Diamond Hands Magazine、水曜日のビットコインニュースまとめです。
FTXの余波で過去最高のペースで取引所からビットコインが引き出されています。
ブラックフライデーセールと重なったこともあり、ハードウェアウォレット業界は特需に沸いており、Trezorは売り上げが300%も増加。セルフカストディの重要性が認識されるようになったことは一歩前進です。
そんな中、LedgerがLedger Live経由で利用者のアドレスを収集していることが発覚。個人情報やオンチェーンデータと紐づけるつもりはないと主張しますが、過去に全顧客の個人情報を流出させたLedgerの言葉など、今さら誰が信用するでしょうか。
Ledger Liveを自分のノードに接続すれば、アドレスを抜かれることはありません。ノードを運用していないなら、Electrum、Spector、Sparrowなどサードパーティのオープンソースウォレットに乗り換えてはいかがでしょう。(TrezorもTrezor Suite以外の利用を推奨。)
私はElectrumもSpectorもSparrowも使っていますが、今ならおすすめはSparrowです。機能豊富かつ直感的なUIで使いやすいです。バッチトランザクション、UTXO管理、コインセレクション、コインジョインも簡単です。
せっかくセルフカストディでsovereign individualへの道を踏み出したのであれば、プライバシーも意識してみては。提供した情報は必ず流出するという前提で、提供する情報を厳選、最小化して未然にリスクを回避しましょう。
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HosekiがリアルタイムProof of Reservesを提案
FTXの崩壊を受け、取引所は不安に駆られる顧客による取り付け騒ぎを防ごうと、相次いで「Proof of Reserves(PoR)」を公開して、準備金が十分あることをアピールしました。しかし、数年前に業界初PoRを導入したKraken創業者Jesse Powellは、この動きを痛烈に批判。(Krakenが実践するPoRについてはこちらをご参照。)
(Binanceが公開した)これはPoRではない。こんなのをPoRとして出すのは、無知であるか、意図的に事実を隠蔽しようとしてるかのどちらかだ。会計事務所の監査も経ていないマークルツリーなんてBS。負債を開示せず、資産だけ並べても何の意味もない。
Jesseはこの前にも、以下のように準備金の定義をツイートしています。
"Reserves" = assets minus liabilities(「準備金」= 資産 − 負債)
"Reserves" != list of wallets(「準備金」≠ ウォレットリスト)
そもそも、PoRはKrakenでさえも半年ごとの実施で、その瞬間のスナップショットでしかありません。FTX破綻直後に、Crypto.comからGate.ioへの4億ドル相当のETH誤送金と返還が発覚し、そのタイミングからPoRのために資金を融通したのではと憶測が流れました。
こうした問題を解決しようとするのが、Hosekiが公開したリアルタイムPoRです。
取引所などのカストディアンや、ビットコインを資産計上する企業向けのサービスで、仕組みは以下の通り。
Twitter認証によるID証明
ビットコインの所有権はアドレスに対応する秘密鍵による署名で証明
登録されたアドレスを継続的に監視することで所有権の移転を検出
異なる事業者による同一アドレスの二重登録は不可
登録アドレスが削除された場合、同アドレスの再登録は少なくとも60日間は不可
すでに取引所やビットコイン保有を公言している企業のリアルタイムPoRを確認できるサイトまで用意していますが、まだ利用している事業者はないため、どこも保有証明済みビットコインはゼロです。果たして、今後利用は広がるのでしょうか?
個人的には現状よりは前進、問題提起としては意味があるという評価です。Jesseの指摘通り、負債の開示がないまま資産だけ見せられてもという点と、結局Hosekiという事業者に対するトラストが生じる点がネックです。カストディアンに関しては、これを基に安心と考えるのは危険です。MicroStrategyなど上場企業であれば、公開情報である財務諸表と付き合わせるなどして全体像の解像度が上がるかもしれません。
ベアマーケットはいつまで続くのか?
本項はArcane ResearchのニュースレターAhead of the curve(11/29配信)の要約です。
ビットコインは2021年11月10日に69,000ドルの過去最高値を付け、376日後に15,599ドルと最大77%の下落を記録しました。2014年のベアマーケットは407日間続き、最高値からの最大下落率は85%、2018年は364日間で下落率は84%でした。今回のベアマーケットは長さでは過去のサイクルに並ぶものの、現時点では下落率は小さいです。
歴史は必ずしも繰り返されるとは限りませんが、ビットコインの価格サイクルには興味深い共通点があります。バブルは誇大広告、過剰なハイプによって誘発され、市場環境の悪化でリスク管理の甘さが顕在化すると価格が暴落、投資家に大きな痛みを強いてきました。
市場の底入れを見極めるのは容易ではありません。株や債券と異なり、ビットコインには価値評価の材料となるファンダメンタルズがほとんどなく、価格は投資家心理に大きく左右されるからです。
これまでのバブルは、2013年はシルクロードでの決済手段としての採用、2017年はICOブーム、2020年のインフレ期待の高まりに伴う機関投資家の参入が牽引しました。バブルが弾けて価格が暴落し、強制的な売りが一巡すると、ビットコインに対して強い信念を持つhoderによる安値圏での果敢な買い増しにより市場は底入れします。ただ、底値を付けてから価格反転に転じるまでには長い時間を要します。2018年は安値を記録してから横ばいが120日間続きました。2015年は270日間でした。
過去のパターンが再現するかはわかりませんが、ビットコインは底入れしたように見えても、本格的な価格反転は遠いかもしれないことを認識しておく必要があります。
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