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Diamond Hands Magazine、ビットコインを巡るビジネス面・規制面の動向のまとめです。
ビットコインをめぐるビジネス面の動向(ペイメントや社会生活での利用や、金融機関での金融商品としての取り扱いなど)、規制の動向、その他で気になる個別トピックについて、ゆるく紹介しています。
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それでは、早速直近2週間のトピックを紹介したいと思います。
1. 規制関連の動向
米アーカンソー州で差別的税制からマイナーを保護する法案(出典)
米アーカンソー州のデータセンター法案は、マイナーのガイドラインを確立するとともに、差別的な規制や税金からマイナーを保護し、企業がデータセンターと同じ権利を持つことを保証しようとするとのことです。
「デジタル資産マイニング事業」とは、ブロックチェーン・ネットワークを確保することによりデジタル資産を生成することを目的として、単一のサイトで動作するコンピュータの集団で、年間平均で1メガワットを超えて消費するものを指すと定義されています。
また、個人宅でのマイニングについても、「個人は、個人の住居でホームデジタルアセットマイニングを運用する目的で、公共料金の規則および料金に従って、本州のノードを利用することができる」と保護した上で、「家庭用デジタル資産マイニングに従事する者またはデジタル資産マイニング事業を有する者は、統一マネーサービス法に基づく送金業者とみなされない」としています。
米モンタナ州、自治体によるマイニング業務の妨害を禁止する法案が可決(出典)
マイナーへの差別的な電気料金を禁止する他、「自宅で行われる採掘作業の保護」「自治体がゾーニング法を利用してマイニングを阻害する権限の排除」および「暗号通貨を決済手段として利用した場合の追加課税の禁止」について示されています。
米テキサス州、デマンドレスポンスプログラムへのマイニング業者の参加を制限する法案を上院で可決(出典)
電力需要急増時の操業抑制にクレジットが支払われるプログラムへの参加可能金額に上限を設けるものです。
税制上の優遇措置を廃止することが目的とされます。なお、下院で否決される可能性が高いとのこと。
米SECの諮問委員会、事実上すべての暗号トークンが証券であるとの考えを示す(出典)
多くの投資家が暗号資産への投資の結果、大きな損失を被っており、その損失は2兆ドル以上と推定されている。損失の大部分は、投資に関連するリスクを評価するための知識や情報を持たない素朴な投資家によって負担されていると主張しています。
さらに、暗号取引は半匿名で国境がないため、マネーロンダリングや脱税など、さまざまな違法行為に適している。2021年に世界で140億ドル相当のデジタル資産に基づく犯罪が発生すると推定されており、この金額は、2020年の推定値のほぼ2倍にあたる、と指摘しています。
その上で、全てではないにせよ、事実上すべての暗号トークンは証券であり、それら、およびそれらを扱うプラットフォームやカストディアンは、投資家を保護するために連邦証券法の規制対象となる、と述べています。よって、暗号資産証券の募集およびそれを取引するプラットフォームは、連邦証券法の登録、開示、不正防止規定およびその他の投資家保護規定を遵守する必要があるとのことです。
これらを踏まえ、SECは、暗号資産投資の取引を提供する発行者、カストディアン、未登録のプラットフォームとして活動する企業など、暗号領域で連邦証券法に違反している企業に対して、引き続き積極的に執行措置を講じるべきである、と結んでいます。
米SEC、「取引所」の定義の修正案についてのコメント期間を再開する旨のリリースを発表(出典)
「DeFi」システムを含む暗号資産証券を取引するプラットフォームに対する既存規則の適用性を再確認するものと位置付けるものです。
Gary Gensler委員長は「多くの暗号取引プラットフォームは、現行の取引所の定義に該当するため、証券取引法を遵守する義務がある。暗号市場の投資家が、他のすべての市場で証券法が提供するのと同じ保護を受けなければならない」とコメントしています。
米SEC Hester Peirceコミッショナー、SECリリースについて「混乱を招き、実行不可能な基準である」と指摘(出典)
上述のSECリリースを受けて、Hester Peirceコミッショナーが、「分散型活動の参加者、バリデーターやマイナーを含む基礎技術のプロバイダーに対して、混乱を招き、実行不可能な基準である」と指摘しています。
SECのアプローチは、あたかも90年代に、電子通信ネットワーク(ECN)が証券法遵守を保証するために、インターネットサービスプロバイダとインターネットプロトコルの開発者が、これらのサービスなしではECNが運営できないという理由だけで「集団的責任を負う」と主張したかのようだ、とコメントしています。
エコシステムに関わるすべての人を「グループ」の一部とするため、政府の事前承認が必要な言論について重大な曖昧さを生み出し、憲法上保護される言論を否応なく冷遇することになる、とし、米国憲法の言論の自由への抵触を指摘しています。
コードがプリントされたTシャツを例に出した上で、「私がTシャツを着て公共の場に出た場合、登録しなければならないのでしょうか?このTシャツを誰かに売り、その人がコードを展開した場合はどうなるのでしょうか?」とも述べています。
実行可能性についても、「多くのDeFiシステムが”取引所”の現行定義に該当する可能性があるものの、どのように登録することになるのかについて明確にしていないし、登録がなぜ意味があるのかも明示していない」と指摘しています。
その上で、「SECは、その解釈が分散型プロトコルを集中化・消滅・国外追放に向かわせることを予期しているようだし、関係者が代わりに米国外で活動するか市場から撤退することを選ぶかもしれないと認めているが、もっと違う方法で進めてほしかった」と結んでいます。
欧州麻薬・薬物中毒監視センター、暗号通貨と薬物に関するレポート(出典)
欧州麻薬・薬物中毒監視センターの依頼で作成された暗号通貨と薬物に関するレポートによると、暗号資産の全面的禁止は効果的ではないとして、全面禁止よりも警察の訓練を充実させたほうが効果的であると警告しているとのことです。
Chainalysisのデータを用いて、ダークネット市場のエコシステムにおける活動の度合いを推定するものであり、利用者が不正な利益を現金化する際に識別できるようにすることが重要である旨を述べた上で、ダークネット市場での違法薬物購入の増加に対抗するため、取引所の利用者の身元確認を強化するよう求めているとしています。
英国で初のBitcoin限定の政策機関「Bitcoin Policy UK」(出典)
政策立案者、環境保護者、企業、エネルギー生産者、Bitcoinの専門家など多様なステークホルダーを束ねることによって、英国経済におけるBitcoinの可能性を引き出すことを目指すとのことです。
Bitcoinの誕生と世界的な普及がもたらすユニークな機会を認識し、無駄なエネルギー資源や座礁したエネルギー資源を活用しながら、英国への投資を呼び込み、雇用を創出し、新しい産業を推進することに努めるとしています。
インド財務相、各国共通の枠組みを開発することが必要とコメント(出典)
インド財務相が、「暗号通貨の崩壊やショックが多発していることから、G20議長国において、暗号通貨は非常に重要な議論の一部となっている」とした上で、「この問題に対処するために、すべての国に共通の枠組みを開発することを求めている」とコメントしています。
インドは本年のG20議長国であり、「暗号資産は定義上ボーダーレスであり、規制の裁定を防ぐために国際的な協力が必要である」と指摘しています。
トピックリスト
米国財務会計基準審議会(FASB)、暗号資産に関する新基準を提案。暗号資産をより伝統的な資産と同様に扱い、評価精度を向上させるもの。(出典)
米国政府、Silk RoadのハッカーJames Zhongから押収した51,351BTCの一部を売却(出典)
2.ビジネス関連の動向
Riot Platforms、NYT記事に対して反論声明を発表(出典)
Riot Platformsが、NYTの記事に対して、「当社のマイニング事業は、Facebook・Amazon・Googleの他のデータセンターと同様に、温室効果ガス排出を一切発生させていない」とする声明を発表しました。以下に主張の概要を紹介します。
1) NYTは、Bitcoinマイニングデータセンターの電力使用量を人々の家と比較しているが、電気を使うほぼ全ての産業が、Bitcoinマイニングデータセンターよりも高い割合の化石燃料で発電された、桁外れに多くの電気を使用している。
2) NYTは、「Bitcoinマイニング作業は、電気代の上昇や莫大な炭素汚染を含むコストを生み出す可能性がある」としているが、電気代が様々な理由で上昇している一方、Bitcoinマイニングは電気代を削減している他、汚染物質も全く排出しない。
3) NYTは、「Bitcoin企業は、テキサス州において停電を防ぐために必要であればすぐに電源を落とすと約束することによって、電力系統運用者から報酬を得ているのに対して、実際には、停電を要請されることはほとんどない」としているが、Riotは「約束」に対して報酬を得ているのではなく、Riotのエネルギー負荷を直接管理する能力をERCOTに提供することに対して報酬を得ている。
4) NYTは、「Bitcoinマイニングがもたらす雇用は著しく少なく、数十人しか雇用できないことが多く、地域の経済発展を促進することも少ない」としているが、Riotは何百人ものフルタイム従業員を抱え、何百もの地元業者を使い、郡と学区で最大の納税者となっている。
5) NYTは、「多くのBitcoinビジネスは、再生可能エネルギーが豊富な地方で運営できることをアピールしているものの、それらの主張は厳しい現実に直面している」としているが、Riotはテキサス州のエネルギーグリッドから電気を購入しており、風力発電24%、原子力発電10%、太陽光発電4%程度を使用している。
FTXがすべての暗号資産をホットウォレットに保管(出典)
破綻したFTXのCEOに任命された弁護士John Ray IIIから、独立取締役会に提出された中間報告において、FTXにおける統制上の不備が明らかになりました。
この中間報告書は、FTX Groupの(i)経営とガバナンス、(ii)財務と会計、(iii)デジタル資産管理、情報セキュリティ、サイバーセキュリティの各分野におけるコントロールの不備のうち、特定のものについて、概要を説明するものです。
「暗号資産を保護するためのセキュリティコントロールの欠如」として、「①ホットウォレットへの保管・コールドストレージの不使用」「②マルチシグネチャ機能やMPCコントロールの不使用」「③秘密鍵の不適切な管理」および「④ウォレットノードの不適切な管理」の4点が挙げられていますので、以下に概略を紹介します。
①ホットウォレットへの保管・コールドストレージの不使用
FTX Groupは、暗号資産の秘密鍵を、Amazon Web Servicesからリースしたクラウドコンピューティング環境に保管していた。FTX Groupは、事実上すべての暗号資産をホットウォレットに保管していた。
FTX.com、FTX.US、Alamedaのいずれも、2日間の取引活動をカバーするために必要な量を超える暗号資産を監視またはコールドウォレットに移動するシステムを備えておらず、暗号資産を保護するためにオフライン、エアギャップ、暗号化、地理的に分散したノートPCを使っていなかった。
日本以外では、規制によってコールドストレージの使用が義務付けられていたため、FTX Groupはコールドストレージをほとんど使用しなかった。
②マルチシグネチャ機能やMPCコントロールの不使用
また、FTX Groupは、暗号資産を保護するために広く使用されているマルチシグネチャ機能またはマルチパーティコンピュテーション(MPC)コントロールを採用していない。
FTX Groupは、各ウォレットについて、転送を承認するために必要な3つの秘密鍵すべてを一箇所にまとめて保管したため、1つにアクセスした者は、ウォレットのコンテンツを転送するために必要なすべての鍵にアクセスすることになっていた。
③秘密鍵の不適切な管理
さらに、FTX Groupは、秘密鍵を管理しようとする適切なシステムを管理または導入することを怠った。
FTX.com、FTX.US、Alamedaが使用する秘密鍵およびシードフレーズは、FTX Groupのコンピュータ環境内の様々な場所に、様々な安全でない方法で、統一的または文書化した手順なしに、無秩序に保管されていた。例えば、サーバーに暗号化せずに平文で秘密鍵が保存されていた。
FTX Group の秘密鍵の多くは、適切なバックアップ手順なしに保管されていたため、鍵が失われた場合、関連する暗号資産が永久に失われる可能性が高かった。秘密鍵の適切な記録を欠いていたため、暗号資産の所在やアクセス方法を誰も知らな かったという理由で、暗号資産が失われる重大なリスクがあった。
④ウォレットノードの不適切な管理
加えて、FTX Groupは、ブロックチェーン・ネットワークのソフトウェアを実行するサーバー上で動作し、取引の実施と伝播、ブロックチェーンのセキュリティと完全性の維持を支援するソフトウェア・プログラムである「ウォレットノード」を管理するためのコントロールを適切に実装していなかった。
例えば、FTX.comのBitcoin資産は、事実上すべて1つのBitcoin Coreウォレットノードに保持されていた。ウォレットノードを保護することの重要性は明らかであるにもかかわらず、ウォレットノードの秘密鍵を暗号化するためのパスワードは平文で保存されていた。
Blocktrace、Bitcoinブロックチェーン上のデータと対話するAI「Robby the Robot」を開発(出典)
Blocktraceが、チャットボットを使い、Bitcoinブロックチェーン上のデータと対話する「Robby the Robot」と名付けたAIを開発したことを発表しました。
Bitcoinに関する質問に正確かつ効率的に回答するAI搭載ロボット「Robby」の開発を発表したものです。
捜査官やユーザーがBitcoinアドレスを素早く見つけ、ネットワーク上で発生した取引をより正確かつ詳細に特定可能になるとされます。
ベータ版リリースへのサインアップを募集中とのことです。
香港のバーチャルバンクZA Bank、認可取引所でトークンから法定通貨への変換を提供へ(出典1, 出典2)
決済銀行として、取引所に暗号トークンを預けた後、香港・中国・米国の通貨で引き出しができるようにするとの旨、Bloombergで報道されました。
ZA Bankは認可を受けた取引所とのみ取引を行う予定であり、規制要件を満たすために通常のチェックリストに照らしてAMLの精査を行っているとのことです。
トピックリスト
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エルサルバドルのEl ZonteのBitcoin Beach Wallet、「Blink」に名称変更(出典)
ロンドン証券取引所、Bitcoin指数先物・オプションのクリアリングサービス「CH DigitalAssetClear」を開始へ(出典)
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スイス最大のリテールバンクPostFinance、デジタルアセットバンクSygnum Bankと提携し、デジタルアセット商品とサービス可能に(出典)
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様子をみながら、少しずつ発信していければと思いますので、よろしくお願いします!