BlackRock最新データトレンド / 信仰とテクノロジー / Civil War?─Ray Dalio
こんにちは。じいじ です。
今回から「BTCインサイト」も担当となりました。ひょんなことからビットコインに出会い、書籍、ビットコイナー反省会、Diamond Handsで楽しく学んでいます。微力ですが興味深い記事をピックアップ出来るよう頑張りますので、よろしくお願いいたします。
「BTCインサイト」本日のトピックス:
経済不確実性と市場動向:BlackRockの最新データから見えるトレンド
信仰とテクノロジーの交差点:『BITCOIN IS HALAL』の魅力的な冒険
Civil War? 米国のビックサイクルを明治維新から紐解く──Ray Dalio
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経済不確実性と市場動向:BlackRockの最新データから見えるトレンド
(※本記事は、@BoringBiz_氏のX投稿をもとに要約・編集しています。本文はこちら)
市場下落時のドルと米国債のヘッジ機能が崩壊
市場の下落時に伝統的にヘッジ資産とされてきた米国ドルと長期米国債が、2025年4月2日以降、その役割を果たせなくなっていることが指摘されています。
市場下落時の資産リターン
グラフは過去の市場下落時(S&P500の下落を基準)の平均的なリターンを示しています。S&P500(灰色)が下落する一方で、米国ドル(赤)、長期米国債(緑)、金(黄)は比較的安定していました。しかし、右のグラフ(4月2日以降のデータ)では、S&P500が下落する中で、これらの資産もマイナスのリターンを記録。特に金は一時的に急騰したものの、全体的にヘッジ効果が失われていることがわかります。この背景には、貿易関税の影響やインフレ懸念が考えられます(Goldman Sachsのレポート参照)。
貿易政策と経済政策の不確実性が過去最高水準
次に、米国の貿易政策と経済政策の不確実性が高まっている点が挙げられます。
貿易・経済政策の不確実性インデックス
1985年から2025年までの「米国貿易政策不確実性インデックス」と「米国経済政策不確実性インデックス」を示したグラフです。両インデックスとも2020年以降、特に2025年に向けて急上昇しており、過去最高水準に達しています。これは、関税政策や地政学的緊張の高まり、さらには米国の債務上限問題などが影響していると考えられます(Reuters, 2023)。
不確実性が高まる中、予測範囲が拡大
不確実性の高まりは、経済予測や企業業績ガイダンスにも影響を与えています。
GDP予測と企業ガイダンスの幅
グラフは米国のGDP成長率予測を示しており、「ベースラインあり」と「ベースラインなし」のシナリオで予測範囲が広がっています。右のグラフはユナイテッド航空の2025年EPS(1株当たり利益)ガイダンスを例に挙げ、安定環境(灰色)と不確実環境(赤色)での予測幅の違いを示しています。不確実性が高いほど、企業やエコノミストは広範囲のシナリオを想定せざるを得ない状況です。
米国債の外国保有率とG7諸国の財政赤字
米国の債務市場における外国の関与度が高いことも注目されています。
米国債の外国保有率とG7財政赤字
左のグラフは2000年から2025年までの米国債の保有内訳を示し、外国保有(黄色)が国内保有(赤色)を上回る時期が続いています。右のグラフは2023年のG7諸国の財政赤字と外国保有債務の割合を比較したもので、米国は財政赤字が6.4兆ドルと最も大きく、外国保有債務も突出しています。これは米国の経済政策に対する海外の依存度が高いことを示しています。
米国にとって中国は重要な貿易相手
中国が米国の輸入における重要なパートナーであることも強調されています。
中国からの輸入割合
この散布図は、中国からの輸入品目(例:繊維、電子機器、衣類など)のシェアと総額を示しています。多くの品目で中国のシェアが30〜50%と高く、特に電子機器やコンピュータ関連の輸入額が大きいことがわかります。米中間の貿易緊張が高まる中、この依存関係は経済リスクを増大させる要因となっています。
ブレグジット後の資本投資の分岐
ブレグジットが欧州と英国の資本投資に与えた影響も取り上げられています。
資本投資の推移
グラフは米国、EU、英国の資本投資の推移を示しており、2016年のブレグジット以降、英国(緑)とEU(青)の投資が分岐していることがわかります。英国はEU離脱による不確実性から投資が抑制され、EUも成長が鈍化する一方、米国(赤)は比較的安定した成長を維持しています。
S&P500上位10社の市場シェア拡大
S&P500における上位10社の市場集中度も注目されています。
S&P500上位10社の市場シェア
2005年(21%)、2015年(19%)、2025年(38%)と、上位10社の市場シェアが急増しています。これはテック企業を中心とする大手企業の影響力が増していることを示しており、市場の多様性が低下するリスクも指摘されています。
米国株式市場への外国関与の増加
米国株式市場における外国の関与も徐々に増加しています。
外国の米国株式市場への関与
このグラフ(詳細は省略)では、外国投資家による米国株式の保有割合が2000年代から増加傾向にあることが示されています。グローバル化が進む中で、米国の市場は外国資本に依存する割合が高まっています。
エネルギーとAI関連の設備投資増加
今後、エネルギーとAI関連の設備投資が増加する見通しです。
エネルギー・AI関連の設備投資
グラフ(詳細は省略)によると、2020年代後半にかけて、これらの分野への投資が拡大する予測が示されています。AIの技術革新やエネルギー転換の需要が高まる中、企業は積極的な投資を進めています。
プライベート市場の資本還元難
高い金利環境がプライベート市場に影響を与えています。
プライベート市場の資本還元
2000年から2021年までのプライベート市場の資本還元分布を示したグラフです。2018〜2020年(赤)や2021年(灰色)と比較して、2000〜2017年の平均(黄)では還元が遅延する傾向が見られます。金利上昇により、資金調達コストが増加し、LP(リミテッドパートナー)への還元が難しくなっています。
資産パフォーマンスの逆転
2024年と2025年(YTD)の資産パフォーマンスが逆転している点も注目されています。
資産パフォーマンスの比較
グラフ(詳細は省略)では、金を除くほとんどの資産が2024年とは異なるパフォーマンス傾向を示しています。市場環境の変化やマクロ経済の不確実性が影響していると考えられます。
米国の収益性とROEの優位性
米国は他の先進国と比較して高い収益性とROE(自己資本利益率)を維持しています。
米国と他国の収益性比較
グラフ(詳細は省略)では、米国がEUや日本よりも高いROEを記録していることが示されています。米国の企業は競争力と成長性を維持しており、投資家にとって魅力的な市場となっています。
欧州と米国のクレジットスプレッドの差
欧州のクレジットスプレッドが米国よりも高いことも指摘されています。
クレジットスプレッドの比較
グラフ(詳細は省略)によると、欧州ではリスクプレミアムが拡大しており、経済の不確実性や金融政策の違いが影響していると考えられます。
米国政府債務の急増と企業のレバレッジ低下
米国政府の債務が急増する一方、企業のレバレッジ比率は低下しています。
政府債務と企業レバレッジ
グラフ(詳細は省略)では、過去10年間で政府債務が急増し、企業が財務健全性を重視してレバレッジを抑えている傾向が示されています。これは、金利上昇や経済不確実性への対応と考えられます。
金価格と実質利回りのデカップリング
最後に、金価格と米国10年物実質利回りの関係が崩れている点が挙げられています。
金価格と実質利回りの推移
2005年から2025年までの金価格(赤)と10年物実質利回り(黄)の推移を示したグラフです。従来は実質利回りが低下すると金価格が上昇する傾向がありましたが、2020年以降、この関係が崩れ、金価格が独自の動きを見せています。地政学的リスクやインフレヘッジ需要が背景にあると考えられます。
不確実性が高まる中での投資戦略
これらのデータから、現在のマクロ環境は貿易政策や経済政策の不確実性が過去最高水準に達し、従来のヘッジ戦略が機能しづらい状況にあることがわかります。米国債やドルのヘッジ効果が低下し、金価格が実質利回りとデカップリングするなど、市場のダイナミクスが変化しています。また、S&P500の集中度の高まりや外国資本の関与増加は、市場のリスク構造にも影響を与えています。
投資家にとっては、不確実性の高まりに対応するため、予測範囲の拡大やリスク管理の強化が求められます。エネルギーとAI関連の成長分野への投資は魅力的な一方、プライベート市場の還元難や欧州のクレジットリスクにも注意が必要です。ブラックロックのデータは、複雑化するマクロ環境を理解し、戦略を見直すための貴重な手がかりを提供しています。
本記事は、米国の経済環境が構造的な課題に直面していることを明らかにしています。これは、中央銀行や政府の政策に依存しないビットコインの価値を再確認する機会です。米ドルや米国債がヘッジ機能を失う中、ビットコインは長期的な価値保存手段として注目が集まっています。中央集権的な金融システムの限界が露呈する今、ビットコインは経済の不確実性に対する真のヘッジ資産として広まっていくでしょう。
信仰とテクノロジーの交差点:『BITCOIN IS HALAL』の魅力的な冒険
(※本記事は、Abdul Ashik氏の記事をもとに要約・編集しています。本文はこちら)
ビットコインは、技術革新と金融の未来を象徴する存在ですが、その複雑さは多くの人を戸惑わせます。特に、信仰の原則に照らしてその利用を考えるとき、さらなる難しさが生じます。近日Amazonで発売予定のAshik Usman著『BITCOIN IS HALAL: Ali and Layla Discover Digital Gold』は、この難題にユニークなアプローチで挑む一冊です。子供や若者向けの物語を通じて、ビットコインの仕組みとイスラム金融原則との適合性をわかりやすく解説。主人公のアリとレイラの冒険は、子供だけでなく大人にも響く、驚くほど深い洞察を提供します。
この本は、13歳のアリと11歳のレイラが、父親の「ビットコインって何?」という一言をきっかけに、デジタル通貨の世界に飛び込む物語です。親しみやすい質問から始まり、イラストやユーモアを交えた説明で、ビットコインの基礎からイスラム的倫理までを丁寧に紐解きます。以下、なぜこの本があらゆる背景の人々にとって価値ある一冊なのか、その魅力を探ります。
ビットコインの基礎を楽しく学ぶ
本書は、ビットコインを理解するための土台を、初心者にもわかりやすく構築します。アリとレイラが両親と交わす対話を通じて、以下の核心的なトピックが鮮やかに描かれます:
お金の歴史: 物々交換から金や銀、現代の紙幣まで、お金の進化をたどります。インフレが購買力を「溶かす」仕組みを、アイスクリームが小さくなる比喩で説明。ビットコインが「デジタルゴールド」として注目される理由の基礎がここにあります。
サトシ・ナカモトの謎: ビットコインを生み出し、姿を消した匿名の発明者。2008年の金融危機を背景に、銀行や政府に頼らないお金を作ろうとした動機を、子供にもわかる言葉で紹介。
ウォレットの秘密: ビットコインウォレットは「魔法の鍵の箱」と例えられ、公開鍵(送金先アドレス)と秘密鍵(送金用パスワード)の役割を説明。秘密鍵を失うとビットコインが使えなくなるリスクを強調し、自己管理の責任を教えます。
直接取引の力: ビットコインが、銀行を介さず世界中の人と直接取引できる仕組みを、友達同士の手紙のやり取りにたとえて解説。国際送金の速さと低コストの可能性を示します。
分散化の魔法: ビットコインは誰も支配しない「みんなのネットワーク」。中央サーバーのない仕組みが、検閲やハッキングに強い理由を、町中の掲示板に例えて説明。
ブロックチェーンの日記: すべての取引が記録される「消せない公開ノート」としてブロックチェーンを紹介。誰でも見られる透明性と、改ざん不可能な安全性が信頼の鍵だと強調。
マイニングの冒険: 取引を検証する「マイナー」は、パズルを解く探検家。プルーフ・オブ・ワークによるエネルギー消費がセキュリティの根幹であることを、家の鍵を頑丈にする努力にたとえて解説。環境への懸念には、再生可能エネルギーへの移行で対応する業界の動きを補足。
2100万枚の限界: ビットコインの総量が2100万枚に固定されている希少性を、限られたお菓子に例えて説明。法定通貨の無制限な印刷と対比し、インフレ対策としての価値を強調。小さな「サトシ」単位で、少額取引も可能だと補足。
これらの説明は、専門用語を避け、日常の例えで直感的に理解できる点が秀逸です。アリの「へえ!」やレイラの「それってどういうこと?」といった反応が、読者の疑問を代弁し、親しみやすさを加えます。
イスラム金融との対話:ビットコインはハラルか?
本書の最大の特徴は、ビットコインをイスラム金融の倫理に照らして検証する点です。アリとレイラは、両親との会話を通じて、イスラムの原則とビットコインの適合性を探ります。以下、主要なポイントです:
リバ(利子)の禁止: イスラムでは、不当な利子(リバ)が禁じられます。本書は、ビットコインが利子を生まない資産であると説明。1ビットコインは増殖せず、価値変動は市場によるもので、金や銀のような商品に近いと主張。この点が、多くの学者がビットコインをハラルとみなす根拠だと紹介。
ガラール(不確実性)とマイシル(賭博): ビットコインの価格変動はガラールやマイシルに該当するリスクがあるが、投機的な取引を避け、実際の支払いや長期保有に使う場合は問題が少ないと解説。ギャンブル的行為は使用者の意図次第だと強調。
透明性と同意: ブロックチェーンの公開性は、イスラムの取引における透明性の原則に合致。秘密鍵を使った取引は、自発的な同意に基づく契約を反映すると説明。
財産の真の所有: ビットコインの「鍵を持たなければコインはあなたのものではない」という原則は、イスラムの財産権の概念に適合。銀行に預けたお金が外部の管理下にあるのに対し、ビットコインは完全な自己管理を可能にすると主張。
正義(アドル)と卓越(イフサン): ビットコインが、銀行口座を持たない人々に金融サービスを提供する可能性は、正義を促進する行為とみなされる。数学的に堅牢な設計は、イスラムの「卓越」の精神を体現すると一部の学者が評価。
本書は、多くのイスラム学者がビットコインを、詐欺や投機を避けた倫理的利用ならハラルとみなすと結論付けます。ただし、意見の多様性を認め、読者に自身の判断を促します。このバランスの取れたアプローチは、信仰を持つ読者に安心感を与えます。
現実世界でのビットコイン
本書は、ビットコインの技術を現実の課題に結びつけます。以下のような実例が、物語に深みを加えます:
金融包摂: 世界の「銀行口座を持たない」17億人以上が、スマホとインターネットでビットコインを使い、貯蓄や送金が可能になる可能性。
インフレ対策: ベネズエラやジンバブエのようなハイパーインフレの国で、ビットコインが安定した価値保存手段として注目されるケース。
送金の自由: 移民労働者が家族に安価かつ迅速に送金できる例。
同時に、懸念にも正面から向き合います:
犯罪利用: ブロックチェーンの透明性により、ビットコインは追跡可能。現金の方が匿名性が高いと指摘し、誤解を解く。
エネルギー問題: マイニングのエネルギー消費はセキュリティに不可欠だが、再生可能エネルギーの採用で環境負荷を軽減する動きを補足。
価格の不安定さ: ボラティリティをリスクとして明確に警告。「一攫千金」を夢見ず、自己調査(DYOR)とリスク管理を推奨。
クリプトの世界との違い
ボーナスチャプターでは、ビットコインを他の「クリプト」資産(アルトコイン、ミームコイン、NFT)と区別。ビットコインの分散化、固定供給、プルーフ・オブ・ワークのユニークさを強調し、他の資産のリスクや詐欺の可能性を警告。初心者に「まずビットコインを理解せよ」とアドバイスする点は、実践的です。
誰でも楽しめる学びの旅
子供向けに書かれていますが、大人にも十分な価値があります。複雑な概念を分解し、親しみやすい対話で伝えます。『アリの驚きメモ』や『レイラの疑問Q&A』といった欄が、要点を簡潔にまとめ、理解を深めます。巻末のワークシートは、読んだ内容を振り返るのに最適で、家族での学びにも役立ちます。
特に、イスラム金融に関心のある人にとって、リバやガラールの議論は実務的な指針に。信仰を持たない読者にも、ビットコインの技術や経済的意義は普遍的な学びを提供します。誇大広告を避け、基礎に焦点を当てた姿勢は、初心者に信頼感を与えます。
ムスリムの好奇心を育む一冊
『BITCOIN IS HALAL: Ali and Layla Discover Digital Gold』は、ビットコインを子供の視点で描きながら、技術と信仰の橋渡しをする優れた入門書です。イスラム金融の倫理との適合性を丁寧に探求。物語の楽しさと教育的な深みを両立し、子供から大人までを引き込みます。
信仰の視点からビットコインに興味がある人、テクノロジーの可能性を探りたい人、単にデジタル通貨の基礎を知りたい人にとって、この本は好奇心を刺激し、賢明な探求を後押しする一冊です。
『BITCOIN IS HALAL』はAmazonで近日発売予定(6月中)です。ムスリム・ビットコイナーが続々と誕生する未来を予感させます。
Civil War? 米国のビックサイクルを明治維新から紐解く──Ray Dalio
(※本記事は、Ray Dalio氏のX投稿をもとに要約・編集しています。本文はこちら)
アメリカでの現在進行中の出来事を観察していると、これまで何度も見てきた映画を観ているような感覚がします。50年以上のグローバルマクロ投資家としての経験と、過去500年の歴史研究に基づいてこの視点を持っています。過去に世界秩序の進化を理解するためのテンプレートを提案したことがあり、そこでは貨幣秩序、国内政治秩序、国際地政学秩序が同時に崩壊する可能性が高いと予測しました。不幸なことに、現在の出来事はそれと一致しているように見えます。この記事では、最近の出来事をその文脈で捉え、特に国内秩序の崩壊、特に「内戦」と呼ぶ形態が起きるのかを主題に考えてみたいと思います。内戦が必ずしも殺戮を意味するわけではありませんが、歴史的なパターンからその兆候を見極めることが重要です。
歴史のサイクルと現在の状況
歴史を振り返ると、債務、貨幣、経済活動が大きな影響を与えるサイクルが存在します。このサイクルは平和と繁栄の時期から、過剰と堕落が悪条件をもたらす段階を経て、最も困難な時期に達します。その時期には資金が尽き、革命や内戦という形で深刻な対立が発生します。現在、財政問題やロサンゼルスの暴動が抑えられている状況を目の当たりにし、このサイクルを振り返る好機だと感じます。特に現在、多くの国が内戦前の段階にあると考えられるため、その兆候と内戦段階に焦点を当てます。
主な内戦の歴史
システムや政権に変化をもたらしたケース
Dutch Revolt: オランダ (NLD), 1566年
English Civil War: イギリス (GBR), 1642年
Glorious Revolution: イギリス (GBR), 1688年
American Revolution: アメリカ (USA), 1775年
French Revolution: フランス (FRA), 1789年
Trienio Liberal: スペイン (ESP), 1820年
French Revolution of 1848: フランス (FRA), 1848年
Meiji Restoration: 日本 (JPN), 1868年
Xinhai Revolution: 中国 (CHN), 1911年
Russian Revolution and Civil War: ロシア (RUS), 1917年
German Revolution/End of Monarchy: ドイツ (DEU), 1918年
Rise of Hitler/Political Violence: ドイツ (DEU), 1929年
Rise of Japanese Militarists: 日本 (JPN), 1932年
Spanish Civil War: スペイン (ESP), 1936年
Chinese Civil War: 中国 (CHN), 1945年
システムや政権に変化をもたらさなかったケース
Jacobite Risings: イギリス (GBR), 1745年
Pugachev's Rebellion: ロシア (RUS), 1773年
Dutch Patriot Revolt: オランダ (NLD), 1781年
White Lotus Rebellion: 中国 (CHN), 1794年
German Revolutions of 1848: ドイツ (DEU), 1848年
Taiping Rebellion: 中国 (CHN), 1851年
Panthay Rebellion: 中国 (CHN), 1856年
US Civil War: アメリカ (USA), 1861年
Muslim Rebellion: 中国 (CHN), 1862年
Paris Commune: フランス (FRA), 1871年
Boxer Rebellion: 中国 (CHN), 1899年
1905 Russian Revolution: ロシア (RUS), 1905年
National Protection War: 中国 (CHN), 1915年
6 February 1934 Crisis: フランス (FRA), 1934年
紛争をシステムや政権に大きな変化をもたらしたかで分類しています。例えば、明治維新(1868年、日本)やロシア革命(1917年、ロシア)は新しい政権やシステムを確立したとされ、上部に配置されています。一方、米内戦(1861年、アメリカ)はシステムを覆すには至らなかったため、下部にあります。この分類は不正確な面もありますが、全体像を把握する手助けとなります。
上部にリストされた紛争の多くは、暴力的な手段で古い秩序を打倒し、新しい秩序を築いた典型的な内戦や革命として特徴づけられます。一方、下部の紛争は、システムの根本的な変化を伴わなかったか、失敗に終わったケースです。
内戦前の段階:悪化した財政状況と激しい対立
平和と繁栄の時期から過剰と堕落が悪条件をもたらす段階を経て、財政状況が悪化し、階級間緊張が頂点に達します。指導者や国民がこの対立にどう対処するかは、変化が平和的か暴力的に行われるかに大きく影響します。
現在、多くの国でこの兆候が見られます。財政状況が良好な国は安定していますが、そうでない国は不安定で、資金を求めています。問題は、不安定な国が安定国を大きく上回ることです。これらの状況は教育、医療、インフラ、幸福度に影響を与え、文化的な対応の違いも顕著です。調和的に対処する国もあれば、闘争を選ぶ国もあります。特に米国が現在この状況にあると考えられるため、因果関係や進展を観察する主要指標に注目します。
古典的な毒素の混合と内戦の兆候
大きな内紛をもたらす古典的な要因は、1)国や国民が財政的に困窮(大きな債務や非債務義務を抱える)、2)収入、富、価値観の大きな格差、3)深刻な経済的ショックからなります。この組み合わせは混乱、対立、内戦をもたらします。経済的ショックは金融バブルの崩壊や自然災害、戦争で発生し、財政的ストレステストとなります。格差の大きさがシステムの脆弱性を示し、政府の財政状況が重要です。政府が購買力を失うと崩壊しますが、その過程で資金と政治的権力のための闘争が激化します。
歴史を研究した結果、政府の財政破綻と大きな富の格差が内戦・革命の最も信頼できる先行指標であることが分かりました。政府が財政力を持たない場合、民間部門を救えず、必要なものを購入できず、人々に支払うこともできません。財政破綻の兆候は、政府が大規模な赤字を抱え、中央銀行以外に債券を買う買い手がいない状況です。通貨発行ができない政府は増税や支出削減を余儀なくされ、通貨発行が可能な政府は大量の通貨を印刷し債務を購入します。米国では、現在州と連邦レベルでこの状況が進行中です。連邦政府は通貨発行が可能ですので、大量の通貨を印刷していますが、州政府はそれができないため、財政状況の違いが対立を増幅する可能性があります。
明治維新:内戦から新たな秩序への道
歴史的な例として、日本の明治維新(1866-1869)は、内戦が秩序を変えるプロセスを理解する上で貴重な教訓を提供します。当時、日本は鎖国政策により外の世界から閉鎖され、技術や文化の進歩が停滞していました。1853年にアメリカのマシュー・ペリー提督が艦隊を率いて浦賀に来航し、開国を強制したことがきっかけで、社会に大きな動揺が広がりました。これに対し、薩摩藩や長州藩を中心とする革命的な勢力が台頭し、江戸幕府の将軍(ショーグン)に率いられた支配者と戦う決意を固めました。1868年の戊辰戦争では、旧幕府軍と新政府軍が激しく対決し、最終的に新政府が勝利を収めました。
この内戦は、軍人、農民、職人、商人の4階級で運営されていた超保守的な古い秩序を打倒し、近代化を志向する天皇の権力を復活させる契機となりました。江戸時代の社会は、社会的移動が厳しく制限され、身分制度が硬直化していたため、多くの国民が不満を抱いていました。革命家たちは、天皇を象徴として掲げ、中央集権的な新政府を樹立しました。明治維新の初期には、富の格差や経済的困窮が原因で労働争議、ストライキ、暴動が頻発しました。特に農民や下級武士の不満が爆発し、社会不安が広がりました。
新政府は、これらの混乱を収拾するため、抜本的な改革に着手しました。まず、1871年に封建制度を廃止し、身分制度を解消しました。これにより、国民は自由に職業を選べるようになり、社会の流動性が向上しました。また、1873年には全国で義務教育が開始され、男女双方に初等教育が提供されました。これは、近代国家建設の基盤として、国民の識字率を高め、産業の発展を支えました。さらに、資本主義を導入し、西洋の技術や産業を積極的に取り入れ、鉄道や 通信網の建設を進めました。こうした改革は、日本を国際社会に再統合し、競争力を高める結果となりました。
しかし、明治維新は順風満帆ではありませんでした。初期の改革は急激で、伝統的な価値観との軋轢を生みました。地主階級の没落や農民の困窮が続き、1880年代には自由民権運動が台頭し、政府に対する抗議が続きました。また、軍事近代化のために多額の予算が投入され、富の再分配が不十分だったため、格差は解消されませんでした。やがて、1894-1895年の日清戦争や1904-1905年の日露戦争で勝利を収め、植民地獲得や国際的地位の向上を果たしましたが、これらの戦争は財政を圧迫し、国民生活に負担を強いました。
明治維新後、日本は急速に近代化を進め、工業化や経済成長を遂げました。しかし、時間とともに堕落や過剰拡大が進行し、1930年代には軍国主義への傾倒が顕著になりました。1941年の太平洋戦争への参戦は、過度な拡張の結果として、1945年の敗戦と秩序の崩壊を招きました。1869年から1945年までの76年間続いた明治的秩序は、古典的な衰退を迎えました。この事例は、内戦が新しい秩序を築く可能性を示しますが、成功には持続的な改革と外部環境への適応が不可欠であることを示唆します。
内戦が起きるのか?現代の視点
現在の米国では、財政破綻、富の格差、経済的ショックの兆候が見られます。コネチカット州のように、1人当たり収入が最も高く、富と収入の格差が最大で、債務と未資金化年金義務が大きい地域では、富裕層と貧困層の分断が顕著です。私の妻が支援する貧困地域の高校生との接触から、貧困層の過酷な生活条件と、富裕層が感じる経済的圧力を目の当たりにします。この分断が、内戦への道を進む危険性を高めています。
歴史は、内戦が財政破綻と格差が極端に高まった時に発生しやすいことを示します。米国では、連邦政府が通貨を印刷して対処していますが、州レベルでは増税や支出削減が避けられず、これが対立を増幅する可能性があります。ポピュリズムや極端主義、メディアの真実喪失、階級対立もこの段階の特徴で、これらが内戦への移行を加速させる恐れがあります。
内戦を避ける道
内戦が起きるかどうかは、指導者の対応にかかっています。平和的解決を目指す「強力な調停者」が必要ですが、歴史的には稀です。明治維新のように、教育やインフラ投資、財政再構築が有効とされますが、適応しない社会は衰退します。内戦は避けたい道ですが、歴史は適応と協働が最も報われると教えてくれます。現在の状況を注視し、平和的解決を模索することが求められます。
Ray Dalio氏はビットコインを「ハードマネー」と紹介したことがあります。「平和的革命」と称されるビットコインを「紛争を避ける道」として啓蒙する日は遠くないのかもしれません。
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