ユーザー・ソブリンティ(主権)の現在地:niftynei × ビットコインウォレット開発者パネル【後編】
「マルチシグによる財務管理(treasury)」
が、とにかくつらすぎるという問題です。
私の理想はこうです:
会計担当者が
「今月の給与を支払う」ボタンを押すだけで、
全署名者に通知が行く。
各署名者は
スマホで通知を受け取って
デバイス(ハードウェア)を接続して
署名するだけ
それで全てが終わる世界にしたいんです。
こんにちは!yutaro です。本日の「BTCインサイト」では、
台北で開催された bitcoin++ sovereignty edition の中でも、特に注目度の高かった「User Sovereignty Panel」の【後編】をお送りいたします。
(※本日は後編です… 前編はコチラ)
⚡ 役立つ記事や特集
人は複雑化しすぎて Bitcoin を失っている:本当に重要なことは何か
【Alekos Filini】
話を続けると、私たち全員、スマホにものすごく大事な情報を入れていますよね。
秘密にしておきたい写真、メッセージ、個人情報……
もしそれが漏れたら、数千ドル単位の Bitcoin を失うより、はるかに深刻です。
でも多くの人は、
Bitcoin のバックアップだけ、やたらに複雑にしようとする。
Linux の知識もないのに独自のノードを立てたり、
よく分からないガイドをコピペしながら Electrum Server を構築したり。
バックアップや秘密鍵管理において、
自分が理解していない複雑な手順を “怖いから” という理由で導入すると、
結局はトラブルの原因になります。
だから私は、
“分かっていないことを複雑にするな”
と言いたいんです。
人々は、技術的に不慣れなのに “技術的に見える対策” を取りたがる。
その結果、パッチも当てられないノードを放置したり、
暗号化したまま復号できなくなったりして、
Bitcoin を失ってしまう。
もし二者択一だと言うなら、
「複雑でも高度なプライバシー」より
「シンプルで確実に動く仕組み」
を選ぶべきです。
【Ava Chow】
もうひとつ、より過激な意見もあります。
「ウォレットの暗号化は、盗難を防いだ量より
暗号化ミスで消滅した Bitcoin の方が多い」
というものです。
【Nick Farrow】
100% 同意します。
人は“宝探しゲーム”が好きなんですよ。
特に相続シナリオでは、
複雑すぎる仕組みが本当にひどいことになっています。
自分だけ理解している“仕掛け”を作り、
家族に引き継げないまま死んでしまう……
そんなケースは無数にあります。
【niftynei】
みなさんの話を聞いていると、
全体としてこういう consensus が見えてきます。
「人々は、複雑化しすぎて Bitcoin を失っている」
では逆に、
「人々が注意を払うべきなのに、軽視してしまっているポイント」
は何でしょう?
簡単すぎるところではなく、
むしろ “見落とされがちな重要部分” があれば教えてください。
【Dan Gould】
私の答えはシンプルです。
「誰にどんな情報を漏らしているか」
これをほとんどの人が理解していません。
クラスタリング(取引の紐づけ)は本当に危険で、
部分的な UTXO を送ったり、
過去の UTXO を統合する際の挙動によって、
あなたの残高は驚くほど簡単に推測されます。
あなたが誰に支払い、
誰から受け取り、
どれくらい持っているか。
未来の取引まで含めて丸見えになります。
これは、きちんと扱わないと命取りです。
【Ava Chow】
それともうひとつ、
「Bitcoin を実際に“お金として使う”部分」
が過小評価されていると思います。
たとえば、
コイン選択アルゴリズム。
これは手数料を最適化しているのか
コインを無駄に“粉々”にしてしまわないか
プライバシーを破壊していないか
こういう部分について、
多くのウォレットはまだ考慮不足です。
【Alekos Filini】
私も同意しますが、もうひとつ付け加えるなら……
「技術を理解しないまま自作セットアップに走る人が多すぎる」
「プライバシーが大事だからノードを立てる」
というのは正しいのですが、
その裏には“学習”が必要です。
Linux を理解せずにコピペでノードを構築しても、
維持も更新もできず、
そのまま脆弱なノードを放置してしまう。
本人はプライバシーを守っているつもりでも、
実際にはセキュリティが崩壊している……
そんなケースは本当に多い。
複雑さは、理解が伴わなければただのリスクです。
マルチシグ運用の厄介さ:財団・企業・団体が直面する現実
【Dan Gould】
もうひとつ、私が全員に協力してほしい課題があります。
これは本当に切実なんですが……
「マルチシグによる財務管理(treasury)」
が、とにかくつらすぎるという問題です。
財団や企業の活動で、一番面倒なのがこれなんですよ。
毎月の支払い
給与
経費
これらをマルチシグでやろうとすると、
毎回、メール送ったり、
Signal メッセージ送ったり、
PSBT を手動でやり取りしたり……
完全に地獄です。
私の理想はこうです:
会計担当者が
「今月の給与を支払う」ボタンを押すだけで、
全署名者に通知が行く。
各署名者は
スマホで通知を受け取って
デバイス(ハードウェア)を接続して
署名するだけ
それで全てが終わる世界にしたいんです。
【Dan Gould】
これは完全に “FROST の世界” ですね。
でも重要なのは、
「会計ソフト側の UI と指揮機能」 の部分。
ビットコインの組織運用には、
FROST だけでなく、
指示を出す仕組み、承認フロー、通知システム
が絶対に必要になります。
【Nick Farrow】
実は Frostsnap でも、
この領域はずっと意識してきました。
FROST (Flexible Round-Optimized Schnorr Threshold signatures)は構造的に、
組織のマルチシグ運用と相性がいいんです。
階層化された鍵管理もできるし、
役割分担も作れる。
でも、僕たちはまず
“個人ユーザーのセルフカストディ”
を優先しました。
それが僕たちが一番経験している領域だからです。
将来的には、
組織向けの会計・管理プラットフォーム
を作りたいと思っています。
組織の階層構造
役割・権限
会計フロー
支払い指示と承認プロセス
こうしたものが統合された
“ビットコイン版バックオフィス” のようなツールですね。
【Dan Gould】
個人的には、
「第三者のコサイナー(共同署名者)」
も重要だと思っています。
一定額までは自動承認するとか、
特定の条件下で署名を引き受けるとか、
そうした機能があれば
企業の運用はものすごく楽になる。
会計担当者や税理士に
“部分的な権限” を委任することも
安全にできるようになります。
正直、これは私が毎月直面している痛みの問題でもあります(笑)
月一の支払いが、ほんとに苦痛なんですよ。
ウォレット開発を始めるには?BDK、Chaincode 他
【niftynei】
ここには開発者も多いので、こんな質問をしてみたいと思います。
「ウォレットを作りたい、ウォレット技術に貢献したい」という開発者に
アドバイスはありますか?
気をつけるべき点や、使うべきツールなどがあれば教えてください。
【Alekos Filini】
まずは BDK を使ってください(笑)。
これは本当に強く勧めます。
【Ava Chow】
それから、Chaincode の Boss プログラムもチェックしてほしいですね。
とても素晴らしい取り組みです。
【Dan Gould】
bosschallenge.xyz
【Nick Farrow】
私からも BDK を強く推します。
本当に素晴らしいツールで、
“全部ゼロから実装する苦しみ” を完全に回避できます。
私たちの開発プロセスは
BDK があったおかげで本当に楽になりました。
【Dan Gould】
それと、もうひとつ大事なこと。
助けを求めることをためらわないでください。
多くの人は、ひとりで閉じこもってしまうけど、
正直、質問される側は喜んで助けます。
まっとうな目的を持っていて、
真剣に取り組んでいる人なら、
コミュニティは必ず手を差し伸べてくれます。
【niftynei】
助けを求めるには、どこへ行くべきでしょう?
GitHub? DM? どこが良い?
【Dan Gould】
最速なのは 直接 DM / メールですね。
誰かに直接連絡できるなら、それが一番です。
【Ava Chow】
プロジェクトによりますが、GitHub の Discussion / Issues が適しています。
Bitcoin Core では IRC も使っています。
IRC は使いにくい?
それは “バグではなく仕様” です(笑)
メールも有効ですよ。
私はよく質問メールをもらいますが、
Bitcoin Core を始めたいという人には喜んでサポートします。
ただし——
「しつこくならないこと」
これは大事です(笑)
プロジェクトの告知&締めのメッセージ
【niftynei】
では、残り数分です。
最後に、みなさんのプロジェクトの紹介や告知、
「どこで見つけられるか」などをお話しください。
Nick、あなたからどうぞ。
【Nick Farrow】
はい、ありがとうございます。
まずお知らせしたいのは……
Frostsnap デバイスが注文可能になりました。
「frostsnap.com 」から購入できます。
最新の暗号技術を使った、
とても安全で、
しかも美しいハードウェアウォレットです。
セルフカストディを、
もっと簡単に、もっと安全に。
それが僕たちの目標です。
ぜひ Frostsnap デバイスを試してみてください。
そして、僕たちの活動を応援してもらえると嬉しいです。
【Alekos Filini】
BDK については、
「bitcoindevkit.org」 が公式サイトです。
そこに Discord のリンクもありますので、
BDK に関する質問があれば Discord に来てください。
(私に直接聞かないでください。私はもう開発に関わっていないので(笑))
BDK は開発の進化が早く、
僕が離れて数年の間にコードは大きく変わりました。
いまは素晴らしい開発者たちが支えています。
新しい企業のオンボーディングもどんどん進んでいます。
本当に誇りに思っています。
だから質問があれば、
Discord にいる“今の BDK を知っている人たち”
に聞いてください。
Portal Technologies については別の話で、
サイトは「getportal.cc」です。
ただし Portal はウォレットではなく、
まったく別ジャンルのプロジェクトです。
【Ava Chow】
私のハンドルは “H101” です。
どこでもその名前で活動しています。
Twitch でストリーミングもしていて、
Bitcoin Core の内部がどう動いているか、
コードレビューでどう苦しむか(笑)
そういう様子を毎週月曜に配信しています。
ときどき Bitcoin Core ウォレットのコードを書いたりもします。
興味があれば見に来てください。
【Dan Gould】
私からは 2 つ紹介したいです。
まずは Payjoin 全般は 「payjoin.org」 にすべてあります。
Discord
GitHub
Zulip
全部揃っています。
そしてもうひとつは Boss Challenge(bosschallenge.xyz)。
締切は 31 日で、まだ間に合います。
申し込みをしてもらえれば、
数ヶ月にわたって Bitcoin の貢献方法を学べる良い機会になります。
そして最後に……
Payjoin Foundation や BDK Foundation などを
支援してくれている皆さんに心から感謝しています。
コミュニティの支援があるからこそ、
僕らはこうした活動ができます。
裏側で頑張ってくれているチームのみんなにも、
改めてありがとうと言いたいです。
【Nick Farrow】
最後に、私からも一つだけ。
BTC++ に来てください!
ここは本当に素晴らしいカンファレンスです。
技術者が集まり
本物の知識が共有され
実際に手を動かせる
最高の人たちと出会える
ハッカソンも最高!
ぜひまたここで会いましょう。
【niftynei】
みなさん、本当にありがとうございました。
そして会場のみなさん、参加してくれてありがとうございました。
(※本記事は、bitcoin++が公開した動画 User Sovereignty Panel | niftynei + guests | bitcoin++ sovereignty edition | Dec 2025 Taipei, Taiwan の文字起こし&編集版です)
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