1週間ちょっとのベトナム遠征を終了し、今台湾に戻る飛行機の中で色々頭の中で振り返りをしながら、今回感じたことについて記事を書き始めています。
結論から言うと、カンファレンスの内容やスピーカーのラインアップも良かったですし、参加者とのネットワーキングや意見交換など含め非常に有益なイベントで大いに刺激を受けました。
カンファレンスでは自分は2つのセッションに登壇しました。
一つはアジアでのビットコイン普及とコミュニティ形成に関するパネルディスカッション、もう一つはライトニングのルーティングに関するものです。カンファレンスのセッションは全て後でYoutubeで公開されるそうなので、興味のある人はそちらを見てください。
こちらの記事はカンファレンスの内容というよりは、現地で感じたことや印象などの部分について忘れないうちに一部書き出しておくためのものです。他にも色々思うところもありますが文章で全て書くのは大変なので、後で動画などで別途話すかもしれません。
ベトナムのカオスの中で改めてビットコインのポテンシャルを感じる
自分はベトナムには実は以前からちょくちょく行っており、まだベトナムでビットコインに関してほぼ無風だった時から現地のビットコインコミュニティともかなり密に交流してるので、現地の雰囲気もその他の国に比べるとよく理解しています。ベトナム料理も好きですし、個人的には最も好きな国の一つです。
(2016年1月に現地のビットコインミートアップで撮った写真。痩せている‥)
ただコロナの影響もあって今回ベトナムに行くのは3年ぶりくらいで、今ビットコインや仮想通貨の現地での事情はどうなっているのかをキャッチアップする意味合いも兼ねた訪問でした。
結論から言えば、ベトナムという国の特殊な事情を理解しつつ、ビットコインの可能性やポテンシャルを再認識する機会になりました。久しぶりに、「あーそうだよ、ビットコインはこういうものだよ」というような新鮮な気持ちを味わえましたね。
まずベトナムは既存金融があまり上手く機能してません。
ご存知の人も多いと思いますが、両替やATMでのキャッシングするたびに手数料を大量にとられますし、クレジットカードを使える場所は増えてきていますが裏で色々手数料を細かく掠め取られます。ビットコイナーはその度に普通の人より更に不快感と敗北感を感じるのは請け合いです。
また、現地通貨のベトナムドンはインフレし続けており、日常用品も10万や100万ドンなど非常に単位が大きいです。これは豆知識ですが、ビットコインの最小単位である1Satoshiは実はすでに1ドンより価値が高い状態なんですよね。
ベトナムはカオスです。
一回行けばわかりますが、信号機がない道を車をかき分けながら渡ったり、原付バイクが反対車線や歩道を爆走していたり、謎の場所に勝手に露店を立てていたり、基本何でもありな状態です。ルールはあってないようなものですが、あれで何となく社会が成り立っているのもすごいですね。
自分はそういうのがむしろ好きで久々にベトナムの雰囲気を味わいましたが、カオスの中でそれぞれ強かに生きている感じがすごいですね。生命力の高さ感じます。
ベトナム人は政府や銀行を信じていません。
巷では今銀行崩壊や金融危機が懸念されていますが、ベトナム人はそもそも元々そんなのに慣れっこで最初から政府も銀行も信じてません。その点ではこれから想定される世界を先取りしてある種自己責任の世界ですでに生きています。
ベトナムに行く度に思うのですが、社会主義国家であるはずが何か社会全体がそもそも日本よりよっぽど分散化されている気がしますし、国民全員が潜在的ビットコイナーのようなものです。
ベトナムは隠れた仮想通貨大国です。
世界中で色んな調査が行われていますが、ベトナムは仮想通貨の保有率が非常に高い国の一つです。
ただし、現地の人に聞くと日常的にビットコインや仮想通貨について話す人はほとんどおらず、みんなこっそり仮想通貨を買ったりトレードしているようです。
それは政府を信じていないことにも繋がりますが、要は仮想通貨を保有していることを他の人に知られても得することはあまりないということを理解した上で、静かにベトナムドンのインフレ対策や自己防衛をしているわけです。なお、現地でドンで一番よく買われる通貨はビットコインではなく、USDT(テザー)です。
ベトナム人はリスクを取ります。
自分の生活の糧になるなら何でもすぐに取り入れますし、若年層が多いこともあり役に立つなら変な偏見もなく新しい技術を恐れずに使っていきます。そしてそのスピードも速いです。仮想通貨の(隠れた)普及率が高いのもここらへんが理由の一つだと思います。
同時にベトナム人は現実的です。
ビットコインでもシットコインでも道端に落ちている犬の糞でも役に立つなら使いますし、どんなコインでも価格が上がればGood coinで、価格が下がればShitcoinです。
ベトナムは仮想通貨大国と言いましたが、現状ではビットコインやライトニングというよりは、その他のコインのトレードやエアドロップなどで稼ぐことが大半のようです。
それは「今すぐに使えるもの」「今すぐに利益になるもの」を素直に追求する国民性的にはある種当たり前で、まだライトニングは彼らが自分の利益のために使えるレベルのユーザー体験や、ユースケースを提供出来てないからでしょう。
ただ今回の滞在で、それが少しづつ変わり始めているのも感じられました。
ダナンで行われたライトニングカンファレンス会場付近のお店でも実際にライトニング決済をしたりしましたが、ベトナムでも問題なく「普通に」使えました。
この普通に使えるというのが案外重要で、2年ほど前ではサービスのUXや、送金の安定性に難があったところから、現在ある程度以上のUXで一般店舗でも使えるレベルにライトニングのウォレットやペイメントプロセッサーは改善してきています。
また、外国人観光客の利用者目線でも両替所やATMで高い手数料を掠め取られるなら、LNウォレットからライトニングで直接決済したほうがいいに決まっています。
ベトナム人は外国人観光客からお金を取ろうとかなり積極的で色々売り込んでくるので、そういう人たちがどこかのタイミングでこっそり「ビットコインでも行けるよ」とライトニング対応し始めたとしたら、これは観光客側としてもメリットはあります。
現実的にはベトナムではまだまだライトニング対応している店舗は多くはないですが、ユーザー体験が改善してきた今何かの拍子で個人事業主などが自然発生的にライトニング決済に対応していくシナリオは、ベトナムの事情や国民性を考えれば何となく想像は出来ます。
久しぶりにベトナムに行きカンファレンスに参加しながら現地の雰囲気を味わって来て、こういう国でこそビットコインとライトニングが大きな意味を持つと思いましたし、またその方向にビットコインが着実に向かっているのを再確認できました。
今までビットコインのオンチェーントランザクションは大きな硬い岩石を移送するようなもので、頑丈だけどゴツゴツして重く使いづらいイメージのものでした。
そこから技術が進化していき、ライトニングで少しづつ小さく砕かれセメントのようになめらかになっていき、社会にシームレスに組み込まれて大きな変化を生み出すためのツールに近づいてきています。特にベトナムのような国でボトムアップにこれが起きていくのを想像すると何かすごくワクワクしませんか?
少なくとも自分が元々ビットコインに強い興味を持った理由は突き詰めるとここらへんの文脈なわけで、分散型の技術が個人の自由の範囲を拡張して、今まで硬直化していた社会をボトムアップに変えていくと考えるだけで、一人でベトナムでテンションが上がってニヤニヤしてしまうわけです。文字通り外の通りを歩きながら考え事をしながらニヤニヤしていました笑
その一方で実際にはベトナムの政府はビットコインに対しても慎重な姿勢で、特に自国通貨の脅威になる存在に関しては今後厳しく規制をしていく可能性もあるとは思いますし、そういう話も一部の関係者ともしました。
その点では政府がビットコインの普及をかなり遅らせることは出来るかもしれませんが、ただ最終的に分散型で便利なものが使いやすくなっていったとしたら、分散化社会を生きるベトナム人を止めることは出来ないんじゃないかと思います。
よくある例ですが、大きな象を射殺することは出来ても、蚊の群れを全て撃ち殺すのは難しいですし、ベトナム人がある意味ではそれを一番よく理解しているでしょう…。
かなりポエミーな要素も増してきたので、今回はここまでにします。
全体としてはカンファレンスの参加者達からも大きな刺激を受けましたし、自分以外の参加者も全体として非常に楽観的で、アジアでもビットコインやライトニングの流れが来ているのを肌で感じた人たちも多かったと思います。
ここらへんについてはまた別の機会で話します。
Good reading!!!