量子コンピュータでビットコインを「取り戻す」べきか?/ ビットコインは個人、企業、そして国家へ(River)
量子コンピュータの現実味が増す中、「失われたビットコイン」は誰のものかという議論が再燃しています。
同時に、ビットコインは今や個人から国家レベルの資産へと進化しつつあります。
こんにちは!yutaro です。
さっそくですが「BTCインサイト」本日のトピックスはこちら:
量子コンピュータでビットコインを「取り戻す」べきか?——Jameson Lopp氏が問う根本的なジレンマ
ビットコインは個人、企業、そして国家へ——Riverによる最新レポート
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量子コンピュータでビットコインを「取り戻す」べきか?——Jameson Lopp氏が問う根本的なジレンマ
(※本記事は、Jameson Lopp氏のブログ記事をもとに要約・編集したものです)
問われるのは「財産権」か「公平性」か
量子コンピュータの脅威が現実味を帯びつつある中、仮にそれが実現した場合、これまで誰にも使われなかった「失われたビットコイン」や、量子暗号に対応していないアドレスに保管されたコインを、勝者が手にして良いのか?という問題が浮上しています。
この問題に対して、Lopp氏は明確に「ノー」の立場を取る。
彼は、「量子マイナー」によるビットコインの回収は、財産の再配分(wealth redistribution)であり、基本的な暗号経済のルールと理念を損なうと警告します。
問題の本質:「凍結」か「略奪」か
量子コンピュータで危険に晒されるのは、サトシ時代のアドレスだけではありません。
過去に同じアドレスから送金したことのある多くのウォレットが、すでに公開鍵を晒しており、これらも攻撃対象になり得ます。
このとき選択すべきは2つのうちどちらか:
危険なアドレスを事前に凍結(バーン)して誰もアクセスできないようにする
量子コンピュータを持つ者が自由に取得できる状態にしておく
後者を選べば、世界で最初に量子支配を手にした国や企業が数十万BTCを「合法的に」奪うことになるかもしれません。
しかも、その負担は現保有者すべてに降りかかります。
ビットコインの根本哲学に対する挑戦
この問題が厄介なのは、ビットコインが持つ基本的価値観と衝突するからです。
「自分の鍵、自分のコイン」(Your keys, your coins)
政治的・技術的な中立性
保守的なアップグレード方針(Conservatism)
「鍵を持っていない人は所有権を失う」という暗号通貨の原則は、量子攻撃者の存在によって根本から揺らぎます。
そして、そのルールを事後的に変えることもまた、ビットコインらしさを損なうリスクがあるのです。
焼却の正当性と現実的な落とし所
Lopp氏は「焼却(バーン)」が倫理的にも実務的にも妥当な選択肢だと提言しています。
その理由は以下の通り:
放置すれば量子保有者による不当な利得が発生し、市場の信頼を損なう
暗号破壊により正当な所有者すら失うケースが出る
技術的に可能でも、それが正義であるとは限らない
具体的には、ソフトフォークによって量子非対応のスクリプトを無効化し、強制的にバーンする。
事前に1〜4年の移行猶予を設けることで、ほとんどのユーザーは問題なく移行できると想定されています。
コミュニティの覚悟が問われる局面
量子攻撃によって大量のコインが市場に出回れば、価格下落や信頼崩壊を招く恐れがある。
しかもその影響は、資産を守ったユーザーにも及びます。つまり、怠った者が得をする構造が生まれてしまうのです。
それを防ぐには、「早く備えた者が報われる」構造を保つ必要があり、そのための唯一の手段が危険なコインの無効化(バーン)だとLopp氏は述べています。
(※原文はコチラ)
信頼の重みを守るために
量子コンピュータはまだ未来の技術ですが、それがもたらす倫理的・経済的インパクトは今から備えておくべき問題です。
もしこの問題を放置すれば、ビットコインは一部のプレイヤーによって略奪され、市場の信頼と倫理性を失う可能性すらあります。
逆に、冷酷な判断を下すことで、全体の公平性と信頼を守る道もある。
「鍵を持っている者が所有者である」という原則を、量子マイナーによって破壊されないようにすること。
それが、今の僕たちに求められている選択なのかもしれません。
ビットコインは個人、企業、そして国家へ——Riverによる最新レポート
(※本記事は、RIverによる調査レポートの一部をもとに要約・編集したものです)
なぜ今回の強気相場は「これまでと違う」のか?
ビットコインは、史上最速で広まった貨幣形態です。
しかし今、その拡大は個人の投資を超え、国家レベルの金融インフラに入り込もうとしています。
最新のRiverレポートでは、以下のようなトレンドが明らかになりました:
国家レベルでの保有/採掘が急増
Lightning Networkによるインフラ強化
グローバルな法規制の緩和と支援の広がり
18カ国がビットコインを保有/採掘
Riverの調査によると、少なくとも18の国家が何らかの形でビットコインを保有していると推定されています。
内訳は以下の通り:
<直接購入>
エルサルバドル:6,000 BTC
<国家主導のマイニング>
ブータン(11,700 BTC相当)
アルゼンチン、ブラジル、エチオピア、イラン、オマーン、ロシア
< 押収による保有>
米国(198,000 BTC)
英国(61,000 BTC)
中国、フィンランド、ベネズエラなど
<政府投資による間接保有>
アラブ首長国連邦(4,700 BTC)、
ノルウェー、スイスなど
<ハッキング・窃盗によるもの>
北朝鮮(778 BTC)※本日時点13K以上に増加
< 寄付による取得>
ウクライナ(戦時支援による寄付BTC)
世界的に進む規制緩和と制度整備
2020年以降、47カ国でビットコインへのアクセスが拡大しています(ETF承認、決済合法化、銀行でのカストディ容認など)。
米国:2025年に銀行でのカストディ許可
ロシア:2024年にマイニングと国際決済での使用を合法化
アルゼンチン、ナイジェリア、トルコ:ビットコイン決済を合法化
香港:投資家のアクセスを公式に認可(2023年)
一方で、わずか4カ国が規制を強化。
例として中国は2021年にマイニングを部分的に禁止、ベネズエラは2024年に全面禁止に踏み切りました。
Lightning Network:インフラとしての拡張
River社によると、2019年からLightning Networkを通じて700万件以上の取引をルーティングし、年間数兆円の価値が移動しています。
公開Lightning取引量は 1年間で266%増加
2023年の調査では 取引件数が1,212%増加
現在はより高額な取引が中心に
さらに、カバー率も向上し、2023年時点で全体の52%だったデータ対象が、今回は79.4%に拡大。
これは制度・商業両面での採用が進んでいる証左です。
「売らない人たち」が増えている?
ビットコインの55%は自己保管(セルフカストディ)
採掘済み全体の 59%に相当
この層は「売らない」、むしろ「価格が下がった時に買う」
金は供給が安定、ドルは毀損、ビットコインは希少性で勝つ、という明確なシナリオが意識されていることが伺えまる結果となりました。
(※原文は コチラ)
日本は「静観」するも、世界は「導入」へ
今回のRiverレポートでもわかるように、複数国においてビットコインはすでに国の制度や企業の資産戦略に組み込まれているのが現実。
日本では、依然として「投機的資産」「税制が未整備」などの課題に意識が向きがちですが、世界は着実に準備資産・決済インフラとしての制度化を進めています。
この動きを無視することは、未来の競争力を手放すことに等しい。
ビットコインは、未来の準備資産であると同時に、未来の責任資産でもあるのだと改めて実感しました。
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