Diamond Hands Magazine、水曜日のビットコインニュースまとめです。
先週、メキシコシティは常春で過ごしやすいとお伝えしたばかりですが、アメリカを襲った記録的寒波の影響で、ここ数日は珍しく寒い日が続いています。アメリカでは吹雪や豪雪でフライトのキャンセルが続出、電力逼迫で停電も発生するなど大混乱のホリデーシーズンとなっているようです。
アメリカに比べれば、ここは日中18度くらいまで気温は上がるので、寒いなんて言ったらばちがあたるかもしれませんが、朝晩は冷え込むため、シティを取り囲む山々はうっすら雪化粧。雪が珍しい土地柄、地元民、特に子どもたちは大喜びで、わざわざ山に出かけて雪遊びを楽しんでいました。
寒波とビットコイン、一見何の関連性もなさそうですが、実は大ありなのです。
というわけで、今週はまずこのニュースから。
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マイナーのおかげで大惨事を回避できたテキサス
2021年2月、テキサスは異例の寒波に襲われ、450万世帯以上が影響を受ける大規模停電が発生しました。その結果、1950億ドルという州史上最大の経済損失と、246人、間接死も含めれば702人もの犠牲者を出しました(Wikipedia)。
今回の寒波はさらに厳しいものだったにもかかわらず、停電も発生せず、死者も1人にとどまっています。前回との大きな違いの一因に、州の一大産業に成長したビットコインマイニングがあります。
アメリカへの寒波襲来を境に、ビットコインのグローバルハッシュレート(HR)が250 EH/sから156 EH/sに40%も急低下しました。電力逼迫を受け、テキサスでマイニングを行う事業者が操業を停止したためです。一時はFoundry、Riot、そして先週破産を申請したCore Scientificなどがテキサスの大規模施設に設置するASICの99%が稼働停止したそうです。
なぜマイナーはマイニングを停止したのでしょうか?答えは電力会社との契約にあります。マイニング事業者と電力会社の契約には通常デマンドレスポンス(ロードレスポンス)が含まれています。電力不足に陥りそうな場合に電力会社からの要請に応じてマイニングを停止する代わりに報酬を受け取るスキームと、電力価格が高騰した際に事前に割り当てられていた供給枠を市場価格で電力会社に売り渡すスキームがあるようです。今年7月にRiotが後者のスキームを使って950万ドル、平均月間収益の90%相当の増益を確保したニュースをご記憶の方もいらっしゃるのでは。
ビットコインマイナーが究極のロードバランサー(送電系統への負荷を均衡させて停電などの事故を未然防止するもの)である最大の理由は、スケーラブルな需要を柔軟に創出できることです。電力会社から要請を受けて16秒後には稼働停止できる柔軟性と瞬発力は稀有です。他にもいろいろな要因がありますが、詳細はもやしししゃもさんの今週のニュースレター「ビットコインと電気エネルギーとの関係についての考察」をご参照ください。
ビットコインマイニングのロードバランサーとしてのポテンシャルについて、海外では認知度が高まってきていますが、日本ではまだ知る人は少ないです。お正月の家族団らんの席で寒波や電力不足、節電の話題が出てきたらチャンスです。ぜひビットコインマイニングについて教えてあげてください。ついでに、お年玉もぜひビットコイン払いをご検討ください。
ビットコイン・オンリーというブランドと収益性のジレンマ
アフリカなどの途上国を中心に人気のP2P取引所を運営するアメリカ企業Paxfulがイーサリアムの取り扱いを停止し、正真正銘のビットコイン取引所となりました。
CEOのRay Youssefは、この決定を以下のようなtweetで発表。
イーサリアムを取引所から追放した。これにより、1,160万人の安全が確保できる。お金を儲けるより、誠実でありたい。私たちに続くのはどこだ?
この決定はビットコイナーからは拍手喝采でした。
一方、反対の方針を発表してバッシングに晒された企業もあります。
ジョイントカストディサービス(マルチシグの鍵の一部を事業者が管理することでビットコインの所有権を維持しつつセルフカストディの負担を軽減)のパイオニアで、CTOにコア開発者、セキュリティ専門家、ビットコイン教育者として尊敬を集めるJameson Loppを擁するアメリカのスタートアップCasaは、従来のビットコインに続いてイーサリアムにも対応すると発表しました。
1000件以上寄せられたリプライの大半は、はぁ?、失望した、恥を知れ、悲しい、考え直して、さようなら、RIPなどです。
私自身Casaの顧客なので、このニュースはショックでした。私がCasaファンなのを知る人からはお悔やみのメッセージが届きました。ただ、セルフGoxなどの苦行を経てCasaにたどり着き、ようやく安眠を取り戻した身なので、代替案が見つかるまで解約できず。
ちなみにCasaのサービスについては「ビットコインの自己管理という終わりのない修行 ③」(ビットコイン研究所)で詳細に解説しているので、有料会員の方は興味があればご一読ください。
Casaの決断の裏事情は理解できます。取引所と同じで、ビットコイン・オンリーでは経営が厳しいのでしょう。ビットコイン・オンリーを貫く表明をしている競合のUnchained Capitalは15人を解雇したばかりです。ビットコイナーでありながら、Krakenを設立して最近までCEOだったJesse Powellは、アルトコインを扱わざるを得ない苦しい胸の内を吐露したり、会社利益に反するものの抑えきれずにビットコイナー発言をしていました。だからこそ、Paxfulの決断には驚かされましたし、最大の敬意を払いたいです。
ビットコイナーがビットコイン・オンリー企業でプライドとやりがいを感じながら働き、経済的にも報われるには、どうすれば良いのか。ビットコイン・オンリーのベンチャーキャピタルに転職した今年、これを何度も自問しました。答えはありません。ビットコインの普及を進めて市場を大きくするのは当然ですが、その普及活動でつまづいているのが現状なわけで。
1ビットコイナーとしては、ビットコイン・オンリー企業を顧客として支えていきたいです。アップデートが頻繁なアルトコインの対応にリソースを割く企業よりも、ビットコインに専念している企業のソリューションの方が安全性は高いと思うので、取引所やウォレットなど秘密鍵を扱うサービスは特にビットコイン・オンリーを選択するのは合理的ではないでしょうか。というわけで、Casaの代替サービスご存じの方いたら、ぜひ教えてください。
1月3日「ビットコインの誕生日」にProof of Keysを実践しよう
来年1月3日はビットコインの14回目の誕生日です。
2009年1月3日、サトシ・ナカモトがビットコイン・ブロックチェーンのジェネシス・ブロックをマイニングし、ビットコインネットワークが始動しました。サトシがブロックに「まもなく銀行救済に二度目の公金注入(2009年1月3日)」という英タイムズ誌の記事タイトルを刻んだことからも、ビットコインが法定通貨制度、中央銀行制度に取って代わる新たな貨幣制度を目指していることがわかります。
1月3日はビットコインの誕生日とともに、Proof of Keysの日でもあります。Proof of Keyは直訳すると鍵所有証明です。Proof of Keysの起源は、ビットコインの10歳という節目の誕生日を記念して、Trace Mayerが取引所などの第三者機関に預けてあるビットコインを自分のウォレットに引き出し、秘密鍵の自己管理を介して金融主権を回復することを提唱したことです。併せて、顧客資産を流用したり、紛失したりせずに全額保全しているのかをテストして、取引所などの健全性を検証する意味合いもあります。
今年はFTXのおかげで、ペーパービットコイン(IOU、借用書)と現物ビットコイン、カストディアンに管理委託しているビットコインと自己管理するビットコインの違いが明確になり、取引所からの出庫が急増し、自己管理を始める人が増えました。ビットコインにとっては良い年でしたね。
もしまだ預託中のビットコインがあるとしたら、トレード用に置いてあるのだとしても1月3日には一旦取り出して、無事を確認してみてはいかがでしょうか?
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