Hormuz Safeとは何か──USDT凍結後に浮かび上がったビットコインの使われ方
「ホルムズ海峡を通過する船舶が、ビットコインで海上保険に加入できる」
そんなかなり大きなニュースが出てきました。
報じられているのは、イランが立ち上げたとされる「Hormuz Safe」という国家支援の海上保険プラットフォームです。
ホルムズ海峡は、世界のエネルギー輸送にとって極めて重要な場所。
EIAによれば、2024年にホルムズ海峡を通過した原油・コンデンセートの84%、LNGの83%はアジア向けで、中国、インド、日本、韓国が主な行き先でした。
つまり、この海峡で物流が止まれば、アジアのエネルギー価格にも直結します。
そんな場所で、ビットコインを使った海上保険の仕組みが出てきたのは、単なる「暗号資産決済」の話ではありません。
国際物流、海上保険、エネルギー輸送、制裁、そしてビットコインが交差する、かなり特殊な事例です。
こんにちは!yutaro です。
本日の「BTCインサイト」では、イランが立ち上げたと報じられている「Hormuz Safe」という海上保険プラットフォームについて取り上げます。
先に書いておくと、この記事はイランの政策や行動を肯定するものではありません。
見たいのは、国の評価ではなく、発行体のあるUSDTと、発行体のないビットコインが、強い政治的圧力のもとでどう違う振る舞いをするのかという点です。
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Hormuz Safeとは何か
報道によれば、Hormuz Safeは、ホルムズ海峡やペルシャ湾周辺を航行する船舶向けに、ビットコインで海上保険を提供する仕組みであり、
船会社などがビットコインで保険料を支払い、暗号学的に検証可能な保険証書を受け取る。
そうした構想だと報じられています。
Business Insiderは、イラン政府系メディアのFars News Agencyが、イラン経済財務省の文書をもとにこの構想を報じたと伝えています。
同記事では、Hormuz Safeによって最大100億ドル規模の収益を見込む構想である一方、国際船社が米国制裁リスクを恐れて利用を避ける可能性も指摘されています。
つまり、これはまだ完成した「ビットコイン活用事例」ではありません。
現時点では、不確定な部分がかなりあります。
どれほどの船会社が利用するのか。
保険として本当に機能するのか。
保険金の支払いまでビットコインで行われるのか。
国際的な制裁リスクを船会社がどう判断するのか。
このあたりは、まだはっきりしていません。
ただ、それでも注目する価値はありそうですよね。
なぜなら、今回のニュースは「ビットコインがどのように使われるのか」を考えるうえで、かなり象徴的な事例だからです。
USDT凍結が示したもの
今回の背景として重要なのが、イラン関連とされる数億ドル規模のUSDTが凍結された事件です。
Chainalysisは、米財務省外国資産管理局(OFAC)がイラン中央銀行に関連するとされる暗号資産アドレスを指定し、
過去最大規模となる3.44億ドル相当のTether凍結につながったと説明していました。
ここで見えてくるのが、USDTという仕組みの強さと限界です。
USDTは便利です。
米ドルに連動しているため、価格変動が小さい。
国際的な取引でも金額を把握しやすい。
銀行を直接通さずに送金できる。
取引所やOTC市場でも広く使われている。
だからこそ、アフリカや中南米をはじめ世界中で使われています。
しかし、USDTには発行体があります。
これは欠陥というより、ステーブルコインの構造そのものです。
米ドルに連動する以上、発行体、銀行口座、準備資産、規制当局との関係から完全に自由ではいられません。
普段は、その仕組みが信頼になります。
でも、制裁や法執行が絡むと、それは凍結可能性にもなりえるのです。
ここが、ビットコインとの大きな違いです。
一方でビットコインには、特定の発行体がありません。
Tether社のような企業もなければ、中央銀行もありません。
誰かが中央から供給量を変えることもできません。
発行体の判断で、特定のアドレスだけを凍結することもできません。
もちろん、ビットコインを使えば法的リスクが消えるわけではありません。
取引所に預けていれば、口座凍結や差し押さえの対象になる可能性はあるでしょう。
自己管理をしていても、使う場所や換金する場所で規制の影響を受けることもあるでしょう。
それでも、プロトコルそのものに発行体がない。
この一点は、USDTとは決定的に違います。
今回、Hormuz Safeでビットコインが使われると報じられている背景には、この違いがあると考えられそうです。
ビットコインは便利だから選ばれるとは限らない
ここで大事なのは、ビットコインが「便利な決済手段」だから選ばれたわけではない、という点です。
平時であれば、USDTの方が使いやすい場面は多いのかもしれません。
価格は安定している。
会計処理もしやすい。
相手にも説明しやすい。
ドル建てでそのまま考えられる。
一方、ビットコインは価格が動きますし、送金手数料もネットワーク状況によって変わります。
また受け取る側にも、ウォレット管理や換金の知識が必要です。
つまり、単純な使いやすさだけで見れば、ビットコインが常に勝つわけではありません。
それでも、今回の事例が示すように、特定の場面ではビットコインが浮上します。
発行体に止められたくない。
銀行に依存したくない。
ドル決済圏の外側で価値を送受信したい。
特定の企業や政府の判断に左右されたくない。
こうした条件が重なると、ビットコインの不便さよりも、止めにくさの方が重要になります。
Hormuz Safeのニュースが面白いのは、まさにここです。
ビットコインが「日常でいちばん便利だから」ではなく、「他の金融レールが政治的に止まる場面で、最後に残る選択肢として」出てきています。
ここに、このニュースの本質があるのではないでしょうか。
Hormuz Safeだけではない、大規模なビットコイン活用事例
Hormuz Safeはかなり特殊な事例です。
ただ、ビットコインが大きなスケールで使われる場面は、実はこれだけではありません。
むしろ近年の事例を並べてみると、ビットコインは「日常の買い物」よりも、もっと大きな領域で先に使われ始めているように見えます。
※ビットコイナーのみなさんにはとっては当たり前に知っている事例かもしれませんが、ここではいくつか取り上げさせていただきます。
ブータン:余った水力発電をビットコインに変える
まず、ブータンです。
ブータンは豊富な水力発電を活用し、国家レベルでビットコインマイニングに取り組んでいます。
Reutersは、ブータンの政府系投資会社Druk Holding & Investmentsが、水力発電を使った暗号資産マイニングを経済成長や雇用創出につなげようとしていると報じました。
これは、ビットコインを「電力の輸出手段」として使っている事例とも言えます。
普通、電気は送電網がなければ遠くに売れません。
需要地が近くになければ、余った電力は十分に活用できません。
しかし、ビットコインマイニングであれば、電力をその場でビットコインに変えられます。
山奥の水力発電でも、遠隔地の余剰電力でも、インターネットにつながれば世界市場に接続できる。
この意味で、ブータンの事例は「国家 × エネルギー × ビットコイン」の代表例です。
Hormuz Safeが「物流と保険の詰まり」から出てきた事例だとすれば、ブータンは「エネルギーをどう収益化するか」という文脈で出てきた事例です。
ただし、ブータン政府はマイニングしたビットコインをすべて売却中だと言われています。
エルサルバドル:国家の準備資産として持つ
次に、エルサルバドルです。
エルサルバドルは2021年にビットコインを法定通貨として採用したことで注目されました。
ただその後、IMFとの関係もあり、ビットコイン政策は一部縮小されており、
IMFは、ビットコインの法定通貨化が金融包摂やデジタル送金の促進には十分つながらなかったと分析しています。
ですが、ここでは改めて冷静に見返してみましょう。
エルサルバドルのビットコイン政策は、日常決済としては期待ほど広がらなかった部分はあるかもしれません。
しかし、それで終わったわけではありません。
Reutersは2025年時点で、エルサルバドルがビットコインの戦略的準備資産を保有し続けていることを報じています。
IMFプログラムのもとで政策は調整されましたが、国家がビットコインを準備資産として持つという事例は残っています。
つまり、エルサルバドルの本当の論点は「国民全員がビットコインでコーヒーを買ったか」だけではありません。
国家が、ドル以外の準備資産としてビットコインを持つ。
この意味では、かなり大きな実験と言えそうです。
ウクライナ支援:戦時下の資金調達
もうひとつ重要なのが、ウクライナ支援です。
ロシアによる侵攻後、ウクライナ政府や支援団体は、ビットコインを含む暗号資産で寄付を受け付けました。
Ellipticによれば、親ウクライナ系の暗号資産寄付は2.12億ドル超に達し、そのうち公式のウクライナ政府ウォレットには8,330万ドルが集まったとされています。
これも、ビットコインの使われ方を考えるうえで重要ではないでしょうか。
戦争や混乱の中では、銀行送金がいつも通りに動くとは限りません。
国境を越えた支援金の送金にも時間がかかりますし、場合によっては、口座開設や中継銀行の問題も出てきます。
もちろん、これはビットコインだけの話ではなく、支援にはETHやステーブルコインも使われました。
それでも、「発行体のいない止められないお金 = ビットコイン」で支援する点においては、Hormuz Safeにも繋がる事例です。
ビットコインの活用事例は、日常決済だけでは測れない
ここまで見てくると、ビットコインの活用事例はかなり幅広いことがわかります。
Hormuz Safeは、海上保険。
ブータンは、エネルギー収益化。
エルサルバドルは、国家準備資産。
ウクライナ支援は、戦時下の資金調達。
どれも、いわゆる「ビットコインコーヒーを買う」のとは違います。
ここが重要です。
ビットコインの価値は、日常決済の便利さだけで判断すると見誤るかもしれません。
もちろん、日常的に使えることも大切ですし、僕もできるだけLightning決済を日常生活に取り入れるようにしています。
ただ、ビットコインが最も強く見えるのは、既存の金融インフラから止められてしまう場面なのかもしれません。
銀行が使えない。
ドル決済にアクセスできない。
発行体のある資産が凍結される。
準備通貨だけに依存したくない。
こうした場面で、ビットコインが選択肢として出てくる場面が増えていて、Hormuz Safeはその中でもかなり大規模な事例になりそうです。
では、Hormuz Safeは本当に大きな事例になるのか
一方で、これはまだ僕は慎重に見ています。
報道通りに進めば、Hormuz Safeはビットコイン史上でもかなり大きな活用事例になる可能性があるかもしれません。
ホルムズ海峡という世界有数のエネルギー輸送ルート 。
そこを通過する船舶向けの海上保険。
しかも保険料の支払いにビットコイン。
発行体のあるUSDTが凍結された直後の流れ。
材料だけ見れば、かなり大きいですが、実際に船会社が使うかどうかは別問題なのかなと思っています。
米国制裁のリスクを考えれば、国際船社が積極的に利用するとは限りません(だからこそのビットコインではあるのですが・・)。
保険証書が暗号学的に検証できたとしても、保険として信頼されるには本当に通過できるのか、という現実的な課題もあります。
だから、現時点では「ビットコイン最大の活用事例」と断定するより、最大級の活用事例になる可能性がある構想程度に見ておくのが妥当かもしれませんね。
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