これはポッドキャストで話した内容を書き起こして文章でも残したものです。まだの人は音声も是非聞いてみてください。
重要リンク集💎🙌
Diamond Hands Wiki (ライトニングやルーティングに関するリソース集)
Lost in Bitcoin(ビットコイン学習リソース集)
東: 新しい試みとして、小川さんとポッドキャストをやってみることになりました。
今回から、技術系の話を中心に、自分が小川さんにインタビューする形で、ライトニングやビットコイン周りの技術について話していきます。
企業の人など、まだあまりライトニングやビットコインの技術に詳しくない人たち向けにも、わかりやすく説明していくことをコンセプトにしています。
第1回目ということで、まずは記念すべき回です。小川さん、よろしくお願いします。
小川: よろしくお願いします。
ライトニング決済の特徴とオンチェーン決済との比較:企業が知っておくべきポイント
東: 小川さんも以前にビットコイナー反省会などで出ていただいたことがありますので、このような話には慣れていると思います。
ただ、今回はあまり技術的な話に深入りせずに、わかりやすく説明していくつもりです。例えば、ライトニングについて特徴を説明する際には、簡潔に話していきます。
では、早速始めましょう。
東: 記念すべき第1回ですが、どういう話をするかというと、今日はライトニングの送金の特徴について、あまり詳しくない人たち向けに説明したいと思います。
特に、これからライトニング決済を導入したい企業や、アメリカなどでライトニング決済を採用する企業が増えているため、日本でも興味を持つ人が増えてくると予想されます。
東: 早速、小川さんに聞きたいんですが、ライトニング決済採用したい企業がいた場合、オンチェーンに関しては慣れているという想定で、ライトニング決済とオンチェーン決済を比較した時に、まず知っておかなくちゃいけないポイントは、何だと思いますか?
企業目線でお願いします。
小川: まず、ライトニングの技術的な話ではなく、ライトニングの基本的な概念について簡単に説明したいと思います。
ライトニングはビットコインを送金するためのレイヤー2と呼ばれる技術で、ブロックチェーンに書き込まずに決済が可能です。
ライトニングを使用すると、通常のビットコインのオンチェーン送金とは異なる特徴があります。まず、ベンダー側が金額を指定できることや、支払いを拒否できることが挙げられます。
東: これは、例えばオンライン決済とかでライトニングを採用する企業としては、メリットって言えると思いますかね?
小川:
そうですね、オンチェーンでのベンダー側が決済を行う場合、ユーザーが指定金額よりも小さいまたは大きい金額で送金する可能性があります。
通常のオンチェーンの送金では、ベンダー側はそれを拒否することができず、不正な決済に対応しなければならないというデメリットがあります。
しかし、ライトニングを使うと、このような問題がなくなります。
ベンダーは指定した金額に対して必ずユーザー側に送金させることができます。また、ベンダーが送金者に対して不正行為があった場合や、実際の決済を行おうとしたがユーザーがキャンセルしたいと要求した場合、ベンダー側はキャンセルすることができます。
これはライトニングがオンチェーン送金に比べて優れた特徴を持つポイントだと思います。
東: そうですね、逆に言えば、これまでオンチェーン決済を店舗で利用できるようにしている企業やサービスもありましたが、そうすると、ユーザーが間違って送金金額を変えたり意図的に操作したりするなど、さまざまなパターンがあります。
オンチェーンでの送金金額のミスマッチに対しては、リファンドや処理が面倒で大変だったという話も聞かれます。
一方、ライトニングでは、そのような問題が発生しないという地味なメリットがあり、ライトニング決済を採用する企業にとっては重要な優位性となりますね。
ライトニング決済のスピードとコスト:注意すべきポイントと留意事項
東: 他には何かありますか?
例えば、スピードやコストなど、ライトニングが優れているとされる要素について話題になることが多いと思います。
実際、私もそのように説明することが多いですが、スピードやコスト面において、ライトニングはオンチェーンに比べて大きな優位性を持っているので、企業が採用する際には最も重要なモチベーションになるのではないでしょうか。
スピードやコスト面でも注意すべき点や留意すべきことはありますか?
小川:まず、スピード(送金速度)に関してですが、これも一長一短があります。ライトニングでの送金は1秒かからない場合もありますが、場合によっては1分以上かかることもあります。
オンチェーン送金をする場合は、「オンチェーンで送金すると、承認まで10分間待たないといけない」という制約があるとよく言われますが、ライトニングではオンチェーンの承認という概念がなく、ファイナリティがある仕組みなので、その点に関してはライトニングの方がユーザー側から見ると短時間で決済を完了させることができるというメリットがあります。
東: 質問なんですけど、今1分くらいかかることもあるって言ったんですけど、自分が例えばモバイルウォレットを使っている経験だと、カストディアル型のウォレットを使うと結構早い。
ただ、ノンカストディアル型のウォレットを使うこともあるんですけど、そうすると時間がかかることもあり、せいぜい5秒から10秒くらいかなという感じです。
本当に1分かかることってあるのかという点と、ライトニングではどのような要因で決まるのか、スピードの早さや遅さがどう決まるのか、教えていただけますか?
小川:ライトニングの送金速度は、ライトニングネットワークの構成方法によって影響を受けます。ライトニングでは、どの経路でも一定額までは送金可能ですが、金額が増えると、送金可能な経路を見つけるための探索に時間がかかることがあります。
そのため、金額が大きくなると送金作業に時間がかかるリスクも存在します。
東:なるほど、金額が大きくなると送金作業に時間がかかるリスクもあるということですね。
小川:はい、その通りです。また、送金速度はライトニングネットワークのソフトウェアの実装方法や、経路選択の探索アルゴリズムの違いによっても変わってきます。
東:ただ、1分かかるというのは、私の経験ではあまり一般的ではない気がするんですが、特に大きな金額を送る場合には起こり得る可能性があるんですか?
この問題は将来的に解決される見込みはありますか?
小川: これはあり得るんですが…。まぁ、大きなライトニングノードが立って、ハブアンドスポーク型の形になると、大きな金額でも短時間で送金できると思いますが、その場合、分散性が失われる可能性があります。
東: なるほど、トレードオフの関係があるということですね。
小川: そうですね。
東: 面白いですね。ただ、一般的にはどのウォレットを使うかや金額次第という話があるんですけど、個人的には1分かかることは稀だと思います。
ただ、即時であると説明されることもありますが、実際に使ってみると、数秒や10秒、20秒かかることも結構あるんです。
だから、ライトニングを採用しようと考えている人は、そういった時間がかかることも知っておいた方がいいですね。
小川: そうですね、先ほどの話のコストの部分も、速さやスピードに関係しています。
ライトニングネットワークで送金する際に手数料を上げれば、探索する経路の幅が増えるため、高い手数料を支払えば早く決済が完了すると思います。
東: 手数料については、詳細な説明が必要ですね。ただ、この話だけでもまた別の機会で収録できるほどですよね。
ライトニングの手数料の仕組みはオンチェーンとはかなり異なります。
オンチェーンの場合、送金する前にいくら払うかを決めて、その支払った金額に応じて次のブロックに入るかどうかが決まります。一方、ライトニングでは実際の送金が完了するまで具体的な手数料がわからないことがあります。
デメリットを考察:手数料やプライバシー、送金の失敗リスク
東: 手数料に関してはライトニングの方が基本的には安いと認識していても大丈夫でしょうか。ライトニング決済を検討している企業目線で考えると。
小川: それは決済する金額次第だと思いますね。
1万円や数万円ほどの金額であれば、ライトニングの方が安いです。ただ、もっと10万円や100万円以上の決済をしようとすると、おそらくオンチェーンの方が安いかなと思います。
東: そうですね、オンチェーンでは送金の金額と手数料は直接的には関係しません。
例えば10ドルを送るのと1億円を送るのとでは手数料は同じです。しかし、ライトニングでは送金する金額によって手数料が変わる特徴があります。一定以上の金額になると、場合によってはライトニングの方がオンチェーンより高くなる可能性があるということですね。
小川: そうですね、ライトニングは従量課金制のような感じですね。
東: そうそう、それがちょっと違うんですよね。オンチェーンとライトニングの手数料の形態が全然違うんですよね。
でも、これについてはもう少し詳しく話したいので、とりあえずまあ、ライトニングの方が小さい金額だと安いけど、大きな金額になると場合によってはライトニングの方が高くなってしまうこともあるということが一つあります。
東: あと、プライバシーの話もあります。ライトニング決済は、外部からいくら送金したかが基本的にはオンチェーンで見られない仕組みになっているので、プライバシーが高いという特徴があります。
ただし、プライバシーに関してはさまざまな意見があり、思っている以上にプライバシーがないという批判もあるので、別の機会で話すこともあるかもしれません。
東: 他に、ライトニングのユーザビリティが高い点として、コストとスピード、金額の指定や拒否ができるということを説明しましたが、他に注意すべき点はありますかね?
東: 例えば、ライトニングの送金は失敗する可能性はあるんですか?
オンチェーンでは、アドレスさえあれば一方的にでも送金できることができますが、ライトニングでは送金が失敗することがありますか?
小川: そうですね、ライトニングのデメリットの一つとして、決済が失敗する場合があります。主な問題は2つあります。ひとつはネットワーク上の問題であり、もうひとつは自身の問題です。
ネットワーク上の問題としては、ライトニングネットワークは複雑なチャンネルの組み合わせで送金を行うため、送金者が受信者に対して自分が好きな経路を選択し送金します。
しかし、選択した経路内に送金可能な金額が不足している場合、その経路では送金できず失敗することがあります。
一方、オンチェーンの場合は、経路の計算などは必要なく、送金トランザクションを作成し署名し、その署名データをビットコインのネットワークに送信すれば、簡単に失敗することはありません。
しかし、ライトニングでは自分が送金したい金額を決めて、その金額が通る経路を見つけて送金する必要があるため、失敗する可能性がかなりあります。
東: 体感的にも、かなり大きな金額を送ろうとすると、謎のエラーが出て送金が失敗することがまだまだあるんですよね。
小川: そうですね、まだまだあります。
東: ですから、今後ルーティングなどネットワークがより成熟していくと、大きな金額でも安定して比較的早く送金できるようになると思います。
現状では、オンチェーンの場合はほぼ100%の確率で送金が成功すると言えますが、ライトニングの場合は送金エラーが発生する可能性があるという点でオンチェーンとは異なるデメリットがありますね。
ライトニング特有のメリット:在庫と関連した決済ロジックの組み込み
東: 他に付け加えることがあればお願いします。まだカバーしていないけど、知っておいた方がいいことがあれば教えてください。
小川: 重複するかもしれませんが、ライトニングを決済の手段として採用することは、金額指定ができるというメリットや、支払い後にベンダーが他のロジックを組むことができるというメリットがあります。
例えば、商品の在庫確保などを行った後に決済を行うことができます。
東: それについて詳しく説明してもらえますか?ロジックを組むとは具体的にどのようなことができるのでしょうか?また、オンチェーンではできないのですか?
小川: 例えば、ユーザーが1000円でジュースを買おうとする場合、支払いを行った後にベンダーはまだ実際の支払いをせず、まず商品の在庫があるかを確認するロジックを組むことができます。そして、在庫確保が成功したら実際の支払いを着金させるということです。
東: オンチェーンだと支払いが行われたら途中でやめることはできないということですね?
小川: はい、ベンダーは支払いを取り消すことはできません。
また、複数のユーザーが同じ商品を購入しようとして、最初にユーザーAが支払いし、その後ユーザーBも支払いを行った場合、ベンダーは両方の支払いを受け取らなければなりませんが、在庫が1つしかない場合、在庫確保ができないため対応が困難になります。
東: なるほど、確かに重要なポイントですね。
他チェーンと比較してもメリットは大きい
東: 最後のトピックに移りましょう。
質問ですが、他のブロックチェーンには、高速かつ低コストな特徴をアピールしているものもあります。
そのようなチェーンが決済に使用できると言われる場合もありますが、小川さんはライトニングと他のチェーンを比較した場合、ベンダーの視点から見てライトニングのメリットが大きいと考えますか?
小川: そうですね、他のブロックチェーンも結局ブロックチェーンであり、書き込みが必要です。
一方、ライトニングでは書き込みが不要であり、決済を一時停止して他の処理を行い、後で受け取るというオフラインの仕組みが可能です。
しかし、オンチェーンを使用する場合はこのようなことはできないと思います。ですので、ライトニングは決済に非常に適している仕組みだと思います。
東: 自分自身もユーザーとしてまたは事業者としてライトニングを使用する立場からも、使いやすさを感じます。ライトニングはよく考えられた使いやすい仕組みだと思います。オンチェーンを決済に使用する場合とは処理方法やユーザー体験が異なるため、ライトニングの決済には多くの利点があると思います。
今日は細かい部分については話し切れていない部分もありますが、次回以降も全体像や特徴などをわかりやすく説明するスタイルで話を進めていこうと思います。聞いている皆さんからのコメントや要望もお待ちしています。