ノルウェーにおけるマイニング制限議論/Bitcoin Policy Instituteが示した電力消費やCO2排出におけるマイニングとAIの違い
Diamond Hands Magazine Vol.167
th_satです。
Diamond Hands Magazine、この1ヶ月をふりかえり、ビットコインを巡るビジネス面・規制面の動向のまとめです。
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それでは、早速直近2週間のトピックを紹介したいと思います。
1. 規制関連の動向
ノルウェー、暗号通貨マイニングに制限を設けるべきとの方向性(出典1、出典2:8/6付)
ノルウェーにおいて、「暗号通貨マイニングは非常にエネルギー集約的で、ノルウェーの価値創造にはほとんど貢献していないため、大量の電力を使用することは不適切であるとして、暗号通貨マイニングに制限を設けるべきとの方向性」の議論がなされています。
具体的には、「暗号通貨のマイニングは非常にエネルギーを消費し、ノルウェーにおける価値創造にはほとんど貢献していない」とした上で、「したがって、暗号通貨マイニングに大量の電力を使用することは適切ではない」とし、ノルウェー国内での仮想通貨マイニングの禁止を調査する必要があると主張されています。
また、「地域社会の電力資源を無駄にすることは大きな問題である」との見方も示されているようです。
「一般の人々の電力価格の上昇につながり、温室効果ガスの排出量を削減し、雇用を創出する重要なプロジェクトの優先順位が下がる可能性があるという事実につながる」とし、「電力の正しい優先順位付けが不可欠であり、暗号通貨、特にビットコインなどの最もエネルギーを必要とする形式の暗号通貨を生成するデータセンターなどの不必要な電力の使用を制限し、すべてのデータセンターが廃熱を賢明な目的で利用するようにすることが重要である」と、電力使用制限に言及されています。
こうした見方をふまえ、社会的便益や廃熱利用などの基準を設けたデータセンターのライセンス制度を策定する案と、蓄積するデータ量を制限する方策を検討する案を提示され、保存されるデータの量を制限するためのさまざまな措置を調査するよう政府に求めているようです。
その中では、データ保存に対する何らかの形式の課税なども例としてあげられています。これをうけ、ノルウェー政府は、2024年末までに暗号通貨マイニングを禁止する調査を発表する予定とされています。
ノルウェーにおけるビットコインをめぐるトピックを振り返ると、この2年ほどでマイニングへの見方が厳しくなっていることが見て取れます。
一方で、ノルウェーでは、ソブリンウェルスファンド「Norges Bank Investment Management」(aka Norway’s Government Pension Fund Global)が、MicroStrategyに$217mを投資していることが明らかになっており(出所)、今後の動向が注目されます。
グローバルのトピックリスト
FATF勧告に対する各国の遵守状況レポートによると、75%の国・地域がFATFの要求事項に部分的にしか準拠しておらず、2023年4月時点からごくわずかな改善にとどまる(出典:7/9付)
IMF、エルサルバドルのBitcoinプロジェクトについて、「多くのリスクはまだ顕在化していないものの、透明性を高め、プロジェクトによる潜在的な財政・金融安定リスクを軽減するための更なる努力が必要である」との見方(出典:8/6付)
IMFミッション、数か月にわたるエルサルバドル当局との協議を受けて声明を発表。
財政の強化、銀行準備金のバッファーの増強、ガバナンスと透明性の向上、ビットコインのリスクの軽減を目的とした政策に重点を置いた、IMF支援プログラムに向けた交渉が進展。
ビットコインについては、多くのリスクがまだ顕在化していないものの、透明性を高め、ビットコインプロジェクトによる潜在的な財政および金融の安定性リスクを軽減するためにさらなる努力が必要であるという共通の認識がある。
IMF、「AIと暗号通貨による炭素排出が急増している」として、「地球温暖化を2度に抑えるためには、2030年までに炭素価格が1トン当たり85ドルに上昇するのに相当する追加的な税制がその一助となる」と述べる記事を発表(出典:8/15付)
米国のトピックリスト
米当局が押収した58.742 BTCを移動(出典:7/22付)
米政府、$2BのBitcoinを新しいアドレスに移動(出典:7/30付)
米国政府、Silk RoadのBTC($593.5m相当)をCoinbase Primeに移動(出典:8/15付)
Donald Trump候補のBitcoin2024スピーチ概要とトランスクリプト書き起こし。セルフカストディ権利保護、エネルギー政策とBitcoinマイニング強化、Bitcoin売却停止と国家備蓄(出典:7/28付)
Bitcoin 2024カンファレンス、Cynthia Lummis上院議員によるBitcoin戦略的準備金法案についてのセッション(出典:7/28付)
米下院、「デジタル資産や関連する新興技術による制裁逃れや金融犯罪の促進を防止するための立法提案を行う」作業部会設置(出典:7/29付)
USABTCによる、ビットコイン非課税デジタル経済ゾーン (DEZ)の提案(出典)
米Santa Monica Bitcoin Office、Bitcoinオープンソースフェスを10月に開催(出典:8/9付)
米FRB、Tornado Cashに米国財務省が課した制裁措置について、分散型システムにおける規制の影響と有効性を研究したレポートを発表(出典1、出典2)
利用が減少しても、匿名性プールは大規模なままであり、依然として「実行可能な」プライバシー保護ツールであることがわかったとのこと
ニューヨーク州ではBitLicenseプログラム規制のため、たとえばLightningをCash Appで使いたいなどにあっても、多くのBitcoinアプリでLightningを利用できない(出典:7/31付)
米FBI、サトシ・ナカモトは「第三者の個人」であり、この人物に関する記録の存在を確認することも否定することもできないとの見方(出典:8/13付)
1万ドルを超える暗号取引に適用されるIRSへの報告義務は、連邦議会の列挙された権限を超えているとの判決。また、IRSが発表した暗号通貨ブローカー向けの税務報告書の草案において、「非ホスト型ウォレットプロバイダー」の指定が削除(出典:8/13付)
米上院議員、Bitcoinはテキサス州のエネルギー網を支える強力なツールであるとの見方。異常気象や経済的な困難の際に、電力システムのセーフティネットとして機能する「電力の貯蔵庫」であると(出典:8/14付)
米SEC、MicroStrategyを対象とした初のレバレッジ型単一銘柄ETF「MSTX」のローンチを承認。Defiance ETFsによって発行され、Bitcoinへのエクスポージャーを拡大するもの(出典:8/15付)
欧州のトピックリスト
Bitcoin Policy UK、3つの政策変更を提言(出典:7/25付)
国家がBitcoin 戦略を持たないことは、1994年にインターネットを無視することと同じ
英国は61,000BTCと世界3位の保有量
1) 税制を適応させBitcoinの支出と貯蓄を奨励
2) マイニングがもたらす機会のフィージビリティ
3) Bitcoinを準備資産として割当
欧州ESMA、MiCA規則に基づく認可を求めるグローバル暗号資産企業がグループ内の活動の大部分をEU規制範囲外に置くことによって生じるリスクに対処するための意見書を発表(出典:7/31付)
潜在的に消費者保護の低下やEU認可執行機関との公平でない競争の場につながる可能性があるとの見方
アジア太平洋エリアのトピックリスト
タイSEC、デジタル資産規制サンドボックスを導入(出典)
エルサルバドル、戦略的ビットコイン準備金を1日1BTCずつ積み増している(出典:8/9付)
ドバイで暗号通貨を給与支払いの有効な形態として認める判決(出典:8/17付)
2.ビジネス関連の動向
Bitcoin Policy Institute、電力消費やCO2排出量における「ビットコインマイニングとAIの違い」に関するレポートを発表(出典1、出典2:8/1付)
電力消費量と排出量に与える、「ビットコインマイニング」と「AIに必要なコンピューティング」の影響の相違点について、Bitcoin Policy Instituteがレポートを発表しました。
ビットコインマイニングとAIは異なる点として、以下のように整理しています。
まず、ビットコインのマイニングは大量の電力を消費するものの、主に他者が残したものを使用するほか、電力網に負荷がかかっているときにマシンを停止できるなど柔軟性に富んでいる、としています。
ビットコインマイニングは、柔軟でスケーラブル、ポータブル、場所を選ばず、価格に敏感な電力消費を行う
そのため、遠隔地の油田でフレアガスを軽減することであったり、太陽光発電や風力発電設備と共存するといったように、無駄なエネルギーを執拗に探索している。
これらに関連し、具体定な数字としては、以下のように示しています。
米国とカナダの10社のビットコインマイニング企業から詳細な電力使用データを収集したところ、各社は電力使用を5%〜31%削減していることがわかった。
また、ビットコインマイニング施設が電力需要を削減したときに回避されるCO2排出量を、常時稼働のデータセンターと比較すると、3か月間で13.6キロトン削減していることがわかった。
これとは対照的に、AIコンピューティングの電力使用量は、ほとんど柔軟性がなく、場所や規模に依存し、価格に敏感ではない点を指摘しています。
AIデータセンターはピーク需要を増加させるため、電力網から追加のピーク発電が必要となる。
ペイメント分野のトピックリスト
Strike APIを用いてBTCPay Serverにローカル オフランプを導入するパイロットプログラムを開始。BTCPay Serverのマーチャントは、Strike が法定通貨残高をサポートしていればBitcoin決済を現地通貨決済で利用可能に(出典:7/26付)
フェラーリ、暗号通貨決済システムを欧州ディーラーネットワークに拡大。ディーラーは暗号通貨を直接管理する必要なし(出典:7/24付)
BtcpayServerとStrikeのインテグレーションによる、El Zonteでの歯科支払い(出典:7/26付)
Amboss、ピアツーピアファイナンスアプリ、Bancoをクローズドベータローンチ(出典:7/28付)
Fedi、コミュニティによる管理と非営利活動のサポートを備えた「Community Superapp」をローンチ(出典:8/6付)
ビットコイン報酬プログラムを提供するFold、ビットコインを活用した初のピュアプレイ金融サービス企業としてNASDAQ上場へ。これまでに配布された総ビットコイン報酬は$45m以上(出典:7/24付)
Mutiny Wallet、年内でオペレーション終了へ(出典:8/5付)
セルフカストディアルなP2P決済のユーザー体験提供にむけた「Breez SDK」(出典:8/8付)
Lightning Networkがもたらす海外送金の変化(出典:8/9付)
投資分野のトピックリスト
MicroStrategy、2024年第2四半期決算を発表、226,500BTCを保有(1BTCあたり36,821ドル)。Bitcoin戦略の重要な業績指標である「BTC Yield」の年初来累計は12.2%(出典:8/1付)
Geminiの2024年暗号通貨状況調査(プレビュー)によると、米国人の5人に1人が暗号通貨を保有(出典:7/26付)
米国のスポットBitcoinETFの保有量(0.9m BTC)、サトシ(1.1m BTC)に迫る(出典:8/13付)
BlackrockのiShares、AUMでGrayscaleを抜いて最大のデジタル資産ファンドマネージャーに(出典:8/15付)
Morgan Stanleyも、BlackRockのスポットBitcoinETFを$187m保有(出典:8/14付)
Goldman Sachs、BitcoinETFへの投資を公開。11のBitcoinETFのうち7つのETFのポジションを保有し、うちBlackRockのiShares Bitcoin Trustに$238.6mを保有(出典:8/14付)
米ミシガン州、スポットBitcoin ETFを年金基金に追加。ARK Bitcoin ETFを$6.6m分保有(出典1、出典2:7/26付)
米ウィスコンシン州投資委員会、 BlackRockのスポットBitcoinETFを$98.9m保有(出典:8/14付)
カナダのファーストフードチェーンTahiniによるBitcoin導入戦略(出典:8/8付)
ノルウェーのソブリンウェルスファンド「Norges Bank Investment Management」(aka Norway’s Government Pension Fund Global)、MicroStrategyに$217mを投資(出典:8/14付)
韓国の国民年金公団(NPS)も、MicroStrategyの株式$34m相当を取得(出典)
bitFlyer Holdings、FTX Japan 株式会社の株式取得完了を発表。新たにクリプトカストディ事業を展開へ(出典:7/26付)
メルコイン、「ビットコインつみたて機能」を提供開始(出典:8/1付)
マイニング分野のトピックリスト
MARA、$100m相当のBitcoinを購入し、現在バランスシートに20,000BTC以上を保有と発表(出典:7/25付)
CleanSpark、米ワイオミング州のマイニング施設75MWを$18.75Mで取得(出典)
金融機関をめぐるトピックリスト
Morgan Stanley、15,000人のファイナンシャルアドバイザーが適格顧客にBitcoinETF(BlackRockのIShares Bitcoin Trust および FidelityのWise Origin Bitcoin Fund)を提供できるようにするとのCNBC報道(出典:8/2付)
Fidelity International、Bitcoin ETPをロンドン証取にプロ投資家限定で上場(出典:7/31付)
JPMorgan、市場全体の混乱にもかかわらず、機関投資家がビットコイン価格の反発を支え、ビットコイン先物のリスク回避の動きは限定的との見方(出典:8/8付)
Xapo Bank、英国での銀行免許のパスポート取得を発表。利付きの米ドル口座とビットコイン口座の組み合わせなどを提供へ(出典:8/9付)
HSBC Australia、詐欺対策を理由として7月24日から暗号通貨取引所への支払いをブロックし始めた旨を顧客に通知(出典:7/25付)
SBIホールディングス、ビットコインETF参入準備 米運用大手と新会社 - 日本経済新聞(出典:7/25付)
関連サービスリスト
Foundry、マイナーとビットコインネットワークのコア開発者にマイニングしたBitcoinの一部を寄付できる「Foundry Donate」を発表(出典:7/23付)
Lightning Labs、「Taproot Assets on Lightning」リリース(出典:7/23付)
Lightning Labsがリリースした「Taproot Assets on Lightning」によって、アセットをBitcoin上でmintし、Lightning Network経由で即座に送信。
スケーラブルな方法でBitcoinとLightningのマルチアセットネットワークを構築可能に
"Taproot Assets on Lightning"の動画(出典)
Strikeが発表した開発者むけ「BOLT 12 Playground」(出典:6/21付)
Bitcoin Dollar :: Nicolas Dorier's Blog|Lightning Network上で金融商品を利用する方法について(出典:7/22付)
オープンソースのLightningウォレット「Alby Hub」(出典:7/24付)
Proton Walletのアーリーアクセスが利用可能に(出典)
Lightning を使って携帯電話のデータプランを購入できるサービス「sats2data」(出典)
様子をみながら、少しずつ発信していければと思いますので、よろしくお願いします!