SECの本格的規制強化がビットコインとクリプト/Web3に与える影響を予想する
SECの件に関しては先週簡単に記事にもして、「SECに振り回されているのは本来おかしい」という話をしましたが、今回はデータも見ながらもう少し具体的に今後こういうことが起こるだろう、というトレンドの考察と予想をします。
SECに証券認定されたコインの運命は?
こちらはSECに証券と名指しで認定されたコインのインデックス価格(赤線)とBTCとETH価格を比較したグラフです。
年始からBTCとETHとほぼ同じ価格トレンドで動きつつ、むしろ若干アウトパフォームしていたSECコインですが、3月くらいから価格の伸びが重くなり、今回のSEC訴訟を受けて急落。BTCÐとの価格パフォーマンスの乖離がさらに大きくなっています。
これは予想は難しくないですが、SECに証券認定されたコインは価格的にもプレッシャーがかかり、中長期でBTCのパフォーマンスを下回っていくと自分も思います。
コインによっては本拠地を海外に移したり、アメリカ人への売買やサービス提供を停止したりすることで生き残るものもあるとは思いますが、結局分散化されていたはずの暗号通貨に明確な管理主体がいるという矛盾、グローバルで運用できなくなるという影響などを考えると、ビットコインとの違いはさらに明確になりますし、価格的にも今後負の材料の方が多いですよね。
一方、2020年12月に先にSECに訴訟されたRipple社ですが、XRPはむしろ最近価格的にも好調で市場で謎の動きが起きる可能性は否定はできないのは付け加えておきます。
(なお、XRPの最近の人気は韓国市場が支えていると韓国の関係者に聞きましたが、いずれにせよ長続きはしないと思っています)
(SEC証券認定コイン:"cardano", "solana", "matic-network", "axie-infinity", "chiliz", "filecoin", "internet-computer", "flow", "near", "ethos", "the-sandbox", "dash", "nexo", "binancecoin", "cosmos", "decentraland", "algorand", "coti")
DeFiも結局SECから逃れられない
SECによる訴訟の影響で、Binance USの取引高は特に落ち込んでおり、Robinhoodでの上場廃止など特に今回SECに証券認定されたコインは大きなダメージを受けています。
その一方で、こういう事態が起きると「やはりDeFiが重要」という話が常に出てきて、規制で締め付けられる集権取引所(CEX)に対して、DeFi、特にUniswapなどの分散取引所(DEX)の利用が増えるという予想をする人も多いです。
ただし、各種統計を見てみると必ずしもCEX→DEXの移行は今回進んでいるようには見えず、自分は結局SECの圧力からDeFiやDEXも逃げられず勢いが落ちていくと思っています。要はDeFiやDEXと言いつつも分散化されているものはほとんど存在しないわけで、SECはそこらへんも攻めてくるだろう、ということです。実際SECは次にDeFiをターゲットにしてくる、という報道も出ていましたね。
まず第一にDEXの今月の取引高は先月のペースを下回っていますし、DEX vs CEXのシェアも今のところ先月に比べて伸びておらずむしろ減少しています。
ただしもう少し長いタイムスケールを見ると確かにDEXの対CEXのシェアは上昇傾向にあるのですが、自分はむしろ今後のSECの動きの予想も加味すれば、中長期で見ると「DEXだから大丈夫」という認識がどこかで崩れて取引高も落ちていくという予想をしています。
もう一つの根拠として、SECにまだ証券認定されていないDeFiやDEX系のコインのインデックス価格を今回のSECコイン価格と比べても、結局ほとんど同じ動きをしているのも興味深いです。
つまり、UniやLinkなどのトークンは証券認定されてないから安心、というよりは、市場のセンチメント的にはこれらのDeFiコインも最終的にSECに証券認定される可能性が高いということを示唆していると言えそうですし、自分もこれらのコインが安全だとは全く思いません。
総合すれば集権的取引所からDeFiへの移行は一部あるとは思いますが、結局分散化されていない大部分のDeFiプロジェクトはSECからの追求を逃れられず、中長期的にはCEX同様失速していくと思います。
ちなみに自分はDeFiとかDEXのコンセプトは基本好きですし応援してるんですが、分散を偽ってるタイプのものが刺されるのは残念ながら当然の帰結だと思います。特に無駄なトークンを発行しているもの。
(DeFiコインリスト:"uniswap", "chainlink", "lido-dao", "arbitrum", "aave", "optimism", "dydx", "curve-dao-token", "maker")
これから中長期的にビットコインのターンなのか?
さて、自分はもう思うともはや2016~2017年くらいから長いこと馬鹿みたいに「クリプトは分散化されていない」「ビットコインとその他のコインは違う」と言った旨のことをずっと言ってきてるわけなので、大きな流れの中では今の動きは当然想定の範囲内です。むしろ強いて言うなら時間かかりすぎだろ、とも思う部分もあります…苦笑
短期の価格の動きなどの予想は今でも難しいですが、足元でビットコインやライトニング関係の企業のモーメンタムが出てきているのも感じますし、中長期で考えると相対的ににビットコインに強気の材料が揃ってきています。
まず一つに、アメリカでのビットコイン回帰現象が起きています。
CoinbaseやBinance US、Robinhoodなど多くのコインを取り扱っている取引所が大きな影響を受けている中、ビットコインだけを取り扱うCash AppやRiverなどのビットコイン取引所のポジションが強くなってきています。
取引高を見ても証券認定されるリスクのあるアルトコインにトレーダーも手が出しづらくなっており、Kaikoによるとアメリカの取引所で2月には41%あった主要アルトコインの取引高は、現時点で28%まで低下しているようです。
また、クリプト系プロジェクトへの投資金額が急速に萎んていたり、クリプトVCがそもそもAIに転向をし始めたり、クリプト、もしくはWeb3への投資環境も急速に悪化しています。
Crunchbaseのデータによれば、2023年のQ1のクリプトVCによる投資額は去年比82%低下しており、SECの締め付けが顕在化してきた今年のQ2移行この数字はさらに下がっていってもおかしくないです。
それに対してビットコイン系の企業への投資はクリプト全般と比べると感覚的にもそこまで影響は受けてないですし、特にライトニング企業の数も増えてきており、それらの企業への投資の話もむしろ増えてきている印象を受けますね。
他にもちょうど今日BlackRockが正式にビットコインの現物ETFを申請というニュースがありましたが、アメリカの既存金融にとって他のコインをタッチするリスクがさらに高くなっており、より安全なビットコインが好まれる動きが加速するでしょう。
みんな大好きいわゆるビットコインのドミナンスチャートですが、コモディティと証券やステーブルコインなど性質の違うものを比べてどうするんだ!、という意味では正直あまりいい指標だとは思わないです。
が、今後多くのコインが証券認定される、また新規のコインの発行が難しくなる、などの状況を考えていくと単純なビットコインの時価総額のシェアも最近復調傾向ですし、今後さらに上がっていく可能性はありそうです。
その他の予想
他の予想としては、クリプトの脱アメリカの動きが強くなり、香港やシンガポールなどのアジアへの移行が始まることで、アメリカ市場の重要性が下がる可能性があります。次回以降これはもう少し細かく指標を考えて考察してみるかもしれません。
他にはステーブルコイン関連で言えば、Coinbaseとアメリカ主体のUSDCやBinanceが支援するBUSDにとってさらに厳しい局面になり、USDTが相対的にさらに強くなるとは思います。
ビットコインとステーブルコインは直接的には関係はないのですが、運営企業や関係者の繋がりなどを考えると、USDTはビットコイン、USDCはイーサリアム、BUSDはBNB/草コイン全般、という一種の代理戦争的な部分があり、その点でもUSDTの強さはビットコインエコシステムの復調とリンクしているとも言えそうです。
結論:「がんばろうニッポン!がんばろうウェブスリー!!」