今こそ改めてビットコインとプライバシーについて考えてみるべき時
ビットコインとプライバシー考察シリーズ①
今回の記事から何本かに分けて、ビットコインとブライバシーというテーマで、なぜプライバシーは重要なのか、プライバシーという観点から見るビットコインとその他のクリプトの今後の方向性の違い、現状最も実用的なプライバシー改善方法やチュートリアル、などについてそれぞれ記事を書いていきます。
元々この記事はひょんなことから「この業界の人たちプライバシーについて全然気にしなくなっちゃったな」と危機感を感じ、気軽にサクッと何か書こうと思ったのがきっかけでした。
ただ考え始めると「これも書いといた方がいいな」「この視点からの分析も面白いかも」という感じでどんどんドツボにハマっていって、元々一本の記事で完結させようと思っていたことを多分4−5くらいの記事に分けてちょっとずつ出していくことになってしまいました…苦笑
先に結論を言っておくと、現状ではビットコインのサイドチェーンとして有名なLiquid Network、特にLiquidとLightning両方に対応したモバイルウォレット「Aqua Wallet」を使うのが一般的なユーザーにとっては最も手軽、かつ利便性や手数料などのバランスも良くプライバシーを向上させるためのツールとしては一番いいんじゃないかと思います。
そこに辿り着くまでに複数のプロトコルやプロダクトとの比較含めて一個ずつ説明していきますが、まず今回は第一回ということで、なんでプライバシーというトピックはビットコインユーザーや投資家にとっても重要度の高いトピックなの、というという背景の考察から始めましょう。
(※自分は仕事でBlockstreamの日本でのアンバサダー的な役割も果たしていてLiquidを推すモチベーションはあるのですが、そういうのをなしにしてもAquaは結構良さそう、という結論になりました。その辺も後で説明します)
プライバシーは個人の保護だけでなく、通貨としても必須機能である
まずディスクレイマーですが、自分はプライバシーというトピックの専門家を名乗ることも到底出来ないですが、出来るだけビットコインに絞って単純化して話していると認識してもらえれば。
その上で、なぜプライバシーがビットコインに重要なのかをかいつまんで説明するなら、プライバシーの高さはビットコインユーザーの権利や自由を守るだけでなく、ビットコインを貨幣として成り立たせるためのいわゆる代替性(Fungibility)の面でも重要だからです。
逆に言えば今後ビットコインのプライバシー関連技術の改善や関連ツールのより広い利用なくして、ビットコインの真の意味での成功はないんじゃないか、と言ってもいいほど本来重要な話です。
例えば、外部から誰がどこにいくら送金を送ったか簡単に予測できてしまう場合、ビットコイン保有者に対する強盗や誘拐事件などに発展しかねないですよね。これは将来の話ではなく、すでに具体的にはフランスなどで仮想通貨ユーザーをターゲットとした恐ろしい事件はすでにいくつも起きており、全く他人事ではなくなってきています。この話はそこまでイメージは難しくないと思います。
ただそれだけでなく、プライバシーは個人の自由や安全の確保だけの話ではなく、ビットコインを中立のお金として成立させるためにも重要です。
プライバシーの不足が原因で、ビットコインのトランザクションに「色がついて」しまうと、同じビットコインのはずなのに、価格差や、差別、政府からの検閲要求などが発生する可能性があります。
これは1 BTC = 1 BTCという通貨の代替性(Fungibility)の前提を崩し、ビットコインの存在意義すら脅かしかねないくらい深刻な話です。
実際このようにビットコインのトランザクションに簡単に色がついてしまうことで、規制からの要求で送金がブロックされたり、ビットコインの利便性を損なわれる事例もすでに多数起きています。
例えば客からビットコイン支払いを受け取った店舗がそのビットコインを取引所に入金したところ、客がオンラインカジノなどの違法なサイトで儲けたお金で決済をしていた、などの理由で日本の取引所のアカウントが凍結されたり、残高が没収されたりなどの事例はすでにちらほら聞きますね。
これだけ聞くと別に大したことではないし、違法なオンラインカジノを使わなければいい、自分には関係ない話と思う人もいるかもしれないですが、これは氷山の一角です。
プライバシーの本格的な戦いの本番はむしろここから
今後政治的な理由でロシアやイランなどの特定の国(特に影響力の強いアメリカと仲の悪い国)のユーザーからの送金はウォレットレベルで弾かれてしまったり、店舗でも受け取り拒否などの対応を要求されるような状況が増えていくかもしれません。
これではビットコインの「グローバル通貨として、政治や国家などに影響されず誰でも等しく自由に保管、送金ができる」という理想の姿からどんどん遠ざかっていってしまいます。
逆に、仮にビットコインの送金にプライバシーを向上させるツールが広く使われた場合、そもそも特定のトランザクションがどこの国のユーザーからのものなのかの判別が難しく、そもそも検閲しようにも何を検閲したらいいのか、特定のターゲット向けの検閲や攻撃が難しくなりますね
今までこういう可能性は理論上は語られることはありましたが、あまり実態のあるリスクとしては多くのビットコイナーにも認識されていなかったように思います。
ただし、政治的にも国家によるビットコイン購入などのテーマが真剣に議論され始めて、またイランがホルムズ海峡の通行量の支払いにビットコインを指定する、などの国家とビットコインというテーマの新しいフェーズに入った今、プライバシー不足と政府による検閲要求などの話のリアルさはかつてないほど具体的になっており、むしろここからが本格的な戦いと言えます。
現状のビットコイン、仮想通貨のプライバシーのなさはやばすぎる
さて、ここまででプライバシーはビットコインの中立性や分散性を保つために重要という話をしましたが、現状の取り組みはどうなっているでしょうか?
ビットコインに関しても課題は多いですが、それ以外のイーサリアムを筆頭とした「クリプト」の世界でのプライバシーのなさと、気にされなさはかなりやばいレベルだと思っています。
アカウント方式で一つのアドレスを使い回すのがかなり一般的になっており、誰がどれくらいの資産を持っているかとか、Vitalikがどういう風にお金を使っているか、なども全て筒抜けなのはYavayです。
今はある種ネタみたいな感じで受け入れられてる部分もありますが、過去のトランザクション含め全てのトランザクションが消えることのないブロックチェーンにおいては将来的な取り締まりの可能性など含めて致命的なんじゃないかと思います。
すでに考察した通りプライバシーと中央集権制や検閲耐性というのはかなり重要な繋がりがあるわけですが、多くのクリプトというのはプライバシーをほとんど気にしない設計や運用をしている時点で、そもそも最初から分散とか検閲耐性なんて本気じゃなくて、ほとんど口で言ってるだけなんじゃないの?とすら思ってしまいますね。
まあ今のイーサリアムなどのプライバシー問題は別に今更言わなくてもみんなわかっていることだと思いますが、想像以上に良くない状態であるということと、それが今後規制の厳格化や検閲要求などで、今後さらに悪い状況に追い込まれるリスクは常にあるよってことです。
プライバシー系のコインやL2でなくてビットコインのプライバシーが重要な理由
もしビットコインがプライバシーの問題があるとしたら、MoneroやZcashなどのプライバシーに注力したコインの方が優れているので、ビットコインよりそちらの方を押していけばいいのでは?というよくある主張です。
確かにプライバシー性能でいえばビットコインより機能の高いものはありますし、その視点でも自分はプライバシー系のコインは別に嫌いではないです。
ただしMoneroにしてもPoWのハッシュパワーが脆弱て何回か51%攻撃のようなものにあっていたと記憶していますし、Zcashも開発チームが通貨発行スケジュール(Dev Tax)を勝手に変えたりなど、要は匿名性が高くてもビットコインのレベルで分散化され、すでに社会に受け入れられているネットワークはないです。
同様の理由で、例えばEtherやスマコン系のDeFi利用のプライバシーを向上させるためのL2プロジェクトなどもあって困るものではないですが、同時にビットコインのプライバシー向上ほどの重要性はないです。
というわけで色々総合して、ビットコインのプライバシーをプロトコルとして、またユーザーとしてどのように向上し、活用していくか、という話に結局戻るということですね。
というわけで久しぶりのプライバシー関連一発目の記事はここまで。
正直に言うとこのくらいの話はすでに知っている人も多いと思いますが、次の記事ではプライバシーの視点で見た時に、今後ビットコインとWeb3あらため?「オンチェーン」という領域が今後どのような進化の方向性を遂げていくのか、「オンチェーン」の世界のプライバシーというのは詭弁になる可能性などについて考察します。
まだ書ききってないですが、多分そんな感じになると思うので、次回も是非お楽しみに。


