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1. 概要
ビットコインの分散型マイニングプールOCEANが、”ビットコイン採掘の本来の精神を復活させるために設計された革新的な分散型マイニングプロトコル”として「DATUM」のリリースを発表しました。
「𝗗ecentralized 𝗔lternative 𝗧emplates for 𝗨niversal 𝗠ining」の略称であり、「ユニバーサルマイニングのための分散型代替テンプレート」を意味するものです(出所1)。
「DATUM」は、採掘者がブロックテンプレートの構築に対する制御を取り戻すことを可能にし、ビットコインネットワークが安全で分散化され、金融検閲などの中央集権化の脅威に抵抗できるようにするとしています。
今週10月18日にパブリックベータが公開予定とされていますので、それに先立って概要を理解しておくべく、その課題意識やソリューションの特徴をみていきます。
2. マイニングの中央集権化をめぐる課題意識
今日のビットコインのマイニングは、大規模なマイニング プールによるブロック テンプレート (ブロックに含まれるトランザクションを決定する構造)の作成が支配的であり、分散型の起源から逸脱している、という問題意識が指摘されています(出所2)。
ビットコインは、分散化のビジョンを持って作成されたため、個人や小グループがマイニング プロセスに参加できるようにし、単一の組織がネットワークを制御できないようにすることが意図されていました(出所3)。
そのため、当初は、マイナーがブロック テンプレートを構築してネットワークに送信することによって、ブロックチェーンを構築する役割を真に体現できていました。マイニングは個人で行う作業であり、ノードはマイナーと台帳の管理者の両方の役割を果たしていました(出所4)。
例えば、ビットコインソフトウェアに「Get Bitcoin」というシンプルなボタンがあり、これをクリックすると、コンピューター上で直接マイニングプロセスが開始され、ブロックを見つけると、50 BTC とトランザクション手数料が獲得できるようなものだったとのことです(出所4)。
その後、ビットコインネットワークが成長し、マイニングの難易度が増すにつれて、個人でのマイニングは実行不可能になり、マイニングプールが誕生しました(出所4)。
マイナーではなくプールが、マイニングされたブロックに含まれるトランザクションを決定するブロック テンプレートの作成を制御するようになっています(出所3)。
現在、ビットコインのハッシュレートの 50% 以上が 、「Foundry USA」「AntPool」という2 つの大規模マイニングプールに集中しています(出所3)。
大規模マイニング プールがビットコイン ネットワークを支配するようになる中にあって、マイナーはハッシュパワーの単なる販売者に成り下がっているとも指摘されています(出所4)。
これにより、ネットワークが、トランザクションの検閲の可能性が高まる他、単一の組織がネットワークのハッシュパワーの大部分を制御する 51% 攻撃などのリスクにさらされる可能性といった、潜在的な中央集権化に対する懸念が生じています(出所3)。
こうした中央集権化は、ビットコインの分散化の精神を脅かすだけでなく、セキュリティと外部からの圧力に対する抵抗にもリスクをもたらし、ビットコインの基盤そのものが弱まることにつながります(出所3)。
3. 解決策としてのDATUM
DATUM は、プールではなく個々のマイナーに、プールに参加して一貫した報酬を得ながら独自のブロック テンプレートを作成する機能を与えることで、この状況を変えるとしています(出所3)。
ブロック テンプレートの制御をマイナーに返すことで、DATUM はプールではなくマイナーがブロックチェーンに追加するトランザクションを決定することを保証します(出所4)。
ブロック構築を分散化することでソリューションを提供することによって、51% 攻撃を防ぎ、ビットコインが自由でオープンなシステムであり続けることができるとのこと(出所2)。
ビットコインの本来のビジョンに沿って、ブロック構築を分散化し、個々のマイナーに制御を戻すように設計されています(出所3)。
個々のマイナーがマイニング プールに参加して一貫した報酬を得ながら、独自のブロック テンプレートを構築する権限を与えるプロトコルとなっている点が特徴です(出所2)。
個々のマイナーがブロック作成プロセスをより細かく制御できるようにすることによって、マイニングの分散性を回復することを目指して設計されており、ビットコインネットワークの動作方法を大幅に変える可能性がある、としています(出所3)。
DATUM では、マイナーがプールの一部であり続け、定期的な支払いの恩恵を受けながら、独自のブロックを構築し、ビットコイン エコシステムに完全に参加するため、「マイナーがブロック テンプレートの制御を維持しながら、プールから報酬を獲得できる」ようにしています(出所4)。
DATUM を使用するマイナーは、トランザクションに優先順位を付けることができ、特定のコミュニティに利益をもたらすようにマイニングの取り組みを調整することもできます(出所4)。
たとえば、エルサルバドルのような国は、手数料を下げ、ブロックスペースへの優先アクセスを提供することで、マイニング リソースを国民のサポートに充てることができます(出所4)。
4. DATUMの仕組みとワークフロー
図 1 は、集中型プールを使用したマイニング ワークフローを示しています(出所4)。
これに対し、図 2 は、DATUM を使用したワークフローを示しています。payout splitを調整することを除き、すべてのマイニングタスクはマイナーの手に戻り、ブロック設計を完全に制御できるようになるとされています(出所4)。
DATUM を使用するには、マイナーはマイニング ハードウェアと直接通信する DATUM ゲートウェイと、ビットコイン ネットワークとピアリングしてブロックの送信を管理するビットコイン フル ノードが必要です(出所4)。
ゲートウェイとフル ノードは、同じハードウェア デバイス上で共存できます。
これにより、マイナーはマイニング ハードウェアに実行する作業を指示でき、OCEAN のプールは貢献と報酬の分割を正確に追跡します。
セットアップガイドによると、以下の手順が示されています。
プレセットアップ
新しいブロックをできるだけ早くダウンロードして検証するには、十分なパフォーマンスのハードウェアを備えたビットコインノードを実行する必要がある。DATUM によるマイニングに使用するノードは平均以上のパフォーマンスが必要
セットアップ
ステップ 1: DATUM ホスト ノード (DHN)となる Bitcoin ノードをセットアップし、ブロックチェーン全体と同期する
ステップ 2: マイナーにマイニングさせたいブロックを作成するためDHN ホスト ノードを構成する
ステップ 3: DHN がマイナーからネットワーク アクセス可能であることを確認する
ステップ 4: DATUM ゲートウェイをインストールして構成する
ステップ 5: マイナーを構成する
5. Stratum V2との相違点
DATUM は、マイニング プロセスを分散化する最初の試みではなく、Stratum V2(Sv2)と同様に、DATUM はブロック構築を分散化し、個々のマイナーに制御を戻すように設計されています(出所2)。
Stratum V2(Sv2)も、同様の目標を念頭に設計された別のプロトコルであり、マイナーが独自のブロック テンプレートを制御できるようにしています(出所3)。
当初、前述の問題の一部に対処すると期待して、Stratum V2 (Sv2) が検討されたものの、開発期間を経て、Sv2 は短期的には実行可能なソリューションではないことが明らかになり、新しいフレームワークが必要となったとのことです(出所4)。
これが、マイナーに権限を戻し、ビットコインの分散型の性質を回復するためにゼロから「DATUM」プロトコルを構築することにつながったとしています(出所4)。
Stratum V2 はマイニングの一部の側面を分散化する点で進歩を遂げたのに対して、DATUMは Stratum V2 よりも利点を提供できる点として、以下が挙げられています。
軽量でポータブルな設計により、実装が容易になり、既存のマイニング セットアップにシームレスに統合できる(出所3)
coinbase payoutが即座に、custocialな監視なしでマイナーに直接支払われる(出所4)
これにより、見つかったすべてのブロックが分散型でノンカストディアルな方法で報酬を受け取ることが保証される
6. まとめおよび懐疑的な意見
リリースに際し、OCEANのリード投資家であり分散化の提唱者であるJack Dorseyは、「ビットコインの長期的な健全性には、継続的な分散化と許可のないマイニングが不可欠である。DATUMによる革新により、マイナーにとって分散化が容易になる」と述べています(出所2)。
このように、DATUM の狙いは「ビットコインマイニングの集中化に対処すること」にあり、個々のマイナーに権限を戻すことによって、ネットワークのセキュリティと回復力を強化するだけでなく、大規模なマイニング プールがハッシュレートの多くを制御することに関連するリスクを軽減することが期待されています。
一方で、Peter Toddのように「OCEAN が分散化されているという主張は疑わしい」「Ocean のソースコードをすべて公開すべき」として、「Datumは魔法ではない」といった、懐疑的な見方もされています(出所5, 出所6, 出所7, 出所8)。
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様子をみながら、少しずつ発信していければと思いますので、よろしくお願いします!