th_satです。
Diamond Hands Magazine、ビットコインを巡るビジネス面・規制面の動向のまとめです。
ビットコインをめぐるビジネス面の動向(ペイメントや社会生活での利用や、金融機関での金融商品としての取り扱いなど)、規制の動向、その他で気になる個別トピックについて、ゆるく紹介しています。
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それでは、早速直近2週間のトピックを紹介したいと思います。
1. 規制関連の動向
暗号資産取引の追跡へトラベルルールが施行(出典1, 出典2, 出典3)
暗号資産取引を追跡するため、6月1日からより厳格なマネーロンダリング防止措置を実施することが5月23日に閣議決定されました。
犯罪収益の追跡をより適切に行うためのトラベルルールの施行が特徴となっています。
暗号資産の送金を処理する金融機関が次の金融機関に顧客情報を渡すことが義務付けられるものです(その情報には送金者と受取人の名前と住所が含まれている必要)。
5月26日には、金融庁より、犯罪収益移転防止に関する法律施行令の一部を改正する政令案等に関するパブリックコメントの結果等が発表されました。本件の政令は、6月1日から施行されることとなっており、以下の事項が定められています。
犯罪収益移転防止法上の特定事業者の特定事業者の業務のうち、取引記録等の作成・保存義務等の対象となる業務(特定業務)及び取引時確認義務等の対象となる取引(特定取引)の要件を定める。
電子決済手段・暗号資産の移転に係る通知義務(トラベルルール)の対象から除外する国又は地域の要件を定める。
犯罪収益移転防止法上の特定事業者による取引時確認の方法や電子決済手段の換算基準を定める等の規定の整備を行う。
電子決済手段及び暗号資産の移転に係る通知義務(トラベルルール)に基づく通知事項を定める。
電子決済手段等取引業者及び暗号資産交換業者がアンホステッド・ウォレット等と取引を行う際の取引時確認等を的確に行うために講ずるべき措置について定める。
電子決済手段等取引業者及び暗号資産交換業者が移転に係る提携契約を締結する際の確認義務に基づく契約相手のマネロン対策状況の確認方法・基準について定める。
トラベルルール、アンホステッド・ウォレット等との取引のリスクに応じた態勢整備義務等に関する所要の規定の整備等を行う。
このうち、「トラベルルール」「アンホステッド・ウォレット」に関して、以下の補足資料が添付されています。
欧州議会、「MiCA後のデジタル金融と暗号資産に残された規制上の課題」レポートを発表(出典1, 出典2)
政策検討として、ウォレット規制・DAO規制・暗号資産監督強化が提案されています。
AML/KYC要件を組み込んだeIDASフレームワークの下に「ユーロウォレット」を開発し、AML/KYCチェックを追求するライセンスと監督を受けた行為者のみがEU顧客と取引することを可能にする。
また、DAOにエンティティステータスを付与し、EUユーザーにサービスを提供する前提としてEU内の代表者を任命することを義務付ける。
既存の監督ネットワークを暗号資産に拡大する。
特にトークンの分類、ステーキング、NFTなどに関して、MiCAが暗号規制においていくつかのギャップを残していると指摘しています。
MiCAはDeFiプロトコルとその分散化レベルのニュアンスを十分に考慮していないとし、部分的な分散化や多くの追加課題をもたらす、と述べています。
また、トークンを分類する際に、特にレンディングやステーキングのプロトコルに関連する場合には、米国「Howey Test」を考慮するべきだと指摘しています。
欧州銀行監督局(EBA)、顧客デューデリ・マネーロンダリング及びテロ資金調達リスク評価ガイドラインを発表(出典)
self-hosted addressesによる取引はML/TFリスクの増大にさらされる可能性があると強調しています。
具体的には、self-hosted addressesから暗号資産を繰り返し受信し、または暗号資産を送信する場合、強化型デューデリジェンス(EDD)として暗号資産の出所に関する証拠を入手することを求めています。
また、特にself-hosted addressesを含む取引について、取引リスクを評価するために高度な分析ツールを適用すべきであるとしている。
トピックリスト
証券監督者国際機構(IOSCO)、「暗号・デジタル資産市場に関する政策提言レポート」を発表。暗号資産サービスプロバイダー(CASPs)が関与する様々な活動(募集、取引許可、継続取引、決済、市場監視及びカストディ、および個人投資家に対するマーケティング及び流通(助言販売及び非助言販売を含む))をカバーするものとなっている(出典)
WEF、暗号資産規制を巡るグローバルなアプローチへの道筋についてホワイトペーパーを発表(出典)
米国、債務上限取引の中でマイニング電力への30%DAME課税の撤廃が含まれているとのこと(出典)
米テキサス州、アンチマイニング法案SB1751は通過せず(出典)
MicroStrategy、Bitcoinなどの特定の暗号資産の会計処理と開示についてFASB(米国財務会計基準審議会)が提案したアプローチを支持すると表明(出典)
香港SFC、仮想資産取引プラットフォーム運営者に対する規制要件案に関する協議結論を発表。改訂された規制要件案は2023年6月1日に施行予定(出典)
香港SFC、仮想資産取引プラットフォームに関する新ライセンス制度の経過措置について周知資料を発表。経過措置は、非証券トークンの取引サービスを提供するVATPにのみ適用(出典)
香港とUAEの当局、仮想資産に関する協力強化を合意。共同ワーキンググループ設置へ(出典)
2.ビジネス関連の動向
TBD、「Web5 Verifiable Credentials Toolkit」の技術プレビューを開始(出典)
Block社の開発者向け事業であるTBDが、中央集権的な機関に依存することなく、個人が自分のIDやクレデンシャルを所有・管理する分散型アプリケーションの構築を支援する新コンポーネント「Web5 Verifiable Credentials Toolkit」を開発したことを発表しました。
Web5は、分散型のオープンソースプラットフォームであり、Webに新しく信頼できるアイデンティティとトラスト層を提供することによって、真の問題を解決する分散型アプリケーションおよびプロトコルを可能にするものとしています。
検証可能なクレデンシャル(VC: verifiable credentials)とDecentralized Identifiers(DID)は、Web5を構成する2大ブロックであり、Web5では、VCとDIDが提供する可能性を最大限に引き出すために、自己主権型アイデンティティ(SSI)の概念や標準を考慮して設計されています。
今回の「Web5 Verifiable Credentials Toolkit」リリースによって、開発者は、DIDの設定と管理、検証可能なクレデンシャル(VC)の発行、およびこれらのクレデンシャルの発行と検証を簡単かつ効率的に行うためのテンプレートの定義ができるようになるとしています。
Google CloudとLightning as a Service(LaaS)プロバイダーのVoltageが提携を発表(出典1, 出典2)
Voltageは、2020年にサービスを開始したLightning as a Service(LaaS)プロバイダーです。
ミッションとして、ほぼゼロに近い手数料でリアルタイムの決済を可能にするLightning Networkソリューションを企業に提供し、組織が新しい体験やビジネスモデルを生み出しながら決済を送受信できるようにすることを掲げています。
具体的には、送金コストや国境を越えた決済を節約するためのソリューションを必要とする金融やFinTech企業、あるいはウェブ向けのマイクロペイメント体験を創造する企業など、決済をビジネスの中核に据えるブランドに対してサービスを提供しています。
同社がGoogle Cloudと連携し、ホスティングプロバイダーやロケーションを拡大している旨が、Google Cloudの記事として発表されています。
この連携により、同社のクライアント企業は世界中の様々な場所において、Google CloudにBitcoinノード・Lightningノードを作成することができるとのことです。
Google Cloudとの提携を通じて、BitcoinとLightning のインフラをGoogle Cloudでスケールアップ可能にすることによって、Lightningソリューションのグローバル展開を進めるとしています。
米国連邦準備制度理事会(FRB)、「米国世帯の経済的幸福度」レポートを発表(出典, 出典2)
米国連邦準備制度理事会が、米国の成人とその家族の経済生活を調査した「2022年の米国世帯の経済的幸福度」報告書を発表しました。本報告書は、経済的な幸福、収入、支出、雇用、銀行と信用(Banking and Credit)、住宅、退職と投資、高等教育と学生ローンに関する調査結果について論じています。
このうち、「銀行と信用(Banking and Credit)」のセクションにおいて、「取引用の暗号通貨やBuy Now, Pay Later(BNPL)のような比較的新しい金融サービスの利用は、従来の支払いやクレジット手段の利用に比べ、依然として低いままであった」とした上で、具体的な集計結果を示していますので、トピックを以下に紹介します。
暗号通貨の保有・使用は、2022年には成人の10%となっています(2021年から2%ポイント減少)。
暗号通貨を取引に使用する理由として最も多く挙げられたのは、「お金を受け取る人や企業が暗号通貨を好むこと」「お金をより早く送ること」「プライバシー」の3つであるとしています。
所得が$100,000以上の成人は、所得が低い成人に比べて、暗号通貨を投資として保有する傾向が強い一方、所得が$25,000未満の成人は、所得が高い成人に比べて、金融取引に使用する傾向が強くみられます。また、人口動態や社会経済的特性によっても異なり、投資と取引の両方で、若年層と男性に多くみられることが分かります。
トピックリスト
Bitcoin 2023 conferenceの動画リンク集(出典)
カナダNeutronpay、Pouch.phと提携し、カナダとベトナムに住むフィリピン人向けLightning送金サービス提供へ。カナダドルやベトナムドンをBitcoinに変換した上で、フィリピンペソに変換して、受取人の口座に直接送金するもの(出典)
「メルカリ」のビットコイン取引サービス、提供開始2か月強で利用者数30万人を突破(出典)
RGBを活用したBitcoinNFTマーケットプレイスDIBA、メインネットローンチ。デジタル資産(UDA)を保存できる専用ウォレットも提供(出典)
Wallet-as-a-serviceプロバイダーMagic、PayPal Venturesが主導する$52mの資金調達ラウンドを発表(出典)
Tether、ウルグアイで持続可能なマイニング事業を開始すると発表(出典)
様子をみながら、少しずつ発信していければと思いますので、よろしくお願いします!