンセンサス・アルゴリズムのエネルギー集約的な性質のために批判されてきた一方、PoWマイニングは、エネルギーグリッドに安定性を提供するために設計された補助サービスを提供できる代替手段として浮上している、との見方を示しています。
Bitcoinマイニングは廃棄ガスの回収という形でサービスを提供できる(現在フレアされている天然ガスの量はBitcoinネットワーク全体の必要量を超えている)ことに加えて、マイナーにとって主要な再生可能エネルギー源である水力発電は、水力発電容量が過剰な地域で抑制された水力発電で特に効果的であり、環境上の利点とエネルギー輸送の問題を解決しているとしています。
Bitcoinマイニングは、エネルギー産業と暗号通貨産業の交差点に潜在的な成長機会を提供するとし、PoWマイニングが増加すれば、再生可能エネルギーが有利になり、脱炭素化が促進される可能性があり、マイニングは需要側のエネルギーグリッド管理に有益である可能性があるとのことです。
柔軟なデマンドレスポンスサービスを提供するBitcoinマイニングの能力と限界を分析した結果、再生可能エネルギーを用いたマイニングは、電力供給の炭素削減効果を促進する可能性があるとまとめています。
トピックリスト
Lightning Network対応店舗リスト(出典)
Bitcoin Beach WalletのBlink、日本語版が間近とのこと(出典)
Binance、Lightning Networkを統合し、通常取引と比較して高速でBTCを入出金できるようになったことを受け、「Bitcoin Lightning Networkの統合について知っておくべきこと」を発表(出典)
Binance、エルサルバドルでBitcoinサービスプロバイダーおよびデジタルアセットサービスプロバイダーのライセンスを取得(出典)
Bitcoin特化したVCによる決済・マイニング・Memecoins・AIへの投資戦略(出典)
Bitcoin Ordinals、7月30日に422,000件のinscriptionsを記録する一方、Bitcoin NFTの販売量は先月より50%近く減少(出典)
CustodiaBank、米ドル預金と米国政府系MMFサービスを米国法人顧客向けに提供開始。Bitcoinカストディーの開始は未だ(出典, 出典)
野村のデジタルアセット事業子会社 Laser Digital Middle East FZE、ドバイでライセンス取得(出典)
マーチャント向けのホスト型Lightning/Bitcoinノードソリューション(ノードプロバイダー)「Nodeless」(出典)
Lightningチャネルを使ってプログラム使用量を予算化した上で、APIを合理的に使用するプログラムを作成できる「SmartSats」(出典)
ブラウザー上で直接実行される初のセルフカストディアルウォレット「Mutiny」はLDKを使って構築(出典)
BOLT12 specification、invoiceよりも小さくより多くの情報を含むことができるLightning QRコードが可能に(出典)
Lightningを巡る直近のアップデートで誤解になった5つのリスト。「Lightningをノンカストディアルに使用するには独自ノードを実行する必要があり、一般ユーザーにはモバイル利用が不可能である」等(出典)
様子をみながら、少しずつ発信していければと思いますので、よろしくお願いします!