Diamond Hands Magazine、水曜日のビットコインニュースまとめです。
今週末はChatGPTが作成した問答にタイムラインを埋め尽くされたという人も多いのでは?すでに登録ユーザー数は100万人突破とのこと。すごいですね。
英語版をちょっと読んだだけですが、文体も内容もかなり高品質という印象。「貨幣と流動性の高い国債の境界線が曖昧になって人々を混乱させているのでは?」に対する回答に大きく頷いたり、ビットコインについても、こちらが期待する答えを高尚なスタイルで提示するなど、読み手を気持ちよくさせるものもあり、思いのほか時間を浪費してしまいました。
このChatGPTを手がけるOpenAIのCEOは、ワールドコインのSam Altmanだそうです。
ワールドコイン、覚えていますか?昨年、虹彩をスキャンするとワールドコインという暗号通貨が無料でもらえると謳い、世界で10万人以上の虹彩データを集めたプロジェクトです。草コインと引き換えに、生体認証に使われる虹彩という、もし不正流出してもパスワードと違って変更できない究極の個人情報を喜んで提供する人が大勢いることに衝撃を受けました。
プライバシーとセキュリティ意識が高く、疑い深いビットコイナーの中には、ChatGPTを使うためのユーザー登録時に電話番号の入力を求められた時点で利用を諦めた人も多いよう。
プライバシーは利便性とのトレードオフというケースは多々あります。便利なサービスを無料で利用するのは大いに結構ですが、隠れた対価として何を差し出しているのかは意識した方が良いと思います。
Diamond Handsコミュニティは国内外の関連企業から支援してもらっています。ありがとうございます!
スポンサーには個別に情報共有やインプットをしたり、ニュースレターやレポート上などで企業ロゴを掲載させてもらっています。
アダプション先進地域アフリカで初のビットコインカンファレンス、Africa ₿itcoin Conference開催中
ダブルJackが相次いでガーナの国旗をtweetしたことから、ガーナで何が起きているのかと思った方もいるのでは?
ガーナのアクラで12/5〜7の3日間にわたり開催中のAfrica ₿itcoin Conferenceには、世界中から70名の登壇者と800人以上のビットコイナーが集まっています。
カンファレンスはライブ配信されているので、ご興味ある方はぜひご覧ください。
登壇者は、アフリカに思い入れの強いJack DorseyのBlock、TBD、Spiralの他、Lightning LabsのStark、StrikeのJack、HRFのAlexなどお馴染みの海外勢に加え、アフリカをベースに事業展開や教育活動をする人たちなどバランスよくラインアップ。
以下、カンファレンスで発表された話題2つを深掘りしてお届けします。
アフリカ農村地帯への電力導入を支援するマイニング企業Gridlessが200万ドルを調達
このシードラウンドをリードしたのは、ビットコイン特化VCとして界隈では有名なStillmarkと、マイニングのクリーンエネルギー転換を推進するJack DorseyのBlock社。
このディールの重要性を理解するには、アフリカをはじめとする途上国の電力事情を知っておく必要があります。
2020年時点でアフリカの電力普及率は50%未満。普及の壁は電力事業に伴う初期投資の大きさと収益の不確実性です。アフリカに豊富な座礁資源を活用した、大規模な送電施設建設を伴わないミニグリッド発電で投資額を抑えても、再エネ特有の需給ピークの不一致、あるいは僻地では需要不足による出力制限や余剰電力が避けられず、持続可能性への不安がつきまといます。投資を躊躇する発電会社は、Gridlessが「buyer of first and last resort(最初と最後の買い手)」として電力買取をコミットすることで、投資回収期間を短縮してリスクを軽減できます。マイニングが消費するのは、あくまでも地域の電力需要を満たした後の余剰電力。Gridlessはマイニングというダイナミック需要を臨機応変に創出することで、地域住民による安価でクリーンなエネルギーへのアクセスを間接的に支援するのです。
Gridlessは東アフリカ出身のエネルギー専門家たちによって今年創設されたばかりですが、すでに水力発電会社ハイドロボックス社とケニアにおける5つのパイロットプロジェクト契約を結び、そのうち3つが現在稼働中。
Diamond Hands Magazine Vol.1でお伝えした、アフリカにおけるビットコイン普及の最大の壁、インターネットに接続できない問題を解決したMachankura同様、Gridlessも途上国特有のニーズをローカル起業家が自ら拾って解決する、また、こうした動きを奨励するため、そして有望市場で先行者利益を確保するために投資家がリスクを取って資金援助する、の一例です。
FTXの件でクリプトやフィアットの醜悪さにうんざりしていたので、こうした健全な資本主義を垣間見れるビットコイン界隈に身を置くことは精神衛生的に良いなと改めて実感しています。
Strikeがアフリカの取引所Bitnobと提携し、米国からアフリカへの即時送金を実現
Strikeの新機能Send Globallyは、まず米国ユーザーによるナイジェリア、ガーナ、ケニア向け送金に限定してリリースされました。送金人はビットコインだけでなく、Strikeに接続した銀行口座のドルを送ることも可能。送信されたビットコインまたはドルは、送付先の現地通貨に即時交換されます。受取人はBitnob口座だけでなく銀行口座への振り込みや、モバイルマネーとしての受け取りを選択できるため、Bitnob口座やライトニングウォレットすら不要です。ライトニングネットワークを使用することで、手数料無料かつ短時間(以下デモ動画では10分)での着金を実現。
アフリカに向けた海外移住者からの仕送り額は、少なく見積もっても年間480億ドル、その半分をナイジェリア向けが占めます。ターゲット市場としては十分な規模では。
Strike創業者兼CEO Jack Mallarsのコメント。
既存金融による国際送金の高額な手数料と着金ラグ、加えて送金対象地域からアフリカを除外するなど、サービス改善意欲のない怠慢が途上国に悪影響を及ぼしています。海外で働くアフリカの人々は祖国の家族にお金を送ることもできない。Strikeはこうした人々が簡単、安価、即時に故郷の家族にお金を届ける手段を提供します。
Bitnob創設者兼CEO Bernard Parahのコメント。
既存金融はアフリカに平等な金融取引機会を提供していない。Send Globallyはアフリカの金融機関をドルの流動性調達プレッシャーから解放します。Send Globallyは米国からアフリカへの最も簡単かつ最も安い価値移転手段です。アフリカの人々は数十億ドルにもなる国際送金手数料を節約できるようになったのです。
Strikeは今回のSend Globallyとは別に、アフリカ最大のP2P国際決済サービス事業者の1つChipper Cashと提携し、アフリカ全土での決済サービスの拡充を目指しているとのこと。
カストディアルであることやKYCが必要なこと、アプリを設計開発をしたエンジニアでなくJackばかり露出していることなどを理由にStrikeに批判的なビットコイナーも開発者を中心に多いですが、私は好きです。ビットコインを使っていることすら気づかせない、こうしたサービスは、マスアダプションに不可欠なビットコインへの親近感と信用を勝ち取る上で重要だと考えています。
Strike創業時から開発者として参加してる知人によると、現在Strikeは120名程度の体制。競合のCashAppなどからデザイナーや開発者を引き抜いているらしいですが、国際展開や4月のマイアミで発表したアメリカのPOS最大手との提携への対応の遅れなどリソース不足は否めないよう。パワーユーザーによるヘビーユースが多く、新規ユーザーの開拓に苦労していたり、マネタイズがなかなか見えないという情報も入ってきており、ビットコイン界隈の期待の星Strikeですらそうだとしたら、他社の状況は推して知るべし。長引きそうな厳冬期に力尽きる企業が続出しないことを祈ります。
ビットコインコア、関連PJの最新情報
Bitcoin Optech Newsletter(日本語版)最新号でチェック。
データ・チャート
ビットコインに関する数値はダッシュボードでチェック。