RGBの発展はビットコインとライトニングにどのような影響を与えるか?
去年から取り組んでいたRGBウォレット「Shiro Wallet」のα版をようやく一般公開しました。詳細は以下のPR Timesの記事をご確認ください。
ビットコイン上でのトークン発行と送受信 Diamond HandsがShiro Walletのα版をリリース
また、あたらしい経済さんにも今回のリリースについて記事にしていただきました。
ダイヤモンドハンズ、RGBプロトコル対応「Shiro Wallet」α版リリース
さて、ここまで来るに当初の想定より時間がかかってしまって若干つらい部分もあったのですが(よくあることですが、思ったより開発が進まなかったり、想定してないことが起きたり‥)、まあなんとか後半は小川さんを中心にリリースまでこぎつけました。なお、開発面で大変だった部分や、技術的部分の所感や知見は小川さんが別途記事にしてくれると思います。
実際にShiro WalletをUmbrel上にインストールし、RGBトークンの発行や送信などをテストするやり方はこちらのSpotlightの記事を参考にして欲しいです。
さて、去年フルグルジャパンからの開発支援を告知した時に、「RGBというものをもう少し理解するためにもやってみる」的なことを言っていたと思うのですが、その後色々自分でも開発者から話を聞いたり、RGB開発のいわゆる中の人達と話したりしてわかってきたことや、印象が変わった部分などについてこちらのニュースレターでも簡潔に一部紹介します。
RGBやTaro、ビットコイン上のClient-Side Validationプロトコルの概要については今年すでにレポートを出しているので、そちらを是非確認してください。
RGBの開発は想像していたよりちゃんと進んでいる
去年RGB開発に携わる前のRGBの個人的な率直な印象というと、「色々ライトニング上でトークン発行とかやろうとしていたけど、何かあんまり進んでなさそう。(最近出てきたTaroの方が頑張ってそう)」という感じでした。何となくそんな風にまだ考えているビットコイナーも全体として多そうです。
そこから、上記のレポートをまとめる上で少し調べていった結果、「RGBとTaroは技術特性やアプローチ、目的が結構違うので、案外共存するかも」「特にRGBの方はトークンの送受信だけではなくより汎用的なコントラクトを目指しているのでポテンシャルは高そうだけど、やっぱり複雑そうだな」と若干印象が変わってきました。
そしてそこからさらに色んな人に話を聞いたり、開発の状況を見ていった結果現状の自分の理解は、「RGB、思った以上に開発は進んでいるし、関わっている人たちも全体的にレベルも高いし、これは結構可能性あるのでは?」と個人的に少しづつ印象が良くなっていっている感じです。
特にRGBとTaro両方を調べた開発者何人かに話を聞いても(それぞれバイアスはありますが)、全体としてRGBの技術はかなりしっかりしている、というような回答をする人も多いですし、特にこの数ヶ月RGBはライトニングに対応したノードを公開したり、大きなプロトコルアップグレードVer0.1をリリースしたり、かなり活発で、RGBに関心を持つ関係者や開発者も地味に増えてきています。
とはいえまだ時間がかかる
RGBインフラ開発は最近静かに盛り上がってきており、Shiro Walletも含めて複数の対応ウォレットが出てきたりしているのも事実ですが、とはいえやはりまだまだ新しい規格であり、スコープも大きいので安定して稼働するにはもう少し時間がかかりそうです。これは正直に。
実際にウォレット上でRGBトークンをライトニングで安定して動かせるようになるのに、普通にやったら1年半〜2年、場合によってはもっとかかるんじゃないでしょうか。
とはいえ、ここらへんもノンカスディアル型で完全にトラストレスにやるのか、一部カストディアル型を採用して色々制約をつけるのかで話は変わってきますし、少なくとも実験的な運用であればもっと早く実現できるとは思うので、それは付け加えておきます。
特に今回のShiro Walletの開発に思ったより手こずったのにも色々理由はありますが、周辺ツールの整備や、開発者向けのドキュメンテーションなどにはまだまだ課題がありますし、ここらへんは小川さんにもう少し突っ込んだ話は後でしてもらう予定なのでそれを見てください。
RGBマーケティング下手すぎくないか‥?
もう一つの特徴として、RGBは全体的にマーケティングやコミュニケーションが下手です‥笑自分もちょっと心配になるレベルで、ちょっとアドバイスというかコメントしたりすることがありますが、良くも悪くもマイペースって感じであまり今後もすごい改善はしない気がしますね。
とはいえ、ドキュメンテーションや情報集約は前に比べれば改善してきているようで、先日RGB関連の情報をまとめた新しいRGB Techのサイトが出来たり、色々細かく頑張っている部分はあります。
また、マーケティングにあまり力を入れていないのは一部意図的な部分もあるようで、あくまでオープンソースコミュニティなのでそこまで過度なアピールやマーケティングをするより開発で進捗を示していきたい、という文化も感じますね。
まあRGBはマーケティングがもっと上手ければもっと注目されているような気もしますが、何より一番大事なのは技術設計や、開発が進んでいるか、だとは思うのでRGB流で今後も進めていくんでしょう。また、開発進捗に対して注目がなさすぎて、逆にそれで注目されるような現象が最近起き始めている気もします笑
そもそもなぜビットコインにスマートコントラクトは必要なのか?
RGBはClient-Side Validation型の新しいスマートコントラクトの仕組みであり、これが完成するとビットコインでも既存のイーサリアムなどに近い形のスマートコントラクトなどが実行出来るようになります。
実際にはイーサリアム型とCSV型では優位性も向いているユースケースは違うと自分は理解していますが、それでもビットコインのブロックチェーンを利用して出来ることが増えていく、というのは非常に重要なテーマだと思います。
特に最近ちょっと流行っているビットコイン上のNFTプロトコル「Ordinals」を見ていても思いますが、好きか嫌いか、合理的に正しいかどうかは別として、多くのユーザーや開発者は案外「オンチェーンで何が出来るのか」を重視するような傾向ある気がしています。
なので、ライトニングのようなオフチェーンプロトコル上での送金やトークンスワップは今後重要になるのは間違いないですが、その中でRGBのようなClient-Side Validation型のコントラクトでオンチェーンとライトニング、両方でビットコインの機能を拡張していくというのはエコシステム全体でも重要だと改めて思う部分もあります。
ビットコインは別にその他のコインを真似をする必要もなければ、そもそものコンセプトや目指しているところ、分散性などが違うのは言うまでもないですが、「ビットコインでスマートコントラクトが出来ない」というようなある種ちょっと浅い批判がRGBなどが成熟していくことでなくなっていくかもしれませんね。
それで言うと、Ordinalsが出てきたことで、「ビットコインでNFTが出来ない(から魅力がない)」とか、「マイニング報酬が将来足りなくなる」とか言う批判はあまり聞かなくなった気がしますね。
という前提と理解をしつつも、何周回っても同時にやはりビットコインにとって一番重要なのは、ビットコインというアセット自体の送金性能や有用性を上げることだと自分は思っている部分は正直にあります。
トークン発行やNFTなどがビットコインで出来るようになるのは悪いことではないと思いますが、やはり自分が一番ワクワクするのはビットコインというアセット自体を軸としたアプリケーションや金融レイヤーが出来ていくことで、その点では例えばLightningとNostrの組み合わせで起きていることなどは興味深いですよね。
ここらへんいついてはまた別の機会でもう少し細かく考察しようと思います。
とりあえず今回はこんな感じで、RGBのShiro Walletにようやく一つの目処がついたので、是非それをいじってもらったり色々質問してもらえれば。
始め方については関連記事を再度貼っておきます。
https://spotlight.soy/detail?article_id=lxk5l9av7