米大統領が金融機関暗号資産カストディを阻むSAB121の議会不承認に拒否権/米財務省次官「ミキシング取引NPRMはミキシングサービスを禁止するものではない」/Marathon Digitalがケニアと再エネプロジェクト/Xapo BankがLNでデポジット可能に
Diamond Hands Magazine Vol.157
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それでは、早速直近2週間のトピックを紹介したいと思います。
1. 規制関連の動向
米大統領、金融機関が暗号資産カストディに参加することを法外に高価にすると懸念が示されている米SECの職員会計公報第121号(SAB121)を議会が不承認とした決議案に対して、拒否権を発動(出典1, 出典2, 出典3, 出典4, 出典5)
「金融機関が仮想通貨の保管サービスを提供することを阻む可能性がある」として議会が米SECの見解(SAB121)に対して不承認と定めたこと(H.J.Res.109法案)に対して、米大統領が拒否権を発動しました。
まず、米SECのスタッフ会計公報「SAB121(Staff Accounting Bulletin No.121)」は、エンティティがプラットフォーム利用者のために保有する暗号資産の保護義務の会計処理において考慮すべき解釈指針についてスタッフの見解を表明するものです(発効日:2022年4月11日)。(出典1)
「プラットフォームユーザーの暗号資産を保護し、暗号資産へのアクセスに必要な暗号鍵情報を維持する上では、技術面・法律面および規制面のリスクといった、暗号資産以外の資産の保護にはない固有リスクや不確実性が伴い、これらは、企業の運営や財務状況に重大な影響を及ぼす可能性がある」としています。
「暗号資産がどのように発行、保有、または譲渡されるかをサポートする技術的なメカニズムや、他人のために暗号資産を保有することに関する法的な不確実性によって、エンティティには、財務上の損失リスクの増加などが生じる」とのこと。
そのため、「暗号資産へのアクセスに必要な暗号鍵情報の維持を含め、プラットフォームユーザーのために保有する暗号資産を保護する責任を負う限り、当該エンティティは、プラットフォームユーザーのために保有する暗号資産を保護する義務を反映する負債を貸借対照表に計上すべき」であるとしています。
参考:KPMGによるSAB121に関する解説レポート(2022年4月発行。2024年5月改訂)(出典2)
このSAB121については、厳格な報告要件が課せられるため、金融機関が仮想通貨の保管サービスを提供することを阻む可能性があるという懸念が指摘されていました。
上記法案に対する議会の決議案を受けて、米大統領が拒否権を発動するにあたり、指摘した課題意識は以下のとおりです。(出典1)
「SAB121は、暗号資産を保護する特定の企業の会計義務に関するSECスタッフの技術的な見解を反映したものである。これに対して、H.J.Res.109法案は、「SECが適切なガードレールを定め、将来の問題に対処する能力を不適切に制約することになり、会計慣行に関するSECの権限を弱体化させる危険性がある」との見方を示している。
その上で、「こうした消費者と投資家を保護する適切なガードレールは、暗号資産イノベーションの潜在的な利益と機会を活用するために必要であり、消費者と投資家の福利を危うくする措置を支持しない」として、決議案に拒否権を行使することを宣言している。
なお、米SECのMark Uyedaコミッショナーは、SECがSAB121を発行する際に行政手続法に基づく標準的な規則制定でなく、規制命令というアプローチをとったことについて、「司法審査を事実上回避することになり、行き過ぎた行政国家に対するチェック&バランスを弱めることになる」旨、懸念を表明しているとのことです。(出典5)
米財務省次官、FinCENの「ミキシング取引NPRM」は、ミキシングサービスを禁止するものではないとの見方示す(出典1, 出典2, 出典3, 出典4)
米財務省次官が、オースティンで開催されたConsensusカンファレンスにおいて、「FinCENが2023年に提案した、VASPにミキシングを伴うトランザクションの報告を義務付ける提案(ミキシング取引 NPRM)は、透明性を高めるためのルール案であってミキシングサービスを禁止するものではない」との見方を示したことが報じられました。また、「暗号資産ユーザーの金融プライバシーに対する願望には共感するものの、テロ資金供与を可能にすることなくプライバシーを強化する方法を見つけるべきである」との課題意識も示されたとのことです。(出典1)
ここで、FinCENが2023年10月19日に提案した、「兌換仮想通貨のミキシングの透明性を高め、テロ資金供与と戦うための新たな規制」について、見てみます。(出典2)
国際的な兌換仮想通貨ミキシング (CVCミキシング) を主要なマネロンの懸念のある取引のクラスとして特定する規則制定案通知 (NPRM) を発表したものとされています。
世界中の様々な違法行為者によるCVCミキシングサービスの広範な使用によってもたらされるリスクを強調し、悪意のある行為者による使用に対抗するために、CVC ミキシングに関する透明性を高める規則を提案しています。
米国愛国者法第311条に基づく権限を、マネロンの主な懸念事項である一連の取引をターゲットとするために初めて用いたものであるとのことです。
国際的なCVCミキシング活動を取り巻く透明性の欠如は深刻なマネロンおよび国家安全保障リスクであるとした上で、この活動に関連する透明性の向上は、違法行為者が米国および世界の金融システムにアクセスできないようにするための重要な要素である、としています。
こうした背景のもと、規則制定案通知(NPRM)は、対象となる金融機関に対して、米国内または米国外の管轄区域が関与する CVC ミキシングが関与していることを知っている、疑っている、または疑う理由がある場合の、取引に関する情報を報告することを義務付けるもの、となっています。
米FinCENが、2023年10月23日に、国内金融機関および国内金融機関に対して、兌換仮想通貨 (CVC) ミキシングを含むトランザクションに関する特定の記録保持および報告要件の実施を要求することを提案するものとして発行した規則制定通知 (NPRM) の詳しい内容については、こちらを参照ください。
このNPRMについては、2024年1月に、Samourai Walletが、米FinCEN(金融犯罪取締ネットワーク)によって発表された「ミキシング取引 NPRM」について、「正当な経済的プライバシー権を不当に侵害」「標準的なセキュリティ慣行をもミキシングとして扱い、ユーザーの財産を保護する能力を容認できないほど制限することになる」「”CVCミキシング”の定義は広範すぎる」および「より効果的なアプローチを追求すべき」とする書簡を、連名で発表していました。(出典3)
なお、米財務省が5月に発表した、「2024年テロ資金供与対策およびその他違法資金供与対策のための国家戦略」においても、Supporting Action 4のセクションで、「仮想資産活動に関する規制要件と監督枠組みの更新を検討する」旨が示されており、この中でも上記NPRMについて「違法資金の流れを不明瞭にするために使用するプロセスをターゲットとする」ものである旨が、言及されています。(出典4)
"FinCEN は、米国愛国者法第311条に基づく権限に基づいて、国際的な兌換仮想通貨ミキシング (CVCミキシング) を主要なマネロン懸念取引のクラスとして特定する規則制定案通知(NPRM)を発行した。"
"この特定は、ランサムウェアエコシステムのプレーヤー、ならず者国家のアクター(rogue state actors)、およびその他の犯罪者が違法資金の流れを不明瞭にするために使用するプロセスをターゲットとするものである。"
米SECが義務付ける統合監査証跡(CAT)が本格運用開始(出典1, 出典2)
米SECが義務付けた統合監査証跡 (Consolidated Audit Trail:CAT) が、5月31日に完全に運用開始されました。
米国で処理されたすべての株式および上場オプションの注文と取引に関する情報を含む、取引データベースとなるものであり、米国のすべての個人投資家の証券会社の顧客の個人情報 (PII) 、すべての年金基金・投資信託その他の機関投資家の口座識別情報が含まれる、とのことです。
デジタルアセット市場の参加者に関しては、この情報にはトランザクションID やウォレットアドレスが含まれる可能性が指摘されています。ディーラー規則制定を踏まえると、「ディーラー」と「取引所」は、デジタルアセットユーザーの情報をCATに報告することが義務付けられることになることが懸念されています。
トピックリスト
米下院、デジタルアセット市場の規制を目的としたFIT21法案を賛成279反対136で可決(出典)
米下院、FRBによる監視志向のCBDC発行を禁止する中銀デジタル通貨反監視国家法を可決(出典)
ブラジル中銀、仮想通貨の規制フレームワークを年末までに発表へ(出典)
2.ビジネス関連の動向
Marathon Digital、ケニアにおいてBitcoinベースの再エネプロジェクトを最適化するグリーンデータセンターのステアリングコミッティおよびフレームワークの設立に合意(出典)
デジタルアセットコンピューティングを活用するMarathon Digital Holdingsが、ケニアのエネルギー石油省と契約を締結し、ケニア全土でのエネルギー利用をサポートし、再生可能エネルギー プロジェクトを最適化することを目指す旨を発表しました。
この提携は、エネルギーセクターの持続可能な成長をサポートするという 取り組みを強調するものであり、同社の世界規模での事業多様化に向けた幅広い戦略の一環として位置付けられているとのことです。
(Marathon Digitalがケニア政府と交わした、未活用エネルギーリソースの収益化に関するMoUは、こちらを参照)
具体的には、契約条件に基づいて、政策面・科学面・技術面およびプロジェクト投資に関する専門知識を交換した上で、断続性や季節変動により余剰エネルギーを生み出す再生可能エネルギープロジェクトを最適化する方法をに関する理解を深める、としています。
両者で合同のステアリングコミッティを設立し、エネルギー関連プロジェクトの開発と実施を確実にするとのことです。
海外からの投資が$80 mを超えると見込まれるこの事業を通じて、ケニア経済に経済的利益をもたらし、地元のエネルギーセクターのエコシステムに収益をもたらすことが期待されています。
Xapo Bank 、Lightning Networkを介したBitcoinのデポジット可能に。ライセンス銀行としては初とのこと(出典, 出典2)
Xapo Bankが、Lightning Network経由のBitcoinデポジットをサポートする最初の認可銀行となりました。
具体的には、Lightsparkを介した、Lightning Networkを使用してBotcoinをデポジット可能になり、この際、Xapoは Lightning Network経由でデポジットするユーザーに手数料を請求しないとのことです。
この取り組みは、Xapoが昨年Lightning Network決済のサポートを導入したことに続くものとなりますが、Xapo経由で実行されたLightning Network決済の数は 2024年2月から3月にかけて44%増加しており、中でもアルゼンチンとブラジルのユーザーがそれぞれ取引の29%と14%を占めているとされています。
「Xapo Bank は Bitcoinのアダプションを増やすというミッションを掲げて設立され、ほぼすべての人がBitcoinを保有する世界を思い描いており、Lightning は、日常の買い物にBitcoinを使えるようにすることによってBitcoin ネットワークを変革するものであり、Bitcoin の普及を促進するための究極のステップである」としています。
そのため、「Lightningを通じて Bitcoin に日常的にアクセスできるようにすることと、規制された銀行の堅牢なインフラを組み合わせることが、マスアダプションを達成するための重要なステップである」と考えているとのことです。
「Lightning Networkに関しては、そのインテグレーションとメンテナンスが難しいと言われるが、Lightsparkとの強力なパートナーシップをもって、3週間もかからずにLightning Networkのインテグレーションができ、Lightning トランザクションを維持するためのシームレスなインフラができた」と述べています。
「Bitcoinのトランザクションフィーが1トランザクションあたり140$を超える水準(2024年4月時点)に達する中、Lightning Network経由でBitcoinを取引できるようにすることによって、高額な取引手数料を支払うリスクがなくなるほか、即時の送信を体験できるメリットが期待できる」としています。
RobinhoodがBitstampの買収を発表(出典1, 出典2)
Bitstamp は 2011 年に設立され、ルクセンブルク・英国・スロベニア・シンガポールおよび米国にオフィスを構えています。
Bitstamp のグローバル規模の暗号通貨取引所が Robinhood に加わることによって、EU・英国・米国およびアジアの個人および機関顧客が利用可能になることが期待されています。
Bitstampは、信頼性の高い取引執行、豊富な注文書、業界をリードする API 接続により、機関投資家から信頼を得ていることから、この買収により、Robinhood初の機関ビジネスが誕生するとしています。
トピックリスト
BTCPayドキュメンタリー「MYTRUSTINYOUISBROKEN」の動画YouTubeで公開(出典)
Boltz、Chain Swapsをリリース。Liquidとメインチェーンの間で、双方を通常のオンチェーントランザクションとしてスワップ可能に(出典1, 出典2)
Nunchukが発表した、家族むけBitcoinウォレット「Finney」。One Person, One Keyを謳っており、自分の家族にバックアップ・キーまたはバックアップ・キーを持たせることによって、2-of-3や3-of-5のマルチシグが可能(出典)
株式会社DMM Bitcoin|【重要】暗号資産の不正流出発生に関するご報告(第一報)(出典)
株式会社DMM Bitcoin|【重要】暗号資産の不正流出発生に関するご報告(第二報)(出典)
OCEANマイニング、エルサルバドルに事業開発のグローバルハブを設立(出典)
ビットコインETF、機関投資家1千社保有 米年金も参入(出典)
Bitcoin企業にとって最も困難な課題は、生き残って利益を上げることだけでなく、BTCで見たエクイティ価値を高めることであると(出典)
ForbesのLightning記事(出典)
Bitcoin Standardに対応する専用の会計プラットフォーム「Clams」。ウォレットともインテグレート(出典)
米NYSE、CoinDesk Indicesと協業でCoinDesk Bitcoin Price Index (XBX)に連動するオプション契約の開発へ(出典)
米ウィスコンシン州投資委員会、Bitcoin ETFがポートフォリオの0.1%を占めているとのCoindesk報道。第1四半期にBlackRockのiShares Bitcoin TrustとGrayscaleのBitcoin Trustの株式を$164m購入(出典)
様子をみながら、少しずつ発信していければと思いますので、よろしくお願いします!