Diamond Hands Magazine、水曜日のビットコインニュースまとめです。
気づけばクリスマス目前。日本は寒さが本格化してきた頃ではないでしょうか?
マイナーを暖房器具代わりに使う人は昔からいて、ケースを自作する人もいれば、市販のマイナー一体型ヒーターもありました。以下は2年の歳月をかけて開発された新作らしいです。お値段1,199ドル、約16万円。
マーケティングと引き換えにタダで入手したインフルエンサーが早速動画を投稿し、操作性や防音性を誉め、5%割引が適用されるプロモコードを提示します。
ただ、スペック(2万円程度で買える型落ちのS9を1台内蔵)の割に価格が高い、マイニングプールが選べない(Nicehash一択)、電気代がタダでも投資回収に数年かかかる電力効率の悪さなどを指摘する辛口リプライが並びます。
こうした意見を参考に、どんどん良いものが出てくることを期待。私が今住んでいるところは、この時期でも暖房器具なくても過ごせるけど、部屋によってはあると嬉しいし、なんせ電気代が安いので、デザインとコスパがそれなりのものが出たら本気で検討します。
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重要リンク集💎🙌
Diamond Hands Wiki (ライトニングやルーティングに関するリソース集)
Lost in Bitcoin(ビットコイン学習リソース集)
人気ライトニングウォレットBreezが450万ドル調達
ノンカストディアルながら初心者にも使いやすいとハードコア・ビットコイナーの間でも人気のBreezが、Ego Death Capital(The Price of Tomorrowの著者Jeff Boothが設立し、Lyn Alden、Preston PyshがアドバイザーのマキシVC)と Entrée Capitalのリードで450万ドルを調達。弊社Fulgur Venturesもシードラウンドに続いて参加しています。
今年はLuna、3AC、Celsius、FTXとクリプト業界は嵐が次々と襲い、力尽きるスタートアップが続発しました。ビットコイン関連スタートアップも、特にFTX後はVCからの資金流入が激減すると予測し、早めに資金調達に動いたところも少なくありませんが、ビットコイン特化のVCは時間選好が低く、もともとバリュエーションや回収計画もコンサバなため、市場環境、とりわけクリプト市場環境悪化の影響は軽微で投資意欲は旺盛です。今回も調達目標を上回るオーバーサブスクライブ。7月に実施されたFediのシードラウンドもオーバーサブスクライブで、たった6日で420万ドルを集めました。ビットコインはマネタイズが難しいから資金調達に苦労するというのは日本の話です。資金調達を考えている人には、「ライトニングネットワークとは」から説明しなければいけない日本のVCに時間とエネルギーを浪費するより、海外のビットコイン専門VCと話すことをお勧めします。
Breez CEOのRoy Sheinfeldは、CashApp、Strikeなどのカストディアルサービスをライトニングウォレットではないと断じるノンカストディアル原理主義者です。ビットコインを人類史上最強の貨幣たらしめる特性を損なわずにライトニングをマスアダプションさせる最善の方法がLaaS(Lightning as a Service)だとして、一般企業がノード運用や流動性管理などを心配せずライトニング導入に踏み切れるようnon-custodial SDKなど開発者向けツールを含むLaaSの拡充をこれまで通り目指すと述べています。
以下はSDKのデモ。APIコール3回で新規チャネルの作成と、ビットコインのライトニングネットワーク上でのノンカストディアルな送受信ができるそう。
Send GloballyがUKとヨーロッパでも利用可能に
先週お伝えしたSend Globally、覚えていますか?StrikeとBitnobが提携してローンチしたアメリカ→アフリカの国際送金サービスです。仕組みは簡単に言うと以下の通り。
アフリカに送金したいアメリカのStrikeユーザー
受金者の電話番号を入力(モバイルマネーで届ける場合。銀行口座に入金する場合は銀行名と口座番号も入力。)
送金金額をドルで指定(Strikeに接続した銀行口座から自動引き落とし)
Strike
受け取ったドルをBTCに交換
BTCをライトニングネットワークを使ってアフリカの取引所Bitnobに送信
Bitnob
受け取ったBTCを現地通貨に交換
現地通貨をモバイルマネーに交換して受金者に送信
受金者
スマホ/携帯でモバイルマネーを受け取り
1〜4までわずか数秒から数分、しかも格安手数料。従来の国際送金の2大ペインを同時解消しました。
この画期的なサービスSend Globallyを、早速UKの取引所CoinConerが採用。CoinConerのユーザーは自分の銀行口座からポンドまたはユーロをCoinConerに入金すれば、数分後には故郷の家族が現地通貨で受金できるようになりました。
日本の取引所もBitnobと提携してサービスを提供すれば、日本在住のアフリカの人々はさぞ助かると思いますが。
国際送金は市場が大きい上に非効率ということで、ビットコインの短期的なキラーアプリとの見方はありました。これまでもビットコインを国際送金に利用する人はいましたが、受金者にウォレットをインストールしてもらったり、受金者が現地のTelegramグループでビットコインの買い手を探したりとハードルが高かったです。GDPに占める海外移住した国民からの仕送り比率が高いアフリカや中南米、東南アジアで、Send Globallyの利用が広がり出したら、国際送金で暴利を貪る既存事業者はどう出るのでしょうか?AMLアングルから当局に泣きついても、自らの首を絞めるだけという気がします。かといって、ライトニング採用というのも考えにくいです。ビットコインまたはCBDCの普及とともにBlockbusterのように消えていくのでしょうか?
マイニングの真価はどうすれば伝わるのか
同じく先週お伝えしたニュースの続報です。アフリカ農村地帯への電力導入を支援するマイニング企業Gridlessに投資したBlock社のJack Dorseyが、実証実験が行われているケニアの村を訪問。500世帯2,000人が暮らす農村の1世帯あたりの電気代は月10ドル程度から4ドルに半減。地域の電力需要を満たした後の余剰電力でマイニングを始めたためです。
今だにビットコインマイニングを批判する人は、マイニング以前にエネルギーについての理解が足りていないと思わざるを得ません。この夏、猛暑に襲われたアメリカでは、NYやカリフォルニアで電力が逼迫する中、テキサスで稼働しているマイナーを止めろという声が上がりました。こういう人たちに見せてあげたい図。
12/12のアメリカ国内の電力価格分布図です。カリフォルニアを中心に1メガワット時当たり350ドル以上のピンクが広がる西部と、30~120ドルの白が広がる中西部と北東部の間に、30ドル未満の水色が挟まれ、その中にはマイナス価格を示す青色がカンザス、オクラホマ、テキサスに点在しています。
同じタイミングで消費する同量の電力に対して、なぜ5万円以上の価格差が生じるのか、ビットコインを批判する前にぜひ考えてほしいです。金やビットコインと違い、電力はfungibility(代替性)もSoV(価値貯蔵機能)も高くないのです。
先日、日本のエネルギー大手で新規事業開発に携わる方とお話しする機会がありました。こうことを理解しているからこそ、マイニングに興味を持ち、何らかの形で新たな収益源としたいと考えているのだと思います。ただ、終始伝わってきたのは、マイニングという世間的にイメージの悪いものに手を出すリスクが投資に見合うのかという疑念です。アメリカでの実例を挙げて収益性を示しても、こうした心理的障害は取り除ける気がしません。海外では資源メジャーや電力会社がマイニングについての誤解を解くべく、リサーチペーパーを出したり、政治家の教育を行っています。こうした投資に見合うリターンを確信しているからでしょう。ここに至らないうちは、いくらビットコイナーがマイニングのメリットを熱く語っても効果は小さいと思います。おそらく欧米の有名企業がマイニングのおかげで大幅増益というニュースを頻繁に耳にするようになるまで、日本の企業は動かないのでしょう。
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