両親にビットコインを理解してもらう方法 ── 親世代を“オレンジピル”する物語の力
ここには多くのビットコイナーが来てくれていますね。若い人も多いようです。
では最初の質問です──すでに自分の両親を「オレンジピル」(※ビットコインの魅力に目覚めさせること)した人はどれくらいいますか?
お、何人か勇敢な人がいますね。
では祖父母にまでビットコインを使わせた人は?……半分だけ手が上がりましたね。素晴らしい。
「どうすれば親にビットコインを理解してもらえるのか?」
「どんなツールを使えばいいのか?」
今日はその話をしていきます。
こんにちは!yutaro です。
「BTCインサイト」本日のトピックは、ズバリ両親や親世代をオレンジピルする方法です。
BTC Prague 2025で登壇したDušan Matuška氏は、専門用語ではなく“物語”の力で伝える方法を語りました。改めて、ビットコインを広めるためのヒントを見ていきましょう。
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物語こそが最高の教育ツール
私たちの文明史のなかで、最も優れた教育ツールは、何十万年、いや何百万年も前に──人類が誕生するよりも前に──すでに発明されていました。
それが「火」です。
文字ができる前、ビットコインの教科書やポッドキャストが存在するはるか昔、人々は焚き火のまわりに集まり、物語を語り合いました。
それが教育の原点だったのです。
人が20歳、30歳まで生き延びるためには、親や部族から学ぶ必要がありました。
「食べてはいけないもの」「近づいてはいけない動物」──生き残るための知恵は、すべて物語として伝えられたのです。
今、僕たちはこの「物語」という根本を失いかけているように感じます。
ストーリーテリング──それこそが、感情を動かし、記憶に刻まれる人間の教育法でした。
ところが多くのビットコイナーが親や友人に教えるとき、専門用語を並べすぎてしまいます。
「分散化」「オープンソース」──そんな言葉を聞いても、何か具体的なイメージを思い浮かべるのは難しい。
しかし人間の脳は、「火のそばで語られた物語」を通じて発達してきました。
僕たちは、ストーリーを聞き、頭の中に映像を描くことで理解します。
映像が多いほど感情が動き、心に残る。
だから今日は、あなたが親にビットコインを説明するときに使える「物語」をいくつか紹介します。
自分の預金を取り戻そうとした男 ── レバノンの実話が示す“Not your keys, not your coins”
ビットコインを両親に説明するとき、「Not your keys, not your coins(鍵を持たなければ、それはあなたのコインではない)」という有名な言葉をよく使います。
僕たちはこのミームが大好きですが、ただの言葉にすぎません。
そこには感情的な力が欠けているのです。
その代わりに、こんな“物語”を見せてみてください。
この写真を見たことがありますか? 何が起きていると思いますか?
(観客の一人が答える)
「強盗……ですか? 銀行強盗のように見えます。」
その通り。男が銃を手にして銀行にいるように見えます。
しかし違うのです。彼は銀行を襲っているのではありません。
自分の預金を取り戻しに来ているのです。
この男の名前はバシム。42歳の配達ドライバーです。
2022年、彼の父親ががんを患い、治療費として10万ドルが必要になりました。
彼は自分の口座からお金を引き出そうと銀行へ行きました。
ところが銀行の返答はこうでした。
「申し訳ありません、お客様。お渡しできるのは最大3,000ドルまでです」
「いや、父を救いたいんだ。医療費を払わないといけない。僕のお金を出してくれ」
しかし銀行は繰り返しました。
「申し訳ありません、これ以上はお渡しできません」
ついに彼は決意します。
「もう限界だ」と。
ガソリン缶と銃を手に銀行に戻り、
「自分の金を引き出せないなら、自分に火をつける」と叫びました。
その場は大混乱になり、6時間にもわたって騒ぎは続きました。
しかし驚くべきことに、外には数百人が集まり、
彼を応援したのです。
誰もが彼の行動に共感し、「ついに立ち上がった」と声援を送っていました。
最終的に、彼は10万ドルではなく、わずか3万5千ドルを手にして銀行を出ました。
しかしその瞬間、警察に逮捕されました。
けれども──1週間後、彼は釈放されます。
なぜなら、彼は「自分の金を取り戻そうとしただけ」だったからです。
この事件がニュースになった後、
わずか1週間のうちに7人もの人々が同じ行動を取りました。
本物や偽物の銃を手にしながら、誰も傷つけず、ただ「自分の金を返してほしい」と訴えたのです。
やがて銀行側も限界に達し、
「もう資金が足りない」として、2週間の休業を余儀なくされました。
この話を聞くと、
「Not your keys, not your coins」という言葉の意味が現実として突き刺さります。
銀行にあるお金は、自分のものではない。
それは「そこにあるように見える」だけで、実際にはあなたの支配下にはない。
「そんなのレバノンの話でしょ、遠い国のことだ」と思うかもしれません。
でも、カードが急に使えなくなった経験はありませんか?
旅行先や買い物中に「決済が拒否されました」と表示され、焦ったことは?
そのときの最初の感情を思い出してみてください。
「あれ?どうしよう? 予備カードがあったっけ? 現金も持ってない……」
その瞬間の不安は、ほんの一瞬でも、
バシムが感じた絶望の“縮図”なのです。
この出来事こそが、僕の両親にビットコインの必要性を理解してもらうきっかけになりました。
「銀行にあるお金は本当の意味で“自分のもの”ではない」──
それを、ただ理屈ではなく“感情”で理解したのです。
料理で学ぶオープンソース ── 母親に伝える分散化の考え方
「オープンソース」や「分散化」という言葉もまた、親世代には理解しづらい概念です。
でも多くの母親が好きな「料理」に置き換えると、とてもわかりやすく説明できます。
想像してみてください。
母さん、あなたが大好きなパスタ──カルボナーラを食べにレストランへ行ったとします。
でもそのお店では、アレルギーのある人にとって危険な食材を使っているかもしれません。
だからあなたは注文のときにこう言います。
「このスパイスは入れないでください。アレルギーがあるんです」
しかしその後、どうしますか?
厨房の様子は見えません。
ウェイターがきちんと伝えてくれるか、シェフが間違わないか──
あなたはただ、信じるしかありません。
もし信頼が裏切られたら、命に関わるようなアレルギー反応が出るかもしれない。
これが「クローズド(閉ざされた)システム」です。
料理の中身も、プロセスも、あなたには見えない。
だから「信頼」が前提になるのです。
では、「オープンソース」とは何でしょう。
それは、自分の家で自分で料理をすることです。
レシピを自分で持ち、
何をどれだけ入れるのかを自分で確認できる。
そしてビットコインのコードも、まさにこの「レシピ」なのです。
コードという“行”が書かれた手順書をもとに、
ノード(料理)が出来上がっていく。
どんな材料が使われているか、すべて自分の目で確かめることができる。
この違いを母親に伝えるとき、
「自分の料理を家で作るか、他人の厨房を信じて食べるか」
という例えがとても有効です。
オープンソースとは、
「見えないものを信じる必要がない世界」であり、
自分で確認しながら安全に“作る”世界なのです。
さらに想像してみてください。
あなたがそのレシピ本を持っていて、
それが世界中に何千冊もコピーされているとします。
母さんが「カルボナーラにパイナップルを入れたい」と思ったら、
もちろん自由にレシピを変えて構いません。
自分で作る分には誰にも止められない。
ただし、その変更が世界中のレシピに影響するわけではない。
自分の台所で作る料理が変わるだけです。
これがビットコインの動作原理と同じです。
誰かが自分のノード(レシピ)を変更しても、
世界中の他のノード(コピー)まで書き換えることはできない。
ビットコインを守っているのは、
コードそのものではなく、その分散(distribution)なのです。
だからこそ、世界中で何十万ものノードが同じレシピを共有し、
互いに照合する仕組みがビットコインの強さです。
一冊のレシピを改ざんしても、
他のすべてを同時に書き換えることなど不可能だからです。
ヤップ島の石貨 ──「プルーフオブワーク(PoW)」の原点を探る
「プルーフオブワーク(PoW)」という概念は、親世代に説明するのが特に難しいテーマです。
そこで僕は、19世紀に実際に存在した“お金”の物語をよく使います。
想像してみてください。
1871年、ミクロネシアの小さな島──ヤップ島に暮らしているとします。
写真を見たことがありますか?
そこに写っているのは、円形の巨大な石です。
ビットコイナーの間では有名な話で、「この石を知らなければビットコイナーとは言えない」とまで言われています。
この石こそが、当時の通貨「ライ(Rai)ストーン」です。
小さいもので直径3センチほど、大きいものでは直径3メートル、重さ3トンにもなります。
驚くべきことに、これらの石の中央には穴が開いています。
そして「穴のある石だけが通貨として認められていた」のです。
この通貨の仕組みはとてもユニークです。
石自体は移動しません。
島のあちこちに置かれたまま、所有者だけが変わるのです。
つまり、「ブロックチェーン」と同じく、
物理的に何かを動かすのではなく、所有権の記録だけが更新される。
ある日、巨大な石を運ぼうとした船が嵐に遭い、石は海の底に沈んでしまいました。
しかし驚くべきことに、その石はその後10年間も“お金”として使われ続けたのです。
誰もその石を見たことはありません。
でも、島の人々は「そこにある」と信じて取引を続けた。
見えなくても機能する通貨──
まるで、カードをタップして支払う現代のデジタルマネーと同じです。
私たちはビットコインの残高を直接見ることはできませんが、確かにそこに存在する。
そして1871年、デイヴィッド・オキーフ(David O’Keefe)という名の船乗りが島に漂着しました。
島の人々が彼を助けると、彼はお礼に大量の鉄製の道具を持ち込みました。
その結果、人々は金属の道具で石に穴を開ける作業が簡単にできるようになります。
そして起きたのが──ハイパーインフレーション(通貨の急激な価値下落)です。
石を作るのが簡単になったことで、人々はどんどん新しい「お金」を生み出しました。
部族は二つに分かれました。
「新しいお金が増えて喜ぶ人たち」と、
「自分の石の価値が下がってしまったことに気づいた人たち」。
新しい通貨が増えるたびに、一方は得をし、もう一方は損をする──
まさに現代の金融システムと同じ構造が、150年前の島でも起きていたのです。
そして、この石の中央に開いた穴には、二つの意味がありました。
一つは実用的な理由。
穴にヤシの幹を通して10人ほどで石を運ぶためのものでした。
しかしもう一つの、より重要な意味がありました。
それは「プルーフオブワーク(PoW)」です。
穴の開いた石だけが通貨として認められたのは、
その穴を掘るには膨大な労力がかかったからです。
つまり、この“穴”こそが「その石が本物である」という証明。
ニック・サボ(Nick Szabo)が後に名づけたように、これは「偽造不可能なコスト(Unforgeable Costliness)」の原型なのです。
誰もが「穴がある」ことを見れば一目で真偽を確かめられる。
しかし、その穴を作るには膨大な労働と時間が必要。
まさに、ビットコインのマイニングと同じ原理です。
プルーフ・オブ・ワークを理解してもらうとき、
この「ヤップ島の石貨」の話はとても強力な教材になります。
「簡単に作れない価値」と「誰でも確認できる証拠」──
この二つが、お金に信頼を与えるのだと伝えられるからです。
ベネズエラの悲劇──通貨崩壊がもたらす現実
インフレという言葉を聞いても、実感を持てる人は多くありません。
しかし世界には、それがどれほど恐ろしいものかを身をもって経験した国があります。
それが──ベネズエラです。
この写真、どこの都市かわかりますか?
そう、ベネズエラの首都カラカスです。
1950年代、ベネズエラは世界で4番目に裕福な国でした。
当時、中国の一人当たりGDPの12倍。
世界最大の原油埋蔵量を誇り、中東をも凌ぐエネルギー大国だったのです。
しかし、数十年後の現実はまったく逆になりました。
2015年から2019年にかけて、世界でも類を見ないハイパーインフレーションが発生。
その影響は社会全体を崩壊させました。
写真に写っているのは、路上にいるカラカスの子どもたちです。
家を追われ、食べるものもなく、ナイフで争いながら食料を奪い合っている。
顔や腹部に傷跡を残しながら、ただ生きるために戦っていたのです。
さらに悲しい現実があります。
この写真に写る箱の中にいるのは──赤ん坊ではなく、靴箱に入れられた遺体です。
2015年当時、新生児の死亡率はそれ以前の100倍に跳ね上がりました。
母親たちは飢え、栄養失調で母乳が出ず、
赤ん坊に与える粉ミルクを買うこともできませんでした。
ミルク1か月分の値段が、一般的な労働者の2か月分の給料に達していたのです。
通貨が崩壊し、政府が無制限に紙幣を刷り続けた結果、
国家全体が機能不全に陥り、人々は極限の貧困に追い込まれました。
僕がベネズエラ人の友人に聞いたところ、
「国が立ち直るには50年はかかるだろう」と言っていました。
私たちはしばしば、ビットコインを技術の観点から語りがちです。
しかし本当に大切なのは、世界で起きている“人間の現実”を理解することです。
通貨が壊れるとはどういうことか。
その痛みを想像できることが、ビットコインを理解する第一歩なのです。
この写真を見てください。
トイレットペーパー1ロールを買うために必要な紙幣の山──。
もはや紙幣として使うよりも、「お尻を拭く紙」として使った方が価値があるほどでした。
こうした現実は、ビットコインがなぜ必要なのかを語る何よりの証拠です。
「お金が壊れる」と、人間の尊厳まで壊れてしまう。
だからこそ、僕たちは「健全な通貨」を守らなければならないのです。
次の章では、僕自身の父との対話を通して、
「物語」がどのように人の意識を変えていくか、
そして“教える側”としての私たちの役割について話を続けます。
家族に伝える力──“小さな語り手”としての私たち
僕の父は、いまだに「良い政府が現れれば社会は良くなる」と信じています。
「選挙で正しい政治家を選べば国は変わる」と。
そんな父に、僕はよく世界で起きている現実の話をします。
そして少しずつですが、彼の意識も変わり始めました。
父は一年のうち数か月、僕と一緒に中米のロアタン島で過ごします。
最近では、彼が自分の仕事──帆船教室で使う教材や果物ジャムの販売──にビットコイン決済を取り入れるようになったのです。
少しずつ、少しずつ、彼も“ビットコイナー”になりつつあります。
この経験を通して、僕は確信しました。
物語こそが人の心を動かす力なのだと。
ビットコインを説明するのに、特別な技術や難しい理論は必要ありません。
ソフトウェアでも、学位でもなく、「問題」と「解決」を見せることが大事なのです。
世界のどこでお金が壊れ、どんな悲劇が起きているのか。
そしてビットコインがその中でどんな希望をもたらすのか。
それを伝えるのに一番強いのは、「あなた自身の物語」です。
なぜ自分がビットコインを使い始めたのか。
それがどう役に立ったのか。
どんな場面で救われたのか。
あなた自身の経験は、誰にも奪えません。
そして家族や友人たちは、あなたの言葉を信じます。
彼らはあなたを知っているからです。
だからこそ、あなたが“語り手”となることが大切です。
僕はそれを「マイクロ・エデュケーター(小さな教育者)」と呼んでいます。
次に家族と夕食を囲むとき、あるいは焚き火を囲むとき、
ぜひ物語を語ってみてください。
あなた自身の体験を通して、
「なぜビットコインが必要なのか」を。
それが、最も力強い教育になります。
Amity ── ビットコインが導く“協調の時代”
「エミティ(Amity)」という言葉を知っていますか?
あまり使われることのない英語ですが、意味は──
友情、協力、調和です。
僕は今の世界を見渡すたびに、この言葉の重要性を感じます。
ニュースを開けば、争い、分断、対立。
SNSを見ても、人々は互いを責め合い、非難し合っている。
でももし政府がお金を勝手に刷れない世界になったら?
もし、私たちが主権と責任を自分の手に取り戻すことができたら?
戦争を続けるための無限の資金を、
政府はもう手にできなくなるでしょう。
人々が同じ尺度──共通の「価値の物差し」を持てば、
もっと冷静に、もっと誠実に協力できるようになるはずです。
僕はそう信じています。
ビットコインは、そんな「エミティの時代」を切り開く鍵になれる。
この思想から、僕たちは会社を立ち上げました。
AmityAge(エミティ・エイジ)です。
そして、ひとつのキャラクターを生み出しました。
その名は、エミティ・ナカモト(Emity Nakamoto)。
サトシ・ナカモトの孫娘という設定です。
サトシは姿を消しました。
けれど彼が残した“ツール”──ビットコイン──は、今も僕たちの手の中にあります。
あとは、僕たちがそれを広めていく番です。
エミティ・ナカモトは、その象徴です。
若い世代のビットコイナー、
物語を語る人々、
そして「小さな教育者」として世界に希望を伝える人々。
だからこそ僕は、あなたに伝えたい。
家族に話してください。
両親や祖父母と語ってください。
良き語り手であり、良き教育者であってください。
そして、ビットコインを「生きて」ください。
ありがとうございました。
(※本記事は、BTC Pragueが公開したYouTube動画 Dušan Matuška – How to Make Your Parents Finally Understand Bitcoin を完全日本語訳しています)














