Diamond Hands Magazine、水曜日のビットコインニュースまとめです。
今週はニュース満載なので、早速本題に入ります。
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クリプト界の寵児は裸の王様だった?
昨日からTwitterに釘付けという人も多いのでは?ここ数年、飛ぶ鳥を落とす勢いで事業と富と影響力を急拡大してきたFTXのCEO、SBFことSam Bankman-FriedがBinanceのCEO、CZことChangpeng Zhaoに白旗を掲げて全面降伏しました。ことの背景、経緯、ディールについては日本語でも発信されているので、クリプトメディアやTwitterをご参照ください。
FTXが去年180億ドルのバリュエーションを得たことで、Samは30歳未満で最もリッチな企業家としてForbesで取り上げられ、その独特な風貌や語り口と相まって、一躍メディアに愛される存在に上り詰めました。今年1月にはFTXのバリュエーションは400億ドルまで上昇し、Samの発言力も高まりました。奇しくも現在開票が進むアメリカ中間選挙は民主党の苦戦が報じられていますが、Samはバイデン大統領に520万ドルも寄付した2番目の大口献金者です。バイデン政権が推進するクリプト規制法案にも影響力を持つ彼が先月提案した草案は、新規参入障壁を高め、クリプト市場を既存金融の枠に押し込めて競争力を削ぐ酷いもので、業界から反論が相次いでいました。サイファーパンクとは対局の既得権益者と化したSamへの風当たりが強まる中、CoinDeskがFTXの関連企業Alamedaの財務情報をリークして注意喚起します。CZはFTXが発行するFTTトークンの全売却を決めた要因として、これら2つ(敵対的クリプト草案とAlamedaの台所事情)を挙げました。
では、1日にして崩壊するようなSamの砂の城はどのように築かれたのでしょうか?Lyn Aldenはスレッドで以下のように説明しています。
マクドナルドがドナルドトークンを発行したとします。発行したトークンの大半は自社で保有し、一部を市場で売却しました。その後、自社保有するトークンを担保にして「本物のお金」を大量に借り入れました。
やがて市場はドナルドトークンは「本物のお金」ではないことを思い出します。
ドナルドトークンを保有していたスターバックスは、トークンは「本物のお金」ではないと市場に警告する一方で、トークンの市場での売却を開始します。
ドナルドトークンの価値は急落し、マクドナルドの財務状況は急速に悪化します。
これが今週クリプトランドで起こったことです。
Celsius、3ACと同じようなカラクリです。子ども銀行券のようなトークンに価値があるかのような幻想を抱かせ、そのバリュエーションをもとに借入やレバレッジ取引を行い、幻想が冷めた瞬間に流動性危機に陥る。FTXが最後ではないでしょう。
それにしても、2大オフショア取引所の吸収合併が世界中のクリプト民が見守る中、こんなスピーディにライブ感満載で起きたことは驚異的です。「大きすぎて潰せない」と言い訳しながら公金使用を正当化する政府や、「最後の貸し手」である中央銀行が介入しなければ、市場機構が正常に働き不適格事業者は迅速に排除されるのですね。
CZはデューデリジェンス次第でディール破棄の可能性もあると予防線を張ることを忘れていません。一部では今回のドラマはCZの筋書き通りと囁かれています。自らが投資家として支援したFTXがBinanceの地位を脅かすほど巨大化し、政財界の受けも良いSamに危機感を抱いたCZが、Alamedaの内情を知りCoinDeskにリークして市場不安を煽っておき、FTTに売りを浴びせて取り付け騒ぎを誘発し、Samに跪かせて救済を懇願させたと。真相を知る由もありませんが、本当ならゴッドファーザー級の見事なエグゼキューション。
今後気になる点としては、BlockFiなどFTXが救済した企業はどうなるか。さらにはSamはクリプト業界を代表してアメリカ議会の公聴会などで証言しています。Binanceによる買収プロレスのデューデリジェンスで、証言内容と矛盾するようなプラクティスが横行していたことが露呈すれば、既に失われたSamの信用は回復不能でしょう。中間選挙の結果次第では、民主党の大口献金者Samが矢面に立たされることも考えられます。Nic Carter曰く、完全に賭ける馬を間違えた、です。
本件は中央集権的な取引所への規制強化を後押しするでしょう。コンプライアンスコストはますます上昇すると思われます。政府だけでなく、投資家からはProof of Reserveの導入など、バランスシートの透明性が一層求められるようになるでしょう。PoRを実践しているのは、現在のところBitMexとKrakenの2社だけです。
ビットコインの現物を買ってセルフカストディする正統派hodlerにとって、今回の一件はCelsius、BlockFi、3ACなどと同様に対岸の火事です。高みの見物をしつつ、火事の巻き添えで価格を下げたビットコインをここぞとばかり買い集めている人も多いのでは?
Stay humble, stack sats.(奢ることなく謙虚さを忘れず、今日もsatsを積み増そう。)
Silk Roadから盗まれた5万BTCが押収
米司法省は2012年にダークウェブのマーケットプレイスSilk Roadから約5万BTCを盗んだ犯人から押収したと発表しました。
驚くのが、犯人が5万BTCを保管していた方法です。(盗難方法や司法省の操作手法などはスレをご参照ください。ブロックチェーン、怖いですね。オンチェーンに記録されたトランザクションは永久に公開情報として残り、どんどん高度化するチェーン分析によって匿名性が下がってします。)犯人宅の家宅捜索で、地下室でブランケットに包まれたポップコーンの空き缶の中から「シングルボード・コンピューター 」が見つかったそうです(アメリカではポップコーンがバケツのような大きさの密閉できる缶で売られています)。犯行当時はハードウェアウォレットなどなかったので、ラズパイか何かでしょうか?そのコンピュータに53,500BTCの秘密鍵が保管されていたと。
巧妙なハッキングを首尾よく実践した犯人は、当然ITリテラシーは高かったでしょう。しかも、マキシのようで、数々の暴落や2013~2015年、2018~2019年の冬の時代もひたすらhodlし続け、2017年のビットコインキャッシュのフォークで配布されたBCHは即座に全額BTCに換え、セルフカストディを貫きました。マルチシグ、マルチロケーションなどは考えなかったのでしょうか?ただ、SNSやredditのr/Bitcoinに投稿するなど脇の甘さも見られるので、ブロックチェーンの怖さを過小評価していたのかもしれません。
米政府は押収したビットコインをどうするのでしょう?米政府は現在210,000BTCを保有していると。確か中国も同じくらい持っているはずです。Silk Roadから押収した3万BTCは、2014年にオークションにかけられ、Tim Draperが落札しました(落札価格は1BTC約630ドル、当時の市場価格は400ドル程度)。今回押収した分もオークションで売却するのか、それとも戦略的資産として保有し続けるのか?おそらく後者では。
メルカリでビットコインが買えるように
メルカリはメルカリアプリからビットコインを購入できる機能を、子会社メルコインを介して来年春に提供開始することを発表。「モノやお金だけでなく、信用・NFTや暗号資産などあらゆる価値が循環するエコシステムを拡大していく」ための第一歩と言ったところでしょう。
メルカリの本人確認を完了していれば最短1分で購入できる仕様を目指しているとのことで、別途メルコインでのKYCが不要な点は、初めてビットコインを入手するための壁を取り払う意味で画期的です。(楽天は楽天市場と楽天証券に口座があって楽天クレカを持っていても、楽天ウォレットで口座開設の際はKYCした覚えがあります。)メルカリの売上金でビットコインを購入することも可能。ここまでするなら、メルカリの支払いオプションにライトニング決済を追加してほしいところ。ニーズはないと思いますが。
4,800万人のメルカリユーザーが、ビットコインを欲しいと思ったらすぐ買える環境に置かれることのインパクトは、次のブルランで検証できそうですね。
LBCトークンに有価証券の判決
米ニューハンプシャー州連邦地方裁判所は、「LBCトークンはデジタル通貨」とするLBRY社の主張を退け、「LBRY社はLBCの販売で証券法に違反した」というSECの主張を認めました。LBCトークンは証券に該当するとの判断です。
LBRY社の開発者は、「判決はアメリカのクリプト業界全体を脅かす前例となる。この判決を基準にすると、Ethereum、Dogeを含むほぼ全ての暗号通貨が証券に当たる」と投稿。業界全体として危機感を共有し、行動する必要性を訴えました。LBRY社は公式アカウントで「諦めない」とtweetしているため、控訴するかもしれません。
本件もビットコイナーにとっては対岸の火事です。現在の法定通貨制度下では、各国中央銀行が通貨発行権を独占しています。残念ながら、民間銀行が銀行券を発行できたフリーバンキング時代ではないです。通貨発行者は莫大なシニョリッジを享受できるため、国がこの権利を自主的に手放すことはあり得ません。インフレという財源なしに今のような大きな政府の運営は不可能だからです。
こうした環境下で法定通貨制度の代替制度として誕生したビットコインは、DigiCashなど過去の中央集権的なデジタル通貨の失敗から学び、非中央集権性、分散性を最優先してきました。政府が圧力をかける対象がないこと、これがビットコインの強みです。分散性はスペクトラムではなくバイナリーというのが私見です。ただ、政府や法規制の枠に縛られたくないビットコイナーとしては、こうした判決をそれ見た事かとばかりに囃し立てるのも違うと思っています。評価は市場に任せておけばよいのです。
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