BIP-110とベースレイヤーをめぐる論争 / ビットコインは、未来に何を残すのか
ビットコイナー反省会 Ep.116 がYouTube公開されました!
>> たかが32ビットコイン、されど32ビットコイン ビットコイナー反省会 Ep.116
こんにちは!yutaro です。
さっそくですが「BTCインサイト」本日のトピックスはこちら:
Jack Kruseが警告する「ビットコインへの攻撃」── BIP-110とベースレイヤーをめぐる論争
ビットコインは、未来に何を残すのか ── Tony Yazbeck基調講演(Pro向け)
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Jack Kruseが警告する「ビットコインへの攻撃」──BIP-110とベースレイヤーをめぐる論争
本記事は、BTC Pragueで行われたJack Kruse氏の講演 Jack Kruse Reveals How Fast The Bitcoin ATTACK is SPREADING... の内容をもとに要約・編集したものです。
「ビットコインは攻撃されている」という強い警告
BTC Pragueのステージで、Jack Kruse氏は非常に強い言葉で警告しました。
彼の主張はシンプルです。
ビットコインは攻撃されている。しかも、その攻撃は偶然ではなく、長い時間をかけて準備されてきた。そして、その攻撃はビットコインのベースチェーンに「余計な情報」を積み上げる形で進んでいる。
Kruse氏は、この問題を医療現場の「morbidity and mortality conference(死亡・合併症検討会)」になぞらえます。
医師が重大な判断をしたとき、その判断は後から厳しく検証されます。目的は個人攻撃ではなく、同じ過ちを繰り返さないためです。
Kruse氏は、ビットコインにも同じような検証が必要だと訴えています。
誰が、どのような判断をし、その結果ビットコインに何が起きているのか。
それを感情ではなく、原則に照らして見直すべきだという立場です。
Landauerの原理と「余計な情報」の問題
講演の中心にあるのが、Landauerの原理です。
Landauerの原理は、情報処理と物理的エネルギーの関係を示す考え方として知られています。
Kruse氏はこの考え方を使い、ビットコインのベースチェーンに不要な情報を積み上げることは、単なるデータの追加ではなく、
システム全体の利用可能性を損なう行為だと主張します。
彼が問題視しているのは、OrdinalsやInscriptions以降に強まった「ビットコインのブロックチェーンに何でも刻める」という流れです。
ビットコインのベースチェーンは、世界中のノードが検証し続ける共有台帳です。
そこに金銭的な送受信や所有権の移転とは直接関係のないデータが増え続ければ、ノード運用コスト、ブロックスペースの利用、手数料市場、将来のL2利用に影響が出ます。
Kruse氏は、これを単なる迷惑行為ではなく、ビットコインの長期的な機能を低下させる攻撃だと見ています。
もちろん、この見方には議論があります。
「手数料を払っているなら自由に使える」という考え方もあります。
一方で、「ベースチェーンは高価で希少な決済・検証レイヤーとして守るべきだ」という考え方もあります。
今回の講演は、後者の立場から非常に強く警鐘を鳴らしたものです。
BIP-110とは何か
講演の最後にKruse氏が強調したのが、BIP-110です。
彼は、8月5日に自分のノードでBIP-110を実行すると述べ、聴衆にも同じ対応を促しました。
ここで重要なのは、BIP-110を単なる技術提案としてではなく、ビットコインの社会的防衛策として位置づけている点です。
Kruse氏の見方では、ビットコインの防衛線は開発者や企業だけにあるのではありません。
ノード運用者こそが、ビットコインの最終的な免疫システムです。
どのルールを受け入れるのか。
どの実装を走らせるのか。
どのようなデータの使われ方を許容するのか。
これを決めるのは、最終的にはノードを運用する人たちです。
ビットコインは誰か一人の開発者、企業、カンファレンス主催者、メディア、政治家によって守られるものではありません。
検証する人がいるから守られます。
Kruse氏の講演は、その点を改めて強調しています。
「オシフィケーション」をどう見るか
Kruse氏は講演の中で、「ossification(オシフィケーション)」という言葉にも強く反応しています。
オシフィケーションとは、ビットコインのルールやプロトコルが硬直化し、変更が極めて難しくなる状態を指します。
この言葉には、ビットコイン界隈でも複数の見方があります。
一方では、オシフィケーションは望ましいものだと考える人がいます。ビットコインの最大の価値は、ルールが簡単に変わらないことだからです。
発行上限、検証可能性、分散性、不変性を守るには、ベースレイヤーの変更には極めて慎重であるべきです。
しかし、Kruse氏は別のリスクを見ています。
もしベースチェーンが不要なデータで埋まり、L2や将来の利用に必要な柔軟性まで失われた状態で硬直化すれば、
それはビットコインを守るどころか、ビットコインの機能を弱めることになる、という主張です。
つまり、彼が恐れているのは「守るための硬直化」ではなく、「汚染された状態での硬直化」です。
この視点は、議論に値します。
ビットコインは無闇に変えるべきではありません。しかし、どの状態で固定されるのかは重要です。
ベースチェーンが何のためにあるのか。
ブロックスペースは誰のためのものなのか。
L2のための土台として、どのような性質を維持すべきなのか。
ここが本質的な論点です。
メディア、イベント、開発者への不信
Kruse氏の講演には、特定の人物や組織への強い批判も含まれています。
彼は、ビットコイン関連メディア、カンファレンス、トレジャリー企業、政治的ネットワーク、開発者の一部に対して、強い不信を示しました。
ただし、こうした告発的な部分については、慎重に扱う必要があります。
講演内では多くの関係性や意図が語られていますが、すべてを事実として受け取るべきではありません。人や組織の動機を断定するには、十分な検証が必要です。
一方で、Kruse氏が提起している構造的な問題は無視できません。
ビットコインが大きくなるほど、そこにはメディア、イベント、資本、政治、企業、金融商品が集まります。
その結果、ビットコインの語られ方そのものが、特定の利害関係者によって影響を受ける可能性があります。
これは陰謀論として片づけるべき話ではなく、ビットコインが成熟するにつれて避けられない問題です。
誰が物語を作っているのか。
誰がカンファレンスの壇上に立つのか。
誰が開発資金を出しているのか。
誰がメディアを持っているのか。
誰が「これがビットコインの未来だ」と語っているのか。
ビットコイナーは、ここに敏感であるべきです。
ベースレイヤーは何のためにあるのか
今回の講演で最も重要な問いは、ここにあります。
ビットコインのベースレイヤーは、何のためにあるのか。
単に「手数料を払えば何を書いてもいい」場所なのか。
それとも、世界中の人が検証できる、最小限で堅牢な金融・所有権レイヤーなのか。
ビットコインはパーミッションレスです。誰かが使い方を中央で決めることはできません。
しかし、パーミッションレスであることと、どんな使い方もビットコインにとって望ましいと考えることは別です。
ビットコインには、限られたブロックスペースしかありません。
その希少な空間を、決済、チャネル開設、L2のアンカー、長期保管、自己主権のために使うのか。
それとも、任意データの保存場所として使うのか。
この違いは、将来のビットコインの使われ方に大きく影響します。
Kruse氏の主張は極端に聞こえるかもしれません。
しかし、ベースレイヤーの役割を真剣に考え直すきっかけにはなります。
まとめ:ノード運用者が最後の防衛線になる
Jack Kruse氏の講演は、非常に攻撃的で、強い言葉に満ちています。
そのため、すべての主張に同意する必要はありません。特定人物への告発や背景説明については、検証されていない部分も多く、慎重に受け止めるべきです。
しかし、講演が投げかけている中心的な問いは重要です。
ビットコインのベースチェーンを、何のために使うのか。
余計なデータが増え続けたとき、ノード運用やL2の将来にどんな影響が出るのか。
誰がビットコインのルールを実質的に決めているのか。
そして、ノード運用者はその流れにどう向き合うのか。
ビットコインは、企業やメディアや政治家によって守られるものではありません。
最終的には、自分で検証する人たちによって守られます。
その意味で、今回の講演は「誰を信じるか」ではなく、「自分のノードで何を受け入れるか」という話です。
ビットコインの強さは、誰かの善意に依存しないことです。
だからこそ、議論が荒れるテーマほど、感情ではなく、自分で調べ、自分で検証し、自分のノードで意思表示することが重要になります。
ベースレイヤーをどう守るのか。
これは、開発者だけの問題ではありません。
すべてのビットコイナー、とくにノードを運用する人に突きつけられた問いです。
(※原文はコチラ)
※BTCインサイトとしては、この講演を否定も肯定もしません。あくまでも一意見として、掲載させていただきました。
ビットコインは、未来に何を残すのか ── Tony Yazbeck基調講演
本記事は、BTC Pragueで公開されたTony Yazbeck氏の講演動画 Is This The Most Powerful Bitcoin Speech in History?! を全文日本語訳しています。
過去数年で、政府はビットコインに対する態度を変えてきました。
最初は、ビットコインを嘲笑しました。
次に、禁止しようとしました。
その次に、規制によって従わせようとしました。
そして今、彼らはもっと危険なことをしています。
取り込もうとしているのです。
お金が政府のものになると、やがてそれはあなたのものではなくなります。
ルールは、あなたを守るために作られたものではありませんでした。
私たちが教えられてきた最も危険な嘘は、「責任はどこか別の場所にある」というものです。
一生懸命働き、ルールに従っていれば、誰かが守ってくれる。
そう教えられてきました。
でも、彼らは守ってくれません。
ビットコインにとって最大の脅威は、もはや政府ではありません。
父が3度すべてを失った話
プラハの皆さん、またお会いできてうれしいです。
調子はどうですか。
昨年、僕はこのステージで「崩壊」について話しました。
システムが壊れたときに何が起きるのか。
一夜にしてすべてを失い、そのとき初めて、ルールは自分を守るために作られていなかったと気づく。その感覚について話しました。
今日は、崩壊そのものについて話すために来たわけではありません。
その後に何が残るのか。
何が生き残るのか。
その話をしに来ました。
でもその前に、もう少し昔に戻らせてください。
僕の父の話です。
僕は、ひとりの男が人生を3度築き直す姿を見て育ちました。
失敗したからではありません。
世界が、何度も彼からすべてを奪ったからです。
最初はレバノンでした。
父にはそこでの暮らしがありました。小さな商売があり、安定があり、未来がありました。
そこへ内戦が起きました。
銀行は閉まり、制度は崩れ、お金は消えました。
父が働いて築いたものは、ただ存在しなくなりました。
だから、私たちは去りました。
そして父は、もう一度始めました。
2度目はマダガスカルでした。
何年もかけて築き直しました。規律を持ち、長い昼と長い夜を重ねながら。
しかし、また別の腐敗した政府のひとつの決定によって、国有化と没収が起きました。
すべて奪われました。
だから、私たちは去りました。
そして父は、もう一度始めました。
3度目はクウェートでした。
ようやく安定し始めたと思ったそのとき、イラクが侵攻しました。
そしてまた、すべてが盗まれました。
3つの人生。
3度のリセット。
3度、ゼロからの出発。
子どものころ、僕はただ、自分たちは運が悪いのだと思っていました。
でも大人になって、もっと恐ろしいことを理解しました。
これは不運ではなかった。
これは、システムが設計通りに動いただけだったのです。
お金が政府のものになると、やがてそれはあなたのものではなくなります。
そして僕を最も悩ませたのは、お金のことではありませんでした。
この問いでした。
人はどうやって、3度すべてを失っても、なお何かを残せるのか。
なぜなら、父はそれでも壊れなかったからです。
恨み深くもならなかった。
世界を責めることもなかった。
築き直す許可を、誰かに求めることもありませんでした。
父が毎回持ち運んだものは同じでした。
技能。
判断力。
規律。
責任。
救済措置はありませんでした。
セーフティネットもありませんでした。
父の損失を誰かが肩代わりしてくれることも、もちろんありませんでした。
父は代償を払い、それでも前に進みました。
父が僕に残してくれたものは、富ではありませんでした。
壊れたシステムを生き抜く力でした。
当時の僕は、それをただの家族の物語だと思っていました。
それが訓練だったとは、思ってもいませんでした。
そして、まさか自分自身が同じ物語を生きることになるとは、想像していませんでした。
2019年、レバノンで僕自身もすべてを失った
2019年、レバノンでそれは起きました。
銀行が私たちの口座を凍結し、政府は肩をすくめました。
医師、農家、親、教師。何百万人もの人が、生涯をかけて貯めたお金が消えていくのを見ていました。
今度は僕が、銀行の列に立っていました。
周りには、すべて正しいことをしてきた人たちがいました。
そして私たちは皆、同じことを言われました。
「申し訳ありません。私たちには何もできません」
その瞬間、僕が築いてきたものはすべて消えました。
没収され、消され、取り戻す手段はありませんでした。
その瞬間、僕は父を理解しました。
頭で理解したのではありません。
存在そのもので理解したのです。
僕は、父がかつて立っていた場所に立っていました。
そのとき、自分の中で何かが切れました。
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