Diamond Hands Magazine、水曜日のビットコインニュースまとめです。
ビットコインの譲渡益に課税しないことから、ビットコイナーの逃避先や関連スタートアップの登記先として人気のポルトガルが、購入後1年以内の売却益に28%を課税開始すると発表しました。Hodlerにはあまり影響がないかもしれませんが、トレーダーの流出を招くかもしれません。
取引所を介した売買なら取引履歴を提出すれば良いとして、P2P取引の場合は購入時期をどう証明するのでしょうか?労働報酬や物販の支払いとして得た場合、給与明細や仕訳帳を提出するのでしょうか?税務申告が煩雑になるのは間違いなさそうです。KYC強制への布石、事業者によるビットコイン導入の阻害、ビットコインへの敵意を隠さないEUやECBからの圧力か、などと勘繰ってしまいますが、真意は不明です。
ビットコインの譲渡益に課税しない国は多いですが、その大半はビットコインの法的位置付けが明確化しておらず単に法規制整備が追いついていないケースです。ポルトガルはそうではなく、国が戦略的に決めたことだけに、限定的ではあれ、方針転換の背景が気になります。
Diamond Handsコミュニティは国内外の関連企業から支援してもらっています。ありがとうございます!
スポンサーには個別に情報共有やインプットをしたり、ニュースレターやレポート上などで企業ロゴを掲載させてもらっています。
Coin CenterがTornado Cash制裁をめぐりOFACを提訴
アメリカのクリプト業界ロビー団体Coin Centerは、財務省外国資産管理室(OFAC)によるTornado Cash制裁は越権行為であるとし、以下を求める訴訟を起こしました。
プライバシーの尊重
プライバシー保護ツールTornado Cashに対する制裁解除
アメリカ国民の基本的人権であるプライバシー行使の制限の禁止
訴訟人にはクリプトとは無関係のプライバシー全般の保護を訴える活動家や著名人も名を連ねています。
先週お伝えしたPayPalによる言論統制もそうですが、金融機関による顧客のプライバシー侵害と一方的なサービス提供拒否は目に余ります。今週はJPMorganが140Mドル(208億円)もの大金を預ける上客であるはずのKanye Westに口座解約を通知したことが話題になりました。理由は開示されていませんが、politically incorrect(不適切)な発言が問題視されたのではと憶測を呼んでいます。また、騒動直後にSatoshi Nakamotoと刺繍された帽子をかぶって、オレンジのTシャツを着てビバリーヒルズに現れたKanyeの写真がTwitterに溢れました。金融機関に理不尽な扱いを受けたことを機にビットコイナーになる人は多いですからね。
自分のお金を銀行から引き出すのに、そのお金を得た方法や何に使うのかを申告しなければならない、顧客の言動が気に入らないとの理由で決済仲介業者が送金を差し止めるのは異常です。以前はプライバシーは独裁国など一部の国の問題でしたが、今は世界的にプライバシーがデフォルトではなくなってきています。日本でも、保険証を廃止してマイナンバーに一本化するとの政府方針を受け、さまざまな意見が聞こえてきます。プライバシーを求めるのはやましいことをしている証拠という人、隠すようなことはないからプライバシーはいらないという人には、国家による国民のプライバシー侵害を暴露して海外逃亡を余儀なくされたEdward Snowdenのメッセージを聞いてほしいです。プライバシーのない世界には創造性もイノベーションもないそうです。がんばって日本語字幕をつけたので、ぜひご覧ください。
イーサリアムの検閲耐性が低下、ビットコインは大丈夫?
上記OFACによるTornado Cash制裁が発動された直後から、問題視されてきたイーサリアムの検閲耐性ですが、The MergeによるPoWからPoSへの移行を経て低下し、今週ついに51%以上のブロックがOFAC制裁対象のTornado Cash関連アドレスを含むトランザクション(TX)を除外(下図10/18の時点では56%)している実態が明らかになりました。制裁対象アドレスに関連するTX処理に遅れが生じている状況で、制裁の合憲性合法性が確定していない今の段階では、検閲によりユーザーが不当に不利益を被っていると言えます。
検閲耐性の低下はイーサリアムのプロトコルの問題ではなく、バリデーターがブロック生成を委託するリレイヤーの問題と報じられています。シェア80%以上を占めるリレイヤーFlashbotsがOFAC制裁準拠型だそうです。解決策として、リレイヤーの分散化を高めるために検閲しないタイプを導入したと。ただ、バリデーターのリレイヤー選択基準は利益最大化であり、収益性が最も高いのがFlashbotsという現状で果たしてどの程度効果があるのかは不明です。さらに有力バリデーターにはアメリカに拠点を置く事業者が多く、彼らにとって規制準拠は死活問題です。TXを検閲するバリデーターはスラッシュすればいいとの声も聞こえてきますが、Diamond Hands Magazine Vol.5で解説したように、それほど単純な話ではありません。
TX検閲問題はイーサリアムやPoSに特有な問題で、ビットコインは心配無用なのでしょうか?ビットコインもマイナーの中央集権化により検閲耐性が低下するリスクがあります。リスク回避策として、マイニングプロトコルStratum V2のオープンソース開発が進行中です。Spiral主導で設立したワーキンググループにはBitMEX、Foundry、Galaxy Digitalなどが既に参加と支援を表明しています。Stratum V2がデプロイされると、個々のマイナーがブロック生成とブロックに含めるTXについて決断権を持つようになり、マイニングプールへの依存度が低下するようです。マイニングの分散性が高まり、ビットコインのプロトコルレベルでの検閲耐性が改善すると期待されています。
ただマイナーも、特に事業者は経済的利益を目的としてマイニングしているわけで、中央集権化で規模の経済メリットが得られるような状況では検閲が横行する可能性も否定できない気がします。しかし、イーサリアムをはじめとするアルトと異なり、ビットコインの場合は非中央集権性や分散性が担保する検閲耐性や没収耐性などに実利を感じる利用者が多いので、こうした特性を犠牲にすることは、価格という市場評価を介してマイナーの収益性にも悪影響を及ぼすため、ある程度の抑止力にはなるのではないかと考えています。
マスターカードが銀行向けにビットコイン取引のワンストップサービスを提供
銀行が顧客向けにビットコイン取引サービスを独自に立ち上げて運営するハードルは高いです。特に複雑で不明瞭な規制への対応と、ビットコインの特性に由来する安全性確保の難しさがネックとなって、ビットコインへのエクスポージャーを求める顧客からの要望に応えられないでいます。
そこでマスターカードは、コンプライアンスとセキュリティという2大障害を巻き取ることで銀行のペインを解消し、一般人のビットコインへの門戸をを広げるサービスを提供すると発表。具体的には、マスターカードは取引所Paxosと銀行の間の「ブリッジ」として、規制対応、TX検証、KYCおよびマネロン対策を一手に引き受けるようです。カストディとセキュリティはPaxosに一任ということでしょう。来年第1四半期のパイロットPJを経て本格的にロールアウト予定ということですが、アメリカ限定なのか、国際展開するのかは不明です。
マスターカードが行った調査では、価格暴落後もビットコインやクリプトへの顧客関心度は高いこと、約6割が既に口座を持つ銀行などでの取引を望んでいることが示されたため、新サービスの勝機ありと判断したようです。もし成功すれば、Coinbaseなどクリプト特化の取引所にとっては強力なライバルとなります。Krakenは既にワイオミング州で銀行ライセンスを取得していることからも、将来的には、取引所と既存金融の境界は曖昧になり消えていくと思います。
世界の暗号通貨ランキング、日本は大きく順位を落とす
Coincubが2022年第3四半期の暗号通貨ランキングを発表しました。1位は3期連続でドイツ、日本は前期11位から27位に大幅後退しました。特にコメントはありません。詳細はCoinPostさんの記事をご参照ください。
ビットコインコア、関連PJの最新情報
Bitcoin Optech Newsletter(日本語版)最新号でチェック。
データ・チャート
ビットコインに関する数値はダッシュボードでチェック。