ビットコインネイティブ企業の資金調達環境と事業紹介【セミナー要約】
今回の記事は、先日行われた「企業のためのビットコインセミナーVol.2」のフルグル合同会社練木さんによる発表を要約したものです。
練木さんのテーマは「ビットコインネイティブ企業の資金調達環境と事業紹介」。海外におけるビットコイン企業の資金調達実績や成功していると言われているビットコインネイティブ企業の事業紹介も行いました。
相場下落時もビットコイン企業への投資影響は少なく、クリプトとは異なる
2022年の暗号資産業界は大波乱の一年で、破綻や倒産が相次いで全体の時価総額が約80%も下落した。
2022年におけるクリプト関連スタートアップの投資件数はほぼ横ばいで、前年比プラス1%程度にとどまった。
一方、ビットコインネイティブ企業は影響が軽微で、投資件数は前年比53%増加しており、特にアメリカでビットコインがクリプトとは異なる分野として認識されている。
過去2年間でビットコイン企業に特化したVCが増加
ビットコインネイティブ企業の定義とは、ビットコインが将来的に国際貨幣財やインターネットネイティブデジタルキャッシュとなるとの前提に立ち、ビットコインの開発やアダプションを促進する事業を指す。
過去2年間でビットコイン企業に特化したベンチャーキャピタルが増加しており、特にアメリカのテキサス州には数社が集中している。
アジアでは台湾に1社、ヨーロッパには2社存在する。フルグルは法人としてアメリカにありながらスイスやイタリアを拠点に活動しており、ヨーロッパのプロジェクトへの投資が増加している。
今後アジアでもビットコインフォーカスのベンチャーキャピタリストや資金提供企業が増えると予測されている。
ビットコインに焦点を当てるメリットとデメリット
ビットコインに焦点を当てるメリットは、特定の領域に深く焦点を当てることで知識と専門性を深め、差別化できる点が挙げられる。
ビットコインネイティブ企業は他の企業やコミュニティと連携しやすい利点がある。
デメリットとしては、他の暗号通貨やブロックチェーンを無視するため、戦略次第では収益を逃す可能性がある。
ビットコインとクリプトで異なるVCの投資ポリシー
2021年と2022年に基づく統計では、ビットコインネイティブ企業の資金調達件数は53%増加し、調達企業数も70%増加。また、投資総額も14%増加している。
ビットコインネイティブ企業に投資するベンチャーキャピタルと、クリプト全般に投資するベンチャーキャピタルのポリシーが異なるため、成長トレンドが異なると考えられる。
ビットコインネイティブ企業関連のVCは従来のKPIに縛られず、超長期視点で投資を行っており、ビットコインや革新的な技術を社会に実装し、金融面で支援することによりより良い未来を創り出すことに寄与したいという考えがある。
ビットコイン企業の調達実績
2022年、2023年の調達実績を見ると、マイニング企業が$250Mや$350Mなどの大きな額を調達している。
ソフトウェア系の企業では$10 - 50Mの調達額が多く、カリスマ的経営者が主に集めている。
資金調達をしているビットコイン企業の中で、ライトニングネットワークに依存している企業がほとんどを占めている。
日本には大規模な調達をした企業はないが、海外では大きな投資が行われてきている。
マイニング企業Crusoe Energyやライトニング企業ZEBEDEEには、日本企業が投資しており、日本でも少しずつ関わっている傾向が見られる。
ライトニングネットワークの現状と応用領域
時価総額が暴落している中でも、ライトニングのチャネルキャパシティは着実に増えて成長している。
ライトニングネットワークの特徴として、手数料が実質ゼロで即時ファイナリティを持つため、国際決済エリアでのソリューションに適している。
為替リスクを最小化し、チャージバックの心配もなくすことができる。
シンプルなUIで、NFCカードを使ってタッチ決済のライトニング支払いが既に可能になっている。
インフラ構築や保守に対して、コストやリソースがかかるため、企業の参入障壁になっている。
Strike:国際送金の効率化を目指すビットコイン企業
Strikeというサービスは、国際送金の効率の悪さを解決するために開発されたソリューションで、国際決済市場で注目されている。
伝統的な送金では時間と手数料がかかるが、Strikeを使うとライトニングネットワークを活用して即時かつ低コストで送金が可能。
Strikeはインターフェースがシンプルで、スマホのアプリさえあれば送受金が完結する。受け取り側は銀行口座に振り込むことも可能。
ユーザーはライトニングを意識しなくても国際送金できるシステムになっている。
現在の途上国による国際送金手数料の年間コストは、アメリカの年間援助額に匹敵する。
Strikeは現在65カ国で利用可能であり、世界の4割の人がアクセス可能。ただし、日本ではまだローンチされていない。
ZEBEDEE:少額のビットコイン報酬をインセンティブにしたサービスを提供
ZEBEDEEという会社は、ライトニングの導入やAPIを他社に提供している。また、少額のビットコインを実際にもらえるインセンティブをゲーム内に組み込んだ。
これにより、デイリーアクティブユーザーからの収益が82%増加。また、別のゲームでは導入する前の状況と比べて、リテンションが1215%増加した。
ビットコインを報酬にすることで新たなユーザー層を開拓できる。
総括:あらゆる企業がライトニング企業になる
2019年に、あらゆる企業が最終的にはフィンテックカンパニーになるだろうみたいなプレゼンが話題を呼んだが、あるライトニング企業の創業者によると、いま同じ話をするならば、将来的にあらゆる企業がライトニング企業になるだろうと予測。
金融企業やゲーム産業に限定されず、あらゆる企業がライトニングネットワークを導入することが予想される。
全編のアーカイブは下記Youtubeからご覧できます。