トレジャリ企業が生き残る道は、「脱トレジャリ企業」しかない
本日プレスリリースが出ていた通り、ANAPのアドバイザリーボードに加入し、ANAPのビットコイン関連事業について総合的に支援することになりました。
ANAPホールディングス、国内ビットコイン業界のリーダー東晃慈氏がアドバイザリーボードに参画
——ビットコインエコシステム企業としての独自ポジションをさらに強化
以下プレスリリース内での自分のコメントの引用です。
今回ANAPアドバイザリーボードに参画し、ANAPと連携しながらビットコインエコシステムの発展に貢献できる機会を楽しみにしています。アドバイザリーボード参加に関して、実は最初は慎重な見方をしていました。それは一般的なトレジャリー企業の長期的な持続性や、ビットコインユーザーや開発コミュニティとのインセンティブの不一致を懸念している部分があったからです。
現状の多くのトレジャリー企業のビジネスモデルは大量のビットコイン保有による自社株式の投機的な金融商品化であり、それ故にビットコイン現物にフリーライド、もしくは一種の競争関係であると見なすこともでき、ビットコインの技術発展や社会での利活用の推進との矛盾を生んでいる部分があります。
しかし、ANAPのメンバーと話す中で、彼らは単純なビットコイントレジャリー企業の先のモデルを描いており、自社で保有するビットコインを新しいビットコイン事業の開発や成長に再投資し、ビットコインを直接的に活用した持続的なビジネスやエコシステムの実現が事業の核である、という点において共通のゴールと課題感を見出すことができました。
また、ビットコインコミュニティとの連携や貢献の重要性についても共通の認識を作れたことが、今回の決め手となりました。ビットコイン業界内での自分の豊富な経験を活かし、ANAPの複数のビットコイン事業を総合的に支援しつつ、ビジネスとしてのビットコインエコシステムの実装と、ボトムアップでコミュニティ主導のビットコインの普及の両立を共同で実現していければ、と考えています。
言いたいことは実はこのコメントで大体カバーされているのですが、こちらの記事で今回の経緯と狙いについて、トレジャリ企業の現状と今後の自分の見通しも含めて書いておきます。
特に今はトレジャリ企業にとって逆風が吹いており、株価が暴落したり事業撤退するところも多い中、なぜこのタイミングでANAPのアドバイザーとし連携していくのか、というところも含めて一応自分の考えを説明しておいた方がいいかなと思います。
トレジャリ企業の崩壊が始まっている
まず第一に、現状のいわゆるトレジャリ企業は大部分はこのままでは立ち行かなくなり、崩壊すると自分は考えています。というよりこれについては以前から動画や記事などでも予想していたので驚きではないです。
実際にすでにそういうトレンドは表面化しており、国内外でトレジャリ企業の多くが撤退や方向転換を余儀なくなされたり、ビットコインの売却を始めています。
株価的にも悲惨な状況で、多くのトレジャリ企業の株価は一時期の最高値から80%以上など下落している会社が多く、それについても投資家からの不満や煽っていたインフルエンサーなどに対しての批判が溜まっているような状況です。
ちょうど今日著名ビットコイン起業家のJack Mallersが世界第二位のビットコイン保有高を誇るTwenty OneのCEOを辞任、というニュースもありましたが、内部崩壊しているように見えるトレジャリ企業も少ないですし、おそらくスキャンダルみたいな話も今後さらに出てくるでしょう。
ビットコイン価格が戻ってもトレジャリ企業は戻らない?
ただこれは下落相場だからそうなっているだけで、ビットコイン価格が回復してくればトレジャリ企業の株価も上がり、また息を吹き返すのではないか?という意見の人もいると思いますが、自分はそれも微妙だと思います。
トレジャリ企業の保有ビットコインに対する株価プレミアム、いわゆるMNAVは1を切っているところが多く、ストラテジーや元々MNAVが一時20倍以上もあったメタプラネットなども現状のMNAVは1付近の水準で停滞しています。
トレジャリ企業がまだ比較的新しいコンセプトだった時は理解度の低い投資家が一気に殺到したり、一時的でも高いMNAVを誇るトレジャリ企業はありましたが、下落相場に突入し投資家が冷静になった今、今後MNAVが持続的に1を大きく上回る状況は理論的にも投資家心理的にも難しいのではないかと思います。
裸の王様が一度裸であることがバレてしまったら、もう後戻りはできないわけです。
仮にMNAVが今後も1付近に停滞すると仮定した時に、新規株式発行による資金調達なども難しくなりトレジャリ企業のビットコイン購入スピードも低下するでしょうし、ビットコインを追加で買えなくなったトレジャリ企業に存在意義はないのも含め、負のループに陥ってしまうと思います。
これらを見越してストラテジー社などはストレッチ(STRC)などの新しい金融商品を設計、提供することで新しい資金調達方法を模索していますが、そちらもすでに設計的な綻びが見えていますし、保有ビットコイン、MSTR株、STRC株の3種類のアセットをバランスを見ながら売り買いすることで株価を維持し、保有ビットコインを増やしていくというある種の「中央銀行ごっこ」も持続できるとは思いません。
というよりガバナンストークンなどを利用して似たような構造を作っていたアルトコインが軒並み失敗している業界内の事例などを考えても、この予想はそこまで難しくないでしょう。アルトコインではなく証券を利用しているという違いはありますが、本質的に差はないです。
トレジャリ企業はビットコインと競合している
もう一つの視点として、トレジャリ企業はビットコインをすごい推しているように見えながら、実はビットコインと競合関係にある、という点も自分がトレジャリ企業は長期では持続しない、もしくは支持しづらい理由の一つではあります。
トレジャリ企業の目標を突き詰めるなら、ビットコインを盛り上げてビットコインの有用性や保有者を増やすことではなく、自社の株を買わせることでしかないです。
つまり「ビットコインすごいよ」と表向きは言っていたとしても、投資家がビットコイン現物をそのまま買ってしまったら会社としては旨みがないわけで、「ビットコインよりうちの株を買った方がいいよ」という隠れたメッセージをあの手この手でそれとなく発信する必要があり、ビットコイン現物との奇妙な競合、寄生関係が形成されていきます。
マイケルセイラーも初期はビットコインの啓蒙などを積極的にやっていましたが、ここしばらくはビットコインを担保にした「Digital Credit」などという言葉を多用するようになり、ビットコインそのものより自社株の派生商品などのプロモーションに腐心していますよね。
ここがトレジャリ企業の構造的な問題点というか矛盾であり、一般的なトレジャリ企業の盛り上がりが必ずしもビットコインの普及や正確な啓蒙には結びつかず、ビットコインとの利益相反を生み出してしまう理由です。
ビットコイントレジャリ企業は脱トレジャリ企業化するしか生き残る道はない
さて、ここまでトレジャリ企業が置かれている現状や問題点について話しましたが、ではなぜいわゆる巷では「トレジャリ企業」に分類されるANAPのアドバイザーになるのか、という話に少しづつ入っていきましょう。前置きがかなり長くなってしまいましたが…笑
ビットコインを大量保有することで株価を引き上げるモデルの伝統的なトレジャリ企業(もしくはDAT)は上述したような問題もあり、ほとんど生き残らないと思いますが、その中で生き残るとしたら戦略やモデルを大幅に変えるしかないでしょう。
より具体的に言えばビットコインをたくさん買うだけで株価が上がるといったシンプルなトレジャリ戦略から、保有資産を有効活用して持続的な事業を創出するフェーズに移行、モデルチェンジする必要があると思います。
単純な保有モデルからビットコインを使った事業創出モデルに転換することができれば、持続的な事業として長期で生き残れる可能性は出てきますし、ビットコインそのものとの競合関係も解消できます。そうなれば「トレジャリ企業」という呼称自体も古いものになると思います。
ここでようやくANAPの話に戻りますが、今回ANAPアドバイザリーボードに加入して実現させたい個人的な目標は詰まるところ、ビットコインを使った持続的な事業の創出を手助けすることで、ANAPを「脱トレジャリ企業化」させ、ビットコインやビットコインコミュニティとのインセンティブを揃えること、と言えるかもしれないです。
というより、自分自身も元々ANAPがやろうとしていたことや方向性について誤解していた部分もあったのですが、ANAPは実は以前から「ビットコインエコシステム企業」や「貯めるから使う」などの言葉を使って、なんとなく「脱トレジャリ企業」的な方向性はすでに目指していたようです。
ただそれが自分を含むビットコイナーやその他の関係者に残念ながらあまり上手く伝わってなかった気もしており、そこら辺をもう少し丁寧にコミュニケーションできるようにアドバイスするのもやるべきことの一つだと思います。
また、持続性のあるビットコイン事業を創出、拡大していくのは口でいうのは簡単で他にも似たようなことを言う企業も出てくると思いますが、実際にそれを実現するのは簡単ではないですし、長期にわたる強力なコミットが必要です。
その点ではANAPは一時的なビットコイン価格下落などで戦略をピボットするつもりもないですし、長期でこの大きな方向性にコミットしていくための体制や資金力などもあることも重要だと思います。
(逆に国内のトレジャリ企業はビットコイン価格が少し下がっただけでほとんど撤退してしまいましたよね…)
ビットコインコミュニティへの還元や連携について
もう一つ、個人的に重視している要素として、ANAPはおそらく日本のトレジャリ企業で唯一ビットコイン/ビットコイナーコミュニティとの連携の重要性を認識しており、コミュニティへの還元や共創の強化も意識していることです。
一般のトレジャリ企業はビットコインの普及活動や開発、啓蒙などは直接的に株価に影響はないので、コミュニティを無視する傾向があります。
むしろコミュニティの人たちはリテラシーが高いので、トレジャリ企業の矛盾などにも突っ込んでくる人たちも多いですし、むしろ目の上のたんこぶくらいに思われている可能性すらあります苦笑
一方、今後ANAPとして決済、RWA、その他の領域で新しいビットコイン事業を立ち上げていく時に、コミュニティからのフィードバックを受けつつサービスを改善したり、優秀な人材を採用したり、など、コミュニティとの共創が鍵になってくるのは間違いないです。
ただし、ビットコインコミュニティというのは(日本だけじゃないですが)かなり特殊な文化やこだわり、強い信念を持っていることが多く、そこらへんの詳細を理解やリスペクトした上で連携するというのは実は案外難しいと思います。
そういう細々としたことも含めコミュニティと連携、還元しつつ、共同でビットコインの普及や実装に貢献していく、という健全な関係性を構築していくのが今回の自分のアドバイザリーボード加入のミッションの一つです。
今後の具体的なプラン
というわけで、トレジャリ企業の現状と今後の展望、またANAPとの連携を通して自分が目指していることについてちょっと細かく書いてみました。
現時点ではまだ公開できないことも多いですが、すでにビットコインを利用したRWA、ビットコインのマイクロリワードサービス、イベント企画などで水面下では企画や連携を開始しており、また近く色々発表できるものも出てくると思いますし、少しづつ形にしていければと思います。
上場企業というのは社会一般的には信頼されているもので、その枠組みを活かしながらその他の企業と連携したり、色々仕掛けていくことが上手くできれば日本国内のビットコイン普及やエコシステムの拡大にとって大きな追い風になりえます。その意味でもこの機会は是非活かしたいなと個人的に思っています。
というわけで長くなってしまいましたが一旦以上です。おそらく近くまた連続してリリースが何本か出てくると思いますが、粛々とやっていければ。
補足
書き忘れましたが、中立性を維持する上でも自分はANAP含むトレジャリ企業の株を保有していません。アドバイザーという形にはなりますが、ANAPの株購入などを直接的に推奨することはなく、事業創出やコミュニティ連携が主な役割です。
ただ事業が上手く回り始めれば株価にもゆくゆくは影響はあるでしょうし、短期的なポジトークなどなしで企業とコミュニティの間で中長期でWin Winな関係を作りながら株式会社として株価も上がっていくが理想だと個人的には思っています。そこら辺を理解した上で、自分のスタンスに寛大な姿勢を示してくれているANAP側には感謝です。



