タイのビットコインコミュニティが想像以上に盛り上がっていて、ポテンシャルが高そうだったという話
すでに少し時間があいてしまいましたが、先日までタイのビットコインカンファレンスに参加するためにバンコクに滞在していました。
(反省会定例メンバーが久々にバンコクで集結)
アジアでのビットコインカンファレンス参加は今年3月のベトナム以来です。ベトナムのカンファレンスも色々刺激になりよかったのですが、タイはタイでまた想定外の盛り上がりを見せていたこともあり、旅行記、感想ということで軽くまとめておきます。
ベトナムカンファレンスの感想コラム↓
ところで自分は2016〜2017年くらいを中心に色んな国のビットコインコミュニティを回っていた時期があったのですが、その当時はまだごく一部の関係者やエンスージアストが少人数で何とかビットコインを正しく知ってもらおうと一生懸命、という感じでしたが、今は各国で様子が大きく変わってきています。
特に当時アジアではまだぎりぎりコミュニティと呼べるレベルのものが各国立ち上がり始まったばかりの時期で、(その後消えた人も少なくないですが)その当時草の根で頑張っていた人たちが今各国でビットコインコミュニティの中心になって活躍している、というのは結構感慨深いところもありますね。何もなかった時から知り合った人たちとはその後も親近感とか結束感があるんですよね。
というわけでそれはさておき、タイのカンファレンスは結局どんな感じだったのか、タイのビットコインコミュニティはどういう雰囲気だったのかについて紹介しましょう。
タイカンファレンスは始まるまではめちゃくちゃ不穏な空気が漂っていた
7月にタイで初のビットコインカンファレンスをやるというのは今年の3月くらいには聞いていました。ただ、カンファレンス直前になるまでほとんどスケジュールやアジェンダの情報が出てこなかったですし、チケットもなぜか売り切れてしまった?など色々バタバタやっている感じが強く、正直本当に上手く開催できるのか?というレベルで不安が強かったです。
自分は一応登壇者として主催者から結構前に声をかけてもらっていたんですが、自分の登壇するパネルディスカッションの内容も文字通り直前までほぼ何も知らなかったですし、こんな感じのこと話そうかなー、と適当に直前に考えているだけでした。これはビットコインカンファレンスあるあるなんですが、結構適当ですよね。
また、こちらはカンファレンスの宣伝用ポスターなんですが、何か若干「ビッコネ〜〜〜〜」的な怪しい雰囲気が漂っていてこれも含めてくすっと来てしまうというか、タイぽくてそれも若干不安が漂いましたね、失礼ですが笑
特に南国の緩い雰囲気のタイなので旅行ついでにカンファレンス参加するか、くらいの気持ちで今回はいたのですが、最終的に蓋を開けてみるとイベントは会場も含めて思ったよりかなりしっかり運営されているだけでなく、現地の人たちを中心に数百人規模の人が集まるものすごい活況ぶりで驚かされました。
ちなみに会場となったTrue Digital Parkというのは現地のスタートアップ企業の支援をしたりする施設らしく、最近ちょうど完成したばかりですごくキレイでちゃんとした場所でした。
例えば会場の柱部分に出演者の顔や名前を映像で流したりもしていたり、なんだこの想定外の高級感!?という感じで会場の雰囲気も中々プレミア感ありました。
カンファレンスの内容はどうだったか?
カンファレンスの内容的にはいわゆる他のビットコインカンファレンスと重複するような内容が中心で、そこまで高度な内容の話はありませんでした。内容だけで言えば海外の関係者向けの意味合いが強かったベトナムのカンファレンスの方が充実していたと言えると思います。
ただこれは意識的に初心者なども意識した内容にしたからでしょう。直前でスピーカーの一人が参加できなくなりキシン君が前日夜にいきなりサブとして規制パネルセッションに抜擢されるなど、若干の緩い展開もありましたが(自分もキシン君がセッションで話始めるまで知らなかったので、え?と驚きました笑)、全体としては初心者を意識した幅広いトピックをカバーして上手くまとまっていたとは思います。
ちなみに自分はアジアのビットコインコミュニティパネルと、ルーティングに関するパネルの2つで話しました。そこまで大した話はしてませんが、それぞれ主なポイントをあげるとしたら
各コミュニティでどのようなニーズがあるかなどは違うので、それぞれの文化や市場の性質に合った情報を発信していくのが重要
コミュニティとして教育活動やイベントの開催が重要なのは言うまでもないが、それだけでは不十分。特に関係者の層が薄いアジア地域ではコミュニティリーダーはビジネス世界とのブリッジや雇用の創出などを実現するのも重要になってきているし、自分はそれを意識している。
ルーティングに関しては日本ではたまたまこれがきっかけでコミュニティが立ち上がったが、国によって何が求められているかは異なるのでルーティングにこだわる必要は必ずしもない
ルーティング自体で個人が収益を上げるのは将来的にも難しいかもしれないが、ルーティングを通して新しいスキルを身につけたり、技術的知見をアピールすることでそれが将来的にビットコイン業界で仕事を見つけたりするのに役に立っている部分もある。
ルーティングに関して面白いのは、ライトニングがNostrやその他のビットコイン関連プロトコルをつなぐ存在になりつつあり、その普及を促進してるのがルーティングコミュニティであること。ルーティングがあることでここらへんの普及促進やインセンティブを揃えることができるようになる可能性がある。
こんな感じの話をざっくりしました。
また、現地の雰囲気自体もすごく良く、現地の人たちを中心に数百人が参加しており、席もほぼ満席。また一番朝のセッションから最後まで熱心に聞いてる人たちが多かったのも非常に印象的でした。
ちなみにこんな多くの人達をどうやって集客したのか?という疑問があると思いますが、それは主催で今回のイベントの顔的な存在である「Piriya」さんのYoutubeでの影響が大きかったようです。
彼と直接話して色々聞いたのですが、Piriyaさんは元々教師のバックグラウンドを持つタイ系のアメリカ人(多分)で、英語とタイ語両方ができることを武器に、現地の人向けにタイ語で2015年くらいからYoutubeで情報を発信しており、現在登録者15万人以上の人気チャネルの成長しているようです。反省会は登録者約1.8万人なので、タイ人向けだけでそれの10倍くらいの登録者数になっているのはすごいですよね。
また、去年からLunaやFTXなどアルトコイン関係の崩壊が続いたことにより、それらもきっかけにビットコインに改めて注目するような動きがタイでは起きているそうです。今回のビットコインカンファレンスに参加した人たちの多くもそういう経験を踏まえた上で、「明確にアルトコイン全般ではなくビットコインについて知りたい」というある程度理解度の高いユーザーが多いということでした。
もしPiriyaの言葉をそのまま信じるなら、これは中々面白い現象です。ちょっと言い方が悪いですが、いくら失敗してもわけのわからない草コインに突っ込み続ける人たちや、なぜかビットコイン(ビットコイナー?)を逆恨みするような人も多い日本より、タイ人は結構素直なんじゃないか、というのが自分の勝手な印象です。(タイ人の特性についてはあまり詳しくないので勘違いの可能性も大いにありますが)
ちなみに彼は他にも今回のカンファレンスのホストであるRight Shiftという企業も運営しているようで、こちらはタイの市場向けにコンテンツ発信や書籍の翻訳、グッズ販売などを主にやっているようです。
まあイメージしやすい形で言うと、ビットコイナー反省会やDiamond Handsを通して自分が日本でやっていること(メディア、リサーチ、イベント開催、コミュニティマネジメント、開発…)にかなり近いことをタイでやっている、とでも思えば十分だと思います。
もはやバッジャー君のライバル的なゆるキャラすらあるようあるので、完全にライバルですね笑何かじわじわ来ます。(バッジャー君もグッズ作りたい…)
タイは隠れたビットコイン大国になりつつある?
今回のタイのカンファレンスは現地の人たちの参加者数が圧倒的に多く、二日目のワークショップにも朝から多くの人が熱心に話を聞いており、ボトムアップな関心を強く感じました。この頭数や地元ユーザーからの熱気というのは他のアジアの国と比較した時にもタイの市場の大きな優位性になっていると思います
また、タイの市場向けにビットコインやライトニング関係のサービスを提供している事業者もすでに存在しており、クオリティはともかくとして数だけで言えば日本より全然進んでいる部分もありました。やはり教育活動なども重要ではありますが、何かしらライトニングを使ってプロダクトやサービスを提供している事業者がすでに複数存在しているのは非常に重要な事実だと思います。
さらにタイは優秀な外国人居住者の存在も大きく、例えばUmbrelのFounder&CTOもタイ在住、他にも界隈で名の通った起業家や開発者で実はタイに住んでいる人たちは少なくないです。
(Umbrelの新しいプラダクトUmbrel Machineをいじるジョーさん)
また、タイの場合それらの外国人勢と現地の人たちが上手く混ざり始めているようで、バンコクのビットコイン関連の起業家や開発者の交流のハブになっているBOBスペースというコワーキングスペースが現地の起業家と外国人グループをつなぐ重要な役割を果たしている印象を受けました。
実は日本にも同様にBTCPayserverのNicolaなど日本在住の著名な開発者などはいたりするのですが、現地の日本人コミュニティとのメッシュがあまり上手くいっていないような気がしています。タイはここの部分を少なくとも日本よりは上手くやっており、それがタイの市場のポテンシャルや面白さをさらに引き上げています。
日本とタイは比べてどうか?タイから学べることは?
日本とタイの比較、また日本のビットコイン市場の課題や足りてない部分などに関してはそれだけでも結構長くなってしまう話題なので、それは次回以降また別途考察しようと思います。
とりあえず言えることとしてはタイのビットコイン市場は自分が想定したよりはるかに進んでいましたし、日本は歴史的にはその他の東南アジアの国と比べると取引高やユーザー数、リテラシーの高さなどでリードしていましたが、うかうかしているともう完全に全面的にこれらの国にも負けてしまってもおかしくない、という危機感を全体としてもう少し持った方がいいかと思いました。
その他気づいたことや小ネタなど
タイのご飯はおいしい。ただデザートはそうでもない。
特に調子を乗って食べたドリアンアイスがゲロマズだったのでみなさんお気をつけください笑物価は買うものによるが日本よりはまだ安い。ただ以前と比べると高くなってそう。
バンコクは色々無茶苦茶な街です
これも有名ですが、バンコクは良くも悪くも自由を極めてしまった感じで乱れまくってます。それはそれで面白いんですが、長くいると人間をだめにしそうな感じはしますね笑(とりあえずこういうネーミングセンスだけで笑わせられる看板がたくさんある)
チェンマイはすごい良さそう
ビットコイン系の開発者や起業家でチェンマイに住んでいる人が複数人カンファレンスにも来ており、チェンマイいいよね、という話で盛り上がってました。自分もチェンマイは次回タイに行ったときに行ってみたいと思います。ビットコイン決済は違法らしいけど、問題なくできる
タイでは厳密にはビットコインを使った決済は違法という話は前から聞いてましたし、結構有名なのですが現地でライトニング決済できるお店は実はちょこちょこあります。みんなまあダイジョブっしょって感じで勝手にやっているのが個人的にはタイらしくて好きですね。逆に言えば日本人は良くも悪くも真面目すぎる気がしますね。チルしていきましょう。大麻がビットコインより先にマスアダプションしている
タイでは少し前から大麻(マリファナ)が解禁されたようですが、いたるところに大麻が吸えるお店がたくさんありました。自分が数年前にバンコクに行った時はそういうお店は一つもなかったというか、大麻の規制はかなり厳しかった記憶があるのですが、1年くらいでここまで大麻が普及しているのは驚きました。ビットコイン完全に負けてますね笑