冗談ではなくセルフカストディ経験がないやつ、ガチで危機感持った方がいい（から、詳しく解説するイベントを開きます）
さて、タイトルは半分本気で半分釣りですが、今回はビットコインのセルフカストディの重要性の話、今の日本の課題について説明します。
元々こちらの記事はDiamond Handsとビットコイン研究所が共催する、ハードウェアウォレットのセキュリティや使い方をハンズオンで解説するセミナーの告知も含めて書こうと思ったものですが、宣伝も兼ねて、改めてなぜセルフカストディが重要なのか、現在のベストプラクティスはどういうものか、日本はどういう状況なのかについて解説しておきます。
Diamond Handsとビットコイン研究所の共同セミナーの詳細は以下のページから
なぜセルフカストディが重要なのか？
今更感もありますが、セルフカストディが重要な理由について改めて。
まず、金銭的価値のあるコイン（電子的な記録）を、秘密鍵を持つ自分自身だけが簡単にデジタル上で管理できて、その他の人や政府などにも簡単には没収することができない、というビットコインの特性は非常に強力で、これがビットコインに限らず、クリプト世界の全ての共通の前提にある考えです。これはゴールドや株式、不動産などその他のアセットに当てはまらないビットコインの最も根源的な強みだと言えます。
なので、仮にどんなに機能性が高いブロックチェーンであろうが、セルフカストディが非常に難しい、もしくはコインがいつでも没収できるようなものが存在したとしたら、暗号通貨としての存在意義も資産管理の自由もほとんどないと思います。
セルフカストディはビットコインを語る上で最も重要なトピックの一つなのですが、FTXが突如潰れてお金が返ってこなくなったりする事件が起きない限り、その重要性は軽視されがちで、多くの人が取引所やその他のサービスに自分の大部分の資産を預けがちです。
ただ今後規制が強化されることで取引所からのコインの引き出しにも制約がかかっていく可能性がありますし、またプライバシーなどの面でも取引所に多くのコインを預けることのリスク存在します。
セルフカストディをしていないコインは最終的には銀行に置いてある預金と一緒で、全額返ってくることが保証されているわけでもないですし、仮に戦争やその他社会的混乱が起きると真っ先に取引所からの入出金にも制約がかかってくるでしょう。
少し大袈裟な考えな風にも感じるかもしれないですが、今後の社会情勢や規制の動向も考えつつ、セルフカストディについて学び直して、自分で自分のコインを管理することができるようになる準備をしておくことを改めて推奨しておきます。
ビットコインの長期保管の現在のベストプラクティスは？
というわけでセルフカストディが改めて重要だという話でしたが、では安全に自分のコインを保管する最もおすすめの方法は何でしょうか？
ビットコイン以外でよくあるのは、メタマスクに色んなトークンを入れるパターンですね。
メタマスクはセルフカストディウォレットなのはいいのですが、同時にエアドロップをもらう時や、Dappsを使う時にウォレットから権限を与えるような仕組みになっており、それが原因で詐欺アプリに権限を与えてしまってウォレットの中のお金全額引っこ抜かれるような事例が頻発しているようです。
これはもう理解している人も多いと思いますが、モバイルウォレットなどのいわゆるホットウォレットに大きな金額を乗せて保管するのはお勧めできません。
次に候補が上がるのがハードウェアウォレットです。最も有名なのはLedgerとTrezorでしょうか。
ハードウェアウォレットはモバイルウォレットよりはセキュリティは格段に上がるのですが、それでもLedgerのソフトウェアウォレットで脆弱性が報告されたり、遠隔でハードウェアウォレットの秘密鍵を抜けるのではないか？という話が持ち上がったり、パスフレーズの管理の問題もまだ残っていたり、ハードウェアウォレット自体も完璧なソリューションというわけではなく、まだまだ落とし穴や注意点があります。
実際ここら辺は仕組みをある程度理解していてもすごくナーバスになるのは自分も理解できます。
では結局何が一番いいのか、という話ですが、現状大きな金額のビットコインの保管で最も推奨されている方法は、複数のハードウェアウォレットとソフトウェアウォレットを組み合わせたマルチシグウォレットです。
複数のハードウェアウォレットを使ったマルチシグを作ることで、特定のハードウェアウォレット企業のバグや脆弱性、不正行為への耐性を高め、複数の鍵の一部は専門企業に預けることでハードウェアウォレットの紛失やパスフレーズをなくした時などの資金喪失リスクを下げることができる中々クレバーなやり方です。
上記のようなマルチシグ保管サービスを提供する企業はすでに複数あり、企業向けではUnchained Capital、一般ユーザーや個人向けにはCasaやNunchukなどが有名です。
また、他にも技術リテラシーが高いユーザー向けにSparrow WalletなどDIYでマルチシグソリューションを利用できるツールなども提供され、関連の解説サイトや動画なども英語では多く出ています。
日本でもセルフカストディやマルチシグを普及させるには？
英語圏ではマルチシグ系のセキュリティサービスや、解説資料なども豊富に存在するのですが、日本では残念ながらマルチシグに関する情報はあまり多くなく、マルチシグ系のサービスの利用もあまり流行っていません。
これはいくつか理由があるのですが、まず日本では規制や税制の話もあり企業が長期でビットコインを保有する需要があまりなく、特に長期で安全にビットコインを保管する需要というのがアメリカなどと比べるとあまり強くありません。どちらかというと日本企業はNFTや独自トークンなどの保管などの興味が強そうです（ #web3ならできる）
また、日本は良くも悪くも取引所の規制と分別管理などがかなり徹底されているので、何か小難しそうなセルフカストディやマルチシグを自分で勉強するより、取引所に預けておけばいいじゃないか、と考えている人も多そうです（この問題点はすでに前述しました）
他にも、ハードウェアウォレットやマルチシグウォレットなどに関する解説や発信などは、以前はビットコイン研究所などで大石さんが好きで積極的に研究していたテーマですが、彼が実質引退したこともあり、日本語でマルチシグなどについて発信する人が減ってしまったのも要因としてありそうです。
ビットコインのセキュリティというのは、専門性が必要な割に、ゼロからちゃんと体系的にわかりやすく説明するのは中々骨が折れる作業で収益にもすぐには結びつかないこともあり、日本語で優しく解説してくれる人は現状ほぼいなくなってしまいました。
個人的にはこれは以前から問題だと思っており、今年から来年にかけて日本国内でもセルフカストディやマルチシグがより広く理解され、利用してもらえるように、海外のサービスプロバイダーなどともディスカッションや連携提案を実はすでに始めています。
そして冒頭のDiamond Handsとビットコイン研究所共催のイベントの話に戻りますが、より具体的で直接的な指導やアドバイスをする専門的なセミナーを開いていくことで、より自信を持って安全にセルフカストディをする人を増やす試みも今後コツコツやっていこうと思っています。
というわけでこちらの3月1日のセミナーは有料ですが、ハードウェアウォレットやビットコインの保管セキュリティについての理解を深め、実際に自分で管理していきたい人たちには自信を持ってお勧めできるので、興味のある個人、もしくは企業の人は是非参加してみてください。
こんにちは。
セルフカストディに興味があり3/1のお話伺いたかったのですが遠方に住んでおりまして、さらに予定も入っていて参加できません。別の機会でお話伺えたらと思っています。できれば動画か記事的なものがあると非常に嬉しいです。