今日正式に簡単なプレスリリースが公開されましたが、Diamond Handsのプロジェクトとしてフルグルジャパンから支援を受けつつ、RGBプロトコルのオープンソース開発に取り組むことになりました。
【フルグル公式プレスリリース】
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000003.000100011.html
【あたらしい経済さん取材記事】
https://www.neweconomy.jp/posts/264587
Diamond Hands Magazineニュースレターの方では、その背景と現状の所感、印象などについて補足しておきます。
ライトニング上のトークンとスマコンが最近盛り上がり始めている
ちょうど数日前にLightning LabsがTaroのα版(テストネット)コードを公開して、Taroを利用したトークン発行や送受信のテストが出来るようになったというニュースが出ました。こちらのニュースレターでも紹介しましたが、ライトニング関係者の間では結構話題になり、日本でもNayutaの開発者の上野さんが早速いじったりもしていたようです。
Lightning開発のリーディング企業であるLightning Labsが強力にTaroを推していることもあり、ライトニングを利用したステーブルコインなどのトークンの送受信やビットコインを利用したスマートコントラクトの実行というテーマは、エコシステム内の次のトレンドとして明確にモーメンタムが形成されてきています。Labs以外にもNYDIGなどの巨大ビットコイン企業もTaroに注目しているという発言を先日しており、今後この分野へ参入するライトニング企業も増えていくでしょう。
実際、現状のライトニングはビットコイン自体の効率の良い送金を実現するペイメントネットワークとして少しづつ成熟化してきていますが、このライトニングのインフラの上にさらにビットコイン以外の権利や契約などもよりスケーラブルに、高速、安価に運べるようになるとしたら、これはライトニングだけではなくスマートコントラクト的な機能を必要とするプロジェクト全般にとっても非常に重要なテーマになり得ます。
(ここらへんの話については先日公開した「ライトニングネットワーク概観」でも一部議論しています)
より身近な話では、例えばDiamond Handsコミュニティでライトニングのルーティングに挑戦しているノード運用者のルーティングの収益性にも今後直接関わってきますし、日本でも気になっている人は結構多いと思います。
その一方で、トークン発行、特に色々なアプリケーションやプロトコルに投機やガバナンスレイヤーとしてトークンを利用すること自体の是非はライトニングかどうかとは別の議論として存在すると思います。特に現在進行形でアメリカではトークンに対する規制強化と投資家保護が議論されている中、単純に何でもかんでもトークンを作って配ったりトレードしたり投票出来るようにすれば、メリットばかりでWeb3なら何でも出来る、という単純な話でもないのは今更説明不要でしょう。
他にもステーブルコインなどの大きすぎるトークンレイヤーがビットコインの上に形成されてしまうのは、マイニングやフォーク時のインセンティブやセキュリティに悪影響を及ぼす可能性があるのでは、という懸念なども長く議論されています。
それらの懸念やリスクなども十分に理解した上で、特にRGBやTaroが採用するクライアントサイドバリデーション型の新しいコントラクトの仕組みや、ライトニングのルーティングとの関係性やポテンシャルには個人的に非常に関心がありました。
これらの技術は個人的にはイーサリアム型のスマコンサービスを真似したり置き換えたりするものでは必ずしもないと思っており、ライトニングを補完する形の新しいタイプのサービスやユースケースを可能にする、という文脈で興味を持っています。
RGBのオープンソース開発取り組みの狙い
上記のような背景がある中、今回RGBに関するプロジェクトを取り組むことになったのは、元々Fulgur(フルグル)グローバルの責任者と色々雑談していたのがきっかけです。
「今後世界的にRGBのオープンソース開発の支援をやっていくプランがあるんだけど、興味があれば日本でも同様の動きを作れないかな?」くらいの雑談から始まり、海外のRGB開発チームのメンバーとも一部話もしてみた結果、最終的にDiamond HandsとしてRGBのオープンソース開発のプロジェクトとして引き受けることにしました。
前述の通り今後のトレンドとして好きか嫌いかは別としてライトニング上のトークン取引やコントラクト実行というテーマは世界的に確実に今後注目が集まって行きますし、実際に動けるところから一部開発などにも関わっていくことでまずは自分達自身で細かい部分を含め正確に理解し、そのユースケースやポテンシャル、もしくは課題を把握していくことが重要と考えています。特にこの領域は海外も含めていわゆる最先端に近いレベルの話なので、日本のコミュニティ全体としてもここに食らいついておいて、理解度を高めておく意味はあると思います。
なお、現時点では自分もそこまでRGBに関してまだ深く理解しているわけではなく、技術設計の詳細、得意なユースケース、その他のスマートコントラクトプラットフォームと比較した時のプロコンやトレードオフなど含め、今後RGBの開発などと並行して追加で情報発信などもやっていく予定なのでそちらもお待ちください。
ちなみに、具体的にRGBを使って何をどう作っていくのか?という話も裏ではすでに色々考えて動き始めているのですが、こちらについても後日段階的に公開出来るものについてはどんどん情報をアップデートしていきます。
RGB vs Taro?
余談ですが、RGBとTaroのコミュニティは一種のライバル関係で、現状では開発者同士もそこまで仲良くないような印象を受けます。
Taroの方がマーケティングや演出面、開発者リレーションに関しては少なくとも今の所上手くやっているのですが、RGBの方が歴史や現状公開されているコードや資料なども先行しており、Diamond Handsの今回の件も含めて、これからウォレットや開発者用のツールなどのインフラを整えていく作業に本格的に入っています。
まあプロトコルやプロジェクト同士の競争やライバル意識はよくある話で、自分個人としては特に何も気にしてないのですが、それぞれにいい意味でプレッシャーをかけて今後開発や普及のスピードが加速すればお互いにいいのではないかと思います。
競争関係にあるという話をしましたが、自分の現状の理解だとRGBとTaroは実は設計思想や機能性も差別化されている部分が多く、RGBが汎用的でスケーラブルなスマートコントラクトプラットフォームの実現を目指している一方、Taroはトークンをライトニングに載せて、効率よく動かすことを主眼に置いている印象を受けます。その点ではいずれ互換性を持つようになったり、ユースケースの棲み分けが生まれていく可能性もあるんじゃないかと現状では漠然と考えています。
Diamond Handsとしては今回良い機会をもらったので、まずはRGBに関して研究開発に取り組んで理解度を高めていき、RGBとTaro両方、もしくはその他の技術も含めて冷静に調査分析、必要あればユースケースに応じて使い分けていくのがいいのではないかと個人的には思っています。その点では特に特定の企業のプロダクトやプロトコルを変に贔屓することはしないですし、出来るだけ中立に発言や分析は継続していきます。まあ日本では元々RGBもTaroもあまり好きではない開発者も多いですが、別にそれはそれでいいと思っています(笑)
とりあえず今回はこれからやっていくよ、という宣言がメインでしたが、本番はこれからでとりあえず短期集中で色々形にしていきます。
ルーティングノードの運用や新規機能提供も地味に進めているので、そっちもお楽しみに。最近頑張ってます。