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Diamond Hands Magazine、ビットコインを巡るビジネス面・規制面の動向のまとめです。
ビットコインをめぐるビジネス面の動向(ペイメントや社会生活での利用や、金融機関での金融商品としての取り扱いなど)、規制の動向、その他で気になる個別トピックについて、ゆるく紹介しています。
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それでは、早速直近2週間のトピックを紹介したいと思います。
1. 規制関連の動向
IMF、「暗号資産を完全禁止するアプローチは長期的に有効ではないかもしれない」とする記事を発表(出典)
IMF(国際通貨基金)が、”Interest in Central Bank Digital Currencies Picks Up in Latin America and the Caribbean While Crypto Use Varies”と題するブログ記事を発表しました。
ラテンアメリカとカリブ海諸国はデジタルマネー導入の最前線にあり、世界の他の国々にとって貴重な教訓を提供しているとし、エルサルバドルがBitcoinに法定通貨を付与して話題となったこと等を例示しています。
注目すべき点として、ラテンアメリカの4カ国(ブラジル、アルゼンチン、コロンビア、エクアドル)が、2022年に暗号資産の世界的な普及率トップ20にランクインしたことを挙げています。
暗号資産には、各国の状況によって異なるリスクが存在するとし、IMFは、暗号資産に関連する技術革新の潜在的利益を活用しつつ、リスクを軽減するための適切な政策対応の主要要素に関するガイダンスを提供しているという旨を紹介しています。
その上で、「リスクを考慮して暗号資産を完全に禁止している国もあるものの、このアプローチは長期的には有効ではないかもしれない」とし、「その代わりに、この地域は、市民が満たされていないデジタル決済ニーズなど、暗号資産需要の原動力への対応と、暗号資産取引を国家統計に記録することによる透明性の向上に重点を置くべきである」と結んでいます。
米ノースカロライナ州下院、Bitcoinに焦点を当てた仮想通貨の取得と潜在的な利益を研究する条項を含む法案を可決(出典1, 出典2)
米ノースカロライナ州下院は、仮想通貨を保有することで起こりうる影響と、州がデジタル通貨をどのように保管するかを検討する法案を可決しました。
金地金と「Bitcoinなどの仮想通貨」の両方について、州に代わって仮想通貨を安全に保有し、保険をかけ、清算するプロセスを検討することを目的とするものです。
資金の一部を仮想通貨と金で保有した場合に、金と仮想通貨の保有がどのような影響を与えるかを調査するとしています。
具体的には、そのような保有がインフレや「システミックな信用リスク」をヘッジするかどうかや、金や暗号通貨がボラティリティを下げ、州のポートフォリオのリターンを増加させるかどうかを調査するとのことです。
Prime Trust、債務超過で入出金停止。BitGoによる買収も中止
カストディアンPrime Trustから、「ネバダ州当局の命令により、すべてのフィアットおよびデジタル資産の入出金停止を停止する」旨の通知を受け取ったとするStablyのブログが発表されました。(出典)
米ネバダ州規制当局は、Prime Trustが債務超過に陥っており、顧客の引き出し要求に応じることができなかったとして、同社を営業停止処分にした旨を発表しています。(出典)
これに伴い、BitGoはPrime Trust社の買収を中止する旨を発表しました(出典)。
Prime Trustは、2021年にレガシーウォレットへのアクセスを失い、暗号資産を買い戻すために顧客資産を使用したとされています。(出典)
米ネバダ州金融機関局は、ネバダ州第8司法管区裁判所に対して、Prime Trustに対する管財人選任を申し立てています。これは、Prime Trustが安全かつ健全でない方法で運営されており、債務超過に陥っていると判断したことによるものです。Prime Trustを閉鎖するだけでなく、その財産・資産・帳簿・書類・文書・記録を速やかに差し押さえることを求めています。(出典1, 出典2, 出典3)
トピックリスト
米SECの暗号資産業界に対する取り締まりの次のターゲットは、StablecoinとDeFiになる可能性が高いとの見方(出典)
米FRB議長、決済用Stablecoinは貨幣であり、中銀は米国内における発行を承認する役割を果たすべきとの見方を示す(出典)
米国土安全保障省、「ダークネット市場およびデジタル通貨犯罪タスクフォース」を発足(出典)
米SECのHester Peirceコミッショナー、「どのような規制の枠組みであれ、すべてが金融資産であると決めつけないようにしなければならない」とコメント。「非常に金融的な用語で考えられているが、中央集権的な組織を必要とすることなく交流できるようにするといった、他の用途も存在する」としている(出典)
EU、銀行規制改革の最終合意。潜在的なリスクに対処するため、銀行は暗号資産へのエクスポージャーを開示必要に(出典)
英国上院、金融サービス・市場法案につき、貴族院で承認を経て勅許を得た。Stablecoinに加えて、全ての暗号通貨が規制対象として追加された。暗号資産を「暗号的に保護された価値または契約上の権利のデジタル表現」と定義し、規制対象の金融商品・商品・投資として認める(出典1, 出典2)
ベルギー当局FSMA、Binanceに対してベルギー国内の仮想通貨サービスの提供を直ちに停止するよう命令(出典)
金融庁、金融活動作業部会(FATF)による「暗号資産:FATF基準の実施状況についての報告書」を公表(出典)
国税庁、法人税基本通達等の一部改正について発表(出典)
2.ビジネス関連の動向
スペインSantander銀行、ウェブサイトの「Things that inspire us」コーナーでLightningを解説(出典1, 出典2)
Santanderが、銀行のウェブサイトにおいて、”The Lightning Network: introduction to layer 2 solutions”と題する記事を発表しています。
大量の即時マイクロペイメントを処理する分散型システムであり、毎秒数百万件のトランザクションをサポートできるため、スケーラビリティ問題の解決策となる旨、Lightning Networkについて紹介しています。
一方で、その課題として「支払いをペイメントチャネルに接続しているユーザにしか行えないこと」「現在も開発が続けられているプロトコルゆえ大金を伴う取引には推奨されないこと」および「チャネルの流動性を制限しているため高額取引にむかないこと」を挙げています。
KYC不要のLightningプロセッサー「Nodeless」が紹介される(出典1, 出典2)
Jack Dorseyが、6月23日に、統合Bitcoinプラットフォーム「Nodeless」へのリンクをツイートしました(出典)。
「Nodeless」プラットフォームは、KYC要件なしに、Lightningの支払いを受け入れることを可能にするものとされます。
加盟店がウェブサイトに追加することで、簡単にBitcoin決済を受け入れることができるとのことです。
オンラインストアやチャリティ、募金活動でBitcoinとLightningの支払いを受け付け、コールドストレージやLightningアドレスで直接支払いを受けることができるとされます。
Lightningの支払いを送信する際には常にノードが関与しますが、ここではNodelessがそれを実行するため、ユーザーが独自のLightningノードを実行する必要がないことが特徴となっています。
L402: Lightning HTTP 402プロトコル(出典1, 出典2, 出典3)
LSAT(Lightning Service Authentication Token)として知られてきたL402は、分散型ネットワークにおけるサービスへの課金やユーザー認証のユースケースをサポートする標準です。Lightning LabsのBuider's Guideによれば、Macaroonsの長所である認証と、Lightningの長所である決済を組み合わせたものとされています。
L402によって、AIエージェントと有料APIにBitcoinを提供することを通じて、幅広い新たなビジネスモデルが可能になると期待されているようです。
Lightningを通じてAIエージェント間のマイクロペイメントを強化することによって、分散型インテリジェンスの新時代の到来を告げるものとされています。
アフリカにおける暗号通貨に対する消費者の見方に関する、ケニアの調査会社Kasi Insightsの調査レポート(出典)
ケニアの調査会社Kasi Insightsが、”The State of Cryptocurrency in Africa”と題したレポートを発表しました。アフリカの消費者の嗜好や行動を洞察することによって、アフリカの暗号市場特有のニーズに合わせてマーケティング戦略を調整することができると謳っています。
エグゼクティブサマリーでは、「アフリカの消費者はCryptoについて認識しているものの、これらの資産を所有しているのは人口の一部に過ぎず、FTXとCryptoの暴落による被害はアフリカでは限定的な影響にとどまるはず」と整理しています。
具体的には、アフリカ住民の66%が暗号通貨に触れたことがある一方、82%は暗号通貨を所有したことがないと回答しており、残る18%のうち暗号通貨保有を認めたのは8%のみとのことです。
Every Company Will Be A Lightning Company(出典)
「すべての企業はFintech企業になる」という記事が2020年にa16zによって発表されましたが、このほど、VoltageのCEOが「すべての企業はLightning企業になる」という記事を発表しました。
企業がLightning Network上のBitcoinを通じて金融取引を内製化することが、企業と消費者の双方にとって最適であるとし、Bitcoinシステムを活用したFintechスタートアップが勝つ、と主張しています。
Lightning Networkの優位性の一つとして、決済処理手数料を挙げ、ビジネスを運営する上で残念な現実であるとし、Lightning Networkはこれを解決するものであると述べています。
また、Lightning Networkは世界の公開台帳上にあるという性質上、フィアット・システムと比べてグローバルな決済プロセッサーとして優位に立てるとしています。
分散型SNSアプリ「Damus」がZap機能を巡ってApp Storeから削除(出典1, 出典2)
Damusが、ユーザーがチップを支払ったときにデジタルコンテンツがアンロックされないことを明確にするためにアプリをアップデートしたにも関わらず、App Storeから削除されたという旨をツイートしていました。
Lightningを使用したピアツーピアでのチップであるZap機能が、デジタルコンテンツの販売に似ているとみなされたとされます。
そのため、App Storeのアプリ内課金ガイドラインに準拠するにあたって、Damusアプリの最新バージョンではZap機能はサポートされなくなりました。
各社によるBitcoin ETFの申請が相次ぐ(出典)
BlackRockによるBitcoin ETFの申請の後を追う形で、各社によるBitcoin ETFの申請が相次いでいます。
まず、ETFプロバイダーであるWisdomTreeによる、Cboe BZX取引所に上場するWisdomTree Bitcoin Trustの承認を求める申請がなされました。
また、「Invesco Galaxy Bitcoin ETF」を上場し取引するための規則変更案も、米SECに提出されています。(出典)
さらには、Valkyrie Investmentsが新たにBitcoin ETFを申請した(出典)他、ARK Investも、Bitcoin ETFに関するSECへの提出資料を修正し、監視共有契約を追加(出典)したことが報じられました。
そしてこのほど、シカゴ・オプション取引所(Cboe)からも「Wise Origin Bitcoin Trust」を上場し、取引することを提案がなされたことが明らかになりました。Fidelity Digital Assets Servicesがカストディを担当(出典, 出典)するとされます。
こうしたBlackRock・Fidelity他によるBitcoin ETFの申請について、6月30日にWSJ紙が、米SECが明確かつ包括的でなく不十分であるとNasdaq・Cboeに対して指摘した旨の報道がされました。(出典)
このWSJ報道を受け、Cboeはすぐさま、スポットBitcoin ETFの提案を再提出しています。監視共有契約の一部としてCoinbaseの名前が挙げられています。(出典)
トピックリスト
Bitcoinの法的リソース。最近の法的活動に関する法律事務所や個人などによる解釈リンク集(出典)
Lightning NetworkのUXの課題と解決策(出典)
BTCを受け入れてくれるチャリティの一覧(出典)
Binance、入出金へのLightning統合に取り組んでいるとのこと(出典)
BinanceのLightningノード発見が話題になったことについても、それは自分達だと表明している
Gemini、米国での規制強化に伴いアジア太平洋地域での拡大計画を発表(出典)
Charles Schwab・Citadel Securities・Fidelity Digital Assetsなどが名を連ねるデジタル資産プラットフォームEDX Marketsが取引開始を発表(出典)
Mastercard、「Mastercard Crypto Credential」という商標を出願(出典)
Deutsche Bank、デジタルアセットカストディサービスを運営するためのライセンスを申請(出典)
仏Credit Agricole もBitcoinカストディ提供へ。Credit Agricole とSantander、仏当局AMFにデジタルアセットカストディプロバイダーの登録(出典)
HSBC香港、「CSOP Bitcoin Futures ETF」「CSOP Ethereum Futures ETF」および「Samsung Bitcoin Futures Active ETF」の取引が可能に(出典1, 出典2)
Ledger、取引所とカストディアルパートナーを介したカストディアル取引を可能にするオープンネットワーク「Enterprise TRADELINK」を発表し、機関投資家向け取引に参入(出典)
米ニューヨークBrooklynのスパ施設、「プールはBitcoinマイニングから得られる副産物エネルギーで温められている」旨を投稿(出典)
2016年にはBitcoinがテロ資金調達の専用通貨だったが、2022年にはすべてTRONブロックチェーン上の資産に取って代わられたとのこと(出典)
様子をみながら、少しずつ発信していければと思いますので、よろしくお願いします!