ビットコインとAIは人権を守れるのか / モデル非依存で進むAIエージェント基盤
こんにちは!yutaro です。
さっそくですが、「BTCインサイト」本日のトピックスはこちら:
ビットコインとAIは人権を守れるのか──Patrick Ball氏が語る「証拠」と分散化の重要性
BlockのオープンソースAI「Goose」とは何か──モデル非依存で進むAIエージェント基盤
スポンサー】Lightning Base
Lightning Base でTrezor Safe3とTrezor Safe5の取り扱いを開始しました。
オンラインで匿名配送、もしくは Tokyo Bitcoin Base の物理ショップにて対面で購入することが可能です!
Trezorはハードウェアウォレットのパイオニア企業とも知られ、最新のモデルはセキュアエレメントに対応、ビットコインを含む多くのコインの保管が可能です。
Lightning Baseでは現状国内唯一のTrezorの正規代理店として、国内ユーザー向けに匿名配送で安全、迅速に商品をお届けします。
ビットコインの長期保管にはビットコインに特化した最新ウォレットJade Plusを、アルトコインも同時に管理したいユーザーはTrezorをお勧めします。
TrezorやJadeの購入はLightning Baseからどうぞ。
ビットコインとAIは人権を守れるのか──Patrick Ball氏が語る「証拠」と分散化の重要性
この記事は Presidio Bitcoinが公開したYouTube動画 21 in 21: Patrick Ball on Using Bitcoin and AI to Defend Human Rights をもとに要約・編集しています。
今回のゲストであるPatrick Ball氏は、Human Rights Data Analysis Groupで長年活動してきた統計学者。
彼の仕事は、強制移住、ジェノサイド、戦争犯罪、人道に対する罪、大量殺害といった「国家による暴力」をデータで分析し、加害者の責任追及につなげることです。
暴力の証言を「歴史の記録」に変える
Patrick Ball氏の仕事の出発点は、1990年代初頭のエルサルバドルでした。
彼は人権団体のためにデータベースを作り、約1万件の証言を整理しました。その結果、サルバドル軍の中でも特に責任が重いと見られる100人の将校に関する資料を作成し、最終的に彼らを軍から退かせることにつながりました。
ここで重要なのは、個別の証言をただ集めるだけでは不十分だという点です。
大量暴力の被害者は、1人や10人ではありません。数万人、数十万人、場合によっては数百万人に及びます。その全体像を明らかにするには、証言を統計的に扱い、「どこで」「いつ」「誰によって」暴力が起きたのかを推定する必要があります。
さらに難しいのは、すべての被害が記録されているわけではないことです。
人々が恐れて証言できない場合もあれば、避難している場合もあります。あるいは、すでに全員が亡くなっている可能性もあります。だからこそ、複数のリストを突き合わせ、重複を除き、記録されていない被害者の数を推定する統計モデルが必要になります。
ビットコインは「証拠の時間」を守る
この動画で特に興味深いのは、Patrick Ball氏がビットコインを価格や送金ではなく、証拠のタイムスタンプとして使っている点です。
人権侵害の証拠は、将来的に裁判や公的な調査で使われる可能性があります。
しかし、そのとき相手側はこう主張するかもしれません。
「これはAIで作った偽物ではないのか」
「後から改ざんされたものではないのか」
この批判に備えるため、Ball氏のチームはデータにデジタル署名を付け、ハッシュを保存し、さらにそのハッシュをOpenTimestamps経由でビットコインブロックチェーンに記録しています。
これにより、少なくとも
「このデータはこの時点、またはそれ以前に存在していた」
ということを検証可能にできます。
これはビットコインの非常に重要な使い方です。
ビットコインは単に「お金を送るネットワーク」ではありません。
改ざん困難で、誰でも検証でき、特定の政府や企業の管理下にない公開台帳でもあります。
その性質が、人権侵害の証拠を守るために使われているのです。
なぜビットコインなのか
Ball氏は、他のブロックチェーン技術を広く比較したわけではないとしつつも、ビットコインが自然な選択だったと語っています。
理由はシンプルです。
OpenTimestampsはオープンで、無料で、使いやすく、大量のリクエストにも対応できる。さらに、ビットコインブロックチェーンは広く知られているため、技術に詳しくない人にも説明しやすい。
これは実務上かなり重要です。
裁判、調査委員会、人権団体、支援者、メディアに説明する際、「ビットコインのブロックチェーンに記録されている」と言えることは、複雑な技術説明を大きく簡略化します。
AIは証言を構造化するために使う
一方で、AIの使い方も実用的です。
Ball氏のチームは、自前のGPUサーバーでオープンモデルを動かし、動画や音声の文字起こし、人物の識別、文書抽出、非構造データから構造化データへの変換などを行っています。
目的は、AIで「判断」を丸投げすることではありません。
大量の証言、文書、動画、音声を、裁判や真実委員会、人権侵害の責任追及に使える形へ整理することです。
つまりAIは、バラバラの証言を統計分析に使えるデータへ変換する補助線として使われています。
本当のリスクは「情報漏洩」だけではない
人権分野でAIやクラウドを使う場合、多くの人はまず情報漏洩を心配します。
もちろん、それは重要です。
しかしBall氏がより大きな問題として挙げているのは、ツールへのアクセスを遮断されるリスクです。
政府に批判的な非営利団体が、Google、Amazon、Microsoft、Dropboxのような大手テック企業のサービスに依存している場合、政治的圧力や制裁によってアカウントやデータへのアクセスを失う可能性があります。
これは、人権活動にとって致命的です。
メール、資料、分析環境、記録、財務情報。
そのすべてが中央集権的なプラットフォーム上にある場合、アクセスを止められた瞬間に活動そのものが止まります。
だからこそ、Ball氏はビッグテックのエコシステムから離れ、分散型のツールやプラットフォームを使う必要があると話しています。
分散化は思想ではなく、実務上の防御策
この話は、ビットコイン界隈でよく語られる「分散化」という言葉を、かなり現実的なものとして見せてくれます。
分散化は、単なる思想やスローガンではありません。
権力者に批判的な組織が、証拠、分析環境、通信手段、保存先を守るための実務上の防御策です。
Ball氏のチームは、複数の非営利団体と協力し、分散型のストレージネットワークも構築しています。データは約1GBごとのチャンクに分けられ、OpenTimestampsを含む検証可能な保証を付けたうえで、組織間で共有・保存されていると説明されています。
ただし、使われるにはUXが必要
最後に重要なのは、良い技術だけでは普及しないという点です。
Ball氏は、1990年代から人権団体にPGP暗号化を教えてきた経験を語っています。しかし、多くの団体は「データの安全は生死に関わる」と言いながらも、実際にはWindowsとMicrosoft Wordから離れられなかったと振り返っています。
これは非常に現実的な指摘です。
どれだけ安全でも、既存ツールより使いにくければ、人は移行しません。
ビットコイン、AI、分散ストレージ、人権データ分析。
これらが本当に社会で使われるためには、「安全であること」に加えて、「今使っているものと同じくらい便利であること」が必要です。
(※原文はコチラ)
BTCインサイトとしての見方
今回の動画は、ビットコインの価値を「価格」や「投資」だけで見るのではなく、より広い社会インフラとして考えるきっかけになります。
特に重要なのは、次の3点です。
1つ目は、ビットコインが証拠の存在時刻を守るために使われていること。
2つ目は、AIが人権侵害の記録を構造化し、法的・社会的な責任追及に使われていること。
3つ目は、中央集権的なクラウドやプラットフォーム依存が、人権活動にとって大きなリスクになっていることです。
ビットコインは、すべての問題を解決する万能ツールではありません。
しかし、検証可能性、耐検閲性、分散性という性質は、権力に対して弱い立場にある人々が証拠を守り、声を残すための重要な道具になり得ます。
この動画が示しているのは、ビットコインとAIの組み合わせが「金融」だけでなく、人権、証拠保全、分散インフラの領域でも意味を持ち始めているということです。
BlockのオープンソースAI「Goose」とは何か──モデル非依存で進むAIエージェント基盤
この記事は Presidio Bitcoinが公開したYouTube動画 Goose and the Future of Open Source AI をもとに要約・編集しています。
ビットコイン企業として知られるBlockですが、実はAI領域でも早くから取り組みを進めてきました。
今回のテーマは、単なるAIツール紹介ではなく、オープンソースAI、モデル非依存、分散コンピュート、そしてビットコインとの接点まで含む重要な話です。
Gooseとは何か
Gooseは、Blockが開発したAIエージェントソフトウェアです。
ポイントは、Goose自体がAIモデルではないということです。
ChatGPTやClaudeのような「モデル」ではなく、モデルを操作し、ツールを呼び出し、文脈を管理しながら作業を進めるためのエージェント・ハーネスです。
簡単に言えば、AIモデルに仕事をさせるための実行基盤です。
Gooseは2025年1月ごろに公開され、Claude Code、Codex、OpenClawといった現在よく知られるAIエージェント系ツールよりも早い段階で登場していました。
BlockはSquareやCash Appのイメージが強いため、一般には「AI企業」として見られていません。しかし実際には、Jack Dorsey氏を含め、Blockはかなり早い段階からAIの重要性を見ており、機械学習企業の買収や社内活用を進めてきたと説明されています。
なぜ今Gooseが重要なのか
現在、AIエージェント市場ではOpenAIやAnthropicが非常に強い存在感を持っています。
Claude Codeのような製品は、開発体験として非常に優れています。
しかし同時に、大きな懸念もあります。
それは、特定のAI企業やモデルに依存しすぎることです。
今のAIモデルは、月ごとに勢力図が変わります。
ある月はAnthropicが強く、次の月はOpenAIが追い上げ、さらにGoogleが一気に飛び出す可能性もあります。
この状況で、1つのベンダーや1つのモデルに深く依存するのはリスクがあります。
短期的には、最も性能の良いモデルを柔軟に使い分けたい。
中長期的には、特定企業にデータや業務フローを握られるリスクを避けたい。
この問題意識の中で、Gooseのようなモデル非依存のオープンソース基盤が重要になります。
Gooseの強みは「モデル非依存」
Gooseの特徴は、どのモデルを使うか、どこでモデルを動かすかを柔軟に選べる点です。
クラウド上のフロンティアモデルも使える。
ローカルPC上のオープンモデルも使える。
さらに、Mesh LLMのようなピアツーピアネットワーク上のモデル実行にも対応していく構想があります。
これは非常に大きな違いです。
多くのAIツールは、特定のモデルやベンダーと結びついています。
一方でGooseは、AIエージェントの実行基盤として、モデルの選択肢を開いたままにすることを目指しています。
これは、ビットコインにおける「特定の管理者に依存しない」という思想にも近いものがあります。
Mesh LLMとビットコイン決済の可能性
動画では、Gooseと関連するプロジェクトとして「Mesh LLM」も紹介されています。
Mesh LLMは、ピアツーピアで推論処理を行うためのプロジェクトです。
現時点では、参加者が自分の計算資源を提供する形で動いていますが、自然な次のステップとして、推論に対する支払い機能が考えられます。
ここでビットコインが関係してきます。
AIの推論処理にはコストがかかります。
もし分散ネットワーク上で誰かのGPUや計算資源を使うなら、その対価を支払う仕組みが必要になります。
そこで、ビットコインやLightningを使って、AI推論に対して少額決済を行う未来が見えてきます。
つまり、GooseやMesh LLMのような基盤は、
オープンソースAI × 分散コンピュート × ビットコイン決済
が交差する場所にあります。
Gooseは開発基盤へ進化する
今回の動画で重要だったのは、Gooseが単なるデスクトップアプリから、より広い開発基盤へ進もうとしている点です。
その中心が、**GDK(Goose Development Kit)**です。
GDKは、Gooseの内部コンポーネントをRust APIとして外部に公開し、開発者が自分のAIアプリケーションを構築できるようにするものです。
これにより、Gooseは「1つのAIアプリ」ではなく、さまざまなAIアプリを作るための基盤になります。
開発者はGDKを使って、
自分用のAI開発環境
企業向けのAI業務ツール
特定分野に特化したAIエージェント
モデルを柔軟に切り替えるアプリ
などを作ることができます。
動的モデル選択が重要になる
AIエージェントを使ううえで、今後さらに重要になるのが動的モデル選択です。
すべてのタスクに最強のモデルを使う必要はありません。
高度な推論が必要な作業には高性能モデルを使う。
単純な処理には安価なモデルを使う。
プライバシーが重要な作業にはローカルモデルを使う。
このように、タスクに応じて最適なモデルを選べることが重要になります。
これはコスト面でも大きな意味があります。
毎回すべての処理を最も高価なモデルに送れば、AI利用コストは膨らみます。
一方で、用途に応じて安価なモデルやローカルモデルを使い分ければ、コスト、速度、プライバシーのバランスを取りやすくなります。
Gooseは、この部分をオープンソースで透明に扱える可能性があります。
なぜオープンソースであることが重要なのか
AIエージェントの世界では、モデル選択やルーティングが大きな価値を持ちます。
どのタスクをどのモデルに投げるのか。
どの情報をクラウドに送るのか。
どこまでユーザーが制御できるのか。
ここは今後、多くのAI企業にとって利益の源泉になります。
だからこそ、閉じた企業の中でブラックボックス化される可能性があります。
一方、Gooseがオープンソースであることには意味があります。
ユーザーや開発者が、モデル選択のロジックを確認できる。
必要に応じて調整できる。
特定企業の商業的利益に過度に引っ張られない。
これは、AIが業務の中心に入り込むほど重要になります。
Linux FoundationとSpiralへの移管
GooseはすでにLinux Foundationに寄贈されており、Agentic AI Foundationの一部になっています。
さらに、Gooseのコア開発者6名はBlock内のSpiral組織へ移ったと説明されています。
Spiralはこれまで、ビットコインのオープンソース開発支援で実績を積んできた組織です。
ここが重要です。
Blockの商業的利益だけを優先するのではなく、公共財としてのソフトウェアを育てる。
Spiralはビットコイン領域でその姿勢を示してきました。
そのSpiralがAIにも関わることで、Gooseは単なる企業内プロジェクトではなく、より中立的なオープンソースAI基盤として位置づけられていきます。
(※原文はコチラ)
BTCインサイトとしての見方
今回のGooseの話は、ビットコインそのものの話ではありません。
しかし、BTCインサイトとして非常に重要なテーマです。
なぜなら、今後のデジタルインフラは
オープンソースマネーとオープンソースAIの交差点で発展していく可能性があるからです。
ビットコインは、お金のレイヤーを特定の政府や企業から切り離しました。
一方でAIは、知的作業のレイヤーを大きく変えています。
そのAIが、特定の巨大企業だけに依存する形で進むのか。
それとも、オープンソースで、モデルを選べて、ローカルでも動き、将来的にはビットコイン決済とも接続できる形で進むのか。
この違いは大きいです。
Gooseはその後者を目指すプロジェクトです。
現時点で、OpenAIやAnthropicのようなフロンティア企業と正面から競争する存在ではないかもしれません。
しかし、開発者が自由に使えるAIエージェント基盤、企業がベンダーロックインを避けるための選択肢、そして分散型AIとビットコイン決済をつなぐ土台としては、非常に注目すべき動きです。
ビットコインが「オープンソースのお金」だとすれば、Gooseは「オープンソースAIエージェント基盤」の一つとして、今後のインフラ競争に関わってくる可能性があります。













